JALテーブル・フォー・ツー【日本航空】
社員食堂でサラダを食べて20円募金
身近な行為で国際協力に参加する

日本航空
所在地/東京都品川区東品川二丁目4番11号 JALビル
設立/2002年10月2日
資本金/174,250,000,000円
航空輸送事業をはじめ、航空運送に付随する関連事業等を営むJALグループの持ち株会社。グループ会社の経営管理やそれに関連する業務を手がける。
―今年導入された「JALテーブル・フォー・ツー」について教えてください。
テーブル・フォー・ツーには、2007年6月11日から20日までの10日間、全国のJALグループの社員食堂11箇所で取り組みました。「社員食堂でサラダを購入すると1食につきその売上から10円、そして会社から10円、あわせて20円を寄付しましょう」というものです。サラダの単価は日によって異なりますが、1食につき固定で20円。食料飢餓が問題となっている途上国にWFP(国連世界食糧計画)を通じて寄付されます。「寄付側が1食食べるとと途上国の2人が食べられる」「途上国の学校給食は1食20円程度」というところからテーブル・フォー・ツーと呼ばれているそうです。
―なぜ、テーブル・フォー・ツーに取り組むことに?
JALでは6月を「地球市民月間」と定めています。地球のこと、市民のことを考えて何かやりましょうということで、これまでも環境関連の取り組みをしてきました。環境は身近ですが、地球市民関係、つまり国際協力的なことというのは、普通の会社員ではピンと来ないものです。そこで何か「やりやすいもの」はないかと探していたところ、「テーブル・フォー・ツー」のことを知りました。
企業でボランティアや社会貢献活動をする際に一番難しいのは、人を集めることや、そのための時間を捻出することなんですね。その点テーブル・フォー・ツーは、食事という日常の時間の流れの中に組み込まれているので参加する人の負担が少ないのです。
会社の仕組みの中でおこなえるのがよいだろうと考え、食堂を使うことにしました。「ボランティアや食料問題に興味を持ってもらう」という啓発が主の目的ですから、人の目に留まりやすいところがよかったのです。社員食堂はお腹がすいたら行くところですから。かつ、「サラダを食べてメタボリックを防止しよう」と掲げれば健康面からも興味を持ってもらえる可能性もあります。
もうひとつの利点は、社員食堂は1日あたりに売れる品数が決まっていることです。金額の目処がつきますから会社としての負担額も想定できました。社員は食事にお金を払っているだけですから、負担はありません。
―テーブル・フォー・ツーというのは、もともと全世界的な取り組みなのですよね。
世界経済フォーラムという非営利財団が毎年、企業人、経済人、知識人を世界から招き「ダボス会議」という定例総会を開いています。その中の若手リーダーが集う会議において、日本の代表が提案してはじまったそうです。
そこで「テーブル・フォー・ツー運動」を推進している団体から、JALに話が来たわけです。日本がイニシアティブをとって世界に広めていく運動ですから、日本企業としては応援したいと思いました。
「それだったらお金を寄付すればいいんじゃないの?」という声もあるかもしれません。しかし日本人はとりわけ「学校給食」に対して理解があります。みんなが食べて育っていますからね。「途上国で学校給食を普及させると、学校に行く人が増える」というのも比較的受け容れやすい。日本でも年齢が高い人は、給食にそういう意味があった時代に育っていますからね。そして社員食堂と給食は似通った性質をもっているので、身近に感じられるはずだと考えました。
―成果はどうでしたか?
啓発活動は、理解をしてもらうまでに時間を要するものですから、定期的に何回か開催し定着させる必要があります。「何かやっていたよね」という程度で終わらないように。
数字的には7000食が出て、会社から10円と食堂から10円の計20円で14万円、あと募金そして、「社員ボランティア活動費」を追加して、20万円を寄付しました。
―「社員ボランティア活動費」とは?
JALでは5〜6年前に会社としてボランティア活動に従事する組織・社会活動グループを内部につくりました。JALはボランティア活動には早い時期から積極的に取り組んできていました。1990年代からユニセフ募金もスタートしていましたし、「ふれあいの翼」(※)を開催するなど昔から熱心だったと思います。
会社がバックアップするのは「ボランティアJ」という組織。そこでは社員から寄せられた募金やバザーの売上、寄付金などを「ボランティアファンド」に集めています。
ボランティア活動というと、募金が一番に思い浮かぶと思いますが、お金以外の労力や知識を提供するボランティアもあります。そのようなボランティア活動に参加する際にも交通費、宿泊代など金銭負担は発生しますね。そういう時、ボランティアファンドから補助金を出します。
ただ補助金はあえて全額を出しません。その場で参加する人からも必ず参加費をとります。タダで参加するよりも、高い意識を持って参加できるでしょうからね。
―社会活動グループとボランティアJの主な活動を教えてください。
一番大切なことは「社会活動って何をしたらいいのかがわからない」という人へのきっかけづくりです。会社でのボランティア活動をきっかけとして、その意義に気づいてもらいたいと思います。
社会人になるときっかけも時間もないものです。生活もある、仕事もある、楽しみもある、その中でボランティア活動の優先順位が一番にはなりにくい。ですから負担なく、気軽に参加しようと思ってもらえるようなボランティアメニューをつくっています。会社が提供するものであれば、それなりの専門家が精査した信頼できるものですから、安心して参加できますしね。募金にしても、会社の施設内であれば大丈夫という安心感があるでしょう。それらがきっかけとなり、社会に目が開かれて自分たちで募金をはじめたり、ボランティア活動を企画したりと拡がっていけばいいと思います。
―最近の社会活動グループの主だった活動を紹介してください。
地震時のボランティア活動は盛んですね。社内募金もやりますが、新潟地震の際には、航空会社ならではの特徴を生かした活動をしています。
たとえば空港で冬場に雪が凍り飛行機が飛べなくなった時に使う、自ら湯を沸かし放水する特殊車両でお風呂サービスをしました。また飛行機が空港の離れたところに駐機しなければならない状況の時、エンジンを落とすと冷房が効かなくなってしまうんです。その際にダクトから冷風を吹き込む特殊車両もあって、今回は避難所の体育館の窓から冷風を吹き込みました。なかなか好評でしたよ。
―大変意義のある活動ですね。
お金だけではありません。大切なのは、行為を受ける相手、たとえばテーブル・フォー・ツーであればアフリカの人になりますが、彼らが私たちの行動を理解して、日本の企業の人がランチを食べる時に自分たちのことを考えてくれていると知ること、私たちも相手のことを考えること、そこから生まれる連帯感だと思います。
物質的なことよりも、その交流のほうが大事で、それがあれば少しずつ世の中がよくなっていくと思うのです。すべてを変えることは難しいけれども、少しずつ変わっていけばいい。企業の場合は事業とボランティア活動が直結しているのが一番ですね。JALは公共輸送を事業としているので、365日お客さまを安全に運ぶ義務があり、仕事場では多くのお客さまとの接触があります。もちろんお客さまの中には障害を持つ方もいらっしゃいます。世界中の方が利用していらっしゃいます。ですから自然とボランティアには目が向くのかもしれませんね。そして従業員が広い心をもっているほうがよいサービスができると思います。ボランティアを推奨することは、サービスの向上という効果もあるのかもしれません。
―人材教育の一環でもあるんですね。リクルーティングにも役立っていそうです。
教育やキャリア育成だけでなく、総合的に見て判断しているとは思いますが、社員をどのように大切にしているのか、どういう部分を育てているのかということで、会社選びのひとつの魅力にはなっているかもしれません。実際、社風づくりには役に立っていると思いますよ。
―来年もテーブル・フォー・ツーは続けられますか?
おそらく来年も6月に開催します。社員食堂は社内だけでもたくさんありますから、一つひとつは小さい活動でも、徐々に広がっていけばいいと思います。
善意の表し方というのはすごく難しいですよね。シャイな人もいる、押し付けっぽくなる時もある。だからテーブル・フォー・ツーのように、日常の行為の中に自然と入り込んでいるものが実はボランティア行為になっていたというぐらいのほうが、純粋な行動になりますよね。自分の欲求も満たしながらですから(笑)。ボランティア活動なんて恥ずかしくてできないと思っている人でもきっと参加しやすいはずです。
※「ふれあいの翼」とは・・・
JALが1998年から毎年開催する、児童養護施設の子どもたちとJAL社員が東京で2泊3日をともにすごす、交流のための社会活動プログラム。
株式会社 日本航空
広報部マネージャー
井出 勉(いで つとむ)
上智大学外国学部卒、1980年日本航空に入社。パリ支店、情報システム、商品企画、調査部門等を歴任。MBA(経営学修士)。2年間NGOに出向後、その経験を活かし2002年より広報部。社会活動グループ長。







