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消費者団体訴訟制度と違約金条項

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弁護士法人クラフトマン 第94号 2013-02-05
(旧 石下雅樹法律・特許事務所)

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1 今回の判例 消費者団体訴訟制度と違約金条項
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 京都地裁平成24年7月19日判決

 携帯電話の契約において、2年間といった一定期間契約をする代
わりに通話料を割り引き、そして中途解約の場合に違約金を支払う
ことになるという規定は珍しくありません。

 この訴訟では、適格消費者団体であるAが、携帯電話サービスを
提供するB社に対し、そのような解約金を定める契約条項が、消費
契約法9条1号・10条により無効であると主張して、同法12
条3項に基づき、B社に対し、上記解約金条項を内容とする契約
することの差止を請求しました。



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2 判決の内容
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 裁判所は、消費者契約法9条1号にいう損害について、解約によ
ってB社に生じる平均的損害として計算し、その結果、契約締結・
更新月から数えて22か月目の月末までに解約がされた場合に解約
金支払規定は有効であるが、23か月目以降に解約した場合には、
「平均的損害の額」の金額を超過する解約金支払規定は、超過額の
限度で消費者契約法9条1号により無効であると判断しました。



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3 解説
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(1)消費者団体訴訟制度とは

 本稿では、平成19年6月からスタートした比較的新しい制度で
ある消費者団体訴訟制度について取り上げたいと思います。

 従来、民事訴訟とは、相手方に対して法律上の権利を持つ人自身
が起こすべきものであって、(例外はあるものの)直接的に権利が
ない第三者が訴訟を起こすことはできませんでした。

 しかし、今回の例のような携帯電話の契約など、一方当事者が消
費者であり、かつ請求できる金額が少額であるような場合、その当
事者個人が訴訟を起こすことは、訴訟の費用や手間を考えると現実
的には無理ということが少なくありませんでした。

 それで、こうした問題を解決し、不特定多数の消費者の利益を守
るため、消費者団体訴訟制度が導入されました。つまり、事業者
不当な勧誘行為や契約条項の使用に対する法的な差止請求権を適 格
消費者団体に与え、当該消費者団体が事業者に差止訴訟を起こすこ
とができるようになったわけです。


(2)差止請求の対象となる行為

 現時点では、差止請求の対象となる事業者の行為は以下のような
ものです。

  ■ 消費者契約法に違反する行為
               (不当な契約条項、不当な勧誘)
  ■ 景表法違反行為(優良誤認表示)
  ■ 特定商取引法関連:
   ◇「訪問販売
       (不実告知等、クーリング・オフ、過大な違約金
   ◇「通信販売」(不実告知等)
   ◇「電話勧誘販売
       (不実告知等、クーリング・オフ、過大な違約金
   ◇「連鎖販売」
       (不実告知等、クーリング・オフ中途解約条項)
   ◇「特定継続的役務提供
       (不実告知等、クーリング・オフ中途解約条項)
   ◇「業務提供誘引販売」
       (不実告知等、クーリング・オフ、過大な違約金


(3)事業者としての留意点

 消費者向けの事業の場合、消費者である顧客が事業者と個別に契
約条件を交渉するということはなく、事業者側が約款や定形の契約
書を用意して消費者にサインを求める、という運用が一般的です。

 そして多くの消費者は、約款の規定を検討することなく契約して
いると思われます。そのため実は少なからず存在していた消費者側
に不当に不利な取引条件が、消費者団体訴訟制度が整備される前で
あれば顕在化することなく使用されていたと思われます。しかし、
消費者団体訴訟制度によって、そうした取引条件が顕在化する、と
いうリスクがより増大するようになったと考えられます。

 もちろん、事業者としては、消費者団体訴訟制度が整備される前
であっても、消費者側に不当に不利益を与える契約を締結すべきで
はないことはいうまでもありません。しかし、前記のような訴訟リ
スクや、さらに敗訴した場合に事業者のレピュテーションに与える
ダメージ等を考慮すれば、以前にも増して一層、この点留意すべき
であると考えられます。

 そのため、事業者としては、自主的な判断のもと、法的な観点か
ら消費者との契約内容を見直し、消費者契約法その他の趣旨に沿っ
た運用に努めることが、消費者にとっても、また当該事業者の長期
的利益の観点からも重要であるといえるかもしれません。
 


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