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『イノベーションのDNA』とフレーズ暗記に頼らない「質問力」

総務の森』コラムをご覧のみなさま


こんにちは! 合同会社5W1Hの高野潤一郎と申します。

本コラムでは、弊社配信の無料ニューズレター第112号(2012年2月
24日配信)で公開した記事の一部をシェア差し上げます。
今回のタイトルに興味をお持ちいただけた方は、是非、お役立てく
ださい。

============================================================
(前略)

先日配信した号外では、経営学書として異例のベストセラーとなっ
た、「イノベーションのジレンマ」の著者である、クレイトン・ク
リステンセン教授の新刊、「イノベーションのDNA」で、「質問
力」について丸々1章を書いておられたこと(中略)をお知らせし
ておりました。

(中略)

上記書籍と弊社流の「特定の専門領域やコンテンツに依らない、普
遍的な質問力」「『探求』の側面が強調された質問力」との関係に
ついて、いくつか私見を述べてみたいと思います。


■弊社流「質問力」という切り口から見た
 「イノベーションのDNA」

(中略)

まず、特に「質問力」に関係の深いと思える部分に着目して、書籍
の大きな流れを「私なりに整理」すると、次のようになります。
( …[ ]内の”見出し”は自作で、文章は出典中にあるものを基
にしてところどころ改変しております。その旨、ご了承ください。)


[ イノベーションが求められる理由 ]

●望ましくない現状を打破するには、イノベーションが必要

●著者が採用している「イノベーション」の定義は、A.G.ラフリー
 とラム・チャランの「新しいアイディアを創出し、それを売り上
 げと利益に変換させるプロセス」という主張。

●イノベーションとは、突き詰めれば、人や会社への「投資」であ
 る。発見(探求)志向の人材を採用・育成し、社員の質問・観察
 ・ネットワーキング・実験・関連づけを後押しするようなプロセ
 スを制度化することで投資リスクを下げること(「スマート・リ
 スク」を取ること)が大切。…調査対象となったイノベーティブ
 な企業群では、失敗することが少なかった。

●投資家の関心は、「当該企業が、今後イノベーションを生み出せ
 るかどうか」(…過去の実績ではなく、「新製品・サービスの創
 出と収益化」ができるかどうか)に向いている。

●「イノベーションでは、袋小路にはまることは避けて通れない。
 行き詰まらずしてイノベーションはあり得ない。だが時折、袋小
 路を歩いていると、大きな広い道に出ることがある。…だから、
 どんな袋小路にもはまる価値がある。」(ジェフ・ベゾス)

 ↓

[ イノベーションを生むには、発見力が大切 ]

●大企業が破壊的イノベーションに失敗しがちなのは、「発見力」
 (探求力)の高さではなく「実行力」(処理力)の高さで選ばれ
 た人材が最高経営層を占めるため。「実行にとらわれていたら、
 社員はイノベーティブになれない。そんなことでうまくいくはず
 がない。」…ビジネス・スクールでは、発見ではなく、実行に長
 けた人材を育てている。大組織の幹部のほとんどは、どうすれば
 「人と違う考え方」ができるのか知らない。

●実行力の高いほとんどの経営幹部は、新しいアイディアが失敗す
 る理由について考えて列挙するが、発見力の高いイノベーターは、
 アイディアを成功させるための独創的な方法を考える。

●イノベーションを生むには、イノベーター≒「創造性」を発揮す
 る人々と、イノベーションを生み出しやすくする体系的なプロセ
 スや哲学を持った組織が重要な役割を果たす。

 ↓

[ 発見力を高める行動的スキル ]

●創造性の発現には、遺伝的要素・認知的スキルだけではなく、
 「関連づける力」「質問力」「観察力」「実験力」「ネットワー
 ク力」といった5つの「行動的スキル」によって、「人と違う行
 動」を取ることが大切。

●行動的スキルの内、イノベーティブな大物起業家が例外なく身に
 つけているものとして、「関連づける力」と「質問力」の2つが
 あるという調査結果が得られた。…この2項目に関しては、イノ
 ベーティブな大物起業家の全員が、上位30%以内に入っていた。

●イノベーターには、「質問の数が多い」「現状に異議を投げかけ
 る種類の質問をする」といった特徴がある。
  


[ 行動的スキルとしての質問力 ]

●一連の単純な質問を通して現状を把握(…「なぜこうなったのか」
 と因果関係を明らかにしつつ、人々の性質、知性、感情が織りな
 す風景を浮き彫りに)し、挑発的な質問(…「なぜなのか」「も
 し~だったら」と現状を疑うような質問)をたたみかけて可能性
 を探求すること(…ゲームのルールを書き換えること)が大切。

●質問は、「他の発見に関わる行動(観察、ネットワーキング、実
 験)を創造的な方法で促す触媒」「創造的洞察を促すための触媒」
 として働く。ただし、質問はイノベーションを生み出すための必
 要条件だが十分条件ではない。「観察しながら質問する」「ネッ
 トワーキングに励みながら質問する」「実験しながら質問する」
 人が、そうでない人よりも多くのことを発見するという調査結果
 が得られた。

●質問を阻んでいる最大の要因は、「バカに見られたくない」と
 「協調性がない人間、または、虫が好かない人間だと思われたく
 ない」の2つ。…謙虚に質問できるだけの「自己肯定感」を持っ
 ていることが大切。

●「有効で、適切で、重要な質問をする術を身につけた人は、『学
 び方』を学んだことになり、知りたいことを学ぶのを邪魔立てす
 るものは何もなくなる」(ニール・ポストマン&チャールズ・ワ
 インガートナー)



[ 行動的スキルと日本人 ]

●「現状に異議を唱え、実験を行い、リスクを取る」あるいは
 「『人と違う考え方』をするために『人と違う行動』を取る」上
 で、日本人の国民性や文化が障害となることが多い…個人や企業
 が世界級のイノベーターとして競争していくには、こういったス
 キルを身につけ、駆使する必要がある。


以下、上記内容について、それぞれコメントしてみました。


■「イノベーションが求められる理由」について

(中略)

書籍「イノベーションのDNA」では、主に産業界においてイノベ
ーションが重要視される背景に「投資家の関心」(新製品・サービ
スの創出と収益化ができるかどうか)もあるらしいことを知りまし
た。

顧客満足や、競合企業との競争などではなく、投資家に意識の焦点
を向けているという切り口が興味深いです。また、こうした潮流も
あって、「効率第一主義」よりも「スマート・リスクを取る方針・
企業」が期待されているのだと解釈しました。

そうするとやはり、「事なかれ主義」や「従来の延長線上にある改
善」(…シングル・ループ学習)ではなく、「現状に疑問を呈する
質問力」(…ダブル・ループ学習、トリプル・ループ学習)が重視
されてきますね。

(中略)


■イノベーションを生むには、発見力が大切」について

「『実行力』(処理力)に秀でた経営幹部がほとんどを占める大企
業では、イノベーションを生み出しやすくする体系的なプロセスや
哲学を持たず、破壊的イノベーションに失敗しがちだ」という主張
に、非常に興味を覚えました。

なぜなら、弊社流の「質問力」が、「実行力」(処理力)に秀でた
経営幹部の「視野の拡大・手段の多様化」を進める上でも、お役に
立てるという考えが強められたからです。

(中略)

■「発見力を高める行動的スキル」について

ここでは、発見力を高めるのに役立つ個人のスキルについて5つが
挙げられ、その中でも、イノベーティブな大物起業家が例外なく身
につけているものとして、「関連づける力」と「質問力」の2つが
紹介されていました。

私は「関連づける力」(原著では、Associating)を「視点を柔軟
に切り替え、要素間の関係を発見する思考」(…例えば、特定の特
徴・切り口に着目して、対象を要素に分解→要素の再整理など;他
にも、分析と総合・発散と収束などといった解釈も可能)であると
捉え、その背景には弊社流の「質問力」があると考えています。

というのは、翻訳書の「質問力」という言葉は、原著の
「Questioning」にあてられたものですが、弊社では「質問力」の
英語訳として「(Question-based) Inquisitive Mind」(質問を用
いて「探求/探究する心/姿勢」)をあてているからです。

「目的達成・問題解決・意思決定のために、真実・解決策などの探
求を行う」わけで、その探求に向けた取り組みの一過程で、「関連
づける力」が発揮されるという立場を選択しています。

このように、弊社流の「質問力」は、「(Question-based)
Inquisitive Mind」であり、「イノベーションのDNA」でいう
「Questioning」を包含する内容となっています。

そして、対象とするものを「あるがままに捉える」だけ(…「特定
の特徴だけに着目し、他の側面について無視する」ことをしない;
視点・機能・立場などを固定したまま)では、革新的なビジネス・
アイディアなどを「発見」することはできないのであって、「これ
までとは異なる視点に基づく、さまざまな行動(対象や周囲への働
きかけ)」を通して、「こういう切り口(視点、フレーム)から見
ると『○○が可能かもしれない』などという仮説を立て、実験・検
証を繰り返す」ことが、イノベーションにつながる「発見」をもた
らすのだと考えています。

(中略)

■「行動的スキルとしての質問力」について

日本で「質問力」と言うと、「Questioning」(質問を発するスキ
ル)といった側面で捉えられることが多く、「相手からの想定外の
反応にも対処しつつ、やり取りを丁寧に重ねていく」などといった
側面を軽視/無視し、「特定の場面で特定の対人スキルと経験を持
った人(≠自分)が使って役に立った質問フレーズを紹介します。

記憶しておいて、いざという時に使ってみてくださいね。」的な
「知識の伝達」を行う研修や、「認知的スキル」を向上させようと
いうセミナーがほとんどだと聞いています。

しかし、それで本当に、さまざまに異なる氣質や強みを持った学習
者が、異なる環境・時々刻々変化する状況下で、感情を持った生身
の人間を相手に、適切なコミュニケーションを図り、所期の目的を
達成する「質問力」が発揮できるのでしょうか?

「Inquisitive Mind」(探求心)という側面を重視している弊社流
「質問力」では、「質問フレーズの体系」についてもお伝えしてい
ますが、それ以前に「質問力を発揮する上で大切な事柄」について
演習を通して学んでいただきます。

この部分があるために、質問を阻んでいる主要な要因として書籍で
取り上げられていた、「バカに見られたくない」と「協調性がない
人間、または、虫が好かない人間だと思われたくない」の2つの心
理抵抗が激減します。

さらに、「質問フレーズを選び、組み立てる際には、どういった事
柄に意識を向けてコミュニケーションを行うと良いのか」に関する
指針についてお伝えした上で、「視点を変えた実践演習」・「図解
なども用いた振り返り」で、「行動的スキル」としての「質問力」
を高めるのに役立つ内容となっています。

一般に、質問力が高いことが期待される「コーチ」の中には、次の
ような考え方でコーチングを教えていらっしゃる団体もあるようで
す。
------------------------------------------------------------
A) その場で考えてすぐに答えられる具体的な質問をするのは、経
  験の浅いコーチであり、経験豊富なコーチはもっと抽象度の高
  い質問をするものだ。

B) 難しいことは考えなくて良い。とにかく、具体的には?を繰り
  返せば、コーチングになるのだ。
------------------------------------------------------------

A) についての弊社の考え:

上記で、「一連の単純な質問を通して現状を把握(…「なぜこうな
ったのか」と因果関係を明らかにしつつ、人々の性質、知性、感情
が織りなす風景を浮き彫りに)し、~」とも書いておりました。

弊社では、コミュニケーションの中で飛び交っている、個々の質問
フレーズを取り上げて、「こういう質問フレーズを用いている人は
質問力がある/ない(高い/低い)というのは、ナンセンス」とい
う立場を取っています。

例えば、「オセロ」などを思い浮かべてみてください。ゲームの最
初あるいは序盤であれば、初心者であっても名人であっても、打つ
手に対して違いはありません。ところが、ゲームが進むにつれて、
ちょっとした判断の差、指し手の組み合わせの違いが積み重なって、
ゲームの勝敗につながっていくのではないでしょうか。

同様に、「質問力の発揮が期待される場面」でも、「1つ1つの質
問フレーズを、どういう意図・目的のために、どうやって選び組み
立てていくのか」(…例えば、相手との関係性や、周囲への影響に
ついて何を望むのかなども含めて)について考えること、大切なコ
ミュニケーションに臨む際には、そのコミュニケーションの目的と
自分が果たす役割を明確にしておくことが大切だと認識しています。


B) についての弊社の考え:

「身体性に重点を置き、スポーツのトレーニングやメンタリングを
行っている場合」や「従来路線の延長線上にある業務を効率的にこ
なしたい場面」など、決められたことを「実行」するような場面で
は、有効なことの多い姿勢だと思います。

しかし、価値観・立場の違いや相反する利害などを乗り越えて、関
係者みんなが納得する意思決定を行うとか、相手と協働しつつ問題
解決に当たるといった、情理を尽くして対話を進める場面(…時に
は、好悪の感情などを一旦脇に置いて、目的の達成に向けて論理を
重ねるようなコミュニケーションの場面)などには適さない姿勢だ
と考えています。

また、今回取り上げている「イノベーション」に向けた取り組みと
いう切り口で考えても、「関連づける力」(…特定の視点に立って、
要素どうしを新たな組み合わせで結びつけ直す力)の発揮、ひいて
は「発見力」の発揮には、意識の「抽象化」(一般化)が求められ
るため、意識の「具体化」(詳細化)だけでは足りず、コミュニケ
ーションを図る上で、「具体化」と「抽象化」の往復運動が求めら
れるという立場を取っています。

(中略)

■「行動的スキルと日本人」について

「和を以て貴しとなす」(十七条憲法第一条)という精神基盤を持
つ日本人に心理抵抗を生じさせるのが、「現状に異議を唱える」あ
るいは「『人と違う考え方』をするために『人と違う行動』を取る」
ことだと思います。

しかし、それだからこそ、「現状打破」および「新製品・サービス
の創出と収益化」を目指して、諸外国の人々以上に、意識的に、
「観察しながら質問する」「ネットワーキングに励みながら質問す
る」「実験しながら質問する」人になること、そういった人を増や
すことに取り組み、イノベーションの実現を図ることが大切になっ
てきているのではないでしょうか。

「質問フレーズの暗記」に終始するのではなく、「質問力を発揮す
る上で大切な事柄」(ヒトどうしのコミュニケーションとは一体ど
ういったものなのかなど)について学ぶこと、(個人の好奇心を満
たすために、相手から自分が欲しい情報を収集して終わりとするの
ではなく、目的達成・問題解決・意思決定に向けて、真実・解決策
などを)「探求」していく具体的なマインドセットやスキルについ
て学び、グローバルにも活躍できる人材・組織になっていくことを
選択される方とご一緒できる機会を楽しみにしております。


以上、今回は、「イノベーションのDNA」に関する、「弊社流
『質問力』という切り口から見た私なりの意見」をご紹介してまい
りました。

(後略)
============================================================


冒頭でご案内差し上げましたように、本記事の『全文』は、下記
よりご覧いただけます。上記抜粋記事をご覧になった上で、詳細
についてお知りになりたい方は、是非ご活用くださいませ。


●ニューズレター第112号
「イノベーションのDNA」と、専門領域に依らない「質問力」
 → http://5w1h.hatenablog.jp/entry/112(ブログ版)
 → http://www.5w1h.co.jp/newsletter/no112.pdf(PDF版)
===========================================================
出典を明記していただき、『著作権法』で認められる『引用』の
範囲を超えなければ、許可なしで部分引用可能です。
また、内容を改変せず、元のままの形(あるいは上記リンク先)
であれば、お知り合いなどに転送していただいて構いません。
===========================================================


以上、何か少しでも、『総務の森』コラムをご覧のみなさまの
お役に立てることがあれば幸いです。

お忙しいところ、目を通していただき、ありがとうございました!

               高野潤一郎@合同会社5W1H

P.S.1

記事に出ていた、弊社流の「質問力」の詳細は、
こちら↓からご確認いただけます。

[ 法人向け ]
http://www.5w1h.co.jp/mutual_learning/organizational_quest.html

[ 個人向け ]
http://www.5w1h.co.jp/mutual_learning/individual_quest.html


P.S.2

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