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歩合制の賃金について

平成18年8月15日 第34号
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人事のブレーン社会保険労務士レポート
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目次

1.歩合制賃金について

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ブログもよろしくお願い致します。
人事のブレーン社会保険労務士日記」です。
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1.歩合制賃金について

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<1> はじめに

賃金とは、週40時間、1日8時間の法定労働時間に対して支払うものと、そ
れを超過した労働時間に対する割増賃金と、通勤交通費家族手当等その労働
者の労働とは別に支払うもの、そして、労働者がその業務に従事している際に
生み出した、成果物に応じて支払う賃金と大きく4つに分類して考えることが
出来る。

本稿で取り上げる歩合について、「割増賃金」と「完全歩合制における最低保
障給」「運送業における完全歩合性の注意点」に分けて考えていきたい。

<2> 割増賃金

(1)歩合給における割増賃金の考え方

歩合給を算定する成果物は、所定労働時間及び所定外労働時間をつうじて生じ
るものであり、特定の成果物を所定内に発生したもの、所定外に発生したもの
と分けることは極めて困難である。

よって、歩合給の割増賃金を算出するにあたり、通常であれば法定時間外労働
を1.25倍、法定休日労働を1.35倍の単価で支給するが、歩合給に限り
上記理由により「1」に該当する部分については、歩合給以外の賃金で支払っ
ていることとみなしそれぞれ、0.25、0.35の乗率で計算すれば良いと
されている。

具体的には、賃金精算期間における歩合給の総額を当該期間中の総労働時間
除したものを単価とし、法定外時間労働については0.25,法定休日労働
ついては、0.35、深夜労働については0.25の乗率を掛けたものに、当
該期間中のそれぞれの時間数を乗じたものを、歩合給以外の賃金とそれによっ
て算出された時間外手当と併せて支給すればよいということになっている。

この計算にあたっての注意点は、歩合給以外の賃金における割増賃金の単価は
当該期間の所定労働時間若しくは年平均の月間所定労働時間で除すのに対し、
歩合給については、所定労働時間時間外労働時間の総和を除せばよいとなっ
ている。
(昭23.11.25基収3052号、昭63.3.14基発150号、平6.
3.31基発181号、平11.3.31基発168号)

当然、所定労働時間で除す場合より1時間あたりの単価が低くなり会社側にと
っては好都合である。

しかし、毎月歩合給の計算をするにあたり、所定労働時間時間外労働時間の
総和を求めて計算することは煩雑であり、実務上は、歩合給以外の割増賃金
単価を算出させる場合と同様に所定労働時間で除して単価を算出する企業は多
い。

(2)割増部分の注意点

割増賃金部分は、通常の歩合部分と分けなければならず、まとめて支給するこ
とは判例で否認されている。

時間外、深夜労働の算出が困難であるタクシー事業において、割増賃金を含め
て歩合給が支払われていた事例について最高裁は、通常の労働時間と時間外に
対する賃金が区分されていない賃金制度は労働基準法第37条に違反するとい
う判断を行った。(高知県観光事件最二小判平6.6.13労判523号6頁)

<3> 完全歩合制における最低保障給

(1)完全歩合制と一部歩合制

歩合制の最低保障については労働基準法27条で規定されているが、この最低
保障の適用となるものを完全歩合制と定義をして、それ以外を一部歩合制とし
てお話ししたい。
 
完全歩合制と一部歩合制の違いについては昭22.9.13基発17号及び昭
63.3.14基発150号により以下のように規定されている。

本条の趣旨は完全請負給に対しての保障給のみならず一部請負給についても基
本給を別として、その請負給について保障すべきであるが、賃金構成から見て
固定給部分が賃金総額中の大半(おおむね6割程度以上)を占めている場合に
は、本条のいわゆる「請負制で使用する」場合に該当しないと解される。

この通達に出てくる請負制とは完全歩合制のことで、労働時間管理を行わなず、
経費等も自ら負担する請負制のもとで業務に従事している一人親方等を指すも
のではない。

本条でいう最低保障の必要となる賃金制度とは、固定給部分が6割未満の場合
であると解される。

(2)最低保障給の支給要件

最低保障給はどの様な場合に支払われなければならないのか。

まず、事業主の責めに帰すべき事由で休業する場合については、労働基準法
26条で休業手当を定めている。

これは、平均賃金の6割を支給する義務を使用者に課したものであり、「事業
主の責任により、労働者労務の提供を行えず、それにより賃金の請求権が発
生しない場合」の措置である。

また、労働者責めに帰すべき事由により休業する場合には、ノ-ワークノー
ペイの原則によりそもそも賃金の請求権は発生しないのである。(昭23.1
1.11基発1639号)

歩合制における最低保障給とは、以上の2点を排除した上で、労働したにもか
かわらず、原材料が粗悪であるとか、遅延、運送業における客の減少といった
労働者責めに帰すべき事由ではない事由により歩合給が稼げなかった場合の
最低保障という位置づけである。

であるから、労働自体が使用者の帰責事由により行えない場合には、第26条
休業手当の支払い義務が生じ、当該期間に対する歩合給の最低保障給は発生
しない。

この点については、注意が必要である。

(3)最低保障給の考え方

最低保障給は1時間につきいくらという設定をしなければならない。
当然この単価は最低賃金法の規定を上回るのも出なければならず、自由に設定
できるというものではない。

時間で最低保障を設定している以上、歩合の出来高と相関関係にはならず、労
働時間の長短で毎月変動してくる。

よって、労働者労働時間の長短に関係なく毎月一定額を保障する制度は、完
請負制における最低保障給とはいえないが、その一定額が月、週その他一定
期間についての保障給であり、当該保障している時間数が設定され、その設定
時間を超過した場合には当該超過部分を清算する措置がとらえれている場合に
限り、最低保障給としての取り扱いが受けられる。

(4)最低保障給の水準

当然時間単価で計算するので、最低賃金を上回る必要があることはいうまでも
ない。

この水準としては、「常に通常の実収賃金と余りへだたらない程度の収入が保
障されるように保障給の額を定める(昭22.9.13発基17号、昭63.
2.14基発150号)」という通達が出されており、厚生労働省労働基準局
監修の労働基準法コンメンタールでは、労働基準法第26条の休業手当の例を
出し、平均賃金の6割程度という考え方をしてしているが、歩合制の趣旨を鑑
み、平均賃金ということは妥当ではない。

歩合給が多い月もあれば、少ない月もあり、それを平準化した場合、最低保障
給が著しく高くなり、本来の歩合給の趣旨が反映されないという結果になって
しまう。

後で述べるが、運送業における歩合制の最低保障は通常賃金の6割以上とある。
(平元.3.1基発93号)
これを参考に、おおむね合理的な賃金水準の6割程度を最低保障として賃金
準を設けておけばよいと考える。

この最低保障を定めた労働基準法第27条は、最低保障を定めていないという
ことのみで法違反となり、是正を求められる。また、違反の効果としては30
万円以下の罰金ということになる。

しかし、条文や通達にも具体的保障水準が明記されていないことから、実稼働
時間に対する賃金が法定の割増賃金を超えて支払っている限り、指導事項の中
で処理されるものと考えられる。

(5)割増賃金についての考え方

完全歩合制における割増賃金の計算は、歩合給の総額を当該賃金精算期間中の
総労働時間で除した単価に時間外労働(0.25)、休日労働(0.35)及
深夜労働(0.25)の乗率を掛けたものを支払うものである。

この場合における歩合給の総額とは、最低保障給も含めた総額を指している。

理由としては、最低保障給であっても歩合給の一部であるとの考え方からであ
る。

しかし実務上は、完全歩合制における割増賃金の支払いがなされていない企業
が多く、この点は歩合率の変更により、別途割増部分を分けて支給することに
より対処できる。

<4> 運送業における最低保障給の考え方

(1)最低補償給

運送業における最低保障給の考え方は、交通事故防止の観点から他業種と違い、
明確に通常の賃金の6割以上の保障をすることとされている。(平元.3.1
基発93号)

この通常の賃金という概念に明確なものはなく、実務上悩ましい点である。

通常の賃金とは平均賃金等である必要がなく、客観的に各人が通常の状況で確
保できる営業収入と考えて、それに対する歩合給の額を通常の賃金と考えて差
し支えがない。

通常の賃金とは、通常の賃金算定期間中における通常の労働時間で求めるこ
とが出来、この単価が最低賃金を上回っていれば法令上の要件を満たしたこと
になる。

昨今の運送業の状況を見ていると、最低賃金を保障給とした場合でも、通常の
賃金の6割を超過することが多く、あまりこの通常の賃金を細かく議論すると
いうことは実務上においてはない。

(2)累進歩合の禁止

累進歩合とは、営業収入の高低に応じて数段階に区分し、階級区分の上昇に応
じ逓増する歩合率を採用する方法である。

これも、一級上の階級へ行く為にスピード超過等の危険行為を誘発する可能性
があり、その観点から運送業においては禁止されている。

また、歩合率は段階的なものではないが、一定の金額を達成すると奨励金が支
給される賃金制度も、実質的に累進歩合と同様であるので、禁止されている。

<5> まとめ

歩合給の問題については、あまり取り上げられる事はなかったが、歩合給に対
しての割増賃金の支払い命令や運送業におけるコンサルティングを通じて、一
度まとめてご説明をしなければと考えていた。

不動産業や小売業においても歩合給の導入があり、それを月次の賃金とするの
か一時金として取り扱うのかが問題となる。

例えば、社会保険算定時期に歩合が多くなる業種については、月例賃金と考
えた場合、最高の賃金で1年間の社会保険料が決定される。

割増賃金については、それなりの対策があるが、この社会保険料の負担の問題
は頭が痛い問題である。

この点については、本稿では取り上げず、個別にお話しするしかないが、知恵
を絞っていくことにより問題の解決は図ることが出来る。

たかが歩合であるが、奥の深さはご理解頂けたかと思う。

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発行者 山本経営労務事務所 (URL http://www.yamamoto-roumu.co.jp/
編集責任者 社会保険労務士 山本 法史
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