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HOMEはっけん!面白制度第23回:はっけん!面白制度 番外編ファンタジー営業部【前田建設工業株式会社】前編

はっけん!面白制度

第23回:はっけん!面白制度 番外編
ファンタジー営業部【前田建設工業株式会社】前編

(2007/9/26 水曜日)

ファンタジー営業部【前田建設工業株式会社】前編

マジンガーZの基地をつくろう!
前田建設・ファンタジー営業部始動

ファンタジー営業部【前田建設工業株式会社】前編

ファンタジー営業部【前田建設工業株式会社】前編

前田建設工業株式会社
所在地/東京都千代田区富士見二丁目10番26号
設立/1946年11月6日
(創業 1919年1月8日)
従業員数/3,440名
(2007年3月末現在)
資本金/234億5496万8254円
(2007年3月末現在)

前田建設ファンタジー営業部

今回の面白制度・番外編は、ユニークな広報戦略を展開する前田建設工業(株)。自社のブランド形成のために、制度をつくるにとどまらず、架空の部署とサイトを立ち上げたというユニークな試みを紹介します。前編は「ファンタジー営業部」と称する部の発足と活動開始までの経緯についてお伺いしました。

―まずはじめにファンタジー営業部とは?

岩坂氏:端的に言うならば、物語やアニメなどに登場する架空の構造物をつくりあげる、架空の組織です。ファンタジー営業部の活動、つまり彼らの建設までのプロセスをすべてサイト上で公開します。このサイトがファンタジー営業部です。

―ファンタジー営業部を立ち上げたのは岩坂さんですよね。その経緯を教えてください。

岩坂氏:順序立ててお話をしましょうか。まず私が前田建設に入社したのが1993年のことです。当時からこの業界、ゼネコン疑惑と呼ばれる不祥事の只中にありました。世間的に非常にお叱りを受ける事が多い業界に入った私は、かなり早い段階から、建設会社はどういうところで知恵を出し、汗をかいて、お金と頂戴しているかをきちんと皆さんに紹介すべきだという問題意識を持ちました。

ですが私は技術部門の人間であり、具体的には何をしたらいいかはわからず問題意識だけが蓄積されていきました。転機は1999年。会社から埼玉大学に国内留学をした時のことですね。その頃偶然にも、本田技研さんが開発したアシモの新型モデル「P3」という二足歩行ロボットの一般公開を見に行く機会があったんです。その会場に行くと小さな子どもからおじいさんまでが輪になってP3を見ていて、ロボットが動き出すたびに歓声があがっていた。ロボットが動いたことにはもちろんですが、老若男女問わず、子どもみたいに感動して、手を叩きキャーキャー言う様子に衝撃を受けました。

本田技研さんも前田建設も広い意味では「ものづくり」をしています。片やボーダレスに感動を与え、片や存在に疑問符がつく。これはいかん、何かしなければとスイッチが入った瞬間でもありました。

またアシモを見たとき、なぜか私はマジンガーZを思い出したんです。
ひとつのフラグが「マジンガーZ」となったのはその時です。でもまだ具体性は何もありませんでした。

そしてほぼ同時期、昔のヒーローヒロインを使ったブランドづくりをする企業さんが出てきていました。
それをうちでもできないかと思ったんです。

「ウチは本田さんのようにロボットはつくれない、でもロボットの基地はつくれる!」。

実際につくるとなればお金もかかります。でもインターネットという媒体を使えば・・・このように考えているうちに、「これはいける!」と稲妻に打たれたように一瞬にして「ファンタジー営業部」の構想を思いつきました。設計プロセスをストーリー展開して、架空上で基地をきちんとつくって、それをインターネットで発信しようというところまで。

―ひとりの発案が実業になるような制度が御社にはあったのでしょうか?
思いつきから一事業部(架空ですけど)にするところまで、どのような過程を?

岩坂氏:社内ベンチャー制度というものはあるのですが、私の場合はそれを利用したわけではなく、ちょうど閃いた頃に広報業務も担当する「総合企画部」に異動になったのです。直属の上司が広報担当。この上司を説得したらいいわけですから、非常に恵まれた環境ですよね。ただ突拍子もない企画だったので、「これは俺ひとりじゃダメだな」と仲間作りをはじめたのです。「一緒にやらないか?」って。

すると本業は忙しくても頑張ろうと言ってくれた仲間が10名近く集まりました。キックオフミーティングが2002年8月8日。もちろんオフィシャルな活動ではないので定時業務が終わったあとに会議室で。そのうち5人がコアメンバーになり、その後、総合企画部と社を口説くフェーズに突入することになります。

ファンタジー営業部【前田建設工業株式会社】前編

―尾崎さんがその時の広報部長ですよね?正直、最初に聞いたとき、どう思われましたか?

尾崎氏:当時はまさかこんなことになるとは想像できなかったので、ホームページへのアクセスが少し上がるのなら・・・くらいの簡単な気持ちでいました。彼らがすごく真面目な顔をしてお願いにまわっているし、熱意だけは理解できたという感じですね。

岩坂氏:紙ベースのプレゼンでは伝わらなかったので仮のホームページまでつくって。本気でした。アニメの人気を借りて建設業のプロセスを見せるんだ!と。「1年でいいからやらせてくれ」との幕引き条件も自ら用意しました。そして会社の資産は使わせてもらうけど就業時間以降に作業するということを条件に了解してもらったのです。

―マジンガーZにこだわったのはなぜですか?他のものではダメだった?

岩坂氏:思いつくきっかけがマジンガーZだったとお話しましたが、実はプロジェクトが動き始めてから、一度日本のあらゆるSF作品、アニメをリストアップしたんですね。インターネットでやろうと決めていて、そのメインユーザは30代男性。30代男性が誰でも「ああ!」と思いつく構造物、そして前田の今の技術でつくれそうなもの、こういった条件を真面目に考えていくと、やはりマジンガーZの基地となりました。実は基地に富士山の形を模した建築もあるんですが、機能的に難しいものでなく、その検討内容は日常業務とあまり変わらず面白くないということで、地下の格納庫になったのです。

―プランは決まり、会社の承諾も得て、その後は・・・?

岩坂氏:さて、次の難関が著作権でした。調べたら東映アニメーションさんが版権に関わっていらっしゃるのが解りました。電話をして、担当の方に実際に会いに行ったら、「これは面白い!」とおっしゃってくださって、「永井豪先生をご紹介しましょう!」と。結果、予算内でおさまり得る使用料でご承諾いただきました。

そして社内OK、そして著作権OK、これはいける!と思ってたところ、冷静な後輩に「マジンガーZの格納庫は、うちだけではつくれません」と言われまして・・・。確かにそうだと。なぜってマジンガーZの格納庫は地下に掘ればいいだけではなく、ロボットが上に競り上がるんですよ。上がプールになっていて、そこがモーゼの十戒のように割れて水が落ちていく中をロボットが発進していくつくりなんです。

その時にはもう、後には引けなくなっていたんです(笑)。そこで、日本の主たる重工業メーカーさんすべて(おそらく20数社)のホームページのお問い合わせ窓口に、A4×2枚ぐらいのラブレターを送ったんです。「こういう企画があって、なんとかタダ働きでやっていただけませんか?」って。通常業務でお付き合いがある会社さんにお願いしなかったのは、それこそお付き合いで参加していただくと、互いに不幸だからです。モチベーションが高い人、この企画に少しでも情熱を持った人に参加して欲しかったんです。

これだけやってダメなら仕方がないと覚悟して待っていたところ、「やりましょう」と言ってくださった企業さんがあったんです。有り難かったですね。後々お話を聞くと、例えば栗本鉄工所さんのご担当者は、本業以外に片手間でいろいろ新しいものをつくっている社内で有名なアイデアマンだったり、つまり各社内で一目置かれるユニークな方が集まってきた。そして作業をお願いしたら、私たちも口をあけて驚くしかない、ものすごいグレードの検討結果が出てきたわけです

―山あり、谷ありですね。
メンバーが集まり、その設計、建設の模様を「ファンタジー営業部」と称されるサイト上の原稿を書かれているのは?

岩坂氏:マジンガーの頃は私と、もうひとり野本というもので書いていました。自ら取材をして、図も書いて。でも大変というよりも他企業の工場を見学させてもらったりお話をさせてもらえたりと、楽しい面のほうが大きいんですね。

第1話のアップは2003年2月。その後月1回の更新で第1弾は7話構成ですから7ヶ月間、毎月Word(Office)で7〜10枚書き続けましたね。本業は別にあり、これは業務時間外にやるわけですから土日に喫茶店とかで(笑)。

―立ち上がったとき、社内外からの反響はいかがでしたか?

岩坂氏:あまりに突拍子もない企画ですし、尾崎とも相談しましてしばらく様子を見ようと、社内広報なしで人知れずはじめたんです。私としては「社外で大ブレイクだから、これでよし」と思っていたのですが、実際に始めてみたら、まったくPVが上がらなくて(笑)・・・。

「やった!やっとブログひとつに載った!」というくらいの低空飛行が2月から8月まで続きまして、「ま、こういう奇妙な広報が存在した事実だけでよし」と半ば諦めていました。

そして8月、「予算72億円工期6年5ヵ月」と物語を締めて、7回の連載が終了。そうしたところ、Yahoo!JAPANで「今日のオススメサイト」に選ばれたんです。するとPVが急激にあがり・・・(後編に続く)

ァンタジー営業部【前田建設工業株式会社】前編

前田建設工業株式会社
総合企画部 経営企画グループ 課長
岩坂 照之(いわさか てるゆき)

1993年に前田建設工業(株)に入社。トンネル(シールド)技術開発に従事した後、埼玉大学、高知工科大学に国内留学。現在、通常業務の傍ら、日本大学理工学部社会交通工学科の非常勤講師も務める。工学博士。


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