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パートから正社員に登用した際に試用期間を設けてもよいか?

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 経営・労務管理ビジネス用語の
   あれっ! これ、どうだった?!

  第48回  パートから正社員に登用した際に
             試用期間を設けてもよいか?
 
<第63号>      平成23年5月30日(月)
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発行人のプロフィル⇒ http://www.ho-wiki06.com
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こんにちは! 
メルマガ初訪問の皆さま、ありがとうございます。

1週間のご無沙汰でした。
亥年のアラ還、小野寺です。

皆さんもよくご存じのように、大震災の発生以降、ACジャパン(
旧公共広告機構)のテレビコマーシャルで次の一節が目立っています。

「心はだれにも見えないけれど心づかいは見える」
「思いは見えないけれど思いやりはだれにでも見える」

ところが永田町ではこれをもじり、菅直人首相を当てこすった
こんな言葉が流通しているという。

「心はだれにも見えないけれど『下心』は見える」
「思いは見えないけれど『思惑』はだれにでも見える」

そこには保身はあっても、段ボールで仕切っただけの避難所で
不自由な生活を余儀なくされながらも、一刻も早い政府の
手当を待つ被災者への視点はない・・・

さて、本論ですが、ある会社で、新規採用・中途採用を問わず、
正社員として採用した際には、3カ月間の試用期間を設けているが、

今後、パートタイマーを正社員に登用する場合、
試用期間を設けてもよいか、との相談がありました。

今回は、この点について考えてみます。

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◆◆ 試用期間とは~その法的性格~ ◆◆

○ 試用期間とは、一般に本採用の前に行われる
正規従業員としての適格性は家庭のための「試みの使用期間」の
ことを言います。

多くの企業では、従業員採用に当たり、書類審査や面接などの
選考過程を経てその採否を決定しているものと思います。

そして、採用決定後、選考過程だけでは把握することが難しい
採用労働者の職務遂行能力、職場への適応性・協調性等を

掌握するために、入社後の一定期間を試用期間として
設定しているものです。

○ ところで試用期間を設けるか否かについての法的な規制は
ありません。従って、試用期間に関する定めは、
当事者間において自由に決定することができます。

ただし、試用期間を設ける場合には、
その期間や期間中の処遇などについて就業規則等に定めておく
必要があります。

そして、この試用期間中の労働関係の法的性格については、
試用期間中に従業員が不適格であると企業が判定したときには

労働契約を解約できる旨の特約上の解約権が留保されていると
しています。

しかも、その判断基準は通常よりも広い範囲の解約権が
留保されているところから、
「解約権留保付労働契約」であると解されています。

◆◆ 本採用拒否の有効性 ◆◆

○ 裁判例(「三菱樹脂事件」昭48.12.12最高裁大法廷)では
次のように判示しています。

「企業者が採用決定後における調査の結果により、
または、試用(期間)中の勤務状態等により、

当初知ることができず、また知ることが期待できないような
事実を知るに至った場合において、そのような事実に照らして

その者を引き続き当企業に雇用しておくのが適当でないと
判断することが、・・・解約権留保の趣旨、目的に照らして、

客観的に合理的な理由が存し、社会通念上相当として
是認されうる場合にのみ許される。」としています。

判決の中にある「客観的に合理的な理由」と「社会通念上相当」
の2点は、解雇の有効性を判断する基準として昭和50年の
最高裁判決(日本食塩製造事件)で確定したものです。

平成20年3月1日に施行された労働契約法においても、
第15条(懲戒)、第16条(解雇)の規定にも、

上記の「客観的に合理的な理由」と「社会通念上相当」との
文言が置かれており、さらに
これらの2点についての主張立証責任使用者側にあります。

ただし本件のように、試用期間を通じて従業員の適格性を
判断する場合は、

その判断基準について就業規則等に定めていることが多く、
その事由、例えば、職務遂行能力が当企業で予定していたよりも
かなり低いこと、

協調性が著しく欠けていること、企業秩序を乱す行為が多いこと
等に該当する場合に、
普通解雇することは認められるものと考えます。

だからといって、少なくとも試用期間中であれば、
恣意的に、又は簡単に本採用拒否できるという考え方は
適切ではありません。

◆◆ 試用期間の長さはどの程度が妥当か ◆◆

○ 試用期間の長さは、その目的に照らして
合理的なものでなければならないとされています。

あるデータによると、約7割の事業所が試用期間
設定しており、その期間は「3カ月」が最も多くなっています。

従って、不必要に長い試用期間は公序良俗に反し
無効とされる場合もあります。

例えば、裁判例(「ブラザー工業事件」昭59.3.23名古屋
地裁判決)では、

見習期間としての2か月を経過後に、さらに6か月ないし
1年の試用期間を設けたことについて、

試用期間に関する部分は無効であると判示しています。

なお、試用期間の長さについて必要な場合、
例えば職種ごとに一律でなくてもよいとされ、

その職種の特殊性、難易度等によってその能力や適性を
見極める期間が異なることが考えられます。

その場合は、就業規則等に職種ごとの試用期間の長さや、
場合によっては、その延長や短縮の措置も含めて
規定することによって差し支えないものと思います。

また、その方がその事業所の実態に応じた実質的な
ものになると考えるものです。

◆◆ パートタイマーの正社員化に伴う試用期間
                 設定は有効か ◆◆

○ さて本件の場合は、パートタイム労働者として雇用していた
者を正社員に登用した際にも、試用期間を設けても
よいかどうかということです。

類似のケースの裁判例として、労働組合との協定に基づき、
嘱託雇用していたタクシー運転手を正社員に転換した際、

労働者との同意の下に1か月の試用期間を設けたことについて
次のように判示しています。

雇用が継続中に試用期間を設けることは、試用という
文言それ自体の趣旨から、原則として許されないものと
解すべきである。

このことは、労働者の合意があっても同様である。
ただ、タクシー運転手として雇用されていた者が一般の
事務員となり、あるいはその逆の場合のように、

新たに雇用したと同視できるような例外的な場合に限り、
雇用途中の試用期間の設定が許されるものというべきである。」
(「ヒノヤタクシー事件」平元8.16盛岡地裁判決)と。

○ この判決を踏まえて本件について考えてみますと、
パートタイマーから正社員への登用に伴って、

職務の変更があったか否かが1つのポイントと
なるものと思います。

基本的にパートタイマーから正社員に登用する訳ですから
当該社員の職務遂行能力や職場への適格性については
十分に把握していることと考えられ、

もし職務に変更がなく同一である場合は、試用期間の趣旨と
目的から考えた場合、無効とされる可能性が高いと言えます。

また、正社員登用後、パートタイマー時とは
まったく異なる職務に変更する場合は、

当該社員の同意を得て、必要な試用期間を設定することは
有効とされる可能性が高いと考えられます。

ただし、いずれの場合も、就業規則等に試用期間の設置の有無、
その期間の長さ及び期間中の処遇等に関して
明確に定めておく必要があります。

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■■ 編集後記 ■■
きょうも最後までお読みいただきありがとうございます。

やはり、震災に関して触れざるを得ません。
ある雑誌の鼎談で、今回の大震災と1923年に勃発した
関東大震災に関しての記事のなかで、

最も異なっているのは、今回は「政府に後藤新平がいないことだ」
と語っていました。

後藤新平とは、現在の岩手県奥州市の出身であり、明治から
昭和初期の医師、官僚、政治家であり、現在のNHK日本放送
協会の初代総裁にもなっています。

関東大震災の当時、山本権兵衛首相のもとで内務大臣の職にあり
震災後の復興は後藤新平を中心に進められました。

後藤の動きは大変に早く、震災の翌日には復興計画を提出しています。
中でも、復興費に30億円(当時)を要すべしとしています。

現在の価格で、約175兆円位といいます。後藤は、大風呂敷との
あだ名も冠されていましたが、この予算は最終的に5分の1にまで
削られたといいますが、それでも約35兆円です。

そして、東京が大被害を受けたが、遷都すべからず、として
東京再建に死力を尽くしたといいます。

いかがでしょうか。
先週、サミットに行って得意満面の菅さんですが、

いまだ復興全体の予算すら明確になっていなくで、よく恥ずかしくなく
行ったものだ、との霞が関のツィッターが聞こえそうですが、

どう評価すべきなのでしょうか。

では、また次号でお会いしましょう。
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