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育児休業期間の賞与は全額不支給とできるか?

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 経営・労務管理ビジネス用語の
   あれっ! これ、どうだった?!

  第43回  育児休業取得期間の賞与
              全額不支給とできるか? 
 
<第58号>      平成23年4月18日(月)
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発行人のプロフィル⇒ http://www.ho-wiki06.com
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こんにちは! 
メルマガ初訪問の皆さま、ありがとうございます。

1週間のご無沙汰でした。
亥年のアラ還、小野寺です。

未曽有の東日本大震災から1か月と1週間が経ちました。
しかし、未だ1万4千名余が行方不明であり、約14万世帯の方が
避難所生活を余儀なくされております。

一方、すべてにわたって後手後手の政府対応と
菅総理のリーダーシップのなさに、

民主党の原口前総務大臣や西岡参院議長からも公然と
退陣を迫る発言が相次いでいますが、

実は、震災当日の3月11日に菅総理の個人スキャンダルで
退陣するかも知れないとの事件が起きていました。
(編集後記へ続く)

さて、本論ですが、今回も労働相談から取り上げます。
ある事業主から、6か月間の賞与算定対象期間内に

育児休業(2か月間)を取得した社員の賞与を全額不支給と
したいが法的に可能かどうかという相談でした。

なお、当該社員の育児休業期間中の月例賃金
無給としているとのこと。

今回はこの点について考えてみます。

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◆◆ 改正育児介護休業法の内容 ◆◆

○ 平成22年6月30日付で育児介護休業法が大幅に
改正施行されましたが、本号に係る育児休業に関する改正点で
主なものを簡単に紹介しておきます。

1.父母がともに育児休業を取得する場合の育児休業取得可能
期間が、子の1歳2カ月に達するまで延長されたこと。

2.妻の出産後8週間以内に父親が育児休業を取得し終了した
場合、特例として再度の育児休業の取得を認めること。

例えば、妻の出産後8週間以内に夫が2週間の育児休業を取得し、
妻が最大1年間の育児休業を取得し職場復帰した際、

夫である父親がその日から最大2か月間の育児休業を取得でき
妻である母親は復帰後の職場定着に安心して取組む事が
できるようになります。

3.労使協定により専業主婦等がいる場合の労働者(夫)に
ついては、産後8週間の期間を除き育児休業を取得することが
できなかったが、

当該規定を廃止し、全ての父親が必要に応じて育児休業
取得できるようになりました。

なお、この逆の場合、つまり家庭に夫がいて妻が労働者
ある場合も該当します。

4.小学校入学までの子を養育する労働者は、
小学校就学前の子が1人であれば年に5日まで、
2人以上であれば年10日まで、子の看護休暇を取得できます。

さらに取得事由が従来の負傷又は疾病に加えて、
予防接種(インフルエンザ予防接種も含む。)や健康診断
場合にも取得できるよう拡充されました。

5.3歳に満たない子を養育する労働者が希望した場合、
労働者が利用できる短時間勤務制度(1日の所定労働時間
原則6時間以内)を設けなければなりません。(ただし、
100人以下の企業は3年間猶予)

以下、省略します。

○ 「次世代育成支援対策推進法」第3条(基本理念)に、
「次世代育成支援対策は、父母その他の保護者が子育てに
ついての第一義的責任を有するという基本的認識の下に、

家庭その他の場において子育ての意義についての理解が深められ
かつ、子育てに伴う喜びが実感されるように」行うべきことを示し

さらに同法第5条(事業主の責務)には、
事業主は基本理念を踏まえて「その雇用する労働者に係る
多様な労働条件の整備その他の労働者の職業生活と家庭生活との

両立が図られるようにするために」必要な雇用環境の整備を
行う旨、規定されており、

まさに、その具体化された就業と子育て環境の整備が、
上記の育児介護休業法の改正施行であったと言えます。

◆◆ 賞与の不支給は不利益取扱いとなるか ◆◆

○ 前置きが大変に長くなりましたが、本論に入ります。

育児介護休業法第10条に次のようにあります。
「事業主は、労働者育児休業申出をし、又は育児休業
したことを理由として、当該労働者に対して解雇その他の
不利益な取扱いをしてはならない。」と。

なお、この取扱いは介護休業申出及び取得(同法第16条)、
並びに子の看護休暇の申出及び取得(同法第16条の4)にも
準用されております。

○ そして、同法に関する指針で、
解雇その他不利益な取扱いとなる行為として、

賞与等において不利益な算定を行うこと」を挙げ、その
具体的な内容として以下のように示しています。

賞与算定に当たり・・・休業した期間・・・は、日割り
算定対象期間から控除すること等、

専ら休業期間・・・は働かなかったものとして取扱うことは
不利益な取扱いには該当しないが、

休業期間(の)・・・日数を超えて働かなかったものとして
取扱うことは・・・『不利益な算定』に該当すること」と。
(平16.12.28厚労省告示460号)

つまり、賞与算定対象期間(6か月間)の全てを育児休業した
場合は、全額不支給とする措置は問題ないと言えます。

本件の場合は、2か月間の育児休業であったとのことであり
単純に考えれば算定対象期間のうち4か月間は勤務した訳で
従って、3分の1を減額することが妥当であると考えます。

もちろん、実日数計算で減額することもできます。

◆◆ 裁判例から考える~「東朋学園事件」
平10.3.25東京地裁判決~ ◆◆

○ 当学園では、算定対象期間出勤率90%以上を
支給要件としており、産前産後休業や勤務時間短縮措置による
育児時間を取得した場合に欠勤扱いとし、

上記出勤率未満の場合は全額不支給とする旨を定めた
給与規程の効力が問題となった事案に対して、
次のような判断を示しました。

産前産後の休業期間又は育児時間を取得した労働者に対する
賞与については、対象期間の日数に対する比率に応じて
賞与の額が減額される余地があることは否定できないが、

その限度を超えて本件90%条項により全額支給しないと
することはノーワーク・ノーペイの原則により
甘受すべき収入減を超える不利益を課すことになる。

そうすると労働者は、このような不利益を受けることを
おもんはかって産前産後休業等の権利についてその行使を控え、

さらには勤務を継続して出産を断念せざるを得ない事態が
考えられ、結局、労基法や育介法が労働者に各権利・法的利益を
保障した趣旨を没却するものというべきである。

従って、本件90%条項中、出勤すべき日数に産前産後休業の
日数を算入し、出勤した日数から産前産後休業の日数及び
育児時間を除外することを定めている部分は、

労基法65条(筆者注:産前産後休業)、67条(筆者注:
育児時間)の趣旨に反し、公序良俗にも反するから
無効である。」と。

○ 本件は上告審まで争われましたが、最高裁でも一審判決を
支持し確定しています(平15.12.4最高裁第一小法廷判決)。

つまり、労基法等で定められている産前産後休業等を取得する
権利行使に対し、それを労働者責に帰すべき欠勤と同一に
扱い、しかも賞与の全額を不支給にするという、

いわば不利益の大きさに着目した判断と言えます。

◆◆ 賞与支給に関する企業の実態調査 ◆◆

○ 労務行政研究所が2010年8月~10月にかけて実施した
「育児・介護休業等に関する実態調査の結果をみてみます。

育児休業期間中の賞与については、
日割控除を実施している企業が92%強を占めており、
全休の場合、全く支給しない企業は76.5%でしたが、

全休でも一定額を支給している企業は15.8%ありました。

○ なお、育児休業等を取得した期間について、年次有給休暇
8割出勤率算定についての取扱いについて、次のような
行政通達があります。

「従来、育児休業等をした期間については、年次有給休暇
算定の基礎となる全労働日に含まないとしてきたが、

今般の法改正において、当該期間については出勤率算定上、
出勤したものとみなすこととしたものであること。」
(平6.1.4基発1号、平11.3.31基発168号)

○ 以上を総合して考えた時、冒頭の相談者の場合、
全額不支給は無効とされる可能性が高いといえます。

しかし、少なくとも育児休業期間の日数分について
減額支給することについては合理性があると考えます。

ただ、労基法第136条を踏まえ、
近年、年次有給休暇の取得日数は賞与算定上、
出勤扱いとする企業が増えてきているようです。

従って、今日の我が国の急速な少子高齢化の進展と
先に引用した次世代育成支援対策推進法の趣旨から勘案して

将来、育児休業取得日数も出勤扱いの措置をとる企業が
増加していくのではと期待して、本稿を終了します。

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■■ 編集後記 ■■
きょうも最後までお読みいただきありがとうございます。

3月11日朝、菅直人首相は、政権発足以来最大の危機を
迎えていました。それは、この日の某新聞朝刊に

「菅首相に在日韓国人から違法献金の疑い」と大々的に
報じられたからでした。
すでに、同じ原因で前原誠司外相が辞任していました。

政治資金規正法は外国人からの寄付を禁止しています。
従って、当然に菅首相も退陣に追い込まれてもおかしくない
状況だったのです。

このため、この日の参議院第1委員会室では午前8時55分から
参院決算委員会が始まり、自民党議員3人が
菅首相のこの問題について執拗に厳しく追及していたのです。

午後2時半頃、ようやく自民党側の攻撃が一段落し菅首相も
とりあえず難を逃れて安堵したのも束の間の午後2時46分、

ご承知のように東日本大震災が勃発したわけです。
国会議事堂内も大きく揺さぶるほどの地震でした。

恐らく、地震がなければ、この日の夕刊はじめ各メディアも
菅首相違法献金問題がトップで報じられたことでしょう。

しかし、いったんは難を逃れたが、最近の世論調査でも
速やかに退陣すべきと考えますが、いかがでしょうか。

では、また次号でお会いしましょう。
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