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過払い賃金を翌月に全額精算できるか?

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 経営・労務管理ビジネス用語の
   あれっ! これ、どうだった?!

  第36回  過払い賃金を翌月に
全額精算できるか?

<第48号>      平成23年2月7日(月)
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発行人のプロフィル⇒ http://www.ho-wiki06.com
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こんにちは! 
メルマガ初訪問の皆さま、ありがとうございます。

1週間のご無沙汰でした。
亥年のアラ還、小野寺です。

さて今回は、事務上のミスで、例えば減額改定した家族手当
旧基準で支払ったために過払いとなったり、
時間外労働時間数の誤入力で過払いとなったり等、

過払い賃金が発生した場合に、賃金の全額払との関係で
月給与から過払い分を控除できるのでしょうか。

今回は、この点について考えてみます。

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◆◆ 賃金の全額払の原則と例外 ◆◆

○ 労基法第24条には「賃金は通過で、直接労働者に、
その全額を支払わなければならない」と規定し、

いわゆる賃金の全額払の原則を定めています。

この原則は、賃金支払期ごとに適用されるものであり、
使用者労働契約上支払義務が発生している賃金

つまり、賃金支払日に支払うべきことが確定している
賃金については、その支払日に全額を支払わなければなりません。

○ ただし、この賃金の全額払の原則には例外が
認められています。

1つは、法令に別段の定めがある場合で、

例えば社会保険料については、健康保険法第167条と
厚生年金保険法第84条に、それぞれ給与から保険料の
源泉控除が規定されていること等を指します。

2つは、事業場労働者の過半数で組織する労働組合があるときは
その労働組合と、労働組合がないときは、

労働者の過半数を代表する者との書面による協定(労使協定)が
ある場合には、賃金の一部を控除して支払うことが
できるとされています(同法第24条第1項ただし書)。

この労使協定による控除について、行政解釈では
次のように示しています。

「購買代金、社宅、寮その他の福利厚生施設の費用労務
物資の代金、組合費等、事理明白なものについてのみ、

法第36条の時間外労働と同様の労使の協定によって賃金から
控除することを認める」(昭27.9.20基発第675号)として、
上記の趣旨を明らかにしています。

◆◆ 過払い賃金の翌月給与精算の可否 ◆◆
 
○冒頭に示した例のように、賃金精算事務のチェックミス等により
賃金過払いが生じた場合に、

過払い分を翌月の給与から差し引き精算するときは、
その差し引かれた分については、翌月給与支払期における

賃金全額払の原則に抵触するのではないかという
問題が生じます。

○ このような賃金の一時的な過誤払いは、
給与計算担当者並びにダブルチェックする上司にとっては
決してあってはならないことですが、

こうした人為的ミスは一般に軽過失といわれ、
時折、起こり得るものといえます。

その場合に、その過払い分を翌月以降の賃金から控除し
精算することについて、

前述の適法な労使協定が締結されている場合は、
労基法第24条の全額払の原則の例外に該当し、その協定の
定めに従って翌月の賃金から控除し精算することができます。

○ 次に、このような労使協定が締結されていない場合は
どうなのでしょうか。

この点について行政解釈は、
「前月分の過払い賃金を翌月分で精算する程度は、賃金それ自体の
計算に関するものであるから、法第24条の違反とは
認められない」としています。(昭23.9.14基発第1357号)

つまり、一般的には過払い賃金の精算については、
精算時期、方法、控除金額など合理的な範囲内であれば
全額払の原則に反しないと解されています。

○ また最高裁の判例も出ており、その基本的な考え方は
次のとおりです(「福島県教育委員会事件」昭44.12.18第二小)

賃金支払事務については・・・賃金計算における過誤・
違算等により、賃金過払いの生ずることのあることは
避けがたいところであり、

このような場合、これを精算ないし調整するため、
後に支払わるべき賃金から控除できるとすることは・・・

合理的理由があるといいうるのみならず、労働者にとっても
・・・実質的にみれば、本来支払わるべき賃金は、
その全額の支払を受けた結果となるのである。・・・

適正な賃金の額を支払うための手段たる相殺は、・・・
その行使の時期、方法・金額等からみて労働者
経済生活の安定との関係上不当と認められないものであれば

労基法第24条第1項の禁止するところではないと
解するのが相当である」と。

○ そしてこの最高裁判決では、こうした賃金控除
認められる具体的条件として次の2点を示しています。

1.相殺は、過払いのあった時期と賃金の精算調整の実を
失わない合理的に接着した時期においてなされること。

つまり、過払いの事実のあった翌月精算が最も相当性が
ありますが、さまざまな他の条件との関連もある場合でも
2~3か月程度の期間内の処理が必要と考えられます。

例えば判例でも、5月中の職場離脱者分の賃金カット
同月控除ではなく、同年8月分の給与から控除した措置を
違法と判示しています。
(「福岡県公立学校事件」昭50.3.6最高裁第一小)

2.あらかじめ労働者にそのことが予告されるとか、
その額が多額にならないとか、

つまり、労働者の経済生活の安定を脅かさない範囲内で
あること。

ただし、この部分については賃金水準の高低等があり、
ケースバイケースで考えることになると思います。

なお、民事執行手続により賃金債権差し押さえられ
債権者に支払うべき賃金については、

原則として賃金総額の4分の1までの差し押さえ
できることになっており、参考にしてください。
(民事執行法第152条)

従って、もし過払いに伴う控除金額が多額になる場合には
労使の話し合いの上、2~3カ月に分割して控除するよう
配慮するケースもあるかも知れません。

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よく日本語は難しいといいます。

そこで、間違いやすい日本語について考えてみましょう。

次の文章のうち、どちらが正しいでしょうか

■A 彼は、万事「彼方」任せの無責任な男だ。
■B. 彼は、万事「貴女」任せの無責任な男だ。

答えは、編集後記で。
★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★

~~~~~[[今日あった昔の歴史─2/7]]~~~~~
●1657年の今日、江戸幕府が吉原遊郭を日本橋から
 浅草へ移転させる。
●1855年の今日、日露和親条約を締結する。
●1873年の今日、司法省が仇討ち禁止令を公布。
●1937年の今日、昭和・平成の大作詞家、阿久悠誕生。
 ⇒ 詳細をご覧になりたい方は
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  ブログから該当日をご覧ください。
●1965年の今日、ベトナム戦争でアメリカが北ベトナム
 (北爆)開始する。
●1989年の今日、美空ひばり、人生最後のコンサートが
 九州厚生年金会館で行われる。
 
~~~~~~[[今日の主なバースデー]]~~~~~~
○聖徳太子(飛鳥時代の皇族:574)
○トマス・モア(思想家:1478)
○チャールズ・ディケンズ(小説家:1812)
○志賀潔(細菌学者:1871)
○津島恵子(女優:1926)
○バーブ佐竹(歌手:1935)
○小林稔侍(俳優:1943)
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
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■■ 編集後記 ■■
きょうも最後までお読みいただきありがとうございます。

さて、どちらが正しいか分かりましたか?

答えは「A」です。

この文意は、他人に頼って、全てその人の言うとおりに
すること、なりゆきにまかせることです。

この場合の「アナタ任せ」の「あなた」は、あちら、向こうの
意味であり、目の前の相手に向かって「貴女に任せます」との
意味ではありません。

従って、「貴女(貴男)任せ」と書くと誤りとされます。

では、また次号でお会いしましょう。
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