• HOME
  • コラムの泉

コラムの泉

このエントリーをはてなブックマークに追加

専門家が発信する最新トピックスをご紹介(投稿ガイドはこちら

経営管理の強化を図れ

■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■
経営テクノ研究所
2014年1月20日第1・3週月曜日発行
発行人:舘 義之http://www9.plala.or.jp/keiei-techno/
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
★★経営のパートナー★★経営学で企業を再生する
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
<目次>
★経営管理の強化を図れ
★ちょつと苦言:故(ふる)きを温(たず)ねて新しきを知る
■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■
★経営管理の強化を図れ
1.K=勘・K=経験・D=度胸で仕事をするな
 日本に品質管理が導入される以前は、K=勘・K=経験・D=度胸による
管理が行われていました。しかし、品質管理の導入によって、その根本にあ
る事実に基づいて行動を起こそうという科学的な考え方が強化されていった
のです。

 科学とは、事実の体系化であり、体系化とは、原則化のことを言います。
つまり、いつでも、どこでも使えるように原則化され、共通化され、普遍化
されていることです。もっとわかりやすくいえば、いつでも、どこでも、誰
でも、できることなのです。

 とかくビジネスの世界では、経験を積むと直感だけの、あるいは記憶によ
る勘に頼りやすいけど、最近の世の中の移り変りは非常に早く、激しいもの
があります。過去の自分の知識や経験のみで将来を見通すことは非常に危険
です。ましてや、俺に任せておけ式の度胸によるやり方では、どうしょうも
ありません。

 勘による仕事での短所は、計数的ではなく、その場限りであるため、質の
向上が望めません。安定感がないから失敗を繰り返すことが多くなります。
そして、一番重要なことは、次の世代に明確にその内容を伝えることが困難
な点にあります。

 科学的な経営管理を行うためには、過去と現在の事実を分析し、その結果
を計数化するのが第一歩です。そして、そこからでてきた事実を原則化しま
す。その原則に従って将来を予測します。こうなればいやでも合理的・能率
的になってきます。

2.経営管理の諸機能を理解せよ
 経営体は人・物・金が有機的に結ばれ、最終的に企業目標を実現するため
の組織です。経営体が最も能率よく発展的に運営されるためには、優れた経
営管理(アドミニストレーション)が伴わなければなりません。普通、管理
といえば、生産管理・販売管理・財務管理・人事管理などの個々の管理活動
(マネジメント)を思い浮かべますが、ここでは、経営の全般的管理ないし
は総合的管理機能を意味します。

 ところで、経営管理の過程のなかにある、いろいろの要素や、それに付随
する諸機能を正しく認識し、経営理念を把握することは重要です。今日の経
営管理を過程として見る考え方を要約してみると、次のように言われていま
す。

 経営とは、「人間を使い、生産設備を用いて、おかれた状況のもとで、目
標もしくは望ましい成果を定め、これを達成する過程である」

 経営をし、経営を意義あるものにするためには、達成されるべき目標、そ
して、それを達成するための過程、すなわち、方法・手段、および目標達成
の過程で必要な生産設備を駆使する人間の努力がなければなれません。この
行為の過程、すなわち、経営管理の過程機能を、いくつに分けるかは、さま
ざまな説がありますが、一般には次の7つに分けています。

 これらの7つの機能が効果的に行われているか見直し、不十分な機能につ
いては強化していかなければなりません。

(1)<目標設定>機能
 望ましい成果を設定し、あるいは承認すること。
(2)<方針設定>機能
 目標を達成するために、行動指針を確定すること。
(3)<計画策定>機能
 定められた方針に従って、設定された目標を達成するための措置内容を決
めること。
(4)<組織化>機能
 計画を実施するために、人間の力と技術、手段を十分に発揮させる方法を
整えること。
(5)<やる気を起さす>または<命令>する機能
 計画を実施するために、社内の人間にやる気を起させ、それを維持するこ   
と。
(6)<統制>もしくは<成果測定>機能
 既に決定されている方針、計画に従って目標を達成できるようにすること。
(7)<革新>機能
 仕事を改善し、原価を引下げ、従業員の欲望充足度を高めること。
       
 経営管理の過程機能の中に挙げられた7つの機能は、経営組織内の全ての
管理者の任務です。ここでいう管理者とは、上は社長から、下は係長に至る
までの全ての管理者をさします。

 トップ・マネジメントとは、通常、取締役会、社長および主要部門経営者
層からなっています。トップ・マネジメントの機能は、企業の総括的経営に
あります。7つの機能の中でトップ・マネジメントに重要な機能は目標設定
・方針設定・計画策定・組織化の4つです。

 トップ・マネジメントの機能を、さらにしぼって、これだけは絶対にトッ
プ自らやらねばならないというものに限定するとしたら、この中で何が残る
でしようか。計画を策定したり、組織を作ったりすることは、目標と方針が
決まれば、あとは技術的な方法の問題が残るだけですから、これは他の管理
者に任せることも可能です。

 そこで、トップ・マネジメントとして存在意義のある最大のものは、目標
を立て、それに到達する方針を設定することにあるということができます。

●目標とは
 目標とは、「何をしょうとするのか」、完成されるべき結果を示し、到達
すべき終点を示すものです。すなわち、長期にわたる標的であり、企業の活
動ないし各部門、各職場の活動を導いていくためのゴールなのです。

 さて、到達目標の内容ですが、ドラッカーによると、企業の存続ないし繁
栄に直接重大な影響を与えるような行為の全ての領域において、設定される
ものである述べています。このような内容を目標として与える場合、具体的
に計数的表現を伴う場合もあるし、また、これを伴わない単なる記述的表示
である場合もあります。

(1)市場における地位
(2)革新
(3)生産性
(4)物的および財務的資源
(5)収益
(6)経営担当者の能力と育成
(7)従業員の能力と態度
(8)社会的責任

●方針とは
 方針とは、目標に対して「いかにして達成しようとするのか」という指針
示すものです。すなわち、企業の定めた目標に到達するための方向や行動原
理を示すものです。これは、あらゆる判断の基礎となり、行動の指針となり
ます。

 したがって、経営管理の基礎となるものであり、それと同時に経営活動の
実施に対する意思決定の表明でもあるわけです。

 そのために、方針の適否は、直ちに企業全体の経営活動の成否に密接に関
係してくることになりますので、経営者としては慎重な考慮を払わなければ
ならないのです。

3.しっかりとした行動予定を立てさせよ
 計画とは、行動の詳しい予定であって、あらかじめたてられた方針を達成
するためには、
(1)どんな措置をとらねばならないか(What)
(2)なぜ、このような措置をとらねばならないか(Why)
(3)その措置をとる責任は誰か(Who)
(4)いつ、その措置は開始せねばならないか(When)
(5)どこで、その措置を行わねばならないか(Where)
(6)どのように、その措置に手をつけるか(How)
を決めるものです。

 計画策定の過程を実行するに当たっては、まず第1に、どんな措置が必要
かに対する答を出すことが大切です。

4.マネジメント・サイクルをまわせ
 経営管理の諸機能を効果的に運営していくためのものとして、マネジメン
ト・サイクルと呼ばれるものがあります。
(1)計画(プラン)→実施(ドゥ)→検討(シー)。または、
(2)計画(プランニング)→運営(オペレイションズ)→検討(レビュー)
と言っています。

 マネジメント・サイクルは、経営管理を構成する主要な機能(過程上の働
き・役割)に対して、計画が実施され統制管理され、再び計画へと循環して
いくことによって、経営の合理的な管理を確保しようとするものです。

 管理者は計画および検討を、非管理者は実施を担当します。そして、非管
理者が中間管理者である場合には彼の行う実施は、さらに下級の非管理者に
対する計画および検討になっていきます。

 プランニングとレビューとを合わせてマネジメント・コントロールと言い、
オペレイションズをオペレーティング・コントロールと言います。前者を、
機会損失の減少、後者を、実際損失の減少とも言っています。

 業績向上がなされない多くの企業に共通して見られるのは、マネジメント
・サイクルが連鎖体系になっていないことが挙げられます。すなわち、計画
は立てるけど、その通りにやっていない、計画・実施はするけれど、結果を
検討していない、という例が多く見受けられるからです。

 最もよくないのは、計画は立てたが、実施に入ったとき、その計画通りに
やらないというケースです。これでは、計画通りに実施をしていないのです
から、検討できるわけはありません。どのような計画であれ、計画通りに実
行させることで検討が行われ、機会損失の減少と実際損失の減少が遂行でき
るのです。

5.ROEを経営の重要な判断基準とせよ
 企業は、株主資本(自己資本)と金融機関からの借入金(他人資本)によ
って事業活動を展開しています。つまり、企業はこれらの資本を使って利益
を上げようとしているのです。したがって、売上高経常利益率×総資本回転
率で求めたものが企業の収益力ということになります。これを、総資本利益
率(ROA=Return On Asset)といいます。

 銀行からの借入が主流だったころは、単に経常利益によって企業の収益
を判断していました。しかし、株式資本に移行する流れが強まり、投資家に
とっての判断基準が必要になってきました。そのための経営指標が、『株主
資本利益率』(ROE=Return On Equity)なのです。

 ROEは、企業が、株主資本をどれだけ効率的に使ったかを現わす指標で
ROAを構成する売上高経常利益率と総資本回転率、そして財務レバレッ」
の3つから求めます。

 ROEの値が高いほど、企業が株主資本をより効率的に使っていることを
意味しています。ROEは、株主の立場からの投資収益性を端的に表わして
おり、株式評価において最も重視されます。日本でも1992年ごろからR
OEへの関心がしだいに高まり、目標値を公表する企業が増えてきました。

(1)ROEの値は高いほどよい
 ROEが低いということは、株主等が投下した資本で少ない利益しか上げ
られていないということであり、ROEが高いということは、投下した資本
で大きな利益を上げているか、もしくは少ない資本で効率良く利益を上げて
いるということになります

 ROEの水準が日本の上場企業では、数%程度です。10%以上あれば優
良企業と見られています。米国企業では20%を超えている企業が多く見受
けられます。

 ただ注意しなければならないことは赤字続きで株主資本が急速に減った過
資本の会社はROEが高めに出てしまうことがあります。

 また、自社株式の取得により、株主資本を圧縮することでROEを意図的
に上げる会社がありますので、この数値のみに頼ることなくPERや有利子
負債なども合わせてチェックする必要があります。

(2)PERは低ければ低いほどよい PERは、株価収益率(Price
Earnings Ratio)といい、株価の基準を知るための指標です。

 株価収益率とは、株価が、1株あたり利益の何倍かを表わす数値で、次式
から求めます。
●PER=株価÷1株あたり利益 1株あたり利益とは、会社の純利益を発
行済み株式数で割ったものです。
●1株あたり利益=会社の純利益÷発行済み株式数 たとえば、ある会社の
今期純利益が50億円で、発行済み株式数が5,000万株だとしたら、
●50億円÷5,000万株=100円が1株あたりの利益となります。そ
 の会社の株価が現在2,000円だとすると、
●PER=2,000円÷100円=20倍になります。
 100円という利益は、投資金額を回収するのに20年かかります。つま 
 り、PERとは、投資資金を何年で回収できるかということを意味する指 
 標なのです。

 単純に考えると、PERは低ければ低いほど割安だといえます。しかし、
20倍だから高いとか10倍だから安いというような絶対的な基準はありま
せん。

 一般に成長性が高く、将来性を期待されているハイテク産業やIT関連な
どは30倍前後、食品関連などの成熟産業などでは10倍前後が多いようで
す。実際には、同業のライバル会社や似たような業種の会社などのPERと
比べて比較する必要があります。

(3)ROEを高めるには
 売上高経常利益率は、企業の収益性を総合的に判断する場合に用いられま
す。すなわち、利幅・取引採算性を判断するものです。

 順調な販売活動の結果得られた営業利益が大きくても、支払利息などの金
費用が多ければ経常利益は目減りし、売上高経常利益率は低くなるので、
借入金などを検討しなければなりません。

 売上高経常利益率を上げるためには、売上高あるいはそのほかの収益を維
持しながら、いろいろな費用を削減していく、もしくは費用を抑えながら売
上を増加させていく必要があります

 総資本回転率は、総資本流動資産固定資産)の利用状況を表わすもの
で、一期間のうちに資本の何倍の売上高を上げたかを示すものです。

 総資本回転率を上げるためには、現在の総資産を増やさずに積極的な販売
戦略などによって売上高を増加させる、あるいは「現在の売上高を維持しな
がら、不要な資産を処分あるいは圧縮する」ことによって総資産を現象させ
ることが必要になります。売上高が増加しても資本が増加すればROEが向
上しないからです。

 財務レバレッジは、負債の有効活用を示すもので自己資本比率の逆数にな
っています。あまり高くなりますと、財務の基盤が弱くなり、経営の安定性
に欠けることになります。

 財務レバレッジを上げるためには、
(1)負債を増加させるか
(2)資本を減少させる
ことが必要になります。

6.効果的な議論はディベートを参考にせよ
 仕事を進めて行く上で議論は欠くことのできない要素です。効果的な議論
を行うためには、ディベートが参考になります。ディベートは、普通に行わ
れている議論とは違って、5つの決め事に従って議論を行っていきます。

 具体的には、次のような内容でゲームを進めていきながら、議論のあり方
を習得していきます。

(1)1つの論題について話し合う
 議論するテーマに関して、「~ついて」ではなく、「~は、……すべきだ」
という形で話し合いをします。このことを命題といい、限られた時間でかみ
合った議論をするために不可欠なものです。

(2)肯定側と否定側に機械的に分けられる
 論題について、賛成の立場か不賛成の立場は、いったん棚に上げて、肯定
側からも否定側からも議論することになります。したがって、中間の立場は
ありません。

 そして、自分の立場と議論の立場が必ずしも一致しないということは、実
に大切なことなのです。弁証法ではありませんが、肯定側と否定側の両面か
ら検討し直すことは、意見は代わらなくても、以前より自分の意見をより深
く、よりはっきりしたものとして捉えることができるようになるのです。


(3)一定のルールに従う
 かみ合った議論を行うためには、いろいろなルールを守る必要があります。
たとえば、発言の順番や時間を守る、相手の議論の途中で口をはさまない、
肯定側から議論を始め、途中から否定側に入替えて最後はまた肯定側で終わ
る、といったことです。

(4)証明された議論を戦わせる
 必ず主張に根拠つけなければなりません。相手は、主張と根拠との間にズ
レや矛盾はないか、を検証し、おかしいと判断したところをさらに根拠を示
して反論してきます。

 こうした応酬を繰り返し、どちらの議論のほうがより説得力が競い合うわ
けです。

(5)審査によって判定が下される
 より説得力のあるほうを採用します。その判定は、審査員が議論の証明具
合を判断し、判定します。

7.聴き上手になる集団をつくれ
 議論とは、合意を得るためのコミュニケーションであると言われています。
そのためには、どういう方法がとれるか、可能なものをすべてあげ、それぞ
れのやり方から生ずる結果を予測し、そのバランスの上に立ってどれを選択
するかを決める能力を高めていく必要があります。

 その能力は、次のようなものです。
(1)論議構築能力
(2)プレゼンテーション能力
(3)積極的傾聴能力
(4)論理的理解能力

 よりよい議論を行おうとすれば、まず、第一に求められるのは、良き聴き
手になるということです。多くの経営者に見受けられるのは、話し上手です
が、聴き上手ではないということです。

 精神分析の世界では、患者の診断、治療、カウンセリングときにラポール
(rapport)ということに注意を払います。ラポールとは、フランス語で一致、
調和などを意味する言葉ですが、カウンセラーと患者が、このラポールの状
態になることが前提条件とされます。

 対話とは、実はこのラポールの状態をつくり出すことなのです。そのため
には、対話の原則を知らなければなりません。対話とは、たんに言葉のやり
とりではないのです。そこに、相互に心が通い合わなければならないのです。

(1)人の話をよく聴くこと。聴き上手になることからはじめる。
(2)TPO(Time=時間・Place=場所・Occasion=場合)を念頭にお 
くこと。
(3)話し上手、つまり正しい表現力を身につけること。

 これが対話のために守らなければならない3原則です。特に経営者や管理
者がこの3原則を守るなら、その組織内の対話は、常にラポールの状態にあ
ることは間違いありません。

 ここでは、(1)の聴き手になるための要点について述べておきます。

 コミュニケーションでは、よい聴き手になることが何よりも大切です。で
は、どのようなきき方がよいきき方なのでしょうか。一言で言うと、聞くの
ではなく、聴くという態度でのきき方です。

 では、聞くと聴くとでは、どう違うのでしょうか。この2つの機能的な意
味は、異なったものをもっているのです。

 聞くというのは、
●きこえてくる
●音が自動的にきこえてくる
という意味です。

 聴くというのは、
●傾注する
●注意してきく
●エネルギーを費やして理解しようと意志的な態度できくという意味ですか
ら大変違うわけです。

 さて、聞くと聴くという2つを、はっきり区別しなければなりませんが、
聴くということは大変難しい仕事なのです。

 そこで、よい聴き方を考えるわけですが、その前に、よい聴き方ができな
い3つの障害を紹介します。

(1)コミュニケーションに集中しない
 コミュニケーションの際に、自分をからっぽにするということです。すな
わち、そのコミュニケーションに集中することが容易にできない、というこ
となのです。

(2)自分の聴きたいことだけを聴く
 人の話を聴いているときに、自分の聴きたいように聴いているということ
です。自分の聴きたいことだけ聴いてしまうので、人の話を話を、そのまま
聴くのではなく、聴きたいところだけ聴くということなのです。

(3)批判的に身構える
 人の話を聴くとき、意識的、あるいは無意識的のうちに批判的に身構えて
しまい、自分の意見や感想、その他で武装して、相手の話を最後まで聴かな
いではねつけてしまう、ということです。

 次に、聴き上手になるために留意すべき諸点を列挙しておきます。
(1)話しやすい環境をつくる。
(2)心の底から聞く態度をとる。
(3)話の腰を折らない。
(4)対等の立場で聞く。
(5)話し手の状況をつかむ。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
★故(ふる)きを温(たず)ねて新しきを知る
 冷えたスープや食物を温めなおして飲食するように、過去の伝統を、もう
一度考えなおして新しい意味を知るということです。単に過去のことを知っ
ているという物知りではだめで、それをよく研究して、そこから新しい価値
を見出すことが大切であるという教えです。

 論語(ろんご)にある孔子(こうし)の言葉で、もとは「故きを温(あた
た)めて新しきを知る、以って師と為すべし」ですが、朱子(しゆし)が温
「たずねる」をと解してから「故きを温(たず)ねて」というようになった
のです。「温故知新(おんこちしん)」とも言います。

1.5年のうちに天地の開きとなる
 ビジネスマンは、あらゆる問題に眼をむけなければなりません。それも、
長い期間に問題化するものもあります。将来、大問題に発展するものもある
でしょう。そして、何が一番、現在のあなたがやるべきかを発見していくこ
とです。

 ところで、あなたは現在の仕事をどうやったらよくできるでしょうか。そ
れをよくするために、何か計画されたことがあるでしょうか。また、それが
成功したでしょうか。そこで、まず、いまからすぐやることは、4つあります。

(1)あなたは自分がどんな立場にあるのでしょうか。ビジネスマンで1つ
の企業で1部門に働いていた場合、それは会社の全機能のうちに、どんな役
割をしているのか、それを正しく判断しなければなりません。

 自分のやっている仕事は、誰でもできる仕事でサッパリ張りあいのないも
のだ、とあなたは考えていないでしょうか。もし、そう思っていたら、あな
たは大変なミステークをしています。それ相応な給料を払っている会社が、
あなたの思うほどつまらない仕事をつくっているはずはないのです。もちろ
ん、あなたは歯車の1つの仕事しかやっていないでしょう。だが、その歯車
の機能を止めてしまったら、会社は動かなくなるに違いありません。

(2)それがわかれば、あなたが当面する問題は何か。あなたのやっている
仕事に、解決しなくてはならぬ問題がないとはいわせません。よりよき仕事
をするために、どんな行動の計画をたて、その実行にあなたはどのくらい力
をしぼっているのか。自分のポストがつまらないとかいう人は、それさえも
見きわめていないのです。

いくつかのやるべき問題を発見して、その実行計画を立てても、本末転倒し
てはいけません。何が一番大切か、それにウェイトをつけていく必要があり
ます。
 
(4)そして、いままで、あなたの先輩や同僚がやっていたと違った、しか
も、会社にとって大きな役割を果たすべきものを1つ見つけていかなければ
なりません。

 これが、あなたを5年後には、それをやらなかった人よりも大きくひきの
ばしていくことになるのです。

2.すべてを仕事に結びつけてものを考える
 世の中はあげて、創意工夫の時代である。職場にいる人たちは、上司から
「創意を生かせ」とか「考えるんだよ」とか、いわれたことがありませんか。
そういわれて何のことかポカンとして、全くわからなかった人もいるでしょ
う。それはそれでよいのです。わからないところに、創意を生み出す余地が
あるのですから、まず何からスタートするか、それを考えればよいのです。

 あなたにだって、創意ができる。それをやるためには、どうしても3つの
ことを考える必要がある。

 第1には、あなたの職場で何が一番むずかしいことになっているか。どん
なことでもよい、誰がやっても、「そんなことは不可能だ」とサジをなげて
いる問題はないだろうか。それをやれば、すばらしくよくなるとわかってい
ながら、タブーのように「言ったってムダだよ」といわれている問題はない
か。それに、あなたは敢然ととっくんでいく勇気はないだろうか。

 誰もが、できない、不可能だと思っていることがあったら、そこで創めて
あなたは創意を生みだすことができるのです。

 第2には、それでは、あなたの職場やポストで何があたりまえのこととし
て許されているか。それを1つ反省してみます。毎日、すべての人が当然の
こととして行っていることと、とてもできないと諦めていることの間に、ど
のくらいの開きがあるか。

 おそらく、第3人者が考えた場合に、ほとんど変わりがないように思われ
ます。どうして「それが不可能なんだ」と首をかしげるようなことがあるに
違いありません。そのためにも、普通、当たり前のことだといわれているこ
とを、もう1回反省してみる必要があります。

 第3には、将来を展望することです。あなたの職場において、過去におい
て、どういうことが行われていたか、そして、今何が行われているか。将来、
どういうことが起こるか。あなたの力で、不可能を可能とするような余地が
どこかに、必ずあることを考えることです。

 以上の3つが、創意を働かす第1番の条件になることはいうまでもありま
せん。魔法の箱をあけてみたら、想像力にとんだ創意工夫が続々ととび出し
てくる、そんなものは絶対にありえません。カラッポの頭から創意工夫なん
かとび出さないことを知って、まず創意工夫する思考力を養っていくことが
大切です。

 それには、あなたの経験、観察、思いつき、想像力、ともかくあなたの精
神的宝庫の中にはガラクタもあれば、磨かれざる宝もあるのですから、それ
を他からのもちぐされでないように活用することから始める必要があります。

 そこで、今日かぎり漫然たる見方、考え方をやめることです。本を読むと
きも、散歩するときも、テレビを見るときも、漫然と見たり、聞いたりして
はいけません。どんなつまらない人と話しても、その中から自分のプラスに
なるものをひき出そうと努力しなければならないのです。

 そんなことをして、いつも自分の仕事とむすびつけて、ものを考え、本を
読み、散歩しているのでは、人生はサクバクとしてうるおいがない、生きた
甲斐がないと思われる人もいるでしょう。

 そう思うのは間違いです。そう思う人は、まだまだ創意の鏡が磨かれてい
ないのです。最初のうちは自分の仕事にむすびつけて、あらゆることを見る
ことは苦痛かも知れません。しかし、ちょっと練習すれば、いやでもそうせ
ざるを得なくなってしまいます。創意というものは、机にむかってねじりは
ちまきして考えてもできるものではないのです。

 つまらないテレビを見ているときに、これだというものがピンと生まれて
くるものであります。レクリエーションがそのまま、創意工夫の大資源にな
れば、それこそ一石二鳥です。

3.いままでよりちょっと下の仕事をしてみる
 ハーバード大学でビジネス・リーダーの成功者を分析した結果、次の4つ
の要因にあることを発表しました。

 第1に、自分は徹底的にこの仕事が好きだった。始めのうちは好きでなく
とも、新しい要素をとり入れて、自分で好きな理由をつくっていったことです。

 第2は、どうしても好きになれないものは、サッサと足を洗って、自分の
性格が自然にその仕事にむくものを求めて転換していったことです。

 第3は、いくつかの仕事をやってみて、その中で自分に向くものに情熱を
つぎこんでいったことであす。

 第4は、自分の仕事を発展させて、完全に新しい企業につくりかえてしま
ったとことです。

 人間には得手、不得手があります。この欠点をたくみに利用して、成功の
チャンスをつくることも、大いに心得ておくべき点です。

 ビジネスマンには、よく「こんなに働いているのに、こんな安月給しか貰
えない」と、憤慨するむきがあります。だが、もう一度、自分を反省してみ
ょう。あなたは、自分の欠点がわかっていないのです。欠点があるから、ど
んなに仕事をしても、いくら働いて能率があがらない。それをしないで、自
分が万能なように考えているのは、知る人が見たらまことに噴飯ものです。

 だから、そういう人は、一度、現在のポストよりさらに下の仕事をさせて
もらうとよい。そうすれば、自分の長所と欠点が、はっきりわかってくるか
らです。
■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■
★舘 義之のポジション
 人事・IE・VE・マーケティングコンサルタント
 人事・IE・VE・マーケティングの三輪で企業体質の仕組みを構築して、
厳しい経営環境の中で勝ち残っていく会社にすることを第一に支援します。
舘 義之への問い合わせstudy@agate.plala.or.jp
■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■

絞り込み検索!

現在22,382コラム

カテゴリ

労務管理

税務経理

企業法務

その他

≪表示順≫

※ハイライトされているキーワードをクリックすると、絞込みが解除されます。
※リセットを押すと、すべての絞り込みが解除されます。

スポンサーリンク

経営ノウハウの泉より最新記事

スポンサーリンク

労働実務事例集

労働新聞社 監修提供

法解釈から実務処理までのQ&Aを分類収録

注目のコラム

注目の相談スレッド

スポンサーリンク

PAGE TOP