三行提報【株式会社サトー】
会社の基盤を支える30年の歴史を持つ制度
毎日3行の提案型日報「三行提報」

株式会社サトー
所在地/東京都渋谷区恵比寿1丁目21番3号 (恵比寿NRビル)
設立/1951年5月16日
従業員数/連結:3,330名、単体:1,221名
資本金/6,331,031,908円(2007年3月31日現在)
「DCS(データ・コレクション・システムズ) & Labeling」を事業コンセプトに掲げる。バーコードをはじめとする自動認識技術を用いて、プリンタ、スキャナ、周辺機器、ソフトウェアやラベル、リボン、カードなどのサプライ製品、保守サービスまでのトータルソリューションを提供する。
―「カジュアルデー」「非喫煙手当」など、今では導入企業も多い制度を、いちはやく取り入れたとお伺いしています。そのきっかけとなった、御社のカルチャー「三行提報」について教えてください。
西山氏:三行提報がスタートしたのは1976年です。もう30年経ちますね。弊社ではそれまで、全社員が日報をつけていました。日報の主な目的は部下の日々の業務を管理すること。それをもとに日々の指示を出していました。けれども、それだけでは会社は大きくなっていきません。「こうしたほうがいい」「こういうことがやりたい」という社員からの自主的な提案を吸い上げ、よいものがあったら取り入れていく仕組みはないかと考えました。その結果、日報を3行の提案を書く形に変えることになりました。量が多いと毎日書けませんから3行で。文字数で127文字です。
―127文字では3で割れませんよね!?よく質問を受けるのでは?
西山氏:そうなんです(笑)。最初は社長宛だったもので「社長殿」という決まり文句からはじまったので、割り切れない数字になっているのだと思います。
そして当時は短冊のようなラベル用紙に書いていました。複写式になっていて1枚目を手元に残し、2枚目を秘書室に送るのです。回収したものは秘書室の人がすべて目を通し、社長に提出するものを用意された大きな紙に貼りつけます。その際にいちいち糊を塗ってはいられませんから、2枚目はラベルになっていたんです。
―事業と直結!ラベルメーカーさんならではですね。現在はすべて社内のイントラネットに集約されているそうですが、どのような変遷を辿って来られたのでしょうか。
西山氏:全社にパソコンが行き渡ったのがちょうど10年ぐらい前。その頃には社員数も800名ぐらいになっていましたがラベルでの三行提報を続けていました。毎日800枚ぐらいを集めて、提出率を集計していたんです。社長にあげたのが◯、出さなかったのが△、こなかったのが×というふうに。そして毎月〆のときに全社員分をカウントして提出率をだしていました。
―大変地道な作業ですね。すべて手作業ですよね。
西山氏:そうですよ。800名分ぐらいが毎日全国から郵送されてくるんです。期限前は速達で送られてくることも。朝出勤するとドッサリ届いているわけです。それを日毎に仕分けして、秘書室のスタッフは「今日は何日付け提報を見ましょう」という具合にすべてに目を通していました。経営者に渡すわけですから、誤字があれば秘書室で修正してね。この作業を20年近く続けてきたのですが、さすがにもう処理しきれないということで約10年前にシステムに切り替えました。
現在では、日ごとに120〜130文字の入力することができます。提出の有無も提出率もすべてわかります。数年前からは、メールで送れるだけではなく、データベースに蓄積をはじめました。検索も可能なので、面白いアイデアを抽出したいときにも役立っていますね。
―現在も秘書室の方がチェックを?
西山氏:毎日やっていますよ。その中で有効とチェックが入ったものを経営者が見ることになります。いまは海外からも英語で届いています。
―30年もの歳月を経れば、システム化だけではなく、制度自体も変化があったのでは?
西山氏:「出さない人は罰金」という時期もありましたね。すると、三行提報は提案をあげる制度ですから、やっていること自体はきわめて前向きなのに、出さないと罰則が課されるとなると逆に提出率が下がってしまったんです。当時提出率は50%程度でしたが、もっと下がりました。
そんな中、罰金を徴収するのではなく、提出されたら賞金を与えることに変えました。そうすると提出率はどんどんあがって。現在は99.9%ぐらいになりました。もちろん、システム化したことや、社長ではなく担当者にも送るようになって身近な提案でも受け容れられるようになったということも、その一因にはなっています。
現在はポイント制をとっていて、出すと5ポイント、遅れて出すと3ポイント、社長にあがると10ポイント。年間の最優秀賞やチームごとの賞もあります。賞与には直結しませんが、100%提出していないと昇進はできません。
―三行提報から生まれた「毎日がカジュアルデー」について教えてください。
西山氏:カジュアルデーも三行提報の中に書かれた意見が気づきとなって、当事の社長のひと声で生まれました。1997年10月に女性の制服が撤廃となり、であれば男性もカジュアルにしようと1998年7月からはじまりました。もちろん、最初はドレスコードを設けようという話もあったんですよ。でも、これはいけないという禁止をつくるのではなく、社内報で「ベストドレッサー賞」を設け特集を組むなど、工夫をすることで回避をしました。社長がマイナスではなくプラスに転換する思想の持ち主でしたから、制度もそのように決定していったんですね。
「非喫煙手当」も同様です。喫煙者を罰するのではなく、非喫煙者に奨励金を与えることで非喫煙を促したほか、事務所内は分煙しました。喫煙者か否かは自己申告制。やめましたといえば手当てが支払われます。
―そのほかに、御社にはどういう制度がありますか?
西山氏:「おつかれさまです」禁止とか。社内で「おつかれさまです」と挨拶すると、「おつかれさまです」と返ってきて会話が続きませんよね。でも、「おつかれさまです」が禁止になると、「こんにちは、これからどこ行くの?」というようにコミュニケーションに発展しやすくなるんです。
高橋さん:コミュニケーションで言うと、「交流会費」は新しい制度ですね。社内だけでなく社外の人も含めて周囲の人との交流は大切というところから生まれた制度です。いろんな人と会って交流しなさいという意図で、年間12回まで1回の上限は2,000円で領収書をきることができます。
―最後にお聞きします。御社にとって「三行提報」はどういう役割を果たしていらっしゃいますか?
西山氏:文章を書く教育にはなっていると思います。起承転結でまとめて人に伝える訓練にもなりますから。また毎日ですから、題材を探すのには必死になりますよ。それが自然といろんなものに気づく人へと成長させるのです。
そして、間違いなく経営の根幹になっていますね。さまざまな文化がここから生まれてきていますから。
制度にしてもシステムにしても1回つくったらOKではなく、どんどん変えていくことも大切です。
三行提報も提案制度。まずはあがってきた提案をやってみよう、ダメだったらまた次をやってみる、失敗したら変えればいいと、前向きなサイクルの中で、変わっていけばいいんです。これを続けるという強い意思があれば、少しずつ変化を積み重ねながら、30年でも継続は可能ですよ。
株式会社 サトー
経営企画本部 総務部長
西山裕(にしやま ゆたか)
1983年に(株)サトーに入社してから2002年まで秘書室に所属し、秘書業務の傍ら三行提報制度のシステム構築から運営までに関わり、ナレッジマネジメントの分野を研究する。その後総務部に転じて現在は法的な分野は勿論、会社の制度や文化に関わる業務に従事している。
株式会社 サトー
経営企画本部 広報CSR部主任
高橋 由記(たかはし ゆうき)
大学でグラフィックデザインを学び、1999年に(株)サトーに入社。シール・ラベル本部の東京デザインセンターに配属、8年間シール、ラベル、ポイントカード、チケット、リーフレット等のデザイン作成を行うグラフィックデザイナーとして従事。2007年4月より現部署へ異動。







