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契約の自動延長規定の拘束性

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ビジネスに直結する実践的判例・法律・知的財産情報
弁護士法人クラフトマン 第159号 2015-10-06

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1 今回の判例  契約の自動延長規定の拘束性
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今回は時間の関係で、前書きは省略し、本文にまいります。

大阪地裁平成27年8月20日判決

 A社とB社は、ソフトウェアのライセンス契約及びサポート契約
を締結していました。

 同契約契約期間は5年と定められ、また、契約終了の3か月前
に、A社とB社のいずれから相手方に対して書面にて解約の申入れ
を行い協議の上合意した場合を除き、更に1年間自動延長するとの
条項が設けられていました。

 そして、B社は当初5年間の契約期間分のサポート費用をA社に
支払いましたが、契約期間満了前に解約の申入を行い、かつ以後の
サポート費用を支払わなかったため、A社が、当初の契約期間満了
後も同契約が更新されているとして、B社に対し、サポート費用
支払を求めました。



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2 裁判所の判断
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 裁判所は、以下のとおり判断し、A社の請求を認めませんでした。

● 本件契約の更新条項を文言どおり解すると、当事者間の合意が
ない限り契約が永続的に自動更新されることになるが、ソフトウェ
アの開発、保守、ライセンス契約を締結する事業者が、このような
事態を想定するとは通常は考え難い。

● 契約期間について、B社が当初1年と提示し、A社から10年
との提示があり、最終的に5年との合意がなされたという経緯等か
らすると、5年という契約期間は、双方当事者は、リスクを勘案し
た上で定めた重要な利害関係事項であると考えていた。

● にもかかわらず、更新条項を文言どおりに解すると永続的に自
動更新されることとなり、契約期間の定めは全く無意味なものとな
る。

● これらの点を勘案すれば、当初期間満了後の1年間ごとの更新
を定める条項については、強い拘束力を有するものとして定められ
たと認めるのは相当でない。

● そして、本契約は、A社がB社のために開発した製品の維持改
良を行うことを内容とする委任契約類似の継続的契約の性質を有す
るから、民法651条 の趣旨を考慮し、更新を妨げるやむを得ない
事由がある場合には更新を拒絶することができる。



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3 解説
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(1)契約の合理的解釈

 当然ながら契約においてある規定が定められ、二義的な解釈を残
さない内容なら、その規定は文言どおり解釈されるのが通常です。

 しかし、「通常」と書いたとおり、ある契約の規定が必ずしも文
言どおり解釈されず、裁判所がこれとは異なる解釈を取る場合もあ
ります。

 それは、その契約を巡る当事者の立場、契約目的、契約に至る交
渉経緯、契約の内容自体の合理性等から、文字どおり適用すると当
事者の契約目的や意図と大きく矛盾したり、あまりに不合理な結果
となったりする場合、社会通念上看過しがたい程度に一方当事者に
極端に不利益となる場合には、裁判所は、当事者が合理的に考えれ
ば定めたであろう解釈に基づき判断することがあります。

 本件もその一つの事例といえます。つまり、文言どおり解釈すれ
ば永久に続くと解されなくもない契約の更新条項につき、契約目的
、結果の不合理性と交渉経緯に照らして合理的に解釈し、民法の規
定を踏まえつつ「やむを得ない場合には更新拒絶が許される」と判
断されました。


(2)ビジネス上の留意点

 契約交渉において、自社に有利な条項を盛り込もうとすることは
当然のことです。そして、特に一定の継続的取引が想定される契約
においては、投下資本の回収、収益の確保、事業の安定のために契
約期間を長期にしたいという一方の要望と、長期間の拘束によるリ
スクを軽減したいという他方の要望が拮抗し、シビアな交渉がなさ
れることも珍しくありません。

 ただし、有利な内容で相手の合意を得られたと思っても、社会通
念に照らして大きく不合理といえるものは、今回の事例のように別
の解釈がなされてしまうことがあることは十分留意する必要があり
ます。

 他方、今回の事例で、B社側が、文言どおり解釈すれば永久に続
くと解されなくもない契約条項になぜ合意したのかその事情は不明
ですが、いずれにせよ、そのような規定に合意するリスクは考える
必要があります。

 今回は裁判所が、自動更新規定について一定の制限的な解釈をし
ましたが、常にそのようなに、裁判所が自社の立場にあわせて解釈
するとは限らないからです。

 それで、契約交渉においては自社の利益や権利を守るために有利
な規定を考えることに加え、ある程度はバランスを取った規定を作
成するととともに、自社にとって明らかに重大な不都合となりうる
規定はきちんと是正を求める、ということは重要となるのではない
かと思います。

 そしてこのあたりの法的バランスについては、自社の見方に立ち
つつも客観的な視点から物事を見ることができる弁護士などの法律
家から、民法や過去の裁判例からのアドバイスを受けることも一つ
の有益な方法といえるかもしれません。



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