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産前産後休業中の社会保険料を休業前に一括して徴収できるか?

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 経営・労務管理ビジネス用語の
   あれっ! これ、どうだった?!

  第56回  産前産後休業中の社会保険料
           休業前に一括して徴収できるか?
                        
<第71号>      平成23年7月25日(月)
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発行人のプロフィル⇒ http://www.ho-wiki06.com
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こんにちは! 
メルマガ初訪問の皆さま、ありがとうございます。

1週間のご無沙汰でした。
亥年のアラ還、小野寺です。

先週は、日本中、否世界中が沸きに沸きました。
「なでしこジャパン」が初めて世界一になったからです。

サッカー女子ワールドカップ(W杯)ドイツ大会の決勝戦で
それまで21敗の強豪・アメリカを下して優勝!!!

試合自体も、2度もリードされたのを追いつき、最後のPK戦で
勝つという劇的な勝利でした。

アメリカのサポーターも「米国を応援したが、日本の延長同点
ゴールに感動した。米国以外ならツナミの被害で苦しむ日本に
勝ってほしかった」とのコメントは、世界中の代弁と思います。

今回、4位となったフランスのメディアは、「沢主将のチームは
地震と津波で被災した国を励ますために試合に臨んだ」と
その奮闘を称えていました。

本当に、被災地及び被災者の皆さんに大きな癒しを与えて
くれたと共に、明日への勇気もいただいたことでしょう。

まさに、濃霧で一寸先が見えないとき、その霧が一気に晴れて
燦燦と太陽が照り輝くような思いでしたね。

なでしこジャパンの皆さま、本当にありがとうございました。

さて、本論ですが、育児休業期間中の社会保険料は労使ともに
免除されるが、産前産後休業期間中は免除されないと聞いた
ある会社の総務部長から、

会社としてその期間中も社会保険料を納付しなければならないが、
折半負担である当該社員負担分を休業に入る前に

一括して徴収することはできないでしょうか、
との相談がありました。

今回は、この点について考えてみます。

◆◆ 産前産後休業とは ◆◆

○ 会社は、妊娠中の女性社員が6週間(多胎妊娠の場合に
あっては、14週間)以内に出産する予定のため休業を
請求した場合は、その者を就業させることはできません。

また、産後8週間(うち6週間は強制休業期間)を経過しない
女性社員については、本人からの請求の有無にかかわらず
就業させることはできません。

ただし、産後6週間を経過した女性社員が就業を請求した場合に
その者について医師が支障がないと認めた業務に
就かせることはできます。

この産前6週間、産後8週間の休業を「産前産後休業」と
いいます(労働基準法、以下「労基法」第65条)。

○ 本条の趣旨については、女性が妊娠した以降について
医学的にみた場合、妊娠末期には胎児の成長が著しく、そのため
母体の負担が大きいとされています。

また、後期妊娠中毒症のような疾病を起こしやすく、早産の
危険性も高くなるため、出産前の一定期間は休養をとる
必要があるとしています。

また、出産後については妊娠・分娩という大きな生理的変化を
遂げた母体が妊娠前の状態に復するために一定期間を要するので

その間はやはり、休養をとることが必要となることから
定められたものです。

なお、多胎妊娠の場合に出産前14週間とされているのは、
単胎妊娠の場合と比べて、異常の発生及び妊婦負担が
大きいことと、

母体の状況等が単胎の場合の妊娠34週(=産前6週間前)は、
多胎の場合の妊娠26週(=産前14週間前)に相当するという
医学的知見をもとにしたものです。

◆◆ 産前産後休業中の賃金出産手当金 ◆◆

○ 産前産後休業中の賃金支払に関しては、法律上の定めは
特にありません。

従って、休業中の賃金を支払うか否かは各会社において
任意に定めることができます。その場合、いずれの措置を
採るにしても、就業規則等でその旨を規定する必要があります。

○ 健康保険法では、出産のために就業することができず、
その間、賃金が支払われない場合に、その間の生活を保障し、

安心して出産に係る休業ができるように賃金の一部が
補填される「出産手当金」の制度があります。

すなわち、出産手当金健康保険被保険者任意継続
被保険者を除く)が出産したときは、

出産の日(出産の日が出産の予定日後であるときは、出産
予定日)以前42日(多胎妊娠の場合においては98日)から、

出産の日の翌日から56日までの間において労務
服さなかった期間、

つまり、会社を休み就業することができない期間について、
休業1日につき標準報酬日額(筆者注:標準報酬月額

30分の1に相当する額)の3分の2に相当する額(円未満の
端数は四捨五入)が支給されます(健康保険法第102条)。

○ なお、初産の場合など、実際の出産日出産予定日よりも
遅れることはよくあることですが、その場合、

「6週間内に予定された分娩予定日よりも遅れて出産した場合に
予定日から出産当日までの期間は、産前の休業期間に含まれる」
(厚生労働省労働基準局編「労働基準法」下744P)と
解すべきとしています。

従って、出産手当金も、実際の出産日が予定日よりも遅れた場合の
出産予定日の翌日から出産日までも給付の対象となります。

さらに、支給期間中に日曜日、祝日等がある場合も労務
就かない限り、出産手当金は支給されます。

○ また、会社を休み就業することができない場合であっても、
その間、賃金が支払われている場合は、

出産手当金として支払われる額から、会社から支給された賃金額を
控除した額が支払われます。

従って、休業期間中、出産手当金より多い額の賃金が支払われる
場合には、出産手当金は支給されないことになります。

★☆[今日のちょっといい話]★☆★☆★☆★☆★☆★☆★

●グリー社長、田中 良和(ヨシカズ)さんの言葉です。

「僕が肝に銘じたのは、人の作り上げた仕事に対して『良い悪い』と
ジャッジだけする評論家のようになってはならないということ。

今、多くの若い人が無意識のうちにこの禁を犯している気がします。
自ら実行し、そして結果を問う。
その姿勢がなければ仕事とはいえない。」と。

1か月ほど前、「原発で手足ちぎられ酪農家」と牛舎の黒板に
書き残し、福島・南相馬市の50代の男性が自殺。

同じころ、福島県内に住む瓦職人の方々に瓦屋根修理の依頼が
一気に発注され、2人が過労と心労で自殺した。

仕事が出来なくて自殺する人、仕事があり過ぎて命を絶つ人。
仕事と人生について考えさせられますね。

★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★

◆◆ 社会保険料の控除 ◆◆

○ 健康保険料、介護保険料(年齢制限あり)、厚生年金保険
(以下「健康保険料等」)のいわゆる社会保険料は、

毎月の賃金から控除して労働者本人(被保険者)負担分を
徴収しますが、

法律上、控除することができる社会保険料は「前月分」に
限られます(健康保険法第167条、厚生年金保険料第84条)。

従って、前々月分までの保険料をまとめて控除したり、
前もって将来の分の保険料を控除することはできません。

ただし、退職するときに、前月分と当月分をまとめて
控除することは認められています。

○ 労基法第24条には、賃金の支払について五つの原則を
定めていますが、その中に「全額払の原則」が
定められています。

この趣旨は、賃金の一部を支払留保することによる労働者
足留を封ずるとともに、直接払の原則と相まって、

労働の対価を残りなく労働者に帰属させるため、
賃金からの控除を禁止したものです。

しかし、所得税の源泉徴収、社会保険料の控除のように
公益上の必要があるもの及び社宅料、購入物品の代金等、

事理明白なものについては例外を認めることが手続の
簡素化のためになり、実情にも沿うことから、

法令に別段の定めがある場合又は労使の自主的協定が
ある場合には、一部控除を認めることとしたものです。

○ このことは裁判例(「日新製鋼事件」平2.11.26最高裁
第二小法廷判決)でも「使用者が一方的に賃金を控除することを
禁止し、もって労働者賃金の全額を確実に受領させ、

労働者の経済生活を脅かすことのないようにして、その保護を
図ろうとするもの」と判示しています。

ただし、本人の同意を得て行う賃金との相殺については、
「右同意が同人の自由な意思に基づくものと認めるに足る

合理的な理由が客観的に存在するときは、
労働基準法24条1項に違反しない」(前掲判決)としています。

また、別の同種の裁判例でも、「賃金債権使用者労働者
対して有する債権とを、労使間の合意によって相殺することは、

それが労働者の完全な自由意思によるものである限り、
全額払の原則によって禁止されるものではない」(「東京保健生協
診療所事件」昭47.1.27東京地裁判決)と判示しています。

◆◆ ご相談の件について ◆◆

○ 冒頭のご相談の件については、先に述べたように
賃金から控除が認められている社会保険料は「前月分」に
限られますので、

会社として前月分以外の保険料を勝手に控除することは
できません。

ところで、育児休業の場合は、事業所の事業主が保険者等に
申出をしたときは、

育児休業を開始した日の属する月から、その育児休業
終了する日の翌日が属する月の前月までの期間、

被保険者並びに事業主の健康保険料等は徴収しないことと
されています(健康保険法第159条等)。

しかし、産前産後休業中は育児休業とは異なり社会保険料
免除されませんので、休業中も被保険者分の社会保険料

支払わなければならず、会社として本人より徴収する
必要があります。

○ そこで、徴収の方法については、あらかじめ休業に
入る前に当該社員と話し合い、同意を得て決める必要が
ありますが、

一般的な対応としては、次のような方法が考えられます。

(1)産前産後休業中の保険料を、月々、会社指定の口座に
振り込んでもらうこと。

(2)本人からの申請(依頼)に基づいて、産前産後休業の
前後(休業前又は復帰後)の賃金(又は賞与)から
まとめて控除すること。

なお、(2)の場合は、本人の申請に基づく控除であることを
明確にするため、

口頭ではなく、書面にして本人の意向が確認できるように
しておくことが大事となります。(了)

◆◇◆◇ お断り~本メルマガ休載の件~ ◆◇◆◇◆
 誠に勝手ながら、筆者の仕事上その他諸般の  
 事情により、しばらく休載させていただきます。
 また、再開の節は宜しくお願い致します。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
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■■ 編集後記 ■■
きょうも最後までお読みいただきありがとうございます。

●厚生労働省は、医療対策として重点的に取り組んできた、
がん、脳卒中、心臓病、糖尿病の「4大疾患」に、

新たに精神疾患を追加して「5大疾患」とする方針を
定めたとのことです。

この指定については2006年の医療法改正の際の
「医療計画」に明記され、患者の早期治療のため、

急性期の入院医療の重点化や訪問看護の充実などに
取り組むことになり、患者にとっては、医療の質と利便性が
高まることが期待されることになります。

うつ病や認知症などの精神疾患の患者は323万人と、
他の糖尿病患者237万人、がん患者152万人、脳卒中
患者134万人、心臓病患者81万人に比べ、

4大疾病の患者数を大きく上回っており、喜べない社会
現象となってきており、各事業所でもその対策に頭を
悩ましているほどです。

●精神疾患、特にうつ病等に罹患すると、自殺志向が格段に
高まることが指摘されていますが、

先日の警視庁発表によると、6月の自殺者数が前年同月比
7.8%増の2996人に達し、6月単月としては最多数という。

他方、生活保護世帯の水準の方が最低賃金よりも高いという
いわゆる逆転現象の都道府県が9都道府県に上ると発表。
特に北海道は時間給当たり31円と最大の乖離としています。

ところが、生活保護を受けている人の自殺率が10万人当たり
55.7人で全国平均の約2.2倍になるというデータがあります。

その心境についてコラムニストの河合馨氏は、
「生活保護が受けられれば、とりあえずは暮らしていける。なのに
どうしても働きたい、って必死に仕事を探す。仕事ができないって

いうのは、『お前は生きている意味がない』って、社会から
言われているような気持ちにさせるんだ」と、
知人の言葉を紹介しています。

河合氏は次のように指摘しています。
「自殺に至るには、複数の要因が重なっていることが多い。
生活保護を受けて、とりあえず生活できたとしても、経済的不安や

将来への不安は重くのしかかることだろう。社会的に孤立することも
関係しているかも知れない。

そして、『働けない』ことも、最後の決断の大きな引き金に
なったことは、想像に難くない。」と。

5大疾患の指定で、政治的な面の支援も受けながら、もう一点、
社会的セーフティネットの更なる構築も必要と考えるものです。

では、また再開後にお会いしましょう。
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★発行責任者   小野寺 弘
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