• HOME
  • コラムの泉

コラムの泉

このエントリーをはてなブックマークに追加

専門家が発信する最新トピックスをご紹介(投稿ガイドはこちら

内縁関係、親子、会社法の施行期日ほか

****************************************

     ★★★ 新・行政書士試験 一発合格! Vol. ’06-16 ★★★
           【レジュメ編】 民法(その9〔2〕)

****************************************

■■■ 内縁関係
■■■ 親子
■■■ 会社法の施行期日
■■■ お願い
■■■ 編集後記

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
■■■ 内縁関係
■ 準婚理論:内縁に法律上の婚姻に準ずる効果を認めるべきとする考え方

●● 最高裁判例「慰藉料請求」(民集第12巻5号789頁)
【理由】いわゆる内縁は、婚姻の届出を欠くがゆえに、法律上の婚姻ということはでき
    ないが、男女が相協力して夫婦としての生活を営む結合であるという点におい
    ては、婚姻関係と異なるものではなく、これを婚姻に準ずる関係というを妨げ
    ない。

★★ 内縁に認められる婚姻の効果
(ア) 同居・協力・扶助義務
(イ) 貞操義務
(ウ) 婚姻費用分担義務
(エ) 日常家事債務の連帯責任
(オ) 財産分与
(カ) 第三者の不法行為に対する救済

★★ 内縁に認められない婚姻の効果
(ア) 夫婦同姓
(イ) 相続
(ウ) 子の嫡出
(エ) 親権の発生(非嫡出子の場合は、原則として母親のみ)
(オ) 姻族関係の発生
(カ) 成年擬制

■ 内縁の効果
●● 最高裁判例「慰藉料請求」(民集第12巻5号789頁)
【要旨】
(ア)内縁を不当に破棄された者は、相手方に対し不法行為を理由として損害の賠償を
   求めることができる。
(イ)民法第七六〇条の規定は、内縁に準用されるものと解すべきである。
【理由】そして民法七〇九条にいう「権利」は、厳密な意味で権利と云えなくても、法
    律上保護せらるべき利益があれば足りるとされるのであり、内縁も保護せられ
    るべき生活関係に外ならないのであるから、内縁が正当の理由なく破棄された
    場合には、故意又は過失により権利が侵害されたものとして、不法行為の責任
    を肯定することができるのである。
★ 上記「■準婚理論」の最高裁判例と同一事案。

●● 最高裁判例「損害賠償請求」(民集第17巻1号160頁)
【要旨】内縁の当事者でない者であっても、内縁関係に不当な干渉をしてこれを破綻さ
    せたものは、不法行為者として損害賠償の責任を負う。
【理由】本件内縁の解消は、生理的現象である被上告人(女性)の悪阻による精神的肉
    体的変化を理解することなく、怠惰であるとか、家風に合わぬなど事を構えて
    婚家に居づらくし、里方に帰った被上告人に対しては恥をかかせたと称して婚
    家に入るを許さなかった上告人(男性の父親)らの言動は、社会観念上許容さ
    るべき限度をこえた内縁関係に対する不当な干渉である。

■ 内縁の解消
●● 最高裁判例「財産分与審判に対する抗告審の取消決定に対する許可抗告事件」
  (民集第54巻3号1040頁)
【要旨】内縁の夫婦の一方の死亡により内縁関係が解消した場合に、民法七六八条の規
    定を類推適用することはできない。
【理由】民法は、法律上の夫婦の婚姻解消時における財産関係の清算及び婚姻解消後の
    扶養については、離婚による解消と当事者の一方の死亡による解消とを区別し、
    前者の場合には財産分与の方法を用意し、後者の場合には相続により財産を承
    継させることでこれを処理するものとしている。
    このことにかんがみると、内縁の夫婦について、離別による内縁解消の場合に
    民法財産分与の規定を類推適用することは、準婚的法律関係の保護に適する
    ものとしてその合理性を承認し得るとしても、死亡による内縁解消のときに、
    相続の開始した遺産につき財産分与の法理による遺産清算の道を開くことは、
    相続による財産承継の構造の中に異質の契機を持ち込むもので、法の予定しな
    いところである。また、死亡した内縁配偶者の扶養義務が遺産の負担となって
    その相続人に承継されると解する余地もない。
    したがって、生存内縁配偶者が死亡内縁配偶者の相続人に対して清算的要素及
    び扶養的要素を含む財産分与請求権を有するものと解することはできないとい
    わざるを得ない。
★ 従って、死亡内縁配偶者が生存内縁配偶者に自己の財産を(遺族との紛争を未然に
  回避するべく、法的に有効に)残すには、遺言または死因贈与を行うしかない。

■ 内縁配偶者の居住権
●● 最高裁判例「家屋明渡請求」(民集第21巻1号155頁)
【要旨】家屋賃借人の内縁の妻は、賃借人が死亡した場合には、相続人の賃借権を援用
    して賃貸人に対し当該家屋に居住する権利を主張することができるが、相続
    とともに共同賃借人となるものではない。
★ 賃借権は相続されますが、生存内縁配偶者には相続権がないため、これを継承する
  ことはできない。

●● 最高裁判例「家屋明渡等請求」(民集第18巻8号1578頁)
【要旨】内縁の夫死亡後その所有家屋に居住する寡婦に対して亡夫の相続人が家屋明渡
    請求をした場合、右相続人が亡夫の養子であり、家庭内の不和のため離縁する
    ことに決定していたが戸籍上の手続をしないうちに亡夫が死亡したものであり、
    また、右相続人が当該家屋を使用しなければならない差し迫った必要が存しな
    いのに、寡婦の側では、子女がまだ、独立して生計を営むにいたらず、右家屋
    を明け渡すときは家計上相当重大な打撃を受けるおそれがある等原判決認定の
    事情があるときは、右請求は、権利の濫用にあたり許されないものと解すべき
    である。

●● 最高裁判例「不当利得返還」(民集第52巻1号255頁)
【要旨】内縁の夫婦がその共有する不動産を居住又は共同事業のために共同で使用して
    きたときは、特段の事情のない限り、両者の間において、その一方が死亡した
    後は他方が右不動産を単独で使用する旨の合意が成立していたものと推認され
    る。
★ 内縁開始後に共同で取得した不動産(共有)に係る生存内縁配偶者保護の事案。た
  だし、相続権はないため、当該不動産は死亡した内縁配偶者の相続人との共有にな
  る(→分割請求があった場合には、応じなければならない。)。

■ 死亡退職
●● 最高裁判例「退職金」(民集第34巻6号815頁)
【要旨】死亡退職金の支給等を定めた特殊法人の規程に、死亡退職金の支給を受ける者
    の第一順位は内縁の配偶者を含む配偶者であって、配偶者があるときは子は全
    く支給を受けないことなど、受給権者の範囲、順位につき民法の規定する相続
    人の順位決定の原則とは異なる定め方がされている場合には、右死亡退職金の
    受給権は、相続財産に属さず、受給権者である遺族固有の権利である。
★ 内縁関係にある者に対するアドバイスとしては、必ず死亡した内縁配偶者の勤務先
  の死亡退職金規程を確認すべきことが挙げられる。
  なお、法律で、内縁関係者を含めている場合がある。例えば、厚生年金保険法で
  は、「この法律において、「配偶者」、「夫」及び「妻」には、婚姻の届出をして
  いないが、事実上婚姻関係と同様の事情にある者を含むものとする」(3条2項)
  と規定されている。

■ 重婚内縁関係
形式的な法律婚がなお存続している場合に、内縁関係に入った関係
→ 重婚内縁にも一定の保護を与えるべき(判例・通説)。

●● 最高裁判例「遺族年金却下取消」(民集第37巻3号270頁)
【要旨】戸籍上届出のある妻が、夫と事実上婚姻関係を解消することを合意したうえ、
    夫の死亡に至るまで長期間別居し、夫から事実上の離婚を前提とする養育料等
    の経済的給付を受け、婚姻関係が実体を失って形骸化し、かつ、その状態が固
    定化し、一方、夫が他の女性と事実上の婚姻関係にあつたなど判示のような事
    情があるときは、右妻は、農林漁業団体職員共済組合法二四条一項にいう配偶
    者にあたらない。
【理由】農林漁業団体職員共済組合法二四条一項の定める配偶者の概念は、必ずしも民
    法上の配偶者の概念と同一のものとみなければならないものではなく、本件共
    済組合が給付する遺族給付は、組合員又は組合員であつた者が死亡した場合に
    家族の生活を保障する目的で給付されるものであつて、これにより遺族の生活
    の安定と福祉の向上を図り、ひいて業務の能率的運営に資することを目的とす
    る社会保障的性格を有する公的給付であることなどを勘案すると、右遺族の範
    囲は組合員等の生活実態に即し、現実的な観点から理解すべきであって、遺族
    に属する配偶者についても、組合員等との関係において、互いに協力して社会
    通念上夫婦としての共同生活を現実に営んでいた者をいうものと解するのが相
    当である。


■■■ 親子
■■ 嫡出子
■ 嫡出子
(1)嫡出子婚姻関係にある夫婦から生まれた子

嫡出の推定)
第七百七十二条  妻が婚姻中に懐胎した子は、夫の子と推定する。
2  婚姻の成立の日から二百日を経過した後又は婚姻の解消若しくは取消しの日から
三百日以内に生まれた子は、婚姻中に懐胎したものと推定する。

●● 最高裁判例「子認知請求」(民集第8巻1号87頁)
【要旨】内縁の妻が内縁関係成立の日から二百日後、解消の日から三百日以内に分娩し
    た子は民法第七七二条の趣旨にしたがい内縁の夫の子と推定する。

■ 嫡出否認
第七百七十四条  第七百七十二条の場合において、夫は、子が嫡出であることを否認
することができる。

第七百七十五条  前条の規定による否認権は、子又は親権を行う母に対する嫡出否認
の訴えによって行う。親権を行う母がないときは、家庭裁判所は、特別代理人を選任し
なければならない。

嫡出の承認)
第七百七十六条  夫は、子の出生後において、その嫡出であることを承認したとき
は、その否認権を失う。

嫡出否認の訴えの出訴期間)
第七百七十七条  嫡出否認の訴えは、夫が子の出生を知った時から一年以内に提起し
なければならない。

・「1年」の起算点は、父親が否認すべき子の出生を知った時と解する判決が多い(1
 年経過後に、他の男性の子であることが判明するような事態に対応するため)。

■ 推定の及ばない子(表見嫡出子
形式的には772条に該当するが、その推定が及ばない子。

●● 最高裁判例「認知請求」(民集第23巻6号1064頁)
【要旨】離婚による婚姻解消後三〇〇日以内に出生した子であっても、母とその夫とが、
    離婚の届出に先だち約二年半以前から事実上の離婚をして別居し、まつたく交
    渉を絶って、夫婦の実態が失われていた場合には、民法七七二条による嫡出
    推定を受けないものと解すべきである。
★ 772条の推定が不自然に思われる場合(夫の海外赴任、服役、事実上の離婚等)に
  は、夫からの嫡出否認を待つまでもなく、実の父親に対する認知請求ができる。そ
  れ以外の場合には、嫡出の推定が及ぶ(→外観説)。
★ ただし、戸籍事務担当者には実質審査権がないので、推定の及ばない子について
  も、戸籍上は夫の嫡出子として届け出られる。

★ 親子関係不存在確認訴訟
民法に明文の規定はないが、判例によって認められてきた。

■ 推定されない嫡出子
戸籍の実務:婚姻成立後200日以内に生まれた子も、一律に嫡出子として取扱う(戸籍事
務担当者には実質審査権がないため、内縁関係が先行しているか(この場合には、判例に
より、推定される嫡出子となる。)どうかを判断できないため)。

●● 最高裁判例「認知請求」(民集第20巻2号202頁)
【要旨】婚姻成立の日から二〇〇日以内に生まれた子は、婚姻に先行する内縁関係の成
    立の日から二〇〇日後に生まれたものであつても、民法第七七二条所定の嫡出
    の推定は受けない。
★ 推定される嫡出子となるためには、必ず婚姻中に懐胎することが必要である。婚姻
  後200日以内に生まれた子は、戸籍上は嫡出子として取扱われるが、あくまでも推
  定されない嫡出子であるため、誰からでも親子関係不存在確認訴訟で争うことがで
  きる。

■ 準正
第七百八十九条  父が認知した子は、その父母の婚姻によって嫡出子の身分を取得す
る。
婚姻中父母が認知した子は、その認知の時から、嫡出子の身分を取得する。

婚姻準正(第1項):婚姻前に父親が認知していた場合
婚姻の時から嫡出子の身分を取得する。
認知準正(第2項):婚姻後に父親が認知した場合
認知の時から嫡出子の身分を取得する。ただし、学説には、婚姻準正に比べて不公平
 であるとして、批判がある(同様に、婚姻の時に遡るべき)。

■■ 非嫡出子
■ 父子関係と認知
(1)認知能力
第七百八十条  認知をするには、父又は母が未成年者又は成年被後見人であるときであ
っても、その法定代理人の同意を要しない。

→原則として、本人の同意も不要。
〔例外〕
(成年の子の認知
第七百八十二条  成年の子は、その承諾がなければ、これを認知することができない。

(胎児又は死亡した子の認知
第七百八十三条  父は、胎内に在る子でも、認知することができる。この場合において
は、母の承諾を得なければならない。

★ 血縁関係にない者を嫡出子として届け出ても、それにより認知としての効力はそも
  そも生じない。


■ 認知の方式
第七百八十一条  認知は、戸籍法の定めるところにより届け出ることによってする。
認知は、遺言によっても、することができる。

●● 最高裁判例「貸金」(民集第32巻1号110頁)(嫡出でない子につき父がし
   た嫡出子出生届又は非嫡出子出生届認知の効力はどうなるか?)
【要旨】嫡出でない子につき、父から、これを嫡出子とする出生届がされ、又は嫡出
    ない子としての出生届がされた場合において、右各出生届が戸籍事務管掌者に
    よって受理されたときは、その各届は、認知届としての効力を有する。

■ 認知に対する反対の事実の主張
第七百八十六条  子その他の利害関係人は、認知に対して反対の事実を主張することが
できる。

●● 最高裁判例「子の認知無効宣言請求」(民集第7巻6号787頁)
【要旨】認知の判決が正当な当事者の間に確定している以上、該判決は第三者に対して
    も効力を有するから、これに対し再審の手続で争うのは格別、もはや第三者も
    反対の事実を主張して認知無効の訴を提起することはできない。

■ 母子関係と認知
●● 最高裁判例「親子関係存在確認請求」(民集第16巻7号1247頁)
【要旨】と非嫡出子間の親子関係は、原則として、母の認知をまたず、分娩の事実によ
    り当然発生する。

■ 強制認知
第七百八十七条 子、その直系卑属又はこれらの者の法定代理人は、認知の訴えを提起
することができる。ただし、父又は母の死亡の日から三年を経過したときは、この限りでない

→ 訴訟によって、強制的に父子関係を確定する制度(母子関係は認知を要しないため、
  確認訴訟になる。)
→ 戸籍上、他人の嫡出子として記載されていても、いきなり真実の父に対して認知
  訴えを提起することもできる。

●● 最高裁判例「認知請求」(民集第8巻4号861頁)
【要旨】認知の訴は、現行法上これを形成の訴と解すべきものである。
★ 判決によって、父子関係が法的に形成されることになる。

●● 最高裁判例「認知請求」(民集第22巻8号1733頁)
【要旨】未成年の子の法定代理人は、子に意思能力がある場合でも、子を代理して、認
    知の訴を提起することができる。

→ 認知の訴えは、父親の生存中は出生後いつでも提訴できる。ただし、死後は3年を
  経過するまでに制限される。なお、死後認知の場合の被告は検察官になる。

●● 最高裁判例「子の認知請求」(民集第9巻9号1122頁)
【要旨】
(ア)民法第七八七条但書の規定は、憲法第一三条に違反しない。
(イ)民法第七八七条但書の規定は、認知の訴の提起に関し、すべての嫡出でない子に
   つき一律平等にその権利の存続期間を制限したものであり、その間に差別を加え
   たものではない。

●● 最高裁判例「認知請求」(民集第23巻11号2290頁)
【要旨】民法七七二条の類推適用により父性の推定を受ける子についても、認知の訴の
    提起にあたっては、出訴期間の制限に関する同法七八七条但書の適用がある。
【理由】民法七八七条但書の規定が、認知の訴の出訴期間を、父または母の死亡の日か
    ら三年以内と定めているのは、父または母の死後も長期にわたって身分関係を
    不安定な状態におくことによって身分関係に伴う法的安定性が害されることを
    避けようとするにあり、民法がこの制限に対して特段の例外を認めていない。

●● 最高裁判例「認知」(民集第36巻3号432頁)
【要旨】父の死亡の日から三年一か月を経過したのちに右死亡の事実が子の法定代理人
    らに判明したが、子又はその法定代理人において父の死亡の日から三年以内に
    認知の訴えを提起しなかつたことがやむをえないものであり、また、右認知
    訴えを提起したとしてもその目的を達することができなかつたことに帰すると
    認められる判示の事実関係のもとにおいては、他に特段の事情がない限り、民
    法七八七条但書所定の認知の訴えの出訴期間は、父の死亡が客観的に明らかに
    なった時から起算すべきである。

●● 最高裁判例「子認知請求」(民集第8巻1号87頁)
【要旨】内縁の妻が内縁関係成立の日から二百日後、解消の日から三百日以内に分娩し
    た子は民法第七七二条の趣旨にしたがい内縁の夫の子と推定する。

→ 内縁関係の夫婦の子も、法的に父子関係を発生させるためには、父親の認知が必要
  である。ただし、父親であることに立証を容易にするため、772条2項の類推をし
  て、父子関係を推定している。

■ 認知請求権の放棄
●● 最高裁判例「認知請求」(民集第16巻4号693頁)
【理由】子の父に対する認知請求権は、その身分法上の権利たる性質およびこれを認め
    た民法の法意に照らし、放棄することができないものと解するのが相当である。
    また、認知請求権はその性質上長年月行使しないからといつて行使できなくな
    るものではない。

■ 認知の効果
第七百八十四条  認知は、出生の時にさかのぼってその効力を生ずる。ただし、第三
者が既に取得した権利を害することはできない。

●● 最高裁判例「土地持分所有権確認等」(民集第33巻2号294頁)
【要旨】母の死亡による相続について、共同相続人である子の存在が遺産の分割その他
    の処分後に明らかになったとしても、民法七八四条但書、九一〇条を類推適用
    することはできない。
【理由】母子関係が存在する場合には、認知によって形成される父子関係に関する民法
    七八四条但書を類推適用すべきではない。

■■ 親権
■ 親権の内容
(1)身上監護権居所指定権(821条)、懲戒権(822条)、職業許可権(823条)等
(2)財産管理権
(3)経済的扶養

■ 離婚に伴う子の引渡
★ 父母が離婚をするときは、その協議で、その一方を親権者と定めなければなりませ
  ん(819条1項)。必ず「その一方」を親権者として定める必要があることから、
  紛議が生じます。また、婚姻は既に破綻し、離婚前に別居している場合には、いず
  れもが親権者であるため、問題は複雑化します。

●● 最高裁判例「幼児引渡請求」(民集第17巻8号968頁)
【要旨】いわゆる幼児引渡の請求は、幼児に対し親権を行使するにつきその妨害の排除
    を求める訴であるから、これを認容する判決は憲法第一三条となんら関係がな
    い。
★ 憲法13条に定める個人の尊厳を侵害しない。

●● 最高裁判例「人身保護」(民集第47巻8号5099頁)
【要旨】夫婦の一方が他方に対し、人身保護法に基づき、共同親権に服する幼児の引渡
    しを請求する場合において、幼児に対する他方の配偶者の監護につき拘束の違
    法性が顕著であるというためには、右監護が、一方の配偶者の監護に比べて、
    子の幸福に反することが明白であることを要する。
★ 従来は「夫婦のいずれに監護せしめるのが子の幸福に適するか」という比較考量基
  準を採用していたが、人身保護法で違法となるには「子の幸福に反することが明白
  である」という明白性基準を課すに至った。

●● 最高裁判例「人身保護」(民集第48巻3号992頁)
【要旨】夫婦の一方が他方に対し、人身保護法に基づき、共同親権に服する幼児の引渡
    しを請求するに際し、他方の配偶者の親権の行使が家事審判規則五二条の二の
    仮処分等により実質上制限されているのに右配偶者がこれに従わない場合、又
    は幼児が、一方の配偶者の監護の下で安定した生活を送ることができるのに、
    他方の配偶者の監護の下においては著しくその健康が損なわれ、若しくは満足
    な義務教育を受けることができないなど、他方の配偶者の幼児に対する処遇が
    親権の行使という観点からも容認することができないような例外的な場合に
    は、幼児が他方の配偶者に監護されることが一方の配偶者による監護に比べて
    子の幸福に反することが明白であるものとして、約束の違法性が顕著であると
    いうことができる。
★ このような例外的な場合を除き、今日では、人身保護法による請求が認められるこ
  とはなく、家庭裁判所での処理に委ねられている。

●● 最高裁判例「人身保護」(民集第48巻7号1337頁)
【要旨】子の監護権を有する者が監護権を有しない者に対し、人身保護法に基づき幼児
    の引渡しを請求する場合には、幼児を請求者の監護の下に置くことが拘束者の
    監護の下に置くことに比べて子の幸福の観点から著しく不当なものでない限
    り、拘束の違法性が顕著であるというべきである。
【理由】法律上監護権を有しない者が幼児をその監護の下において拘束している場合
    に、監護権を有する者が人身保護法に基づいて幼児の引渡しを請求するとき
    は、請求者による監護が親権等に基づくものとして特段の事情のない限り適
    法である。
    この場合、拘束者による監護は権限なしにされているものであるから、被拘
    束者を監護権者である請求者の監護の下に置くことが拘束者の監護の下に置く
    ことに比べて子の幸福の観点から著しく不当なものでない限り、非監護権者に
    よる拘束は権限なしにされていることが顕著である場合(人身保護規則四条)
    に該当し、監護権者の請求を認容すべきものとするのが相当である。
★ 監護権のない者から監護権者に対する引渡請求が認められ得るのは、例外的な場合
  に限られる。

■ 財産管理
第八百二十四条  親権を行う者は、子の財産を管理し、かつ、その財産に関する法律
行為についてその子を代表する。ただし、その子の行為を目的とする債務を生ずべき
場合には、本人の同意を得なければならない。

(父母の一方が共同の名義でした行為の効力)
第八百二十五条  父母が共同して親権を行う場合において、父母の一方が、共同の名
義で、子に代わって法律行為をし又は子がこれをすることに同意したときは、その行為
は、他の一方の意思に反したときであっても、そのためにその効力を妨げられない。た
だし、相手方が悪意であったときは、この限りでない。

■ 利益相反行為
第八百二十六条  親権を行う父又は母とその子との利益が相反する行為については、
親権を行う者は、その子のために特別代理人を選任することを家庭裁判所に請求しなけ
ればならない。
親権を行う者が数人の子に対して親権を行う場合において、その一人と他の子との
利益が相反する行為については、親権を行う者は、その一方のために特別代理人を選任
することを家庭裁判所に請求しなければならない。

→ 特別代理人は、特定の行為についてのみ代理権、同意権を有する。
→ 実際に利害が親子間または子同士の間で対立しているかどうかは問わない。
→ 利益相反行為は無権代理と同じであり、その効果は本人には帰属しない。ただし、
子が成人(能力者)になって追認する場合には、有効となる。

●● 最高裁判例「土地建物所有権移転登記抹消登記手続(本訴)家屋明渡(反訴)請
   求」(民集第22巻10号2172頁)
【要旨】第三者の金銭債務について、親権者がみずから連帯保証をするとともに、子の
    代理人として、同一債務について連帯保証をし、かつ、親権者と子が共有する
    不動産について抵当権を設定するなどの判示事実関係のもとでは、子のために
    された連帯保証債務負担行為および抵当権設定行為は、民法第八二六条にいう
    利益相反行為にあたる。
★ 親権者の債務を直接に担保するものではなくても、「債権者が抵当権の実行を選択
  するときは、本件不動産における子らの持分の競売代金が弁済に充当される限度に
  おいて親権者の責任が軽減され、その意味で親権者が子らの不利益において利益を
  受け、また、債権者が親権者に対する保証責任の追究を選択して、親権者から弁済
  を受けるときは、親権者と子らとの間の求償関係および子の持分の上の抵当権につ
  いて親権者による代位の問題が生ずる等のことが、前記連帯保証ならびに抵当権
  定行為自体の外形からも当然予想される」ことから、利益相反行為に該当する。
★ 利益相反の有無は、当該行為の外形から判断すべきである(外形説)。これに対す
  るのが、行為の動機、目的、結果その他の事情を実質的に考慮して判断すべきであ
  るとする実質説。

●● 最高裁判例「持分移転登記抹消登記手続履行請求」(民集第16巻10号
   2059頁)
【理由】親権者が子の法定代理人として、子の名において金員を借受け、その債務につ
    き子の所有不動産の上に抵当権を設定することは、仮に借受金を親権者自身の
    用途に充当する意図であっても、かかる意図のあることのみでは、民法八二六
    条所定の利益相反する行為とはいえないから、子に対して有効であり、これに
    反し、親権者自身が金員を借受けるに当り、右債務につき子の所有不動産の上
    に抵当権を設定することは、仮に右借受金を子の養育費に充当する意図であつ
    たとしても、同法条所定の利益相反する行為に当るから、子に対しては無効で
    あると解すべきである。

●● 最高裁判例「根抵当権等抹消登記手続」(民集第46巻9号2727頁)
【要旨】
(ア)親権者が子を代理する権限を濫用して法律行為をした場合において、その行為の
   相手方が権限濫用の事実を知り又は知り得べかりしときは、民法九三条ただし書
   の規定の類推適用により、その行為の効果は子には及ばない。
(イ)親権者が子を代理してその所有する不動産を第三者の債務担保に供する行為
   は、親権者に子を代理する権限を授与した法の趣旨に著しく反すると認められる
   特段の事情が存しない限り、代理権の濫用には当たらない。
★ 「親権者が子を代理してする法律行為は、親権者と子との利益相反行為に当たらな
  い限り、それをするか否かは子のために親権を行使する親権者が子をめぐる諸般の
  事情を考慮してする広範な裁量にゆだねられているものとみるべきである」ため、
  子の不動産を第三者の債務担保に供する行為でも、「法の趣旨に著しく反すると
  認められる特段の事情が存しない限り」、代理権の濫用にはあたらない。

●● 最高裁判例「相続回復」(民集第32巻1号98頁)
【要旨】共同相続人の一人が他の共同相続人の全部又は一部の者の後見をしている場合
    において、後見人が被後見人全員を代理してする相続の放棄は、後見人みずか
    らが相続の放棄をしたのちにされたか、又はこれと同時にされたときは、民法
    八六〇条によって準用される同法八二六条にいう利益相反行為にあたらない。
★ ただし、これに反対する説も有力である。

●● 最高裁判例「土地建物所有権移転登記手続請求」(民集第14巻2号279頁)
   (親権者の一方との間に利益相反が生じる場合)
【要旨】親権者たる父母の一方に民法第八二六条第一項にいう利益相反関係があるとき
    は、利益相反関係のない親権者と同項の特別代理人とが共同して子のための代
    理行為をなすべきである。

●● 最高裁判例「土地建物明渡等」(民集第36巻11号2274頁)(特別代理
   との間に利益相反が生じる場合)
【要旨】民法八二六条一項の規定に基づいて選任された特別代理人と未成年者との利益
    が相反する行為については、右特別代理人は、選任の審判によって付与された
    権限を行使することができない。

■ 親権の要件
【1】子
・成年に達しない子は父母の親権に服する(818条1項)。
婚姻による成年擬制の場合は、その例外(753条)。

【2】嫡出子
(1)共同親権共同行使の原則
第八百十八条
親権は、父母の婚姻中は、父母が共同して行う。ただし、父母の一方が親権を行うこ
とができないときは、他の一方が行う。

(2)父母の離婚
第八百十九条 父母が協議上の離婚をするときは、その協議で、その一方を親権者と定め
なければならない。
2 裁判上の離婚の場合には、裁判所は、父母の一方を親権者と定める。
3 子の出生前に父母が離婚した場合には、親権は、母が行う。ただし、子の出生後に、
父母の協議で、父を親権者と定めることができる。

(3)親権の変更
第八百十九条
6 子の利益のため必要があると認めるときは、家庭裁判所は、子の親族の請求によっ
て、親権者を他の一方に変更することができる
★ 当事者間の協議だけで、親権者を変更することはできない。

【3】非嫡出子
(1)母親(明文に規定はない。)→単独親権
(2)父が認知した子に対する親権は、父母の協議で父を親権者と定めたときに限り、
   父が行う(819条4項)。
(3)協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、家庭裁判所は、父
   又は母の請求によって、協議に代わる審判をすることができる(同5項)。
★ 親権者は行為能力者でなければならないと解されているため、非嫡出子の母親が未
  成年者である場合には、その親権者または後見人親権を行う。

■ 親権の終了
(1)子の側の事由
(ア)成年に達すること
(イ)死亡
(ウ)婚姻による成年擬制
(2)親権者の側の事由
(ア)親権者の死亡
(イ)離婚
(ウ)親権喪失
第八百三十四条 父又は母が、親権を濫用し、又は著しく不行跡であるときは、家庭裁判
所は、子の親族又は検察官の請求によって、その親権の喪失を宣告することができる。
→ 親権を喪失しても、親としての固有の権利・義務(子の婚姻に対する同意権扶養
  務、相続権)は存続する。
(エ)親権辞任
第八百三十七条 親権を行う父又は母は、やむを得ない事由があるときは、家庭裁判所
許可を得て、親権又は管理権を辞することができる。


■■■ 会社法の施行期日
先月29日に、会社法の施行期日を定める政令が公布されました。これによれば、予想通
りこの5月1日が施行期日とされています。

これまでの行政書士試験では、4月1日現在で施行されている法律が対象でしたが、今
回に限っては、かつ、商法会社法に限っては、司法試験と同様に例外ということにな
るものと考えられます。

なお、行政書士試験の対象は、新・会社法と(なお存続する)商法が中心となり、一部
関係する限りで整備法(会社法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法)も含まれる
ことになるものと思われます。


■■■ お願い  
継続して発刊するためには読者の皆様のご支援が何よりの活力になります。ご意見、ア
ドバイス、ご批判その他何でも結構です。内容、頻度、対象の追加や変更等について
も、どうぞ何なりと e-mail@ohta-shoshi.com までお寄せください。

質問は、このメールマガジンの趣旨の範囲内のものであれば、大歓迎です。ただし、多
少時間を要する場合があります。


■■■ 編集後記 
今回は親族編です。民法も、後は相続編を残すのみとなりました。この親族・相続編に
属する離婚遺言書作成、遺産分割協議は、契約書作成業務と並んで、行政書士の業務
として、今後、主要な地位を占めるものと考えられます。したがって、どうか最後の力
を振り絞って、民法の最後の山に挑戦してください。この民法という巨大な山を越える
と、後は比較的楽になる筈です。

そして、今回の親族編も(また、次回の相続編も)、様々な事案に対する判例によって
発達した分野であることから、判例は極めて重要です。判例では、どういった要件で、
どのような場合に適用されるのかを再確認してください。

なお、民法は、憲法や行政法等とは異なって、満点あるいは90%以上の得点を目指すべ
き科目でもありません。しかしながら、この親族・相続編に関しては、行政書士業務の
将来を勘案し、必ず得点できるという得意分野にしてください。充分な時間をかけてチ
ャレンジすれば、間違いなく得点源にできる分野です。時間はまだ十分にあります。


***************************************
 マガジンタイトル:新・行政書士試験 一発合格!
 発行者:行政書士 太田誠   東京都行政書士会所属(府中支部)
 発行者Web: http://www.ohta-shoshi.com
 発行者メールアドレス: e-mail@ohta-shoshi.com
 発行協力「まぐまぐ」: http://www.mag2.com/
 登録または解除はこちらから: http://www.ohta-shoshi.com/melmaga.html
***************************************

絞り込み検索!

現在22,378コラム

カテゴリ

労務管理

税務経理

企業法務

その他

≪表示順≫

※ハイライトされているキーワードをクリックすると、絞込みが解除されます。
※リセットを押すと、すべての絞り込みが解除されます。

スポンサーリンク

経営ノウハウの泉より最新記事

スポンサーリンク

労働実務事例集

労働新聞社 監修提供

法解釈から実務処理までのQ&Aを分類収録

注目のコラム

注目の相談スレッド

スポンサーリンク

PAGE TOP