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年俸制と割増賃金支払義務の有無

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 経営・労務管理ビジネス用語の
   あれっ! これ、どうだった?!

  第46回  年俸制割増賃金支払義務の有無
 
<第61号>      平成23年5月16日(月)
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発行人のプロフィル⇒ http://www.ho-wiki06.com
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こんにちは! 
メルマガ初訪問の皆さま、ありがとうございます。

1週間のご無沙汰でした。
亥年のアラ還、小野寺です。

5月6日に発表された帝国データバンクの調査によると、
東日本大震災から4月末までの約1か月半における

震災関係の倒産件数が66件(負債総額約371億円)で
あったことが明らかになりました。

いまだ被災地では安穏のない不自由な状況が続いていますが、
災害ボランティア活動担当の辻本清美首相補佐官が、

岩手・宮城・福島の被災地訪問の出張旅費などの経費
6日間で114万円使用したとのこと。

この報道によると、1日当たり20万円を使用していたことになる。
一体、何を考えているのか、空いた口がふさがらないとはこのことか。

このことはインターネットでも話題になっており、総じて
国民の怒りはすさまじいものがあります。(編集後記へ続く)

さて、本論に戻りますが、年俸制といえば、すぐに思い起こすのは、
プロ野球選手のシーズンオフにおける年俸更改のことです。

シーズン中の成績が良ければ1千万単位で増額するし
その逆の場合は1千万単位で減額する厳しい世界ですね。

平成に入ってから年俸制を導入する企業が増えていると
言われますが、

ある事業所を訪問した際、年俸制を導入したいと考えているが、
その年俸額は割増賃金込みにしたいが、何か法的に問題があるか、
ということでした。

今回は、この点について考えてみます。

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○ 年俸制の事例として、次のような設定にしておきます。
(1)年俸制の対象労働者
労働基準法(以下「労基法」)第41条に定める「管理監督者」には
該当しないが、社内において一定の地位にある者。

(2)支払方法
年俸額の17分の1を毎月支払い、残りの17分の5を二分して
6月と12月に賞与として支払う。

(3)割増賃金の取扱い
年俸額には、年間時間外労働100時間、休日労働月1回程度を
前提とする割増賃金を含むものとする。
ただし、特に明確な規定はない。

(4)年俸額   720万円

◆◆ 年俸制とはどのような制度か ◆◆

○ 年俸制とは、文字どおり、その事業年度に入る前に
対象労働者に対する賃金(給料)の1年分(12か月分)を
あらかじめ決定する制度です。

月例給与の場合は、基本給のほかに役付手当職務手当
通勤手当等の各種手当等が加算されたものが支給総額と
なりますが、

年俸制の場合は、上記事例のように17分の1に相当する
金額が支給総額となります。

さて、労基法第24条2項には賃金の毎月払の原則を
定めていますが、年俸制の場合、これとの整合性は
どう考えるのか、

あるいは、年俸制適用対象者には時間外労働等の
割増賃金の支払は必要なのか、割増賃金を含む年俸制
認められないのか等々が問題となっていました。

これらについて、以下に解釈例規を踏まえて
解説していきたいと思います。

◆◆ 年俸制と労基法第24条との関係 ◆◆

○ まず労基法では、労働者の定義に関して
事業に使用され、賃金を支払われる者(第9条)と
されていますが、解釈例規では

法人の代表者や執行機関のように事業主体との関係において
使用従属の関係に立たない者は労働者には該当しない。」
(昭23.1.9基発第14号)とされているので、

これらの者に年俸制採用し、どのような支払い方をしたとしても
労基法は関与しません。

ただし、法人役員等であっても「業務執行権や代表権を
持たない者が、工場長、部長の職にあって賃金を受ける場合は、

その限りにおいて法第9条に規定する労働者である。」
(昭23.3.17基発第461号)としています。

また、加えて法人役員でない工場長、部長その他の管理監督者
労働者に該当し労基法の適用を当然に受けることになります。

従って、このような労基法の適用のある労働者に、年俸制
採用する場合は、労基法に違反しないようにしなければ
なりません。

○ 次に、労基法第24条2項には、先に触れたように
賃金は、毎月1回以上、一定の期日を定めて支払わなければ
ならない。」と定めています。

これは、同法に定める賃金支払5原則のうち「毎月払いの原則」を
示しており、賃金の支払方法として少なくとも毎月1回以上
支払う旨定めたものであり、

賃金決定の方法として、1か月より長い期間について
賃金を決めてはいけない旨を規定しているのではありません。

つまり、年俸制賃金決定の方式として、労基法に
違反するものではないということです。

ただし、年俸制による賃金も労基法第24条の規制を
受けるため、毎月払いの原則が適用されます。

従って、例えば、年俸額の12分の1を毎月支払うように
しなければなりません。

◆◆ 賞与年俸制の法的な捉え方 ◆◆

○ 冒頭の事例のように、年俸額を17等分し、
毎月17分の1を支払い、残りの17分の5相当額を
賞与として位置づけています。

しかし、賞与に関する解釈例規では
賞与とは、定期又は臨時に、原則として労働者の勤務成績に
応じて支給されるものであって、

その支給額があらかじめ確定されていないものをいうこと。
定期的に支給され、かつその支給額が確定しているものは、
賞与とみなさないこと。」(昭22.9.13発基第17号)

つまり、賞与としての支給額があらかじめ確定しているものは
賞与ではないということを示しています。

また、労基法第24条2項ただし書において、賞与
毎月払いの対象から除外しているのも、

賞与が一般的に算定対象期間6か月間の会社の業績、本人の
勤務成績等を勘案して支給額を決めざるを得ないこと、

また時には、例えば近年の不況の長期化で大幅な減額、
ないしは不支給とすること等々があることから
規定しているものです。

その意味で、あらかじめ支給額が確定しているものは、
月ごとに支払うことも可能であることから
毎月、支払うべきことを促しているのです。

○ 以上から、事例の17分の5の部分は、賞与とは
認められないことになるため、

月々の支払額は、年俸額(720万円)の12分の1を
支払わなければならないことになります。

また、平成15年3月末までの社会保険総報酬制導入以前は
健康保険等の社会保険料の料率が、

月例給与と賞与とでは異なっていましたが、現在は同じ
料率であり、賞与部分を形式的に区分するメリットは
何もないと言えます。

次に、年俸制における割増賃金に関して解釈例規では
賞与部分を含めて当該確定した年俸額を算定の基礎として
割増賃金を支払う必要がある。

よって、決定された年俸額の12分の1を月における
所定労働時間数(月によって異なる場合には、1年間における
1か月平均所定労働時間数)で除した金額を基礎額とした

割増賃金の支払を要し、就業規則で定めた計算方法による
支払額では不足するときは、労基法第37条違反として
取り扱うこととする。」(平12.3.8基収第78号)としており、

加えて、事例で賞与として支払われている賃金は、
労基法施行規則第21条4号の臨時に支払われた賃金

及び同条5号の1箇月を超える期間ごとに支払われる賃金
いずれにも該当しないものであるから、

割増賃金算定基礎から除外できないものであると
しております。

◆◆ 割増賃金を含めた年俸制の法的捉え方 ◆◆

○ 事例のように、年俸に年間100時間の時間外労働及び
月1回程度の休日勤務が含まれている場合の法的な捉え方は
どうなのか。解釈例規で次のように示しています。

「一般的には、年俸に時間外労働等の割増賃金が含まれて
いることが労働契約の内容であることが明らかであって、

割増賃金相当部分と通常の労働時間に対応する賃金部分とに
区別することができ、かつ、割増賃金相当部分が

法定の割増賃金額以上支払われている場合は
労基法第37条に違反しないと解される。」(前掲通達

事例の場合は、割増賃金相当部分と通常の労働時間に対応する
賃金部分とを明確に区別していないが、

もし、当該労働者の前年度実績からみて一定の時間外労働
存在し、その分の割増賃金を含めて当年度の年俸額が
決められていることを労使双方が認識している場合は、

事例の場合も労基法第37条違反として取扱わないものと
考えられます。

しかし、その場合でも、労働契約の締結に際し、上記の内容に即し、
賃金の決定・計算の方法及び所定労働時間を超える労働の

有無について書面の交付により明示していないことについて
労基法第15条1項違反として取扱われることが考えられます。

なお、年俸に割増賃金を含むとしていても、
割増賃金相当額がどれほどになるのかが不明であるような場合

及び労使双方の認識が一致しているとは言い難い場合についても
労基法第37条違反として取り扱うこととしています。

また、次のような解釈例規もあります。

「年間の割増賃金相当額に対応する時間数を超えて時間外労働等を
行わせ、かつ、当該時間数に対応する割増賃金が支払われて
いない場合は、労基法第37条違反になること。

また、あらかじめ、年間の割増賃金相当額を各月均等に
支払うこととしている場合において、

各月ごとに支払われている割増賃金相当額が、各月の時間外労働等の
時間数に基づいて計算した割増賃金額に満たない場合も、
同条違反となることに留意されたい。」(前掲通達

○ 以上から、年俸に年間の時間外労働等の割増賃金を含めて
年俸額を決定する際には、以下の手順と内容で進めるべきものと
考えます。

(1)労働契約の締結に際し、年俸制採用する旨の合意と、
労働条件通知書等に年俸額のうち、割増賃金相当部分と通常の
労働時間に対応する賃金部分を明確に区別すること。

(2)前項の割増賃金相当額については、前年度の時間外労働等の
時間数の実績を明確にしたうえで、当年度の割増賃金相当額の
計算根拠を明確にすること。

(3)年俸制対象労働者であっても、毎月の労働時間管理を
適正に行い、年俸額に含まれる時間外労働等の各月の時間数と
比較し、実際の時間数が多い時は、その超過時間数相当分の
割増賃金を月ごとに精算すること。

○ 最後に、年俸制の場合の割増賃金の計算方法を
参考までに示しておきます。

割増賃金の計算の基礎となる1時間当たりの賃金単価の
計算方法は、労基法施行規則第19条に規定されています。

最も多いと思われる月給制の場合の賃金単価の計算式は

1時間当たりの賃金単価=月給額÷1年間における1か月平均
                所定労働時間数 となります。

そこで、年俸制の場合は、同条1項5号にこうあります。

「月、週以外の一定の期間によって定められた賃金については、
前各号に準じて算定した金額」と定めており、

年俸制の場合、この考え方に従うと、

1時間当たり賃金単価=年俸額÷1年間の所定労働時間数により
計算することになります。

例えば、1日の所定労働時間8時間、年間休日日数120日の
場合、年間所定労働時間数は、
(365日-120日)×8時間=1960時間となり、

事例の年俸額720万円の場合、1時間当たり賃金単価
=720万円÷1960時間=3673.47円となります。

従って、1時間当たりの割増賃金(25%割増)は
3673.47円×1.25≒4592円となります。

最後に確認の意味で申し添えますが、
年俸制労働者であれば割増賃金を支払わなくて良いのではなく

その年俸制の対象者が、法人の代表者や執行機関等の役員か、
労基法第41条2号に規定する「管理監督者」である場合には
割増賃金支払の必要はないということに留意する必要があります。

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■■ 編集後記 ■■
きょうも最後までお読みいただきありがとうございます。

有名な「三権分立論」を提唱し、現代の議会政治のあり方を
確立したフランスの思想家、ルソー。

「東洋のルソー」と称された、明治期の自由民権運動の指導者
中江兆民。彼は、53歳のとき大病を患い、医師から「余命は
1年半」と宣告されてから、

彼は死と対決しながらわずか4カ月で「一年有半・続一年有半」
という政治・文学等を論じた2冊の本を上梓しました。

その中で、兆民は、次のように叫んでいます。

「今も政府は、我々人民の給料によって生活する人民の集合体である。
我々人民が、必要な用事をさせる為に雇った使用人である。

にもかかわらず、彼らが人民のために働かないのは、
人民の財布の盗賊ではないか。」と。

100年以上前の兆民の指摘が、そのまま現在を射通しています

政府とは、議員・官僚を含めた総体を指しますが、
冒頭の辻本議員をはじめ、この国民の血税の盗賊まがいの姿は
皆さんがよくご承知のことと思います。

一方で、ソフトバンク社長の孫正義氏は、「国難の時、
経済人である前に人の命を思う人物でありたい」と語り、

個人資産から100億円を寄付することを明言するとともに、
代表職を引退するまでの役員報酬も全額寄付するとした。

私は、本当に感動しました。日本にも、こういう高潔な国士が
いたのだと。

一方、東京電力では役員報酬の50%をカットすると発表しました。
それでもなお、約1800万円程度の収入があるという。

サラリーマンから見ると超高収入のほんの一部の者のことでしょう。
責任論から考えて、まったくおかしな対応ではないでしょうか。

人は最も厳しい環境に置かれたときに真の人物とその真価が
発揮される、と言われることを実感する思いだ。

では、また次号でお会いしましょう。
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