こんにちは。特定社会保険労務士の田中です。
このシリーズでは、給与計算でのイレギュラー事態への対応や、
見落としがちな注意点などをお伝えしていきます。
今回の『勘所』は、「時間外手当」についてです。
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○○○○ 給与計算の基本はダブルチェック ○○○○
専用ソフトで給与計算する際は、次の手順で進めることが多いと思います。
STEP1
当月の残業時間、有休日数、遅刻・早退・欠勤などの支給項目を入力
STEP2
社会保険料や住民税、食費やカフェテリアプランなどの控除項目を入力。
STEP3
リストを印刷して、複数の担当者が1次チェック、2次チェックを行う。
STEP4
ミスがあれば修正の上、給与明細を作成して、従業員に配布する。
さて、給与計算では、習熟した担当者でもミスが無いとは言えませんので、
ダブルチェックが不可欠です。
また、時には従業員自身が給与明細を見て、ミスに気付くこともあります。
いわば、従業員による「セルフチェック」です。
例えば、「先月、子供が生まれたのに家族手当が増えていない。」「残業時間が少ない」などです。(でも、間違えて給与が多く支払われた時は、黙っていることが多いようです・・・)
○○○○ 残業単価のミスは発覚しにくい ○○○○
ところで、担当者によるチェックは当月の変動項目を中心に行うことが多いでしょうし、
通常はそれでも充分だと思います。
また、前述の従業員による「セルフチェック」でもミスが発覚するのは、変動項目がほとんどです。
しかし、ここではもう一歩踏み込んで、水面下に潜んでしまうリスクについて考えてみます。
それは、「残業手当の単価は誤っていないか?」ということです。
残業手当は、次の式で計算されます。
【 残業手当=残業単価×当月の残業時間数 】 …A式
また、A式での「残業単価」は次の式で計算されます。
【 残業単価=月によって定められた賃金÷その月の所定労働時間数 】 …B式
担当者の通常のチェックや、本人の「セルフチェック」でミスに気付くのは、
A式の「当月の残業時間数」です。
一方、「残業単価」は、昇給月には必ずチェックしても、毎月チェックするということは
決して多くないのではないでしょうか。
また、本人は残業単価の算出方法に詳しくないことが多いので、誤っていても気づかないでしょう。
○○○○ 残業単価に本当に間違いはないですか? ○○○○
例えば、残業単価を算出する際に次のような誤りが無いですか?
・全員に一律支給されている住宅手当を残業単価に含めていない。
・エクセルなどの表計算ソフトで残業単価を求める場合、月給を誤って入力している。
・マスター登録した給与額から、残業手当を計算する場合、設定に誤りがある。
・前任者から引き継いだ残業単価の算出方法を、検証せずにそのまま行っている。等々
残業単価の誤りは、水面下に潜むリスクです。ミスがあっても分かりにくいのです。
昇給月にチェックするのみでその後にチェックしないと、もしミスがあっても、
そのまま放置されてしまいます。
そして、間違っていた場合は過去2年間に遡ることになるので大変です。
例えば、10,000円の技術手当を会社の独自ルールで残業単価に含めていない場合、
月に20時間の残業があれば、約1,500円の未払いが発生します。
これが社員100人の2年分だと、約3,600,000円となります。
これは決して小さな額ではないでしょう。
○○○○ どうやってミスを防ぐか… ○○○○
もし、ご心配なら次の手順でチェックをされることをお奨めします。
(③、④は残業単価のチェックではありませんが、同時に行うと良いでしょう。)
① 残業単価の算出に含める給与、含めない給与の別は正しいか?
② 上のB式において「その月の所定労働時間」の設定は正しいか?
(労働基準法 施行規則 第19条では「月によって所定労働時間数が異なる場合には、
1年間における1月平均所定労働時間数」としています。)
③ 割増率の設定は正しいか?
(特に60時間超の割増率の対象となっている場合や、労働組合と法定割増率を超える
協定を結んでいる場合はご注意ください。)
④ いわゆる「法定内残業」での割増率の設定は正しいか?
⑤ 給与計算ソフトで当月の給与から自動計算する場合、設定は正しいか?
(当月の給与÷1月平均所定労働時間数としている場合、途中入社・退社で当月給与が
日割りになる場合があります。この時は残業単価が少なくなってしまいます。)
従業員にとって大事な給与です。ミスのない給与計算をされることを祈っています。
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田中事務所 特定社会保険労務士 田中理文
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