• HOME
  • コラムの泉

コラムの泉

このエントリーをはてなブックマークに追加

専門家が発信する最新トピックスをご紹介(投稿ガイドはこちら

最低賃金ぎりぎりの社員に対して減給の制裁は可能か?

vvvvvvvvvvvvvvvvvvvvvvvvvvvvvvvvvvvvvvvvvvvvvvvvvvv
 経営・労務管理ビジネス用語の
   あれっ! これ、どうだった?!

  第62回 最低賃金ぎりぎりの社員に対して
               減給の制裁は可能か?
                                   
<第77号>     平成23年11月7日(月)
vvvvvvvvvvvvvvvvvvvvvvvvvvvvvvvvvvvvvvvvvvvvvvvvvvv
発行人のプロフィル⇒ http://www.ho-wiki06.com
vvvvvvvvvvvvvvvvvvvvvvvvvvvvvvvvvvvvvvvvvvvvvvvvvvv

こんにちは! 
メルマガ初訪問の皆さま、ありがとうございます。

1週間のご無沙汰でした。
亥年のアラ還、小野寺です。

さて本論ですが、ある事業主から相談がありました。
同社の社員が、就業規則に規定する懲戒処分の「減給」に
該当する行為をしたため、

翌月の給料の中から1日について平均賃金の半額を
減給する予定でいるが、

その社員の給料は最低賃金ぎりぎりのため
減給すると最低賃金を下回ってしまうことになるが

この場合でも減給は可能か、とのことでした。

今回は、この点について考えてみます。

★☆[PR]★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★
労務管理全般について体系的に学びたいという方に是非!

●「募集・採用から退職までの労務管理~ビッグ社員ゲットの
ために!」(購読料630円/月)

・週1回、金曜日付発行。なお、申込当月分の購読料は
無料ですので、気軽に覗いてみて下さい。

・詳細は、以下からご覧ください。

http://www.mag2.com/m/0001323932.html

★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★

◆◆ 最低賃金法の目的、趣旨等 ◆◆

○ 最低賃金制度とは、最低賃金法に基づき、
国が賃金の最低限度を定め、使用者は、その最低賃金額以上の

賃金労働者に支払わなければならないという制度のことです。
最低賃金法<以下「最賃法」>第4条第1項)

そして、その目的は賃金の低廉な労働者について、
賃金の最低額を保障することにより労働条件の改善を図り、

それにより労働者の生活の安定と労働力の質的向上を
うながすこととなり、

事業所の公正な競争の確保に資するとともに、国民経済の
健全な発展にも寄与することとしています(最賃法第1条)。

○ また仮に、最低賃金額より低い賃金を、
使用者労働者双方の合意のもとに定めたとしても、

それは同法第4条第2項により無効となり、最低賃金額と
同様の定めをしたものとみなされます。

従って、最低賃金額未満の賃金しか支払わなかった場合には、
最低賃金額との差額を支払わなければなりません。

そして、地域別最低賃金額以上の賃金額を支払わない場合には
罰則(同法第40条=50万円以下の罰金)が
定められています。

○ ところで平成23年度の地域別最低賃金額が決定され、
9月30日から11月6日にかけて都道府県別に
施行されました。

本年は東日本大震災の影響を考慮して、
中央最低賃金審議会の答申では、38県が最小の「1円」の
引上げ幅とされていましたが、

最終的に東北地方を中心に10県のみとなっています。

また、近年、生活保護水準と最低賃金との逆転現象が
大きな社会問題となっており、その解消が課題となって
いましたが、

昨年度まで9都道府県が逆転していましたが、今回の引上げで
6都府県が解消したものの、

北海道、宮城、神奈川の3道県が解消されませんでした。

なお、引上げ幅が大きかったのは、神奈川県(18円)、
東京都(16円)、北海道(14円)の2ケタの引上げであり
全国平均は7円の引上げ幅でした。

○ ちなみに、1か月の賃金計算期間の途中に施行日(
発効日)がある場合の賃金額の計算は、

最低賃金額の施行日(発効日)を基準にして、その前後で
別々に計算して合算し、1か月の賃金額を算定する
必要があります。

例えば、北海道のある事業所の賃金締切日が毎月20日で
10月6日が発効日でその日から時間給が705円となるため

賃金形態が時給額のパートタイマーの場合、
9月21日~10月5日までは旧最低賃金の691円で、
10月6日~10月20日までは705円で計算して、

それらを合算した額が1か月の賃金額となります。
決して、発効日の属する月の賃金締切日の翌日から適用とは
ならないことに注意する必要があります。

なお、最低賃金法は、通常の労働者(正社員等)はもとより、
パートタイマー、アルバイト等の非正規労働者も含め
全ての業種の労働者に適用されます。

◆◆ 減給の制裁の要件とは ◆◆

○ 一方、「減給の制裁」については、労基法第91条に
定められており、就業規則に規定を置く場合には

「その減給は、1回の額が平均賃金の1日分の半額を超え、
総額が一賃金支払期における賃金の総額の10分の1を
超えてはならない。」とはています。

○ 一般に「減給の制裁」とは、職場規律に違反した
労働者に対する制裁として、

本来であればその労働者が受けるべき賃金の中から
一定額を差し引くことをいいます。

従って、遅刻・早退又は欠勤に対して労働の提供が
なかった時間に相当する賃金だけを差し引く場合は、

その事業所の賃金制度のもとにおける1つの賃金計算方法で
あって、法91条にいう制裁としての減給には
該当しないとされています。

ただし、遅刻・早退の時間に対する賃金額を超える減給は
制裁とみなされ、同法の適用を受けることになります。
(昭63.3.14基発第150号

○ 減給の制裁規定は、通常、就業規則懲戒処分規定の中に
定めているものですが、

減給は労働者にとって、労働の対償として発生した賃金債権
減額することになるため、

その額が多額になると労働者の生活を脅かすことに
なりかねません。

そのため、労基法では、減給の制裁における額の上限について
上記のように、1回の額は平均賃金の半額までであり、

かつ、減給の総額も1賃金支払期における賃金総額の
10分の1までに制限しています。

条文にある「1回の額が平均賃金の1日分の半額を
超え」てはならないとは、

「1回の事案」に対しては、減給の総額が平均賃金の半額
以内でなければならないことを意味する(昭23.9.20基収
1789号)としています。

つまり、減給の制裁規定に該当する場合、
その1回の事案について平均賃金の1日分の半額ずつ
何日にもわたって減給してよいという意味ではありません。

従って、2個の懲戒事由(減給の制裁)に該当する行為が
ある場合には、それぞれについて平均賃金の1日分の
半額ずつ減給することは差し支えないとされています。

◆◆ 最低賃金と減給の制裁との関係 ◆◆

○ 本件冒頭の相談にあった減給したい社員の労働契約上の
賃金額は、最低賃金ぎりぎりの額であったとしても

最低賃金額を上回っているのですから、それ自体は
最低賃金法上の問題はありません。

本来、最低賃金は、所得税社会保険料等の必要控除後の
労働者が実際に手にする金額(手取額)の最低額を
定めているわけではなく、

労働契約上の賃金額の最低保障額のことです。

従って、もし最低賃金額を下回るような減給の制裁を
不可能とすると、

減給の制裁が有効に機能しないケースを作ってしまうことに
なってしまうとともに、

職場秩序の維持等のために必要な懲戒規定を適用する上で
労働者間に不公平なり不均衡を生じてしまうことにも
なってしまいます。

○ また、使用者にとっても最低賃金に近い賃金
雇用している労働者に対して、

他の労働者と同様に減給の制裁が適用できるように
するために、当初からその減給分を織り込んだ賃金設定を
することになり、

それは最低賃金額よりある程度高い賃金額を最低ラインと
することになり、最低賃金法上、不都合が生ずることに
なってしまいます。

◆◆ まとめ~結論として ◆◆

○ 以上から、労働契約上の賃金額が最低賃金額を
上回っていれば、

減給の制裁によって賃金を減額支給した結果、
実際に支払われる額が最低賃金額を下回ったとしても、

最低賃金法違反とはなりません。

また、上記の労基法第91条の範囲内で減給する限り、
同法違反ともなりません。(了)

wwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww
■■ 編集後記 ■■
きょうも最後までお読みいただきありがとうございます。

○ このたび「受動喫煙防止対策助成金」がスタートしました。
対象事業場は労基法別表第1第14号に規定する旅館、
料理店又は飲食店の中小企業となっています。

助成金は受動喫煙防止のために、新たに一定の基準を満たす
喫煙室等を設置した経費のうち、

工費、設備費、備品費及び機械装置費等の合計金額の
4分の1に相当する金額を助成するもので上限額が
200万円となっています。

○ ところで2007年6月にタイ・バンコクにおいて
「WHOたばこ規制枠組み条約(FCTC)第2回締約国
会議」が開かれましたが満場一致で決定しました。

この条約の第8条がいわゆる「受動喫煙防止条約」と
言われるもので、

この第8条及びガイドラインを誠意をもって実行しなければ
ならなくなりました。

すなわち、2010年2月までに、公共の場所はもとより、
職場、レストラン、交通機関など例外なく完全に
禁煙にしなければならなくなったのです。

○ ところが我が国ではすでに1年8か月も遅れているのに
いまだ完全禁煙体制とはなっておらず、

ここでも世界との約束を反故にしている恥ずべき現実が
あります。

しかも、助成金を用意してまで達成を促さなければならない
日本のモラルをも考えてしまいます。
誠に残念なことと言わざるを得ません。

では、また次号でお会いしましょう。
wwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww
★メールマガジン「経営・労務管理ビジネス用語の
         あれっ!これ、どうだった?!」
★発行責任者   小野寺 弘
★E-mail    info@ho-wiki06.com
★発行者サイト  http://www.ho-wiki06.com
★発行システム:『まぐまぐ』http://www.mag2.com/
★配信中止:http://www.mag2.com/m/0001103042.html
wwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww

絞り込み検索!

現在22,382コラム

カテゴリ

労務管理

税務経理

企業法務

その他

≪表示順≫

※ハイライトされているキーワードをクリックすると、絞込みが解除されます。
※リセットを押すと、すべての絞り込みが解除されます。

スポンサーリンク

経営ノウハウの泉より最新記事

スポンサーリンク

労働実務事例集

労働新聞社 監修提供

法解釈から実務処理までのQ&Aを分類収録

注目のコラム

注目の相談スレッド

スポンサーリンク

PAGE TOP