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経営・
労務管理ビジネス用語の
あれっ! これ、どうだった?!
第49回
パワー・ハラスメントは
どこまで許されるか?
<第64号> 平成23年6月6日(月)
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発行人のプロフィル⇒
http://www.ho-wiki06.com
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こんにちは!
メルマガ初訪問の皆さま、ありがとうございます。
1週間のご無沙汰でした。
亥年のアラ還、小野寺です。
ある日の労働相談で、女性の相談者が悲痛な声で
毎日のように女性上司からいじめにあっており、これは
パワー・ハラスメントでないのか、精神的にもおかしく
なりそうです、と訴えてきました。
今回は、この点について考えてみます。
★☆[今日のちょっといい話]★☆★☆★☆★☆★☆★☆★
●99歳の詩人、柴田トヨさんが語っています。
「もらった思いやりは身にしみて、大事にしまっておく。
そうすると自分がいかに生かされてきたかがわかってくる。
つらいこと、悲しいこと、情けないこと、いろんなことが
あったからこそ、幸せが実感できるんです」
★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★
◆◆
パワー・ハラスメント(
パワハラ)とは ◆◆
○
セクシャル・ハラスメント(
セクハラ)については、
法律(
男女雇用機会均等法第11条)にも規定され、
各企業等においても
就業規則等でその防止その他に関して
定めていることが多いようです。
一方、
パワー・ハラスメント(
パワハラ)に関しては、
従来、「上司の部下に対する指導」という名目で、
表面化することは極めてまれなことでしたが、最近では
クローズアップされ、問題となってきています。
○
パワー・ハラスメント(Power Harassment)という言葉は、
直訳すると、権力による嫌がらせとなりますが、
一般に、職場において仕事上の上下関係や権利関係を
不当に利用することによる嫌がらせ、いじめなどを指す
言葉とされています。
セクハラ(Sexual Harassment)は、国際的にも共通した
用語ですが、
パワハラという言葉は、
株式会社クオレ・シー・キューブ代表の
岡田康子氏がその著書『許すな!
パワー・ハラスメント』の中で
生み出された和製英語で、その中での定義は、
「職権などのパワーを背景にして、本来の業務の範疇を超えて
継続的に人格と尊厳を侵害する言動を行い、就業者の
働く関係を悪化させ、あるいは
雇用不安を与えること。」と
なっています。
○ 今、大きな社会問題となっている家庭内暴力が
ドメスティック・バイオレンスとして犯罪であるのに対して、
会
社内暴力もオフィス・バイオレンスとして
犯罪と同視して対処すべきであるという方向にもあります。
しかも
パワハラは、部下の能力や落ち度の問題だけではなく
上司のマネジメント能力やダイバーシティー(職場内多様性)の
無さの問題と考えられるようになってきています。
つまり、上司が信頼されていない会社で最も
モチベーションが
下がり、その能力の無さを暴力的な叱責で補おうとする
傾向にあり、
かえって、そのことが会社にとって致命的なミスに
つながることが明らかとなっています。
◆◆
パワハラと判断される可能性が高い事例 ◆◆
1.クビ(解雇)にするぞ!と脅す場合。
○
労働者をクビ(解雇)にするには、
客観的にみて合理的理由があり、社会通念上相当であると
判断されるだけの根拠が必要とされています。
(
労働契約法第16条)
従って、解雇されるほどの理由がないにも関わらず、
「お前なんかいつでもクビに出来る」というような言動で、
半ば強制的に
労働者を従わせようとする行為は
パワハラと判断される可能性が高いといえます。
○ また、解雇とまでは言わなくても、
「この仕事、君には向いていないんじゃない?」とか
「転職を考えた方がいいよ」
などのように、転職・
退職を促すような発言も
パワハラになる可能性が高いと考えます。
2.必要以上にミスを追及する場合。
○ 些細なミスであるにも関わらず必要以上に
怒鳴りつけたり、公衆の面前で指摘を繰り返すことによって
労働者に対してストレスを与えるというのも、
パワハラの
可能性が高い事例といえます。
酷い場合には暴力にまで及ぶこともあり、
これは
パワハラというだけでなく、傷害罪などの刑事罰に
問われる可能性もあります。
3.残業を強要する場合。
○
所定労働時間内ではとても終わりそうにないような
仕事を押し付けたり、
「まさか
残業代なんか付けないよな?」というように
サービス残業を強制的に行わせることも
パワハラと判断される可能性が高いといえます。
4.無視する、仕事を与えない場合。
○ 仕事場から強制的に退去させられたり、仕事を一切
与えられない、話しかけても無視されるという場合、
労働者にとっては耐えられないストレスとなることも多く、
こういうケースも
パワハラと判断される可能性が
高いといえます。
5.飲み会への参加、飲酒を強要する場合。
○
就業時間以外の行動を束縛することも、飲酒を強要する
ことも、仕事上の権限を越えた不当な暴力行為となります。
従って、それらの誘いを断った際に不利益な扱いを
受けた場合も同様に、
パワハラに該当する可能性が
高くなると思います。
◆◆
パワハラ裁判例から~日研化学事件~ ◆◆
1.事案の概要。
○ Y社は、医薬品の製造・販売等を業としており、
そこに勤務するXは医薬情報担当の職員であったが、
Xの所属する2係の営業成績はY社の下位にあったため、
その体質改善を図るためAを新たに2係長にした。
○ Aは単純で一途な性格であり、赴任当初よりXに対して
次のような厳しい言葉を浴びせていた。
(1)Xの存在が目障りだ。居るだけで皆が迷惑している。
お前のカミさんも気がしれん。お願いだから消えてくれ。
(2)車のガソリン代がもったいない。
(3)お前は会社を食いものにしている、給料泥棒。
(4)Xは誰かがやってくれるだろうと思っているから、
何にも堪えていないし、顔色ひとつ変わっていない。
(5)病院の廻り方がわからないのか。勘弁してよ。
そんなことまで言わなきゃいけないの。
(6)肩にフケがベターと付いている。お前病気と違うか、など。
○ Xはその後、徐々に元気がなくなり8か月経った頃から
身体に変調が表れるようになり、仕事上のミスも続き、
A係長に代わってから約1年後、Xは家族や上司等に宛てた
8通の遺書を残して自殺した。
Xの妻は、Xが勤務していたY社における業務に起因する
精神障害によるものであるとして、労基署長に対し
労災保険法に基づき
遺族補償給付の支払を請求したが、
同労基署長が不支給処分をしたため、
妻が、その取消を求めて提訴した事件。
2.判決の主文(平19.10.15東京地裁判決)
○ Xの自殺に
業務起因性が認められるとして、労基署長の
処分を取り消した。
3.判決の要旨。
○ Y社における2係の勤務形態として、XがA係長から受ける
厳しい言葉を、心理的負荷のはけ口なく受け止めなければ
ならなかった。
そしてXは上司であるA係長の言動により、
社会通念上、客観的にみて精神疾患を発症させる程度に過重な
心理的負荷を受けており、
Xは業務に内在ないし随伴する危険が現実化したものとして、
精神障害を発症したと認めるのが相当であるとして、
次のように判示しています。
「業務に起因して精神障害を発症したXは、当該精神障害に
罹患したまま、正常の認識及び行為選択能力が当該精神障害により
著しく阻害されている状態で自殺に及んだと推定され、
この評価を覆すに足りる特段の事情は見当たらないから、
Xの自殺は、故意の自殺ではないとして
業務起因性を
認めるのが相当である。」として、労基署長の
遺族補償給付
不支給処分を取り消したものです。
○ このように本裁判例では、
パワハラの存在を認めての
判決となりましたが、
実は、何が
パワハラとなるか、まだ明確な基準や、
これを規律する法律はありません。
つまり、上司としては部下の実力養成のために厳しく
指導しているだけのつもりであったり、会社の雰囲気が
いわゆる体育会系のためであったりして、
パワハラであるとの認識が欠如していることも
多いと思われます。
従って、冒頭に挙げた具体例も、
パワハラになる
可能性が高いという事例であり、
その一つひとつが直ちに
パワハラと認定されるとは言えず、
実際には個々の事案に即して総合的に勘案して
判断されることになります。
ただ、一般論としては、次のいずれにも該当する場合に
パワハラと認定されるようです。
(1)上司の部下に対する言動(いじめ)が、業務指導の
範囲を超え、言葉自体が過度に厳しかったり、
嫌悪の態度を示すなどして、部下の人格・尊厳を
著しく傷つけるものであること。
(2)上司のいじめが、ある程度継続していること。
(3)上司のいじめにより、部下がストレス(人生の中で
まれに経験することもある強いストレス)を
感じるものであること。
◆◆
パワハラと労災認定 ◆◆
○ 近年、職場でのストレスが原因でうつ病などの
精神障害となり労災認定を受ける
労働者が増加しています。
また、自殺の場合も
業務起因性が認められれば
労災認定を受けることができます。
ただし、
労災保険法では、
労働者の「故意」による
死亡については
保険給付を行わないと規定しているため
(法第12条の2の2第1項)、
自殺時に正常な判断能力を有していると認められる場合
(例えば遺書を残している場合など)には、
「故意」の自殺として
業務起因性が否定される傾向に
ありました。
その意味で、上記の裁判例の場合、被害者が数ケ月前から
遺書を準備するなど、正常な判断能力を有していたという
事情があったにも関わらず、
事実認定の中で、特に深刻な
パワハラの事実を重く
みたからでしょうか、自殺にまで
業務起因性を認めた点で
注目に値するとされています。
◆◆
パワハラに対する実務対応例 ◆◆
○ 一般に、
使用者は
従業員との関係において、
社会通念上伴う義務として、
従業員が
労務に服する過程で生命及び健康を害しないよう
職場環境等につき配慮すべき注意義務を負っていますが、
そのほかにも、
労務遂行に関連して
従業員の人格的尊厳を侵し
その
労務提供に重大な支障をきたす事由が発生することを防ぎ、
又はこれに適切に対処して、職場が
従業員にとって
働きやすい環境を保つように配慮する義務、いわゆる
職場環境配慮義務を負っています。
従って、
パワハラ行為が職場内に発生している場合には、
これを是正する義務があり、この義務に違反すると
使用者責任を問われることになります。
○ その意味から、
パワハラが発生しないように事前の
対応策が必要であり、それでも発生してしまった場合の事後の
対応策も必要となります。
1.事前の対応策。
(1)
就業規則等において
パワハラを禁止する旨を規定として
明記すること。
(2)
パワハラが違法であることを啓発するポスターを掲示したり
リーフレットを作成・配布すること。
(3)管理職及び
従業員に対し、
パワハラを防止するための
研修・講習を実施すること。
(4)社内に
パワハラに関する相談窓口を設け、専門の担当者による
相談の受付、苦情処理等が出来るようにすること。
(5)社内における
パワハラの実態を把握するためのアンケート
調査を実施し、必要に応じてその結果を公表すること。
2.事後の対応策。
(1)専門の担当者が当事者、関係者から事情を詳しく聴取すること。
(2)調査結果を踏まえて、被害者と加害者との関係を
改善するための助言等の適切な援助を行い、必要に応じて
配置転換、
休職命令等の
人事権を行使すること。
(3)上司の
パワハラが意図的な場合には、
懲戒処分を
検討すること。
などの措置を講じる必要があります。
その際、当事者や関係者のプライバシーに配慮し、相談等の事実を
不利益に取り扱わないことが大事なポイントとなります。(了)
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■■ 編集後記 ■■
きょうも最後までお読みいただきありがとうございます。
6月2日の衆議院本会議で菅内閣不信任案が否決され、
菅総理が引き続き政権を担うことになりました。
国民の声でも、被災者が大変な状態にあるのに国会議員は
何を考えているのか等、非難の声が多いようです。
そして、これは正論です。
しかし「菅内閣は、誤った『政治主導』で官僚を使いこなせず、
被災者支援が後手に回った。特別立法の作業も遅れている。
原発事故の対応でも、誤った情報が何度も発表されたり、
閣内の意見が対立するなど、迷走が続く」(6/2読売社説)
状態を変えて、速やかな復興体制を築く為に必要としたものだ。
前日までは、小沢グループ、鳩山グループが賛成に回り
可決する可能性もあったが、
採決当日の昼、管総理が原発のメドがついたら退陣する、
との話に、逆に反対に回り、否決されたものでした。
内閣不信任案否決後の社説では「政府・与党が一丸となった
機動的な震災対応ができないことの一義的な責任は無論、
菅首相にある。猛省を求めたい」「首相退陣を引き延ばすことに
一体何の意味があるのか。結局、管政権の抱える問題を
先送りしただけである」(6/3読売)と。
間もなく、震災発生後3カ月を迎えるが、いまだ約10万人が
不自由な避難所生活を強いられている。原発も収束の時期が
まったく不透明だ。
さらに、原発の賠償問題で、東電の純
資産は約2・5兆円であり
10兆円とも言われる賠償金の支払い能力がないため、
その差額は、結局は電気料金の値上げとなって国民が払わされる
ことになるのは間違いないと専門家は言う。
しかも、東電社員は年収の2割カットですませ、高額と言われる
企業年金カットも計画に盛り込まれていないのだ。
まるで、破綻したJALと同じで、社会的な問題ともなったことは
記憶に新しいところだ。
あの阪神淡路大震災の時も、震災発生後1か月で多くの法律が
施行され、仮設住宅がかなり出来ており、すでに街には
復興のつち音が希望とともに高鳴っていたのだ。
菅首相は常に「こうする」「検討する」とよく言うが、「いつまでに
やる」「いつからやる」という言葉はほとんど聞いたことがない。
私は、これら諸々の対応をみてきて、管首相には真に必要とされる
リーダーシップがないと、どうしても言わざるを得ません。
皆さんは、どのようにお考えでしょうか。
では、また次号でお会いしましょう。
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★メールマガジン「経営・
労務管理ビジネス用語の
あれっ!これ、どうだった?!」
★発行責任者 小野寺 弘
★E-mail
info@ho-wiki06.com
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第49回 パワー・ハラスメントは
どこまで許されるか?
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こんにちは!
メルマガ初訪問の皆さま、ありがとうございます。
1週間のご無沙汰でした。
亥年のアラ還、小野寺です。
ある日の労働相談で、女性の相談者が悲痛な声で
毎日のように女性上司からいじめにあっており、これは
パワー・ハラスメントでないのか、精神的にもおかしく
なりそうです、と訴えてきました。
今回は、この点について考えてみます。
★☆[今日のちょっといい話]★☆★☆★☆★☆★☆★☆★
●99歳の詩人、柴田トヨさんが語っています。
「もらった思いやりは身にしみて、大事にしまっておく。
そうすると自分がいかに生かされてきたかがわかってくる。
つらいこと、悲しいこと、情けないこと、いろんなことが
あったからこそ、幸せが実感できるんです」
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◆◆ パワー・ハラスメント(パワハラ)とは ◆◆
○ セクシャル・ハラスメント(セクハラ)については、
法律(男女雇用機会均等法第11条)にも規定され、
各企業等においても就業規則等でその防止その他に関して
定めていることが多いようです。
一方、パワー・ハラスメント(パワハラ)に関しては、
従来、「上司の部下に対する指導」という名目で、
表面化することは極めてまれなことでしたが、最近では
クローズアップされ、問題となってきています。
○ パワー・ハラスメント(Power Harassment)という言葉は、
直訳すると、権力による嫌がらせとなりますが、
一般に、職場において仕事上の上下関係や権利関係を
不当に利用することによる嫌がらせ、いじめなどを指す
言葉とされています。
セクハラ(Sexual Harassment)は、国際的にも共通した
用語ですが、
パワハラという言葉は、株式会社クオレ・シー・キューブ代表の
岡田康子氏がその著書『許すな!パワー・ハラスメント』の中で
生み出された和製英語で、その中での定義は、
「職権などのパワーを背景にして、本来の業務の範疇を超えて
継続的に人格と尊厳を侵害する言動を行い、就業者の
働く関係を悪化させ、あるいは雇用不安を与えること。」と
なっています。
○ 今、大きな社会問題となっている家庭内暴力が
ドメスティック・バイオレンスとして犯罪であるのに対して、
会社内暴力もオフィス・バイオレンスとして
犯罪と同視して対処すべきであるという方向にもあります。
しかもパワハラは、部下の能力や落ち度の問題だけではなく
上司のマネジメント能力やダイバーシティー(職場内多様性)の
無さの問題と考えられるようになってきています。
つまり、上司が信頼されていない会社で最もモチベーションが
下がり、その能力の無さを暴力的な叱責で補おうとする
傾向にあり、
かえって、そのことが会社にとって致命的なミスに
つながることが明らかとなっています。
◆◆ パワハラと判断される可能性が高い事例 ◆◆
1.クビ(解雇)にするぞ!と脅す場合。
○ 労働者をクビ(解雇)にするには、
客観的にみて合理的理由があり、社会通念上相当であると
判断されるだけの根拠が必要とされています。
(労働契約法第16条)
従って、解雇されるほどの理由がないにも関わらず、
「お前なんかいつでもクビに出来る」というような言動で、
半ば強制的に労働者を従わせようとする行為は
パワハラと判断される可能性が高いといえます。
○ また、解雇とまでは言わなくても、
「この仕事、君には向いていないんじゃない?」とか
「転職を考えた方がいいよ」
などのように、転職・退職を促すような発言も
パワハラになる可能性が高いと考えます。
2.必要以上にミスを追及する場合。
○ 些細なミスであるにも関わらず必要以上に
怒鳴りつけたり、公衆の面前で指摘を繰り返すことによって
労働者に対してストレスを与えるというのも、パワハラの
可能性が高い事例といえます。
酷い場合には暴力にまで及ぶこともあり、
これはパワハラというだけでなく、傷害罪などの刑事罰に
問われる可能性もあります。
3.残業を強要する場合。
○ 所定労働時間内ではとても終わりそうにないような
仕事を押し付けたり、
「まさか残業代なんか付けないよな?」というように
サービス残業を強制的に行わせることも
パワハラと判断される可能性が高いといえます。
4.無視する、仕事を与えない場合。
○ 仕事場から強制的に退去させられたり、仕事を一切
与えられない、話しかけても無視されるという場合、
労働者にとっては耐えられないストレスとなることも多く、
こういうケースもパワハラと判断される可能性が
高いといえます。
5.飲み会への参加、飲酒を強要する場合。
○ 就業時間以外の行動を束縛することも、飲酒を強要する
ことも、仕事上の権限を越えた不当な暴力行為となります。
従って、それらの誘いを断った際に不利益な扱いを
受けた場合も同様に、パワハラに該当する可能性が
高くなると思います。
◆◆ パワハラ裁判例から~日研化学事件~ ◆◆
1.事案の概要。
○ Y社は、医薬品の製造・販売等を業としており、
そこに勤務するXは医薬情報担当の職員であったが、
Xの所属する2係の営業成績はY社の下位にあったため、
その体質改善を図るためAを新たに2係長にした。
○ Aは単純で一途な性格であり、赴任当初よりXに対して
次のような厳しい言葉を浴びせていた。
(1)Xの存在が目障りだ。居るだけで皆が迷惑している。
お前のカミさんも気がしれん。お願いだから消えてくれ。
(2)車のガソリン代がもったいない。
(3)お前は会社を食いものにしている、給料泥棒。
(4)Xは誰かがやってくれるだろうと思っているから、
何にも堪えていないし、顔色ひとつ変わっていない。
(5)病院の廻り方がわからないのか。勘弁してよ。
そんなことまで言わなきゃいけないの。
(6)肩にフケがベターと付いている。お前病気と違うか、など。
○ Xはその後、徐々に元気がなくなり8か月経った頃から
身体に変調が表れるようになり、仕事上のミスも続き、
A係長に代わってから約1年後、Xは家族や上司等に宛てた
8通の遺書を残して自殺した。
Xの妻は、Xが勤務していたY社における業務に起因する
精神障害によるものであるとして、労基署長に対し
労災保険法に基づき遺族補償給付の支払を請求したが、
同労基署長が不支給処分をしたため、
妻が、その取消を求めて提訴した事件。
2.判決の主文(平19.10.15東京地裁判決)
○ Xの自殺に業務起因性が認められるとして、労基署長の
処分を取り消した。
3.判決の要旨。
○ Y社における2係の勤務形態として、XがA係長から受ける
厳しい言葉を、心理的負荷のはけ口なく受け止めなければ
ならなかった。
そしてXは上司であるA係長の言動により、
社会通念上、客観的にみて精神疾患を発症させる程度に過重な
心理的負荷を受けており、
Xは業務に内在ないし随伴する危険が現実化したものとして、
精神障害を発症したと認めるのが相当であるとして、
次のように判示しています。
「業務に起因して精神障害を発症したXは、当該精神障害に
罹患したまま、正常の認識及び行為選択能力が当該精神障害により
著しく阻害されている状態で自殺に及んだと推定され、
この評価を覆すに足りる特段の事情は見当たらないから、
Xの自殺は、故意の自殺ではないとして業務起因性を
認めるのが相当である。」として、労基署長の遺族補償給付
不支給処分を取り消したものです。
○ このように本裁判例では、パワハラの存在を認めての
判決となりましたが、
実は、何がパワハラとなるか、まだ明確な基準や、
これを規律する法律はありません。
つまり、上司としては部下の実力養成のために厳しく
指導しているだけのつもりであったり、会社の雰囲気が
いわゆる体育会系のためであったりして、
パワハラであるとの認識が欠如していることも
多いと思われます。
従って、冒頭に挙げた具体例も、パワハラになる
可能性が高いという事例であり、
その一つひとつが直ちにパワハラと認定されるとは言えず、
実際には個々の事案に即して総合的に勘案して
判断されることになります。
ただ、一般論としては、次のいずれにも該当する場合に
パワハラと認定されるようです。
(1)上司の部下に対する言動(いじめ)が、業務指導の
範囲を超え、言葉自体が過度に厳しかったり、
嫌悪の態度を示すなどして、部下の人格・尊厳を
著しく傷つけるものであること。
(2)上司のいじめが、ある程度継続していること。
(3)上司のいじめにより、部下がストレス(人生の中で
まれに経験することもある強いストレス)を
感じるものであること。
◆◆ パワハラと労災認定 ◆◆
○ 近年、職場でのストレスが原因でうつ病などの
精神障害となり労災認定を受ける労働者が増加しています。
また、自殺の場合も業務起因性が認められれば
労災認定を受けることができます。
ただし、労災保険法では、労働者の「故意」による
死亡については保険給付を行わないと規定しているため
(法第12条の2の2第1項)、
自殺時に正常な判断能力を有していると認められる場合
(例えば遺書を残している場合など)には、
「故意」の自殺として業務起因性が否定される傾向に
ありました。
その意味で、上記の裁判例の場合、被害者が数ケ月前から
遺書を準備するなど、正常な判断能力を有していたという
事情があったにも関わらず、
事実認定の中で、特に深刻なパワハラの事実を重く
みたからでしょうか、自殺にまで業務起因性を認めた点で
注目に値するとされています。
◆◆ パワハラに対する実務対応例 ◆◆
○ 一般に、使用者は従業員との関係において、
社会通念上伴う義務として、
従業員が労務に服する過程で生命及び健康を害しないよう
職場環境等につき配慮すべき注意義務を負っていますが、
そのほかにも、労務遂行に関連して従業員の人格的尊厳を侵し
その労務提供に重大な支障をきたす事由が発生することを防ぎ、
又はこれに適切に対処して、職場が従業員にとって
働きやすい環境を保つように配慮する義務、いわゆる
職場環境配慮義務を負っています。
従って、パワハラ行為が職場内に発生している場合には、
これを是正する義務があり、この義務に違反すると
使用者責任を問われることになります。
○ その意味から、パワハラが発生しないように事前の
対応策が必要であり、それでも発生してしまった場合の事後の
対応策も必要となります。
1.事前の対応策。
(1)就業規則等においてパワハラを禁止する旨を規定として
明記すること。
(2)パワハラが違法であることを啓発するポスターを掲示したり
リーフレットを作成・配布すること。
(3)管理職及び従業員に対し、パワハラを防止するための
研修・講習を実施すること。
(4)社内にパワハラに関する相談窓口を設け、専門の担当者による
相談の受付、苦情処理等が出来るようにすること。
(5)社内におけるパワハラの実態を把握するためのアンケート
調査を実施し、必要に応じてその結果を公表すること。
2.事後の対応策。
(1)専門の担当者が当事者、関係者から事情を詳しく聴取すること。
(2)調査結果を踏まえて、被害者と加害者との関係を
改善するための助言等の適切な援助を行い、必要に応じて
配置転換、休職命令等の人事権を行使すること。
(3)上司のパワハラが意図的な場合には、懲戒処分を
検討すること。
などの措置を講じる必要があります。
その際、当事者や関係者のプライバシーに配慮し、相談等の事実を
不利益に取り扱わないことが大事なポイントとなります。(了)
wwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww
■■ 編集後記 ■■
きょうも最後までお読みいただきありがとうございます。
6月2日の衆議院本会議で菅内閣不信任案が否決され、
菅総理が引き続き政権を担うことになりました。
国民の声でも、被災者が大変な状態にあるのに国会議員は
何を考えているのか等、非難の声が多いようです。
そして、これは正論です。
しかし「菅内閣は、誤った『政治主導』で官僚を使いこなせず、
被災者支援が後手に回った。特別立法の作業も遅れている。
原発事故の対応でも、誤った情報が何度も発表されたり、
閣内の意見が対立するなど、迷走が続く」(6/2読売社説)
状態を変えて、速やかな復興体制を築く為に必要としたものだ。
前日までは、小沢グループ、鳩山グループが賛成に回り
可決する可能性もあったが、
採決当日の昼、管総理が原発のメドがついたら退陣する、
との話に、逆に反対に回り、否決されたものでした。
内閣不信任案否決後の社説では「政府・与党が一丸となった
機動的な震災対応ができないことの一義的な責任は無論、
菅首相にある。猛省を求めたい」「首相退陣を引き延ばすことに
一体何の意味があるのか。結局、管政権の抱える問題を
先送りしただけである」(6/3読売)と。
間もなく、震災発生後3カ月を迎えるが、いまだ約10万人が
不自由な避難所生活を強いられている。原発も収束の時期が
まったく不透明だ。
さらに、原発の賠償問題で、東電の純資産は約2・5兆円であり
10兆円とも言われる賠償金の支払い能力がないため、
その差額は、結局は電気料金の値上げとなって国民が払わされる
ことになるのは間違いないと専門家は言う。
しかも、東電社員は年収の2割カットですませ、高額と言われる
企業年金カットも計画に盛り込まれていないのだ。
まるで、破綻したJALと同じで、社会的な問題ともなったことは
記憶に新しいところだ。
あの阪神淡路大震災の時も、震災発生後1か月で多くの法律が
施行され、仮設住宅がかなり出来ており、すでに街には
復興のつち音が希望とともに高鳴っていたのだ。
菅首相は常に「こうする」「検討する」とよく言うが、「いつまでに
やる」「いつからやる」という言葉はほとんど聞いたことがない。
私は、これら諸々の対応をみてきて、管首相には真に必要とされる
リーダーシップがないと、どうしても言わざるを得ません。
皆さんは、どのようにお考えでしょうか。
では、また次号でお会いしましょう。
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