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事業場外みなし労働時間制

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ビジネスに直結する実践的判例・法律・知的財産情報
弁護士法人クラフトマン 第134号 2014-10-21
(旧 石下雅樹法律・特許事務所)

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1 今回の判例  事業場みなし労働時間制
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最高裁平成26年1月24日判決

 A氏は、人材派遣会社B社に雇用されており、募集型の企画旅行
の期間、旅行会社C社に派遣されて海外旅行添乗員の業務を行って
いました。A氏は、未払いの時間外割増賃金深夜割増賃金がある
と主張して、B社に対し割増賃金付加金を請求しました。


 これに対し、B社は、当該添乗業務が労基法38条の2の事業場
みなし労働時間制が適用されるとして争いました。



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2 裁判所の判断
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 裁判所は、以下の各点を含む事情を総合考慮して、事業場外みな
し労働制は適用できないと判断しました。

● 添乗業務は、旅行日程や目的地等業務の内容があらかじめ具体
 的に確定されており、添乗員が自ら決定できる範囲や選択の幅は
 限られている。

● C社から添乗員に対しては、日程表・マニュアル等により具体
 的な業務指示がなされている。

● 添乗員は携帯電話に常時電源を入れておく義務があり、旅程管
 理上重要な問題や変更の必要が生じたときには、C社に報告し、
 個別の指示を受けることが求められていた。

● 業務内容について添乗日報に詳細・正確に記載して報告する義
 務があり、C社はツアー参加者のアンケートや関係者への問合せ
 によってその正確性を確認することができた。

● 以上から、C社の具体的な指揮監督が及んでおり、添乗員の勤
 務状況の把握が難しいとはいえない。



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3 解説
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(1)事業場みなし労働時間制とは

 事業場みなし労働時間制とは、労基法38条2項に定める制度
であり、「労働者労働時間の全部または一部について事業場外で
業務に従事した場合において、労働時間算定し難いとき」に、所
労働時間または当該業務の遂行に通常必要とされる時間労働した
ものとみなす制度です。

 そして、この制度の適用の可否にあたり問題となるのは、前記事
例でも争われたように、「労働時間算定し難いとき」に該当する
か否かです。そしてその判断は、前記事例のとおり、業務の性質、
内容やその遂行の態様・状況等、会社と従業員との間の業務に関す
る指示及び報告の方法、内容やその実施の態様等から、業務実態に
照らして判断されることになります。


(2) 実務上の留意点

 一昔前であれば、例えば外回りの営業職であれば、いったん社外
に出るとどこで何をやっているか分からないという状況もあったと
思います。しか近年は、より多くの成果を挙げるため、またITや
通信環境の発達もあって、会社が外勤の従業員を管理する度合いが
強くなってきている会社も少なくないと思われます。
 
 例えば、その日の訪問予定がすべてグループウェアに登録されて
管理されており、そのスケジュールにそって行動することが義務づ
けられているかもしれません。また、外出中は常に携帯電話を持っ
ており連絡が取れる状態になっており、逐一会社の指示を受けると
いった状況もありえます。さらに、帰社後、営業日報を作成し、上
司に報告を行って指導を受ける、という状況もあるかもしれません。

 そして、これまで事業場外みなし労働制採用しており、過去に
は適法だったとしても、運用の変化の結果、同制度の適用要件を満
たさなくなり、後に残業代の請求を受けるリスクが実は生じている
といった事態が想定されます。それで、過去に外勤の営業職等につ
いて事業場みなし労働時間制採用して運用してきたケースでも
、最近の業務実態にあわせて当該制度の適否を見直すことも必要か
もしれません。

 なお、事業場みなし労働時間制度は、あくまでも労働時間算定
についての例外です。それで、例えば法定労働時間を超えるみなし
労働時間を設定した場合には、36協定時間外労働に対しての割
賃金の支払いが必要となります。また、深夜労働割増賃金の規
定の適用もあり、従業員が現実に深夜時間帯(午後10時以降)に
労働した場合、その時間に応じた深夜割増賃金の支払いも必要とな
ります。こうした点見過ごされがちですが、あわせて留意する必要
があります。



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4 弊所ウェブサイト紹介~労働法 ポイント解説
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弊所のウェブサイトの法律情報の解説のページには、ビジネス・企
業に関係した法律情報に関する豊富な情報があります。

例えば本稿のテーマに関連した労働法については

   http://www.ishioroshi.com/biz/kaisetu/roumu/index/

において解説しています。必要に応じてぜひご活用ください。

なお、同サイトは今後も随時加筆していく予定ですので、同サイト
において解説に加えることを希望される項目がありましたら、メー
ルでご一報くだされば幸いです。



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ただし、本稿の内容を社内研修用資料等に使用したいといったお申
出については、弊所を出典として明示するなどの条件で、原則とし
て無償でお受けしています。この場合、遠慮なく下記のアドレス宛

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