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被用者のセクハラと会社代表者の行為についての損害賠償責任

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石下雅樹法律・特許事務所 第45号 2010-03-24
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1 今回の判例  被用者のセクハラと会社代表者の行為についての損害賠償責任
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H21.10.16 大阪地裁判決

 会社の従業員であったX氏は、同社の社員(上司)であるA氏からセクハラ行為を受け
ました。
 
 X氏は、会社の統括者に、上記のセクハラ行為について訴えたにもかかわらず、会社は
十分な調査も行わず、X氏の誤解に過ぎないと結論づけました。
 
 そこでX氏は、セクハラ行為を行ったA氏と、会社の双方に損害賠償を求めて提訴しま
した。

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2 判決の概要
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 裁判所は、以下のように判断しX氏の訴えを基本的に認めました。

(1)A氏について
 不法行為民法709条)に基づき、X氏の損害を賠償すべき

(2)会社について
 (ア)使用者責任民法715条)に基づき、X氏の損害を賠償すべき
    (従業員A氏の行為の責任を会社が負う。)
  
 (イ)代表者の行為についての損害賠償責任会社法350条)に基づき、
    X氏の損害を賠償すべき
    (会社代表者が必要な措置を講じなかった行為の責任を会社が負う。)

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3 解説
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 本マガジンの37号(セクハラによる解雇と懲戒処分の選択)では、主に会社が懲戒処分
を行う際のプロセスに焦点を当てて解説しました。

 今回は、会社におけるリスクマネジメントといった観点から、セクハラ行為に対する会
社の対処について考えます。

【社員のセクハラ行為と会社代表者の責任】

 会社が負う責任について判示した判例といえば、これまで、会社の「従業員」がセクハ
ラ行為を行った場合に、「会社」が使用者責任民法715条)を負うとされたものや、会社
の「代表者」自身のセクハラ行為について、会社が損害賠償責任会社法350条)を負うと
されたものが主でした。

 他方、本判決では、上のとおり、会社の「従業員」によりセクハラ行為がおこなわれた
事案であったにもかかわらず、会社の「代表者」の行為についての損害賠償責任会社法
350条)が肯定されました。つまり、裁判所は、セクハラ行為が発生した場合に、会社の代
表者が業務執行機関として侵害の発生・拡大の防止のために適切な措置を執らなかったと
いう不作為行為につき、会社の損害賠償責任を認めました。

【会社の取るべき方策】      

 男女雇用機会均等法により、セクハラ防止は会社の義務とされていますし、以上のとお
セクハラ行為に関する会社の責任は厳格になり得るとはいえ緩和されることはないでし
ょう。多くの会社においては、セクハラ防止のための組織・体制や規則の整備が進められ
ていると思われますが、昨今の判例の動向を考慮するならば、これら規則類が実効性を持
つような方策を取ることが望まれるといえます。

・相談・苦情への対応
 本判決では会社のセクハラ行為に関する事実関係の調査が不十分であり、加害者に対す
る適切な処置を怠ったことについて、義務違反があるとされています。
 それで、会社内で、セクハラ行為に関する相談窓口を設けること、相談・苦情が寄せら
れた場合には、きちんと事実関係の確認を行うことが必要でしょう。

セクハラ行為が生じた場合における事後の迅速かつ適切な対応
 セクハラ行為の事実が確認された場合には、加害者に対する適切な懲戒等の措置を講じ
る必要があるかもしれません。さらに、被害者と加害者を引き離すための配置転換、加害
者の謝罪、被害者の労働条件上の不利益の回復(セクハラ行為に対する被害者の対応を理
由に、被害者が解雇、降格、減給等をされていたならばこれらの回復を行う)なども、無
視すべきではないでしょう。

 ハラスメント全般については、すぐに表面化しないケースもあり、対応に苦慮される企
業も多いと思われます。仮に訴訟などに発展した場合は、被害者への損害賠償はもとより
、二次的に発生するかもしれない風評被害なども勘案すると、企業が被る損害は計り知れ
ないものとなる場合があります。

 こうした点について、規程類・防止体制の充実に加えて、現実にハラスメントが発生し
た場合に現実に対応・処理ができるような体制の重要性が認識されるものと思われます。

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