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不競法による商品形態模倣の規制

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ビジネスに直結する実践的判例・法律・知的財産情報
弁護士法人クラフトマン 第160号 2015-10-20

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前書き
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 ここのところ一気に朝晩が冷え込むようになった昨今ですが、皆
様ご健勝のこととお慶び申し上げます。本稿を執筆しております弁
護士の石下(いしおろし)です。

 時折弊職は、海外での手続に使用するなどの理由で、日本の会社
登記簿の英訳の依頼を受けることがあります。普通登記簿は分量
も少なく、英訳の難易度としては高くはないのですが、今作業をし
ている登記簿は、詳細にわたる優先株の条項とストックオプション
の条項がてんこ盛りで、のびたラーメンを食べるように、いくら作
業しても減らないという感覚に襲われています。でも改めて会社法
を見直す良い機会ですし、こういうときこそ気合と根気で乗り切り
たいと思っています。
 
 では本文にまいります。


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1 今回の判例  不競法による商品形態模倣の規制
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東京地裁平成27年7月16日判決

 A社が販売する服飾商品について、B社が、自社商品の形態を模
倣した商品であって不正競争防止法2条1項3号の不正競争行為に
当たると主張して、損害賠償等を求めました。

 これに対しA社は、同社商品が、B社の商品の販売開始以前に、
中国でカタログやサンプル品を見て購入したもので、B社商品も中
国製であること等に鑑みれば、B社も同様、中国に既に存在してい
たデザインの婦人服を輸入して販売していたと考えるのが合理的で
あるから、損害賠償等を請求し得る者に当たらない等と主張しまし
た。

 なお、A社の商品の画像については、以下のURLからご覧になれま
す(裁判所ウェブサイトより引用)。

  http://www.ishioroshi.com/biz/topic/topic2015-10-20/



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2 裁判所の判断
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 東京地裁は、以下のとおり判断し、損害賠償を認めました。

● B社は、デザイナーを雇用しデザインに当たらせており、デザ
イナーが作成したデザイン画を企画会議で検討して商品化の可否を
決定している。

● B社は、商品化を決めたデザインについてパターンナーが型紙
を作成し、外注先に、製品番号、商品コード、サイズ、デザイン(
イラスト)等を記載した注文書等を送付して製造を発注している。

● 以上によれば、B社の商品はB社がデザインを確定して製造を
発注したもので、他社がデザインした商品を購入したのではないと
認められるから、B社商品の形態はB社がその資本及び労力により
開発したとみることができ、不競法2条1項3号に基づく請求をす
ることができる。



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3 解説
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(1)商品形態の保護と不正競争防止法

 自社の商品の形態が第三者によって模倣されたり、第三者が自社
商品と非常によく似た形態の商品を製造販売するといったケースを
経験されたことがあるかもしれません。そして、事業者としては、
できる限り是正したいと考えるかと思います。

 この場合、自社商品が意匠登録されていればベストですが、意匠
登録していない場合や意匠登録ができないような場合、自社製品を
模倣から保護する可能性のある法が、不正競争防止法です。

 それは、不競法が、一定の場合に、他人の商品の形態と類似する
商品の製造販売を制限しているからです。具体的には、大きく分け
ると以下の2種類があります。

 ア)「周知表示混同惹起行為(不正競争防止法2条1項1号)」

 イ)「商品形態模倣行為(同法2条1項3号)」

本稿では、今回の事例でテーマとなった、後者を取り上げます。


(2)商品形態模倣行為のメリット

 不競法2条1項3号は、他人の商品の形態を模倣した商品を譲渡
(販売)する行為などを禁止しています。

 前記ア)の周知表示混同惹起行為(2条1項1号)と比較した場
合の3号の規定のメリットは、他社の模倣品の販売を差し止めるた
めに、1号の場合には自社の商品形態が周知である(一定範囲で広
く認識されている)必要があるのに対し、3号では、そのような「
周知性」を備えている必要がないということにあります。

 一般に、「周知性」の立証は、膨大な証拠を収集して提出するな
ど大きな困難や手間が伴うところ、3号に基づく請求はこの点での
立証の負担がなく、他社による模倣に制限を課すための有力な手段
となり得ます。


(3)3号による請求についての留意点

 他方で、3号に基づく請求については、以下の点に注意が必要で
す。

● 今回争点となったように、他社による模倣を禁止することがで
きる商品は、自らが資本や労力を投下して開発した商品である必要
があります。つまり、単に他者が開発した商品を仕入れて販売する
だけの当事者は、3号による請求はできません。

● 他社による模倣を禁止することができる期間は、模倣の対象と
なった自社の商品が最初に販売された日から3年、という時間的制
約があります。

● 3号が禁止している模倣については、当該模倣品を販売する者
に「故意・重過失」が必要です。つまり、模倣であることを知って
いたか、又は、ほんの少し注意を払えば知ることができた(重過失
があった)ことを立証必要があります。この点の立証は、ややハー
ドルが高いといえます。

● この規定は、形態についての「デッドコピー」、すなわち同一
又は実質的に同一のものを規制するものであり、単に「似ている(
類似)」レベルまで規制するものではありません。また、「形態」
の模倣が対象ですので、機能や性能の模倣は対象となりません(こ
れらは特許や実用新案の守備範囲です)。

● 形態が同じであっても、それが、ある特定の機能を実現するた
めに不可欠な形態である場合には、禁止することができません。


 以上のとおり、商品形態模倣行為を規制する規定についても制約
やデメリットがありますが、他社の模倣を差し止める有力な手段の
一つとして、検討には値するものと思われます。

 以上のとおり、他社による自社の商品形態の模倣を差し止める方
法は、「周知表示混同惹起行為」「商品形態模倣行為」のうちいず
れも一長一短であり、難しい要件や立証が必要な場合があります。

 それで、具体的事例においてどのような方法が効果的か、またそ
もそも権利行使が可能かについては、専門家に相談し判断するのが
好ましいと思います。



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4 弊所ウェブサイト紹介~不正競争防止法解説
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弊所のウェブサイトの法律情報の解説のページには、ビジネス・企
業に関係した法律情報に関する豊富な情報があります。

例えば本稿のテーマに関連した不正競争防止法については

  http://www.ishioroshi.com/biz/kaisetu/fukyouhou/index/

において、不正競争防止法の各事項について解説しています。

ぜひ一度ご覧ください。


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本稿の無断複製、転載はご遠慮ください。

ただし、本稿の内容を社内研修用資料等に使用したいといったお申
出については、弊所を出典として明示するなどの条件で、原則とし
て無償でお受けしています。この場合、遠慮なく下記のアドレス宛、
メールでお申出ください。
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