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年休取得の多い社員に事情聴取はできるか?

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 経営・労務管理ビジネス用語の
   あれっ! これ、どうだった?!

   第33回 年休取得の多い社員に
               事情聴取はできるか?

<第43号>      平成22年12月27日(月)
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発行人のプロフィル⇒ http://www.ho-wiki06.com
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こんにちは! 
メルマガ初訪問の皆さま、ありがとうございます。

1週間のご無沙汰でした。
亥年のアラ還、小野寺です。

ある使用者から相談がありました。

社員の1人が、本人の病気の場合だけでなく、家族の怪我、
親の病気、果ては親戚の病気・葬式等々で、

その都度、年休を取って休みがちの社員がいるため、
一度、本人から事情を聴きたいと考えているが
プライバシーに関する事なので、何か問題があるか。

また、虚偽の理由で年休を取得した場合、
何らかの処分ができるのか、ということでした。

今回は、この点について考えてみたいと思います。

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◆◆ 年次有給休暇とその法的効果とは ◆◆

○ 年次有給休暇(以下「年休」という。)については、
労働基準法(以下「労基法」と略す。)第39条に
定められています。

すなわち、使用者労働者を雇入れた日から起算して
6か月間継続して勤務し、かつ、その間の全労働日
8割以上出勤した労働者に対し、継続し又は分割した

10労働日の有給休暇を与えるべき事を
使用者に義務付けております。

この休暇のことを年休といい、
例えば、4月1日に雇入れた場合は6か月経過後の

10月1日付で10労働日(原則として1日単位、1日は
午前0時から午後12時の暦日)の年休を
付与することになります。

○ こうして6か月経過後から1年経過後(通算して
1年6か月経過後)に同様の要件を満たすことにより11労働日

さらに1年後に12労働日が付与され、
最終的に、最短で入社より6年6か月経過後に

20労働日の付与となり、
これが法定の最高付与日数(限度日数)となります。

○ このように年休は、法律(労基法)で定められた休暇であり
決して使用者によって定められ与えられたものではありません。

上記の一定の要件を満たすことによって
労働者に与えられた当然の権利であり、その法的効果は

労働義務のある日に賃金を支払ってもらい、
労働義務を免除される(休暇を取る)ことを意味しています。

なお、使用者によって定められた休暇のことを
一般に特別休暇として括っていることが多いようです。

例えば、冠婚休暇、忌引休暇年末年始休暇夏季休暇等、
最近では裁判員休暇も設定されているようですが、
いずれも就業規則その他準ずるものに規定されています。

従って、これらの休暇と年休とは明確に区分して
定めておく必要があります。

◆◆ 年休取得に決裁(又は承認)は必要か? ◆◆

○ ところで年休を取得する際の手続として、
多くの事業所では書面による申請を義務づけているようです。

これ自体は事務管理上の面から特に問題はありませんが
申請書の押印欄に、総務部長なり社長の決裁(又は承認)欄を

設けている場合が多くみられますが、
年休は決裁等を得なければ取得できないのでしょうか。

この点については従来より学説が分かれていましたが、
昭和48年3月2日に最高裁第二小法廷は、

年休の権利の性格をめぐる争いに、
初めて最高裁としての判断を示しました。
(「国鉄郡山工場事件」)

「労基法39条1、2項の要件が充足されたときは、
当該労働者は法律上当然に右条項所定日数の
年次有給休暇の権利を取得し、使用者はこれを与える義務を負う。

年次有給休暇の権利は・・・労働者の請求をまって
始めて生ずるものではなく、

また同条第4項(現在は第5項)にいう請求とは、
休暇の時季にのみかかる文言であって、その趣旨は
休暇の時季の指定にほかならないものと解すべきである。

・・・右の指定によって年次有給休暇が成立し、
当該労働日における就労義務が消滅するものと
解するのが相当である。

・・・年次休暇の成立要件として、労働者の休暇の請求や
これに対する使用者の承認の観念を容れる余地は
ないものと言わなければならない。」と。

○ つまり、「請求」とは年休を取得する時季の指定のことであり
書面による手続も、会社としての管理上の面からのことで

その書面に年休取得日を記載することが時季の指定となり
承認は単に確認的な意味合いと考えれば良い。

この事は、同条第5項の但書に、労働者が請求した時季に
年休を与えることが

「事業の正常な運営を妨げる場合」には、
使用者時季変更権が与えられていますが、承認印
その確認印と捉えても良いと考えます。

◆◆ 年休取得に理由は必要か。虚偽理由の場合
拒否できるか。 ◆◆

○ 本来、年休の趣旨は、週1回の法定休日のほかに
毎年、一定日数の有給休暇を与えることにより、

労働者に心身の疲労を回復させ、労働力の維持培養を
図ることを目的とするものです。

そして、心身の疲労回復の方法は、個々人によりまちまちであり
労基法にも、利用目的に応じて制限を設ける等の規定はなく

労働者が年休をどのような目的で利用するかは自由です。
また、その利用目的を使用者に告知する義務もありません。

○ 前掲の最高裁判決でも次のように判示しています。

「年次休暇の利用目的は労基法の関知しないところであり
休暇をどのように利用するかは、使用者の干渉を許さない
労働者の自由である、とするのが法の趣旨である。」と。

従って、労働者が年休を病気療養のために利用しても
レジャー目的で、あるいは自己啓発やボランティア活動に
利用しても全く自由であり、休暇の理由さえ
申し出る必要はないと言えます。

さらに、虚偽の理由を記載して年休を取得しても
以上の趣旨から、特に問題になるとは考えられません。

例えば、虚偽の理由で年休を取得し、系列会社の
争議行為などに参加したとしてその事実が後に分かっても
その年休を取消すことはできません。

前掲の判決でも「・・・他の事業場における争議行為等に
休暇中の労働者が参加したか否かは、なんら当該年次休暇の
成否に影響するところではない。」と判示しています。

ただし、自社における、いわゆる一斉休暇闘争については
その実質は年休に名を借りた同盟罷業であり
本来の年休権の行使ではないと解しています。

◆◆ 年休の利用目的は問わない~事情聴取も不要~ ◆◆

○ 冒頭の相談事例について考えてみますと、
年休に係る申請書に理由欄があり、その理由について

総務部で審査しており、ある社員の取得理由が
身内の不幸続きであり、これが虚偽でないかと問題となり
事情聴取の検討もなされているとのことです。

すでに引用した裁判例のように、
年休の利用目的が仮に虚偽であったとしても、その取得により

「事業の正常な運営を妨げる」場合でなければ
使用者はその取得後に、これを取消すことはできません。

また、取得理由が身内の不幸続きの内容であっても、
年休取得を拒否することはできないし、
当然のことながら何らかの処分もできません。

従って、社員に事情を聴取する意味もなくなり、
そもそも事情聴取自体が年休取得を抑制することにもなり
決して望ましいことではありません。

○ 以上のことを踏まえると、今後については
申請書等に理由欄をなくするとともに、

決裁(承認)欄も、確認欄程度にするほうが
良いと考えます。

★☆★☆★☆★【ひとくち教養講座】★☆★☆★☆★
よく日本語は難しいといいます。

そこで、間違いやすい日本語について考えてみましょう。

次の文章のうち、どちらが正しいでしょうか

■A 部長に右へ「習え」して、ゴルフを始めた。
■B. 部長に右へ「倣え」して、ゴルフを始めた。

答えは、編集後記で。
★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★

~~~~~[[今日あった昔の歴史─12/27]]~~~~~
●1822年の今日、偉大な細菌学者・パスツール誕生。
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●1831年の今日、チャールズ・ダーウィンが英海軍測量艦
 ビーグル号に乗り世界一周に出発する。
●1904年の今日、ジェームス・バリーの童話劇『ピーターパン』が
 ロンドンで初演。
●1924年の今日、北海道小樽市の国鉄手宮駅でダイナマイトが
 爆発。死者87人。
●1959年の今日、文京公会堂で第1回日本レコード大賞開催。
●1989年の今日、将棋の羽生善治が竜王になり、10代で
 初のタイトル保持者に。
  
~~~~~~[[今日の主なバースデー]]~~~~~~
○ヨハネス・ケプラー(天文学者:1571)
○加藤登紀子(歌手:1943)
○テリー伊藤(演出家:1949)
○奈美悦子(女優:1950)
○鉄平(プロ野球選手:1982)
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
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■■ 編集後記 ■■
きょうも最後までお読みいただきありがとうございます。

さて、どちらが正しいか分かりましたか?

答えは「B」です。

「右へナラエ」との意味は、もともと、自分の右にいる者に
順次位置を合わせよということで、
横の隊列を整えるときの号令です。

転じて、無批判に人がすることと同じ事をすることの意です。

「習う」は、繰り返し練習して身につけるとの意や、
先生から教えを受けるとの意味に使います。

一方、「倣う」とは、手本にしてまねるという意味で、
両者を書き分けるようになっています。

従って、この場合は、「倣う」を使用することになります。

なお、本年は本号で終了させていただきます。
明年は1月10日(月)配信からを予定しております。

明年も何とぞ宜しくお願い致します。
どうぞ、良いお正月をお迎えください。

では、また次号でお会いしましょう。
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