━━☆━━━━━━━━━━━━━ この定額残業制はNG ━━━━━━━━━━━━━
┏┏┏┏ ┏┏┏┏ ┏┏ C O N T E N T S┏┏┏┏ ┏┏┏┏ ┏┏
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┏┏ ◇ 定額
残業代の性格
┏┏ ◇ 合意された定額
残業代の許容範囲
┏┏ ◇ 会社独自の定額
残業代規定の有効性
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就業規則、
労働契約等を整備していても実態や運用によっては定額
残業代が否認されたケースをご紹介します***
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定額
残業代の性格
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アクティリンク事件(東京地裁平成24年8月28日)は、営業手当を月30時間分に相当する
時間外労働割増賃金として支払っていた事案です。
賃金規程で「営業手当は、
時間外労働割増賃金で月30 時間相当分として支給する」
と明記し、社員に周知させていたにもかかわらず、営業手当が
残業代ではないと判断されました。
営業手当の実際の運用として、下記の点が問題だったのです。
・売買事業部の
従業員が顧客と面談する際にかかる諸
経費をまかなう趣旨を含んでいたこと、
・業務部の
従業員も
時間外労働に従事しているにもかかわらず、業務部の
従業員に営業手当は支払われておらず、これと同趣旨の別の手当が支払われているわけでもない
以上の事実から、
『営業手当は、営業活動に伴う
経費の補充または売買事業部の
従業員に対する一種のインセンティブとして支給されていたものとみるのが相当であり,実質的な
時間外労働の対価としての性格を有していると認めることはできない。』
とされたのです。
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合意された定額
残業代の許容範囲
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ザ・ウィンザー・ホテルズインターナショナル事件(札幌高裁平成24年10月19日)は、パティシエである
従業員に
職務手当を月95時間分に相当する
時間外労働割増賃金として支払っていたが、45時間の定額
残業代については合意があったと認定し、
職務手当を45時間相当額の定額
残業代としてしか認めなかった事案です。
当事者間の定額時間外
賃金に関する合意は、
時間外労働が何時間発生したとしても定額時間外
賃金以外には時間外
賃金を支払わないという趣旨のもので、95時間を超える残業が生じても,これに対して全く時間外
賃金を支払っていませんでした。
このような無制限な定額時間外
賃金に関する合意は,強行法規たる労基法37条以下の規定の適用を潜脱する違法なものであるから,これを全部無効であるとした上で,定額時間外
賃金の全額を
基礎賃金に算入して時間外
賃金を計算することも考えらました。
しかし裁判所は、合意を強行法規に抵触しない意味内容に解することが当事者の合理的意思に合致する場合には、強行法規に反する合意を直ちに全面的に無効なものと解するのは相当でない。だから本件では、一定時間の残業に対する時間外
賃金を定額時間外
賃金の形で支払う旨の合意であると解釈するのが相当である。
として、争点を
職務手当が何時間分の時間外
賃金として合意されたと認めるべきかを検討しました。
そして、労基法36条の上限として周知されている月45時間としたのです。
結果、判決は
『本件
職務手当は,45時間分の通常残業の対価として合意され,そのようなものとして支払われたものと認めるのが相当であり,月45時間を超えてされた通常残業及び
深夜残業に対しては,別途,
就業規則や法令の定めに従って計算した時間外
賃金が支払われなければならない。』
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会社独自の定額
残業代規定の有効性
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木下工務店事件(東京地裁平成25年6月26日)は、
会社独自の定額
残業代規定や個別
労働契約の内容が、内訳が不明確であるうえ、
割増賃金に当たる部分がそれ以外の
賃金部分と明確に区別されているとはいえない。とし規定、
契約が無効とされた事案です。
規定の内容:
「営業SF職・AL職の
基本給及び
調整給の60%或いは65%を本給とし,40%ないし35%を超過勤務・
深夜勤務・
休日勤務手当とする。」
労働条件通知書:所定時間外,
休日又は
深夜労働に対して支払われる
割増賃金率の項において,「みなし
労働者や年俸者の場合は金額の4割を相当分としています。」と記載されている。
判決は
『「eの給与の40%が85時間相当の
みなし残業代であったと主張するが、計算式には,
休日,深夜,月60時間超の割増が考慮されていない。給与の40%に相当する
時間外労働時間は,
休日,深夜,月60時間超,の時間がそれぞれ何時間あったかで変動するものであって,規定だけからは,給与の40%に相当する
時間外労働時間を確定することができない。したがって,
割増賃金に当たる部分がそれ以外の
賃金部分と明確に区別されているとはいえない。
仮にeが給与の40%が
みなし残業代であることに納得していたとしても,無効な給与規則に基づくものである以上,その合意も無効である。』
これら事例から解ることは、
他の手当を名目としたいわゆる定額
残業代の支払が許されるためには
★実質的に見て、この手当が
時間外労働の対価としての性格を持っていること
★支給時に支給対象の
時間外労働の時間数と
残業手当の額が
労働者に明示され、定額
残業代によってまかなわれる残業時間数を超えて残業が行われた場合には別途清算する旨の合意が存在するか、少なくともそうした取扱いが確立していること
が必要不可欠条件である、といえそうです。
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┏┏ ◇ 合意された定額残業代の許容範囲
┏┏ ◇ 会社独自の定額残業代規定の有効性
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***就業規則、労働契約等を整備していても実態や運用によっては定額残業代が否認されたケースをご紹介します***
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定額残業代の性格
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アクティリンク事件(東京地裁平成24年8月28日)は、営業手当を月30時間分に相当する時間外労働割増賃金として支払っていた事案です。
賃金規程で「営業手当は、時間外労働割増賃金で月30 時間相当分として支給する」
と明記し、社員に周知させていたにもかかわらず、営業手当が残業代ではないと判断されました。
営業手当の実際の運用として、下記の点が問題だったのです。
・売買事業部の従業員が顧客と面談する際にかかる諸経費をまかなう趣旨を含んでいたこと、
・業務部の従業員も時間外労働に従事しているにもかかわらず、業務部の従業員に営業手当は支払われておらず、これと同趣旨の別の手当が支払われているわけでもない
以上の事実から、
『営業手当は、営業活動に伴う経費の補充または売買事業部の従業員に対する一種のインセンティブとして支給されていたものとみるのが相当であり,実質的な時間外労働の対価としての性格を有していると認めることはできない。』
とされたのです。
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合意された定額残業代の許容範囲
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ザ・ウィンザー・ホテルズインターナショナル事件(札幌高裁平成24年10月19日)は、パティシエである従業員に職務手当を月95時間分に相当する時間外労働割増賃金として支払っていたが、45時間の定額残業代については合意があったと認定し、職務手当を45時間相当額の定額残業代としてしか認めなかった事案です。
当事者間の定額時間外賃金に関する合意は、時間外労働が何時間発生したとしても定額時間外賃金以外には時間外賃金を支払わないという趣旨のもので、95時間を超える残業が生じても,これに対して全く時間外賃金を支払っていませんでした。
このような無制限な定額時間外賃金に関する合意は,強行法規たる労基法37条以下の規定の適用を潜脱する違法なものであるから,これを全部無効であるとした上で,定額時間外賃金の全額を基礎賃金に算入して時間外賃金を計算することも考えらました。
しかし裁判所は、合意を強行法規に抵触しない意味内容に解することが当事者の合理的意思に合致する場合には、強行法規に反する合意を直ちに全面的に無効なものと解するのは相当でない。だから本件では、一定時間の残業に対する時間外賃金を定額時間外賃金の形で支払う旨の合意であると解釈するのが相当である。
として、争点を職務手当が何時間分の時間外賃金として合意されたと認めるべきかを検討しました。
そして、労基法36条の上限として周知されている月45時間としたのです。
結果、判決は
『本件職務手当は,45時間分の通常残業の対価として合意され,そのようなものとして支払われたものと認めるのが相当であり,月45時間を超えてされた通常残業及び深夜残業に対しては,別途,就業規則や法令の定めに従って計算した時間外賃金が支払われなければならない。』
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会社独自の定額残業代規定の有効性
=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=
木下工務店事件(東京地裁平成25年6月26日)は、
会社独自の定額残業代規定や個別労働契約の内容が、内訳が不明確であるうえ、割増賃金に当たる部分がそれ以外の賃金部分と明確に区別されているとはいえない。とし規定、契約が無効とされた事案です。
規定の内容:
「営業SF職・AL職の基本給及び調整給の60%或いは65%を本給とし,40%ないし35%を超過勤務・深夜勤務・休日勤務手当とする。」
労働条件通知書:所定時間外,休日又は深夜労働に対して支払われる割増賃金率の項において,「みなし労働者や年俸者の場合は金額の4割を相当分としています。」と記載されている。
判決は
『「eの給与の40%が85時間相当のみなし残業代であったと主張するが、計算式には,休日,深夜,月60時間超の割増が考慮されていない。給与の40%に相当する時間外労働時間は,休日,深夜,月60時間超,の時間がそれぞれ何時間あったかで変動するものであって,規定だけからは,給与の40%に相当する時間外労働時間を確定することができない。したがって,割増賃金に当たる部分がそれ以外の賃金部分と明確に区別されているとはいえない。
仮にeが給与の40%がみなし残業代であることに納得していたとしても,無効な給与規則に基づくものである以上,その合意も無効である。』
これら事例から解ることは、
他の手当を名目としたいわゆる定額残業代の支払が許されるためには
★実質的に見て、この手当が時間外労働の対価としての性格を持っていること
★支給時に支給対象の時間外労働の時間数と残業手当の額が労働者に明示され、定額残業代によってまかなわれる残業時間数を超えて残業が行われた場合には別途清算する旨の合意が存在するか、少なくともそうした取扱いが確立していること
が必要不可欠条件である、といえそうです。
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