| カオリ: | コージーは自分の子どもが生まれたら育児に参加する? |
| コージー: | やっぱり参加したいよね。でも仕事もあるしなぁ。 |
| カオリ: | うちの会社(鎌倉)のご近所にあるアウトドア・ウェアのパタゴニアさんはね、男性でも育児休暇がとれるんだって! それにね、海が近いから、いい波が来たら勤務時間中でもみんなサーフィンに行っちゃうらしいよ。 |
| コージー: | ちょっと詳しく聞きたいな。散歩がてら、話を聞きに行ってくるよ! |
男女平等!2ヶ月間の育児有給休暇制度【パタゴニア日本支社】
100%の有休取得率!
社員のクオリティ・オブ・ライフを尊重する育児のための休暇制度

| 用意する物: | 就業規則 |
|---|---|
| つくりかた : | 1)会社のミッション・ステートメントの徹底 2)それを実現するための制度を構築 3)就業規則に明記 4)社員が休暇を取得する |

パタゴニア日本支社
所在地/神奈川県鎌倉市小町1−13−12本覚寺ビル
設立/1988年8月23日
200名(平均年齢33才)
直営店/12店舗
http://www.patagonia.com/japan/
各種アウトドア・スポーツのためのウェアの製造販売事業を展開する。本社は1957年、アメリカ・カリフォルニア州に設立。2006年5月現在、全世界のパタゴニアの総従業員数は約1000名、直営店舗数は45店を超える。
‐パタゴニアさんには、『男女平等に育児のための有給休暇が取得できる』という就業規則があるそうですね。
斉藤さん:パタゴニアでも、法律に定められているとおり、子どもが1歳半まで育児休業をとることができます。それとは別に、性別を問わず、『1歳未満の子供の保育のために56日間の有給休暇を取得する』ことができますね。
‐皆さん利用されていますか?
斉藤さん:現在フルタイム勤務のスタッフが約70名いますが、そのうち、男性8名、女性6名のスタッフがこれまでに育児休暇を利用しています。自分が、あるいは奥さんが出産をされて対象となった社員の休暇取得率はほぼ100%!
社内結婚の場合は、お母さんもお父さんも両方とれます。双子はダメです!そのときはひとり分だけ休めます(笑)。
‐斉藤さんは実際に育児休暇をご利用になったんですよね。一般的には、産休や育児休暇をとった後の女性の職場復帰にはさまざまな困難が伴うと考えられていますが、いかがですか?
斉藤さん:復帰からちょうど1年になりますが、私の場合は一切ストレスなく復帰することができました。私は経理で給与計算を担当していて、出産前は私ひとりでアプリケーションソフトを使って業務をおこなっていたんですね。
出産にあわせて休暇をとりたい旨を伝えたところ、会社側がアウトソーシングの会社と契約し、派遣スタッフを雇い入れるなど、産休に備えた体制を整えてくれました。戻ってきて、今はまた、同じポジションで同じ仕事をしています。

他の部署でも復帰したものはいます。パタゴニアでは育児のための休暇をとるのはごく普通のこと。まわりの人はそれに対して過剰に反応するわけでもなく、普通に接してくれるので、本人も必要以上に負担に感じることもないと感じています。
それに、育児支援のための制度は他にもあります。
保育園料を補助する目的で助成金を支給するのもそのひとつ。条件は、1年以上の勤務実績があり、共働きで、認可の有料施設(保育園や学童)に子どもを預けていること。申請さえあれば、全員に支給。
小さな子どもほど、支給額は高くなりますが、最高でひと月2万4000円。10歳までが対象となり、10歳児の場合はフルタイム勤務のスタッフなら8000円、パートタイム勤務のスタッフで4000円支給しています。
‐女性にとっても男性にとっても働きやすい環境!パタゴニアさんは全世界に拠点をお持ちですが、これらは日本独自の制度?
斉藤さん:はい。アメリカの本社では、また別の形の支援をおこなっています。本社にはチャイルドケアセンターがあり、専任のスタッフが常駐し、オーガニックフードの食事を提供、年齢別の学習プログラムを整備しています。
子どもと一緒に通勤、仕事が終わったらピックして帰ることもできるし、昼休みには一緒に食事をすることができるんですよ。
アメリカの施設は以前からあったものなので、それに近づきたい!と日本では育児休暇や助成金の制度をつくったんです。
女性も社会に出て成功する機会を与えられるべきだし、女性が子どもを産む決心をしたときに、貴重な人材を失うことは組織として懸命なことではありませんから。
藤井さん:すべては社員の『クオリティ・オブ・ライフ』を尊重するためのものなんです。
というのも、パタゴニアは『最高の製品を作り、環境に与える不必要な悪影響を最小限に抑える。そしてビジネスを手段として環境危機に警鐘を鳴らし、解決に向けて実行する』ことをミッション・ステートメントに掲げています。
その冒頭部分「最高の製品を作り」、そのためにどうしたらいいか?
『最高の製品をつくって、お客様に伝えていくには社員の生活のクオリティを高めることが必要』とパタゴニアは考えるんですね。
そして、社員の生活のクオリティをあげるためには、会社として何ができるか?そのひとつとして、好きなことに打ち込める時間を持って貰うこと。たとえば、環境に興味がある人は環境活動に打ち込めたらいい、性別を問わずしっかり育児をおこなえたらいい、勤務時間中でも波のいい日はサーフィンをしに行けたらいいって。

‐社員の『クオリティ・オブ・ライフ』を高めるためにつくられた制度や規則なんですね。
塚本さん:そのとおりですね。勤務中にアウトドア活動ができるというのもそのひとつ。9時から18時が勤務時間として定められてはいますが、お昼や夕方陽が沈む前にサーフィンに行く社員もいます。それを誰もとがめない。鎌倉のオフィスはシャワールームとボード置き場があります。直営店もほとんどの店舗にシャワーが完備されています。
走りに行く人も入れば、自分のやっているアウトドア・スポーツの遠征のため、数週間休みをとる人もいます。他にも冬はアウトドアを満喫して、夏だけ働くスタッフも。
パタゴニアはライフスタイルにあった働き方ができる会社
やりたいことをやることができますね。それがスポーツの人もいれば、子育ての人もいる。環境活動の人もいれば、アート系の人もいる。写真を撮る人も、絵を描く人もいます。
‐他にも、クオリティ・オブ・ライフを象徴する制度はありますか?
斉藤さん:引越し補助もそうかな。
通勤時間が短くなるか、通勤費が安くなる場合、引越し距離に応じて最高で15万までの補助をするんですね。近くに引っ越せば、通勤時間が短くなる分、プライベートに時間を費やせます。住んでいる地域と会社が同じ地域であれば、一住民として、もっと地域に根ざして仕事も生活も考えることができますからね。
パタゴニアの制度は、社員が自分の生活のより充実させ、そのクオリティを保っていく、さらにはクオリティを高めていくために、会社としても真摯に取り組んでいきたいという姿勢の表れです

ヒューマンリソーセス:藤井 真裕子(ふじい まゆこ)…パタゴニア地方のあるアルゼンチンに留学経験あり。人事担当スタッフ。(写真上)
経理:斉藤 布実(さいとう ふみ)…パタゴニアの経理を担当する2歳児のママ。(写真下)
マーケティング:塚本 真弓(つかもと まゆみ)…広報/スポーツ・マーケティング担当。柏から4ヶ月間、通勤を続けた後、鎌倉に移住。引越し手当ての経験者。
ミッション・ステートメントを体現するインターンシップ制度
【パタゴニア ミッション・ステートメント】
『最高の製品を作り、環境に与える不必要な悪影響を最小限に抑える。
そしてビジネスを手段として環境危機に警鐘を鳴らし、解決に向けて実行する』
‐まず、ミッション・ステートメントの意味するところを教えてください。
藤井さん:まずひとつめの要素「最高の製品を作り」についてお話します。
パタゴニアは創立者であるイヴォン・シュイナード、彼自身がクライミングをするときに使っていたピトンを、周囲の知人に売るところからビジネスをスタートしました。ピトンには知人であるクライマーの命が懸かります、だから、ピトンを作って売る時は、必然的に、より高いクオリティを追求しました。そこにパタゴニアのものづくりの原点があるんですね。
ビジネスがアウトドアウェアへと移った時も、そのクオリティへのこだわりは引継がれました。これが「最高の製品を作り」です。
続いてふたつめ「環境に与える不必要な悪影響を最小限に抑える」。
パタゴニアには私自身もそうなのですが、自然の中で遊ぶことが好きな人が多い。遊ぶことを通して、海が汚れていたり、山中のフィールドが荒れていることに気が付くことも多々あるんですね。ウエアを作ることも、自然の中で遊ぶことも少なからず自然への影響を与えてしまう。ただ、そういう悪影響を自分たちが大好きなアウトドアフィールドに与えないよう最小限に抑えていきたいと考えています。
そして「ビジネスを手段として環境危機に警鐘を鳴らし、解決に向けて実行する」。
自然環境のために出来ることはたくさんありますが、パタゴニアでは、『アウトドアウェアをつくる』というビジネスを手段として、今の環境の危機になんらかの警鐘をならし行動を起こしていきたいと思っています。
‐実際にはどのような活動を?
藤井さん:全世界のパタゴニアでは環境インターンシップというプログラムを導入しています。
社員が最長で2ヶ月間、自身が興味のある環境団体にインターンシップとして参加できるという制度です。もちろん有休で。
希望者は、なぜ行くのか?何がやりたいか?仕事にどう生かせるのか?など書類に記入をして応募します。そして全世界の希望者の中から選ばれるんです。パタゴニアにはボランティアの活動に参加するためのファンドがあり、参加者のインターン期間の給与はそこから支給されます。その予算枠がある限りインターンシップに送り出すんです。
塚本さん:そして参加の条件は、戻ってきたら必ず「スピーク」すること。普段からパタゴニアでは閉店後に、直営店店内で入場無料で興味のある方なら誰でも参加できるイベントを開催しているんです。ゲストスピーカーを招くことも多いですが、インターンシップ参加者もこの場で報告を兼ねてスライド&トーク・ショーを行なっています。
日本でも参加したスタッフがこれまでに2人いますよ。ひとりは北海道ニセコの尻別川に生息する野生のイトウを絶滅の危機から保護する「尻別川の未来を考える オビラメの会」で2ヶ月、もうひとりはサーフライダーの視点で海岸線を守ることを目的とした非営利団体「サーフライダーファウンデーションジャパン」で1ヶ月活動して帰ってきました。ふたりとも自身がフライフィッシャーだったり、サーファーでありながら大学院で海洋工学を専攻後に海岸のエンジニアとして勤務した経験があるなどのバックグラウンドがありました。

‐社員が他団体にボランティアで参加することの会社としてのメリットは?
塚本さん:会社が外部とつながりをもった活動をしていくきっかけになりますね。団体の内部事情にも事業概要にも精通した社員がいるわけですから、その1〜2ヶ月では終わらずに、その後も関係が続きます。
「尻別川の未来を考える オビラメの会」については、日本だけでなくパタゴニアのアメリカ本社はもちろん、グローバルな展開に広がりました。昨年の春からは、野生のサケ・マスとその生態を守る団体を3つピックアップして、寄付つきのTシャツを全世界で販売していますが、そのうちの1つに日本の「オビラメの会」が選ばれたのです。全世界でこのTシャツの売上一枚につきUS$5をそれぞれの団体に寄付するものです。半年で「尻別川の未来を考える オビラメの会」には約160万円の助成金を寄付することができました。
‐なるほど。「ビジネスを手段として環境危機に警鐘を鳴らし、解決に向けて実行」を体現しているわけですね。
塚本さん:もうひとつ昨年11月から新たな取り組みをはじめています。このインターンシップの一環なのですが、「コンセルバシオン・パタゴニカ: 南米パタゴニア原生地域保全活動/パタゴニア地方国立公園設立プロジェクト」
これはパタゴニア地方の一角を買い上げて、羊の放牧のために立てた杭や、人家など、人工の造作物を取り除き、生態系を元通りの野生の姿に戻した後、チリとアルゼンチンの国に帰して国立公園にしようというプロジェクト。
こちらも全世界の従業員から応募を募り、選ばれた6名ずつが3週間ボランティアに行きます(年に数回)。このプログラムも帰ってきてから活動報告をすることが必須条件です。直営店での報告会を開いたり、このようなパンフレットを作成したり。

斉藤さん:日本で第1号となったスタッフは営業部の西日本担当・営業マンなんですね。だから、パンフレットを配って営業先でもスピークしているようですよ。
藤井さん:環境活動やっていますよってお金をかけて広告をだすのではなく、社員を実際にチリのボランティア活動に送り込むところにお金をかけるんですね。そして社員の口からその経験を自由にお客様や周囲の人に伝えてもらう。パタゴニアを通してお客様も環境を考えるきっかけとなればいいですよね。
‐社員がパタゴニアで働きながらよりよい生活を送るために、アウトドアや環境に取り組めるようさまざまなサポートをなされているわけですね。
藤井さん:育児制度も環境インターンシップも制度や施策にすることは、社員のクオリティ・オブ・ライフを高めるため、そしてビジネスを通じて環境危機に警鐘を鳴らすための会社から社員への働きかけなんです。
社員からあがってくる声を施策や制度に落とし込むこともありますよ。たとえばアースデイ・イベントへの参加、これもひとりの社員が参加したいと進言したことがスタートです。
ミッション・ステートメントを実現するために、クオリティ・オブ・ライフを高めるために、自分たちに今できることは何かと、それぞれが頭を働かせながら、いろいろなアクションを起こしています。







