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経営・
労務管理ビジネス用語の
あれっ! これ、どうだった?!
第44回
通勤電車内で化粧中、急停車で目に負傷
通勤災害となるか?
<第59号> 平成23年4月25日(月)
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こんにちは!
メルマガ初訪問の皆さま、ありがとうございます。
1週間のご無沙汰でした。
亥年のアラ還、小野寺です。
先週、警察庁の発表によると、
東日本大震災の被害の大きかった岩手、宮城、福島3県で
震災から1か月間に検視が行われた死者1万3135人のうち
死亡の原因の92.5%が水死であることが判明しました。
これが阪神淡路大震災との決定的な違いと言えます。
もしも大津波がなかったら、10メートルの防潮堤への過信が
なかったら・・・・(実際には19メートル以上と)
その津波に関する気象庁の第1報は3メートル以上・・・と。
この発表に高台への避難が緩慢になったのでは、との
推測もされていますが。
さて、働く者にとって
労災保険制度は、大変に素晴らしい制度です。
男性、女性問わず、パート、アルバイト等の非正規社員も
対象となります。
さらに年齢を問わず、働いている限り補償されます。
しかも唯一、
被保険者(
労働者)が保険料を支払わなくて
良いことになっています。
正式には
労働者災害補償保険(以下「
労災保険」という。)と
言いますが、大別して
業務災害と
通勤災害があります。
今回は、
通勤災害について考えてみます。
ある女性が
通勤電車内でアイメークのマスカラをしている時、
電車が急停車したために、当該女性の目を負傷してしまった。
これは
通勤災害になるのでしょうか。
今回はこの点について考えてみます。
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●労働
社会保険諸法に基づく
職業訓練校・セミナーの講師、新入社員等研修、法改正研修、
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まずは、
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◆◆
通勤災害とは ◆◆
○
通勤災害とは、
労働者が
通勤により被った負傷、疾病、
傷害又は死亡のことをいいます(
労災保険法第7条第1項第2号)。
そして「
通勤」とは、「就業」に関し次に掲げる移動を
「合理的な経路及び方法」により行うことをいい、業務の性質を
有するものを除くこととされています(同法第7条第2項)。
1.住居と就業の場所との間の往復。
2.就業の場所から他の就業の場所への移動。
3.住居と就業の場所との間の往復に先行し、又は後続する
住居間の移動。
また、移動の経路を逸脱し、又は移動を中断した場合には
逸脱又は中断の間及びその後の移動は
「
通勤」とはなりません。
ただし、逸脱又は中断が日常生活上必要な行為であって、
厚生労働省で定めるやむを得ない理由により行うための
最小限度のものである場合には、逸脱又は中断の間を除き
「
通勤」となります(同法第7条第3項)。
○ このように、
通勤災害と認定されるためには、その前提として
労働者の就業に関する移動が、
労災保険法に定める
通勤の要件を満たしている必要があります。
この
通勤災害保護制度は、本来、業務上の災害とみることが
困難である
通勤途上の災害を、
労働者個人の私生活上の損失として放置すべきでないことから
もともと賠償責任のない事業主による保険料全額負担の下に
労災保険法で特に創設された社会的保護制度とされています。
従って、その運用は非常に厳格であり、その保護を受ける
要件は明確に法定されており、文理解釈を離れて
いたずらに拡大解釈することは許されないと解されています。
(「札幌中央
労働基準監督署長事件」平元.5.8札幌高裁判決)
そのため、上記の
通勤の要件に関する各用語等について
正しく理解しておく必要があります。
◆◆
労災保険法に定める
通勤の要件 ◆◆
1.「就業に関し」とは:
○
通勤とされるためには、移動行為が業務に就くため、
又は業務を終えたことにより行われるものであること。
従って、被災当日に就業することになっていたこと、又は
現実に就業していたことが必要です。
なお、遅刻やラッシュを避けるための早出など、
通常の出勤時刻と時間的にある程度の前後があっても
就業との関連性は認められます。
2.「住居」とは:
○
労働者が居住して日常生活の用に供している家屋等の
場所で、本人の就業のための拠点となるところです。
従って、単身赴任者の場合のように、就業の必要上、
労働者が家族の住む場所とは別に就業の場所の近くに
アパートを借りて、そこから
通勤している場合は
そこが住居となります。
さらに、通常は家族のいる所から出勤するが、
別のアパートを借りていて、早出や長時間の残業の場合は
そのアパートに泊まり、そこから
通勤するような場合には
家族の住居とアパートの双方が住居となります。
3.「就業の場所」とは:
○ 業務を開始し、又は終了する場所のことです。
一般に、会社や工場等の本来の業務を行う場所を指しますが、
例えば外勤業務に従事する
労働者が、会社に出勤せずに
直接、担当地域の取引先等へ行き業務を終えて
帰宅するような場合は、
自宅を出てから最初の用務先が業務開始の場所となり
最後の用務先が業務終了の場所となります。
4.「就業の場所から他の就業の場所への移動」とは:
○ 複数の異なる
事業場で働く
労働者については、
A
事業場での勤務が終了した後に、次のB
事業場の場所へ
向かう場合の移動のことをいいます。
5.「住居と就業の場所との間の往復に先行し、又は後続する
住居間の移動」とは:
○ 転勤に伴い、当該転勤の直前の住居と赴任先の就業の
場所との間を日々、往復することがその往復距離(片道
60キロメートル以上等)を考慮して困難となったため
住居を移転した
労働者であって、一定のやむを得ない
事情により、転勤の直前の住居に居住している配偶者と
別居することとなった者の居住間の移動をいいます。
つまり、週末に単身赴任先の住居から配偶者のいる
帰省先の住居を往復する移動のことを指しています。
また、配偶者のない場合の子との別居、並びに配偶者及び
子がない場合の父母又は親族(
要介護状態にあり、かつ、
当該
労働者が介護していた父母又は親族に限る。)との
別居についても、同様に取り扱うことになっています。
6.「合理的な経路及び方法」とは:
○ 一般に
労働者が用いるものと認められる経路及び
方法のことをいいます。
「合理的な経路」については、
通勤のために通常利用する
経路であれば、複数あったとしても、それらはいずれも
合理的な経路とみなされます。
また、当日の交通事情により迂回してとる経路、
マイカー通勤者が貸切の車庫を経由して通る経路など、
通勤のためにやむを得ず取る経路も合理的な経路とされます。
しかし、特段の合理的な理由もなく、著しく遠回りとなる
経路をとる場合などは、合理的な経路とはなりません。
「合理的な方法」については、鉄道、バス等の公共交通機関を
利用する場合、自動車、
自転車等を本来の用法にしたがって
使用する場合、徒歩の場合など、一般に合理的な方法と
されています。
7.「業務の性質を有するもの」とは:
○ 以上の1~6の要件を満たす往復行為であっても、
その行為が業務の性質を有するものである場合は、
通勤とはなりません。
具体的には、事業主の提供する専用交通機関を利用する
出退勤や、緊急用務のために
休日に呼出しを受けて
緊急出動する場合などが該当し、これらの行為による災害は
通勤災害ではなく、
業務災害となります。
8.「移動の経路を逸脱し、又は中断した場合」とは:
○「逸脱」とは、
通勤の途中で就業や
通勤と関係ない目的で
合理的な経路をそれることをいい、
「中断」とは、
通勤の経路上で
通勤と関係ない行為を
行うことをいいます。
しかし、
通勤の途中で経路近くの公衆トイレを使用する場合や
経路上の店でパンやジュースを購入する場合などの
ささいな行為を行う場合には、逸脱、中断とはなりません。
○
通勤の途中で逸脱又は中断があると、その後は原則として
通勤とはなりません。
ただし、これについては例外が設けられており、
日常生活上必要な行為であって、厚生労働省令で定めるものを
やむを得ない事由により最小限度の範囲で行う場合には、
逸脱又は中断の間を除き、合理的な経路に復した後は、
再度、
通勤となります。
なお、厚労省令で定める逸脱、中断の例外となる行為は
次のとおりです。
(1)日用品の購入、その他これに準ずる行為。
(2)職業訓練、学校教育法第1条に規定する学校において
行われる教育その他これらに準ずる教育訓練であって
職業能力の開発向上に資するものを受ける行為。
(3)選挙権の行使その他これに準ずる行為。
(4)病院又は診療所において診察又は治療を受けること、
その他これに準ずる行為。
◆◆
通勤災害における労災認定の基準 ◆◆
○
通勤災害として労災認定されるためには、
「
通勤経路途上に内在する危険が具現化した為に起きた事故」
であることが条件とされています。
例えば、朝の
通勤ラッシユ時に後ろから押されて転倒して
負傷した場合、女性が深夜に帰宅する途中にストーカーに
襲われ被災した場合などは労災認定されます。
しかし、例えば会社に遅刻しそうになったので急いでいたら
転んでケガをしたというだけの場合や、持病の心疾患の
発作から階段で転倒してケガをした場合のように、
労働者本人に直接の原因があり、それが偶然事故を誘発した
場合等も
通勤災害とはなりません。
○
通勤途中で親切心から困っている人を助けようとして
巻き込まれた事故は、原則として
通勤災害として
認定されません。
なお、かつてJR山の手線の新大久保駅でホームから
落下した人を助けようとして電車に轢かれた事故が
労災認定されたケースがありましたが、
これは「世論に動かされた労災認定」であり、非常に
特殊なケースといわれています。
○ 会社の
就業規則で
マイカー通勤が禁止されているにも
かかわらず、勝手に
マイカー通勤して交通事故に遭った場合、
その
マイカー通勤という
通勤方法が客観的に合理性があると
認められれば、
通勤災害として労災認定されます。
この場合、国が労災認定するか否かについては、
私人間(=会社と
労働者の間、つまり当該
就業規則)の
契約内容に影響されないとの立場をとります。
◆◆ 本ケースの場合はどうか ◆◆
○ 先に挙げた具体例で、
通勤災害と認定されるか否かは、
「
通勤経路途上に内在する危険が具現化したために起きた事故」で
あるかどうか、
換言すれば、当該事故が「
通勤と相当因果関係があるかどうか」
により判定されることになります。
本ケースの場合は、
通勤途上の電車の中でアイメークで
マスカラを塗っていたところ、
電車が急停車した結果、目を負傷したことが「
通勤と相当因果
関係」が認められるかどうかがポイントとなります。
○ 今日、社会に出て就業し
通勤する女性にとって
化粧をすることは日常生活上必要な行為といえます(最近は、
男性の化粧も増えているようですが)。
そして、マスカラを塗ることも今や化粧法の一つとして
一般的になってきたとも考えます。
ただ問題は「
通勤電車の中で出勤前の化粧をすること」を
どう捉えるかです。
私の住む札幌市内の
通勤電車ではほとんど見かけませんが
東京のように
通勤に長時間かかる場合や、早出出勤者にとっては
電車内化粧も多いかも知れません。
そして、それが「一般的な姿」とまで言えるかどうかは
見解の分かれるところと思います。
○ 従って、
通勤電車内の化粧が、今日において一般的な
行為である、と判断されることになれば、
(1)
通勤電車が走行中、予想外の急停車をし、それによる
車両の大きな揺れにより、転倒、負傷するケースは、
通常でも十分に考えられること。
(2)化粧をすること自体は、
通勤途上の逸脱、中断には
当たらないこと。
以上から、「
通勤電車内の化粧による負傷」(もちろん、
最終的な判断は、その他の諸事情を総合勘案して決定
されますが)は、
「
通勤経路途上に内在する危険が具現化した為に起きた事故」
として相当因果関係が肯定され、
通勤災害と認定される
可能性があると思います。
しかし、同種の事案に対する行政解釈や裁判による司法判断等が
いまだ出されていないため、あくまで可能性としておきます。
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■■ 編集後記 ■■
きょうも最後までお読みいただきありがとうございます。
ご承知のように、今回の東日本大震災で深刻かつ二重の災害は
福島原発の事故です。
すでに海外から仕事等で日本在住の外国人に対して母国から
帰国命令が出され日本を離れた方は10万人近くいるといいます。
しかし、ある英国人男性(45歳)は宮城県石巻市に居住して
石巻専修大学准教授として93年に来日しました。
今回の震災で同じく帰国命令が出ましたが、帰国を思いとどまり
石巻市に引き返し、避難先のホテルで安否確認の方への応対や
トイレの掃除などをしているとのこと。
彼を引き止めたのは、震災後初めてみたテレビで、石巻市の惨状と
住民の姿を映しており「おばあちゃんたちは元気に生きていた。
腰抜けの自分が情けなかった」ということと、
すでに18年間石巻市の港町に住んで、なにより「この街の魅力は
人に尽きる。またトロサンマで酒をくみかわしたい」との
第二の故郷への想いであったという。
避難している方々の気持ちは、早く自分の住み慣れた地へ、家へ
帰りたいのが正直な気持ちと思います。
その心をずたずたに斬り裂くような総理や閣僚の発言が多い。
論語に「九思一言」とあります。指導者は、自己の発する言葉の
重みを弁えて、無責任・軽率な発言を戒めた言葉です。
総理、大臣はもとより各界のトップ連も海外に恥ずかしくない
言動をと願うばかりです。
では、また次号でお会いしましょう。
なお、次号は連休明けの5月9日付けの予定です。
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第44回 通勤電車内で化粧中、急停車で目に負傷
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こんにちは!
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亥年のアラ還、小野寺です。
先週、警察庁の発表によると、
東日本大震災の被害の大きかった岩手、宮城、福島3県で
震災から1か月間に検視が行われた死者1万3135人のうち
死亡の原因の92.5%が水死であることが判明しました。
これが阪神淡路大震災との決定的な違いと言えます。
もしも大津波がなかったら、10メートルの防潮堤への過信が
なかったら・・・・(実際には19メートル以上と)
その津波に関する気象庁の第1報は3メートル以上・・・と。
この発表に高台への避難が緩慢になったのでは、との
推測もされていますが。
さて、働く者にとって労災保険制度は、大変に素晴らしい制度です。
男性、女性問わず、パート、アルバイト等の非正規社員も
対象となります。
さらに年齢を問わず、働いている限り補償されます。
しかも唯一、被保険者(労働者)が保険料を支払わなくて
良いことになっています。
正式には労働者災害補償保険(以下「労災保険」という。)と
言いますが、大別して業務災害と通勤災害があります。
今回は、通勤災害について考えてみます。
ある女性が通勤電車内でアイメークのマスカラをしている時、
電車が急停車したために、当該女性の目を負傷してしまった。
これは通勤災害になるのでしょうか。
今回はこの点について考えてみます。
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◆◆ 通勤災害とは ◆◆
○ 通勤災害とは、労働者が通勤により被った負傷、疾病、
傷害又は死亡のことをいいます(労災保険法第7条第1項第2号)。
そして「通勤」とは、「就業」に関し次に掲げる移動を
「合理的な経路及び方法」により行うことをいい、業務の性質を
有するものを除くこととされています(同法第7条第2項)。
1.住居と就業の場所との間の往復。
2.就業の場所から他の就業の場所への移動。
3.住居と就業の場所との間の往復に先行し、又は後続する
住居間の移動。
また、移動の経路を逸脱し、又は移動を中断した場合には
逸脱又は中断の間及びその後の移動は
「通勤」とはなりません。
ただし、逸脱又は中断が日常生活上必要な行為であって、
厚生労働省で定めるやむを得ない理由により行うための
最小限度のものである場合には、逸脱又は中断の間を除き
「通勤」となります(同法第7条第3項)。
○ このように、通勤災害と認定されるためには、その前提として
労働者の就業に関する移動が、労災保険法に定める
通勤の要件を満たしている必要があります。
この通勤災害保護制度は、本来、業務上の災害とみることが
困難である通勤途上の災害を、
労働者個人の私生活上の損失として放置すべきでないことから
もともと賠償責任のない事業主による保険料全額負担の下に
労災保険法で特に創設された社会的保護制度とされています。
従って、その運用は非常に厳格であり、その保護を受ける
要件は明確に法定されており、文理解釈を離れて
いたずらに拡大解釈することは許されないと解されています。
(「札幌中央労働基準監督署長事件」平元.5.8札幌高裁判決)
そのため、上記の通勤の要件に関する各用語等について
正しく理解しておく必要があります。
◆◆ 労災保険法に定める通勤の要件 ◆◆
1.「就業に関し」とは:
○ 通勤とされるためには、移動行為が業務に就くため、
又は業務を終えたことにより行われるものであること。
従って、被災当日に就業することになっていたこと、又は
現実に就業していたことが必要です。
なお、遅刻やラッシュを避けるための早出など、
通常の出勤時刻と時間的にある程度の前後があっても
就業との関連性は認められます。
2.「住居」とは:
○ 労働者が居住して日常生活の用に供している家屋等の
場所で、本人の就業のための拠点となるところです。
従って、単身赴任者の場合のように、就業の必要上、
労働者が家族の住む場所とは別に就業の場所の近くに
アパートを借りて、そこから通勤している場合は
そこが住居となります。
さらに、通常は家族のいる所から出勤するが、
別のアパートを借りていて、早出や長時間の残業の場合は
そのアパートに泊まり、そこから通勤するような場合には
家族の住居とアパートの双方が住居となります。
3.「就業の場所」とは:
○ 業務を開始し、又は終了する場所のことです。
一般に、会社や工場等の本来の業務を行う場所を指しますが、
例えば外勤業務に従事する労働者が、会社に出勤せずに
直接、担当地域の取引先等へ行き業務を終えて
帰宅するような場合は、
自宅を出てから最初の用務先が業務開始の場所となり
最後の用務先が業務終了の場所となります。
4.「就業の場所から他の就業の場所への移動」とは:
○ 複数の異なる事業場で働く労働者については、
A事業場での勤務が終了した後に、次のB事業場の場所へ
向かう場合の移動のことをいいます。
5.「住居と就業の場所との間の往復に先行し、又は後続する
住居間の移動」とは:
○ 転勤に伴い、当該転勤の直前の住居と赴任先の就業の
場所との間を日々、往復することがその往復距離(片道
60キロメートル以上等)を考慮して困難となったため
住居を移転した労働者であって、一定のやむを得ない
事情により、転勤の直前の住居に居住している配偶者と
別居することとなった者の居住間の移動をいいます。
つまり、週末に単身赴任先の住居から配偶者のいる
帰省先の住居を往復する移動のことを指しています。
また、配偶者のない場合の子との別居、並びに配偶者及び
子がない場合の父母又は親族(要介護状態にあり、かつ、
当該労働者が介護していた父母又は親族に限る。)との
別居についても、同様に取り扱うことになっています。
6.「合理的な経路及び方法」とは:
○ 一般に労働者が用いるものと認められる経路及び
方法のことをいいます。
「合理的な経路」については、通勤のために通常利用する
経路であれば、複数あったとしても、それらはいずれも
合理的な経路とみなされます。
また、当日の交通事情により迂回してとる経路、
マイカー通勤者が貸切の車庫を経由して通る経路など、
通勤のためにやむを得ず取る経路も合理的な経路とされます。
しかし、特段の合理的な理由もなく、著しく遠回りとなる
経路をとる場合などは、合理的な経路とはなりません。
「合理的な方法」については、鉄道、バス等の公共交通機関を
利用する場合、自動車、自転車等を本来の用法にしたがって
使用する場合、徒歩の場合など、一般に合理的な方法と
されています。
7.「業務の性質を有するもの」とは:
○ 以上の1~6の要件を満たす往復行為であっても、
その行為が業務の性質を有するものである場合は、
通勤とはなりません。
具体的には、事業主の提供する専用交通機関を利用する
出退勤や、緊急用務のために休日に呼出しを受けて
緊急出動する場合などが該当し、これらの行為による災害は
通勤災害ではなく、業務災害となります。
8.「移動の経路を逸脱し、又は中断した場合」とは:
○「逸脱」とは、通勤の途中で就業や通勤と関係ない目的で
合理的な経路をそれることをいい、
「中断」とは、通勤の経路上で通勤と関係ない行為を
行うことをいいます。
しかし、通勤の途中で経路近くの公衆トイレを使用する場合や
経路上の店でパンやジュースを購入する場合などの
ささいな行為を行う場合には、逸脱、中断とはなりません。
○ 通勤の途中で逸脱又は中断があると、その後は原則として
通勤とはなりません。
ただし、これについては例外が設けられており、
日常生活上必要な行為であって、厚生労働省令で定めるものを
やむを得ない事由により最小限度の範囲で行う場合には、
逸脱又は中断の間を除き、合理的な経路に復した後は、
再度、通勤となります。
なお、厚労省令で定める逸脱、中断の例外となる行為は
次のとおりです。
(1)日用品の購入、その他これに準ずる行為。
(2)職業訓練、学校教育法第1条に規定する学校において
行われる教育その他これらに準ずる教育訓練であって
職業能力の開発向上に資するものを受ける行為。
(3)選挙権の行使その他これに準ずる行為。
(4)病院又は診療所において診察又は治療を受けること、
その他これに準ずる行為。
◆◆ 通勤災害における労災認定の基準 ◆◆
○ 通勤災害として労災認定されるためには、
「通勤経路途上に内在する危険が具現化した為に起きた事故」
であることが条件とされています。
例えば、朝の通勤ラッシユ時に後ろから押されて転倒して
負傷した場合、女性が深夜に帰宅する途中にストーカーに
襲われ被災した場合などは労災認定されます。
しかし、例えば会社に遅刻しそうになったので急いでいたら
転んでケガをしたというだけの場合や、持病の心疾患の
発作から階段で転倒してケガをした場合のように、
労働者本人に直接の原因があり、それが偶然事故を誘発した
場合等も通勤災害とはなりません。
○ 通勤途中で親切心から困っている人を助けようとして
巻き込まれた事故は、原則として通勤災害として
認定されません。
なお、かつてJR山の手線の新大久保駅でホームから
落下した人を助けようとして電車に轢かれた事故が
労災認定されたケースがありましたが、
これは「世論に動かされた労災認定」であり、非常に
特殊なケースといわれています。
○ 会社の就業規則でマイカー通勤が禁止されているにも
かかわらず、勝手にマイカー通勤して交通事故に遭った場合、
そのマイカー通勤という通勤方法が客観的に合理性があると
認められれば、通勤災害として労災認定されます。
この場合、国が労災認定するか否かについては、
私人間(=会社と労働者の間、つまり当該就業規則)の
契約内容に影響されないとの立場をとります。
◆◆ 本ケースの場合はどうか ◆◆
○ 先に挙げた具体例で、通勤災害と認定されるか否かは、
「通勤経路途上に内在する危険が具現化したために起きた事故」で
あるかどうか、
換言すれば、当該事故が「通勤と相当因果関係があるかどうか」
により判定されることになります。
本ケースの場合は、通勤途上の電車の中でアイメークで
マスカラを塗っていたところ、
電車が急停車した結果、目を負傷したことが「通勤と相当因果
関係」が認められるかどうかがポイントとなります。
○ 今日、社会に出て就業し通勤する女性にとって
化粧をすることは日常生活上必要な行為といえます(最近は、
男性の化粧も増えているようですが)。
そして、マスカラを塗ることも今や化粧法の一つとして
一般的になってきたとも考えます。
ただ問題は「通勤電車の中で出勤前の化粧をすること」を
どう捉えるかです。
私の住む札幌市内の通勤電車ではほとんど見かけませんが
東京のように通勤に長時間かかる場合や、早出出勤者にとっては
電車内化粧も多いかも知れません。
そして、それが「一般的な姿」とまで言えるかどうかは
見解の分かれるところと思います。
○ 従って、通勤電車内の化粧が、今日において一般的な
行為である、と判断されることになれば、
(1)通勤電車が走行中、予想外の急停車をし、それによる
車両の大きな揺れにより、転倒、負傷するケースは、
通常でも十分に考えられること。
(2)化粧をすること自体は、通勤途上の逸脱、中断には
当たらないこと。
以上から、「通勤電車内の化粧による負傷」(もちろん、
最終的な判断は、その他の諸事情を総合勘案して決定
されますが)は、
「通勤経路途上に内在する危険が具現化した為に起きた事故」
として相当因果関係が肯定され、通勤災害と認定される
可能性があると思います。
しかし、同種の事案に対する行政解釈や裁判による司法判断等が
いまだ出されていないため、あくまで可能性としておきます。
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■■ 編集後記 ■■
きょうも最後までお読みいただきありがとうございます。
ご承知のように、今回の東日本大震災で深刻かつ二重の災害は
福島原発の事故です。
すでに海外から仕事等で日本在住の外国人に対して母国から
帰国命令が出され日本を離れた方は10万人近くいるといいます。
しかし、ある英国人男性(45歳)は宮城県石巻市に居住して
石巻専修大学准教授として93年に来日しました。
今回の震災で同じく帰国命令が出ましたが、帰国を思いとどまり
石巻市に引き返し、避難先のホテルで安否確認の方への応対や
トイレの掃除などをしているとのこと。
彼を引き止めたのは、震災後初めてみたテレビで、石巻市の惨状と
住民の姿を映しており「おばあちゃんたちは元気に生きていた。
腰抜けの自分が情けなかった」ということと、
すでに18年間石巻市の港町に住んで、なにより「この街の魅力は
人に尽きる。またトロサンマで酒をくみかわしたい」との
第二の故郷への想いであったという。
避難している方々の気持ちは、早く自分の住み慣れた地へ、家へ
帰りたいのが正直な気持ちと思います。
その心をずたずたに斬り裂くような総理や閣僚の発言が多い。
論語に「九思一言」とあります。指導者は、自己の発する言葉の
重みを弁えて、無責任・軽率な発言を戒めた言葉です。
総理、大臣はもとより各界のトップ連も海外に恥ずかしくない
言動をと願うばかりです。
では、また次号でお会いしましょう。
なお、次号は連休明けの5月9日付けの予定です。
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