■Vol.80 2006-8-23 毎週水曜日配信
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□□■ いまさら聞けない!お金と人と組織のこと
■■■ ― 経営者、起業準備の方必見です!―
□□■
■■■ 「
退職金を支給しない条項の効力」
□□■
■■■ 週刊(毎週水曜日発行)
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http://www.c3-co.com/
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夏の甲子園は、私たちにさわやかな感動を残して終わりました。
特に、早実の斎藤投手は、2日間投げ続け、
たぶん、腕が痺れ、痛いのを我慢しながら、だったはずですが、
クールな表情のままでした。
最近の若い人らしからぬ、礼儀正しく、キチンとした態度で、
とても、好感が持てました。
C3Cにも、若い人たちがいますが、夢を持って、頑張っています。
毎朝、人より早く来て、事務所を涼しくしてくれる人もいます。
歯を食いしばって我慢する、とはよく言いますが、
どうせなら、彼らのように、
爽やかに努力!
を目指したいものですね。
まずは、水色のハンカチで、汗を拭くところから・・・・!
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「
退職金を支給しない条項の効力」
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弁護士の緒方義行です。
今回は、新
会社法の話題から離れて、労働法の問題です。
会社で定められている
退職金規程の中に、「
退職後6ヵ月以内に同業他社に
就職した場合には
退職金は支給されない」といった
退職金の不支給条項が定
められている場合があります。
今回は、この規定が有効か、どのような場合に適用されるのか、という問題
です。
======================================================================
この問題について、判断した名古屋高裁の判決がありますので、見ていきま
しょう。
その判決の事案は、広告
代理店業を営む会社で営業職にあった
従業員が
退職
して6ヵ月経たない内に競業関係に立つ広告
代理店を開業したところ、会社
に上記のような
退職金規程があったため、
退職金の支払を拒否されたという
ものです。
======================================================================
1
退職金の性格
======================================================================
判決は、まず、この会社の
退職金の性格について述べています。
--------------------------------------------------------------------
(1)
労働基準法にいう
賃金の一種
--------------------------------------------------------------------
それによると、次の3点を理由として、本件
退職金の性格は、
従業員が継続
してした労働の対償であり、
労働基準法にいう
賃金の一種であるとされてい
ます。
[1] この会社の
退職金制度は、
就業規則を介して
労働契約の内容になっている。
[2] 本件
退職金の支給額は基本的に
基準内賃金と勤続年数に従って定まる。
[3] 本件
退職金の支給条件及び支給額は明確で裁量の余地は殆どない。
--------------------------------------------------------------------
(2)功労報償的な性格
--------------------------------------------------------------------
もっとも、判決は、
退職金制度が
使用者による任意的、恩恵的な給付を
基礎として発達したもので、
使用者は
退職金制度を設けるか否か、設けると
して、その支給条件をどのように定めるかの裁量を有していることなどから、
退職金制度には功労報償的な性格もあるとしています。
======================================================================
2 不支給条項の効力
======================================================================
そして、このように
退職金制度が
労働契約の内容となっていて、功労報償
的な性格をあわせて有していることから、「
退職後6ヵ月以内に同業他社に
就職した場合には
退職金は支給されない」という条項が全く無効であるとい
うことはできないとしています。
最高裁の判決も、同じような理由で、
退職後のある程度の期間、同業他社
への就職を制限し、違反した場合には支給額を一般の自己都合
退職の場合の
半額と定めることも、合理性のない措置であるとすることはできないとして
います。
したがって、このような不支給条項が全く無効で適用の余地が全くないのか
と言えば、ある程度は有効ということになります。
======================================================================
3 不支給条項の効力の限定(適用の制限)
======================================================================
しかし、
退職金の
賃金としての性格、
退職従業員の職業選択の自由を考える
と、このような不支給条項の効力はかなり限定され、適用場面はかなり制限
されると言わなければなりません。
判決も、本件不支給条項を適用して支給基準に従った額を支給しないことが
許容されるのは、単に
退職従業員が競業関係に立つ業務に6か月以内に携わっ
たというだけでは足りず、
退職従業員に、「労働の対償を失わせることが相当
であると考えられるような会社に対する顕著な背信性がある場合に限る」とし
ています。
そして、このような背信性の存在を判断するに当たっては、会社にとっての
不支給条項の必要性、
退職従業員の
退職に至る経緯、
退職の目的、
退職従業員
が競業業務に従事したことによって会社の被った損害などを総合的に考慮すべ
きであるとしています。
======================================================================
4 結論
======================================================================
それでは、結局、この判決で、
退職した
従業員は
退職金をもらえたのでしょ
うか。
この判決の事案では、その
従業員は、
退職にあたり会社に損害を与える目的
があったわけではなく、特に非難されるべき事情はありませんでした。
それどころか、この
従業員は、会社で担当業務の一部を遂行しなかったこと
などから、
懲戒処分を受け、さらに、一部違法な
賃金減額措置を受けたために、
事実上
退職に追い込まれ、その後の生活のために広告
代理店を開業するに至っ
たというものでした。
そういったことから、この
退職金の不支給条項は適用することは許されない
とされ、
退職した
従業員は基準通りの
退職金を請求できるとされたのです。
*****************************
弁護士 緒方 義行
〒102-0083 東京都千代田区麹町2-2
KIHOHビル6階
扶桑合同法律事務所
TEL 03-3515-2251
FAX 03-3515-2252
Mail ogata@fuso-godo.gr.jp
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今回は、新会社法の話題から離れて、労働法の問題です。
会社で定められている退職金規程の中に、「退職後6ヵ月以内に同業他社に
就職した場合には退職金は支給されない」といった退職金の不支給条項が定
められている場合があります。
今回は、この規定が有効か、どのような場合に適用されるのか、という問題
です。
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この問題について、判断した名古屋高裁の判決がありますので、見ていきま
しょう。
その判決の事案は、広告代理店業を営む会社で営業職にあった従業員が退職
して6ヵ月経たない内に競業関係に立つ広告代理店を開業したところ、会社
に上記のような退職金規程があったため、退職金の支払を拒否されたという
ものです。
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1 退職金の性格
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判決は、まず、この会社の退職金の性格について述べています。
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(1)労働基準法にいう賃金の一種
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それによると、次の3点を理由として、本件退職金の性格は、従業員が継続
してした労働の対償であり、労働基準法にいう賃金の一種であるとされてい
ます。
[1] この会社の退職金制度は、就業規則を介して労働契約の内容になっている。
[2] 本件退職金の支給額は基本的に基準内賃金と勤続年数に従って定まる。
[3] 本件退職金の支給条件及び支給額は明確で裁量の余地は殆どない。
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(2)功労報償的な性格
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もっとも、判決は、退職金制度が使用者による任意的、恩恵的な給付を
基礎として発達したもので、使用者は退職金制度を設けるか否か、設けると
して、その支給条件をどのように定めるかの裁量を有していることなどから、
退職金制度には功労報償的な性格もあるとしています。
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2 不支給条項の効力
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そして、このように退職金制度が労働契約の内容となっていて、功労報償
的な性格をあわせて有していることから、「退職後6ヵ月以内に同業他社に
就職した場合には退職金は支給されない」という条項が全く無効であるとい
うことはできないとしています。
最高裁の判決も、同じような理由で、退職後のある程度の期間、同業他社
への就職を制限し、違反した場合には支給額を一般の自己都合退職の場合の
半額と定めることも、合理性のない措置であるとすることはできないとして
います。
したがって、このような不支給条項が全く無効で適用の余地が全くないのか
と言えば、ある程度は有効ということになります。
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3 不支給条項の効力の限定(適用の制限)
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しかし、退職金の賃金としての性格、退職従業員の職業選択の自由を考える
と、このような不支給条項の効力はかなり限定され、適用場面はかなり制限
されると言わなければなりません。
判決も、本件不支給条項を適用して支給基準に従った額を支給しないことが
許容されるのは、単に退職従業員が競業関係に立つ業務に6か月以内に携わっ
たというだけでは足りず、退職従業員に、「労働の対償を失わせることが相当
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