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HOMEはっけん!面白制度第9回:奨励金100%の従業員持株制度【サイボウズ株式会社】

はっけん!面白制度

第9回:奨励金100%の従業員持株制度【サイボウズ株式会社】

(2006/6/27 火曜日)

コージー: 持株会に入ると、自分で設定した額分の自社株を購入できるよね?
その購入の際の拠出金の数パーセントを奨励金として支給している会社がほとんど。
『奨励金は5%』というのが通例なんだけど、それをなんと、100%支給している会社があるんだよ。
カオリ: すごいね。会社にとってどういうメリットがあるんだろう?
コージー: そこが気になるところだよね、その狙いを聞きに行ってきます。

奨励金100%の従業員持株制度【サイボウズ株式会社】

社員とともに企業の価値を高めたい
拠出金に対して100%を奨励金付与する持株制度

奨励金100%の従業員持株制度【サイボウズ株式会社】
用意する物: 従業員持株制度 奨励金予算
つくりかた : 1)奨励金のパーセンテージに応じてコストシュミレーション
2)パーセンテージを確定
3)利益供与などの法的リスクをクリア

奨励金100%の従業員持株制度【サイボウズ株式会社】

サイボウズ株式会社
所在地/東京都文京区後楽園1−4−14 後楽森ビル12階
設立/1997年8月8日
従業員数/209名(正社員、派遣社員含む)
資本金/5億3400万円
http://cybozu.jp/

中小企業向けのグループウェア「サイボウズ Office」をはじめ、企業向けのソフトウェアの開発、販売を手がける。「サイボウズ Office」は国内2万3000社を超える企業での導入実績を持つ。2000年8月にマザーズ上場、2002年3月に東証2部に市場変更、2006年7月3日には東証一部に指定が決定している。その他製品には大規模向けEIP型グループウェア「サイボウズ ガルーン」やWebナレッジツール「サイボウズ デヂエ」など。

−2002年3月に東証2部に、来月には1部へ上場が確定とのことですが、上場企業ではきわめて珍しいことに、従業員持株制度における拠出金の100%を奨励金として付与をされていらっしゃるとか。100%支給はいつから導入されたのですか?

石井氏:2005年の8月からスタートしています。その時点の証券会社調べでははじめてでしたね。従業員持株会は以前からありましたが、それまでは奨励金も一般に多いと言われる5%でした。

ストックオプションも一定の職階に対して毎年3月に付与していました。ただストックオプションは、上場前に付与してこそ、社員がリターンを得られる可能性の高いスキームですし、上場後に発行することについては希薄化の観点からも社内でも議論にあがっていました。そして、今年の5月1日の会社法施行後に発行されるストックオプションについては、従業員に対する報酬等として付与時に費用化しなければならなくなりました。このような観点から、今後ストックオプションを従業員向けに発行するのは辞めていこうというのが会社のスタンスになり、今年の3月には付与しておりません。

その代わり、社員には株主として、オーナーシップをもってその責任やリターンをシェアし、モチベーション高く働いてもらうインセンティブとして、従業員持株制度への加入を促進するため奨励金を上げることを検討しました。

奨励金を拠出金の20%、50%にするかとか、いくつもシュミレーションをしました。100%というのはそれまではどこにもないようだったので、思い切って100%にしようと。奨励金の場合は福利厚生費として計上するのですが、年間コストを試算した結果、採用をすることにしました。

従業員持株会は会社が強制的に加入させるものではないですから、加入はご本人が決定します。最低で5000円から、上限は月額給与の10%と決めていますが、その範囲だったら各自が任意でコントロールできます。もし2万円の拠出金の場合は、100%の2万円を会社から奨励金として付与します。

サイボウズ株式会社石井和彦氏

−それなりにコストもかかると思うのですが、それでも奨励金を100%とした狙いを教えてください。

石井氏:ソフトウエア開発におけるもっとも大きいコストは人件費です。従業員のモチベーションを向上させるために必要なコストだと思います。100%としたことには、先ほどお話した従業員に対してのインセンティブの他に、長期的な話にはなりますが、従業員持株会が安定株主になると会社としても安定的な関係が築けるというメリットが期待できると考えています

社員がオーナーになって、オーナーシップのもとに企業価値をあげていこう、これが我々のミッションのひとつです。そしてそこで得られた価値は従業員と一緒にシェアをしたいと考えています

昨今の敵対的買収闘争の中で、社員持株会が株のそれなりのパーセンテージを占めている会社もあります。弊社の場合も、社員数が増えて、順調に株が買われていけば、それ相当の規模になっていくでしょう。

−5%から100%にあげて、加入率はあがりましたか?

森岡氏:随分とあがりました。それまでは3割程度だったのが、今では9割。うちは平均年齢が31歳と若いです。資金形成の意味でも有効ですよね。

石井氏:自分の会社でも導入を検討したいとの問い合わせも結構いただきます。「どういうことを検討したのか?」と。

−どういうことを?

石井氏:会社の負担する奨励金額に関しては、業績に関するリスクですが、その他のリスクも検討しました。

一番は『法的リスク』。

従業員が、社員でもあり、株主。つまり株主に対して、100%の奨励金を支払うことが、一部の株主に利益を供与しているととられかねません。

そして、何よりも気を遣うのは、株主として持株会の議決行使権に関するところです。専門家に聞くと、『100%奨励金を負担しているから』と議決権の行使を妨げていると、受けとられる可能性があるとのことなんですね。

サイボウズ株式会社森岡貴和氏

−どのようにして、そのリスクを回避されているのですか?

石井氏:1年に1回の株主総会の時には、議決権の説明を持株会に対してしっかりとおこないます。その際には弁護士、早稲田大学の先生など第三者の方に出席していただきます。そしてアドバイザーとして「問題ありません」とのアドバイスをいただいた上で、持株会の代表である森岡が議決権を行使しています。

もちろんこの方たちには会社から謝礼等を支払うことはできません。無償で第三者の立場からアドバイスをいただいています。

安定株主を持つという考え方で、今一度、持株会を見直していらっしゃる企業も多いようですね。ストックオプションと違って、持株会は古くからの制度ですが、活用の仕方によっては、今の時勢にも良い活用はできると我々は判断したわけです。

導入して非常によかったです。従業員にしてみれば100%の奨励金ならリスクも少なくなる。それに自分たちが頑張った分がインセンティブとして得られますので。

石井和彦氏と森岡貴和氏

サイボウズ株式会社
経営管理本部 執行役員 副本部長
石井和彦(いしい かずひこ):
…ここ数年の組織の成長とともにユニークな人事制度を設計し、運用してきた。現在は経理財務・IRを担当する。(写真上)

人事・総務グループ マネージャー
森岡貴和(もりおか たかかず)
…現在、同社の人事評価制度、持ち株制度を担当する。営業職を経て、同社入社を機に「お客様が社員になった」と人事職に。(写真下)

【コラム】 きてきてカード、360度評価、給与の公開…組織の変化とともに変遷する評価制度

−御社には「きてきてカード」というユニークな人事評価制度があるとお伺いしました。「きてきてカード」について教えてください。

石井氏:「きてきてカード」は4年ほど前から昨年まで導入していた評価制度のひとつですね。

4年前に社内体制を変更をして、それからは事業部制に移行しました。当時の主な自社製品は「サイボウズ Office」、で、これからいろいろな製品の開発スピードをあげていくという狙いがあったんです。専任の人間を置いたほうが、より早く新しいものが生まれであろうと想定して組織をつくりました。

「サイボウズ Office」、今は製品化されている、「サイボウズ ガルーン」「サイボウズ デヂエ」、と製品ラインアップごとに、開発からマーケティングまですべて人も分けて独立採算の事業部を立ち上げ、おのおのが社内カンパニー的に動いていました。

ただし社員数もまだ60名ぐらいしかいませんでしたから、それぞれが制度をつくって運営していくのは実務的には厳しいということもあり、評価制度は全事業部共通で運営していました。

基本的には成果報酬型。自分がコミットしたことに対してどれだけの実績を出せたかを評価します。100点満点だとすると、そのうちの60点分がその実績評価で、20点分ぐらいの評価になっていたのが「きてきてカード」。

−具体的にはどのような制度なのでしょうか?

石井氏:各事業部にはプロジェクト・マネージャーがひとりいます。そのプロジェクト・マネージャーには、自分のプロジェクトにいる人数の半分の「きてきてカード」が与えられます。10人なら5票ですね。そのカードを渡すのは、自分のプロジェクトのメンバーでも、他のプロジェクトのメンバーでもOKです。ただし、ひとりに渡していいカードは2枚まで。ですから、当時は4つのプロジェクトがあって、4人のプロジェクト・マネージャーがいたので、全員からカードをもらったとしても最大8枚。8枚をMAXの20点として、カード数に応じて比例配分で点数を与えていました
渡したことを本人に伝えてはダメ、つまり引き抜き行為はダメというのがルールです。

−カードは本人には渡さないんですか?

石井氏:実際には、物理的なカードはなかったんですよ(笑)。「きてきてカード」と名前はついていますが、バーチャルなカード。
プロジェクト・マネージャーからあがった票をエクセルで集計していたんです。誰が誰に何票渡したかは伝えませんが、票数はみんなにフィードバックしていました。

−この制度の目的は?

石井氏:事業部制をとっていると、ある事業部で働いている人は、その他の事業部の人がどのような活躍をしているかは直接はみえにくくなります。でも各プロジェクトのマネージャーは自分の部下だけでなく、いろいろな人を見られたほうがいい、頑張っている人は他のプロジェクトにも聞こえてくるわけですから、そういう人はちゃんと評価していこう、そしてプロジェクト間の入れ替えももっと盛んに進められるようにしようと導入しました。プロジェクトに欲しいという意思表示の意味を含めて、「きてきてカード」というネーミングで。

サイボウズ株式会社

実際は目標管理シートに、実績評価は何点、きてきてカードは何点・・・そして合計何点と出していました。

−実績が70点、きてきてカードが20点、残り10点分はどのような仕組みで評価をしていたのでしょうか?

石井氏:360度評価のアットランダム版を採用していました。人事もあわせて全社でアットランダムの5人から評価される仕組みです。一般的な360度評価は上司、部下、同僚ですが、小さな規模の組織だと、ひとりで仕事をしている部署もありますから全社でやっていました。サイボウズの5精神「一芸に秀でる」「誠実である」「ベストを尽くす」「チームワーク」「人から学ぶ」に基づく10項目を4段階で評価します。誰が評価したかは明かさず、上司、部下に一票の重みの差はありませんでした。

−当時はさまざまな制度を試行錯誤しながら導入されていたんですね。

石井氏:1度だけ賞与額を公開したこともあります。事業部制のときは、プロジェクトマネージャーが自分のプロジェクトの出した利益の10%を賞与として自らの判断で配分できたんです。額も決められた。そこで公平性を担保するために、誰がいくらかを開示したんです。
かなり衝撃的だったみたいですよ。しかし今後は続けることにメリットがないという判断で廃止しました。
人事の制度の透明性は重要ですよ。でもブラックボックスの部分もある程度は必要だと思います。

−なるほど。ところで、現在は、きてきてカード、360度評価ともに廃止になっていると聞きましたが、なぜ廃止に?

石井氏:組織が変更となり、その後評価制度をみなおしました。

評価制度は、会社の規模やフェーズ、ステージによって変わるものです

昨年の2月、社長交代を機に、事業部制を辞め、管理部、マーケティングコミュニケーション部、営業部、開発部といった職種ごとの部制の組織に変わったんですね。プロジェクト制は採算管理はできますが、プロジェクト間の連携が難しい。「全社最適」を優先すると部制、そしてゆるやかなプロジェクト連携のほうがやりやすい。

それまでサイボウズは中途社員の採用が多く、制度もプロフェッショナルを対象とした実力本位。『アウトプットを出して目立った人は昇格昇給させよう』というメッセージングをもってやっていました。

しかし新卒が10名、20名入ってくると当然会社としてのフェーズは違ってきます。会社として力を入れていかなければいけないのは、『新卒をいかにトレーニングして、戦力スタッフに育てるか』というところ。つまり新卒を評価できる制度も必要になります。

リクルートや新卒トレーニング、OJT配属などに全社的に取り組むのにも、今の部制のほうが結果としてやりやすかった。制度も、きてきてカードも360度評価も辞めて、目標管理に一本化しました。

制度は会社のメッセージを示すところです

評価制度に全員が全員納得するというのはなかなか難しいことです。制度は会社が何を目指すかというメッセージを示すものだと考えています。

軽井沢、松山、京都、東京

−御社のオフィスはとてもスタイリッシュですが、そこにも伝えたいことがあるのでしょうか?

石井氏:そうですね。メッセージを発信することが目的になるのはこのオフィスづくりも一緒だと考えています。

『開発会社なので、優秀な技術者を獲得していくところは力をいれていかなければいけない』というリクルーティグ、そして今働いている人の生産性を向上させることを目的として設計しました。

来客スペースには各部屋に「軽井沢」「松山」「京都」というように日本の都市の地名をつけています。「軽井沢」はクールに物事を決める部屋でコーポレートカラーの「サイボウズブルー」を基調テーマカラーに、机は椅子はカッシーナ。「松山」は創業の地の名前で、やわらかい雰囲気の応接室。オレンジ色で家庭用家具を入れて。設備にお金をかけてでも従業員に働きやすい環境を提供しているという会社のメッセージを発信するところが重要なんです。

オフィスを移すことがあれば、次のオフィスづくりには次のメッセージを発信することも考えると思います。


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