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仲裁規定の解釈と仲裁のコスト

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ビジネスに直結する実践的判例・法律・知的財産情報
弁護士法人クラフトマン 第166号 2016-01-19

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前書き~メルマガ読者限定・初回30分無料相談サービスの開始
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 本稿を執筆しております弁護士の石下(いしおろし)です。関東
地方の方は、昨日の大雪で大変な思いをされた方も少なくなかった
のではないかと思います。お怪我などなかったことを願っています。

 さて、今回から「ビジネスに直結する実践的判例・法律・知的財
産情報」の購読者様限定で、初回30分法律相談無料サービスを開
始しました。弊所に相談したいが、弊所への相談実績がないので社
内で予算が取りにくいといった方、是非ご活用くだされば幸いです。

 詳細は本稿の末尾で詳しくご案内します。
 では、本論にまいります。



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1 今回の判例  仲裁規定の解釈と仲裁のコスト
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東京地裁 平成27年1月28日判決(中間判決)

 パナマ共和国の船会社A社が、同社所有の船舶につき、日本の船
舶運航会社B社を傭船者として定期傭船契約を締結していましたが、
契約期間中である平成24年7月23日、B社は更生手続開始の決
定を受けました。

 これに対しA社は、B社への定期傭船料債権が、会社更生法によっ
て共益債権にあたると主張して、傭船料債権の支払を求めました。

 ところで、同定期傭船契約契約書17条には、英文で、船主と
傭船者との間に紛争が生じた場合、案件は、ロンドンにおける仲裁
とする合意が記載されていました。

 そこでB社は、A社からの訴えについて、仲裁法14条により、
訴えの却下を求めました。




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2 裁判所の判断
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 裁判所は、以下のとおり判断し、訴えを却下しませんでした。

● 当該仲裁合意は、仲裁の対象となる紛争について、「紛争が生
じた場合(That should any dispute arise)」との概括的な文言を
用いており、限定を加えていない。

● しかし、当該仲裁合意において仲裁人は『業界人(commercial
men)』でなければならないとされているところ、ロンドンの仲裁
実務において、『業界人』としてはロンドンの海運実務経験者が起
用され、学者や裁判官経験者は選任されないこととなっている。

● 他方で、本件訴訟の中心的な争点は、当該傭船債権が共益債権
に当たるか否かといった、日本の会社更生法の解釈固有の問題であ
り、ロンドンの仲裁人が適切に判断することには困難が伴う。

● 英国法上、裁判所の許可等のある特別な場合を除き、倒産を申
し立てた会社を相手にして仲裁手続を行うことは許されないものと
されている。

● 以上に照らすと、本件訴訟のような紛争についてまで、ロンド
ンの仲裁に付託すると合意したと解することはできない。




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3 解説
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(1)仲裁及び管轄合意とは

 国際取引契約では、紛争が生じた場合の解決方法として、管轄裁
判所を合意するケースのほか、本件のように、仲裁合意をしておく
ケースもよく見られます。

 仲裁とは、当事者が、私人である第三者をして争いを判断させ、
その判断に服することを合意し(これを「仲裁合意」といいます)、
その合意に基づき紛争を解決する制度です。

 そして、この仲裁人の判断(「仲裁判断」といいます)には、裁
判所による確定判決と同一の効力が認められています(仲裁法45
条)。従って、仲裁判断に基づき、裁判所の強制執行手続を取るこ
とができます。

 また、仲裁合意をした当事者の一方が、仲裁合意があるにもかか
わらず裁判所に提訴した場合、他方当事者が仲裁合意の存在を主張
すれば、通常は訴えは却下(いわば「門前払い」)されます(仲裁
法14条)。

 本件でも、上のような理由で、被告B社は仲裁合意の存在を主張
して訴え却下を求めましたが、裁判所は仲裁合意を限定解釈し、訴
えを却下しませんでした。


(2)仲裁のコスト

 さて、一般に仲裁制度については、当事者が仲裁人や仲裁機関を
選ぶことができること、迅速性や、非公開であること、裁判所の判
決と異なり、仲裁判断が多の国の裁判所で執行できることなどのメ
リットがあるとされており、国際契約において仲裁合意は頻繁に見
られます。

 ただし、仲裁制度について考える必要があるのはコストの問題で
す。

 というのは、仲裁手続に必要な以下1~3の費用は、すべて当事
者が負担するのが原則だからです。これに比べ、裁判手続では、2
について当事者が負担するのは当然ですが、1と3について当事者
が負担する部分は通常わずかです。そのため、仲裁においてはコス
ト負担が大きくなるわけです。

 1. 仲裁廷の費用仲裁人の報酬費用仲裁廷が選任した鑑定
  人報酬など審理に要する費用
 2. 当事者の費用代理人の報酬、資料収集の費用、私的鑑定費
  用、仲裁場所への交通費や滞在費などを含む仲裁手続を遂行す
  るための費用
 3.仲裁機関の管理料金、その他仲裁手続のための合理的な費用
  (会議室、通訳、速記者等の費用


(3)仲裁のコストの具体例

 以下、具体例として、日本商事仲裁協会(JCAA)と国際商業
会議所(ICC)について取り上げてみます。

 日本商事仲裁協会の場合、紛争による請求金額または請求の経済
的価値が2000万円というケースでは、管理料金が54万円、仲裁人報
償金は「時間単価仲裁人1名×仲裁手続に要し た時間」をベース
に上限額(2000万円×10.8%=216万円)の範囲内で決まるとされて
います。時間単価は3~8万円までの範囲とされています。ただし、
上の費用には、代理人弁護士の費用や当事者の費用は含まれていま
せん。

参考:https://www.jetro.go.jp/world/qa/04C-070308.html

 他方、国際商業会議所の仲裁費用については、例えば訴額が20万
ドル程度、仲裁人が一人の場合、仲裁報酬が平均で1万4600ドル
程度(ただし最大で2万3479ドル)、仲裁機関の管理費用が7895ドル
となっています(以下のサイトで算定)。

http://www.iccwbo.org/Products-and-Services/Arbitration-and-
ADR/Arbitration/Cost-and-payment/Cost-calculator/

 それで、係争額が小さい(億未満の単位のもの)ことが想定され
契約は、仲裁には不向きかもしれませんし、係争額が10億円未
満が想定される契約は、仲裁人を一人とする仲裁規定を検討するこ
とが必要かもしれません。

 仲裁規定の選択や書き方においては、上のように、想定される係
争額やコストも加味して検討する必要があると思われます。




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4 メルマガ読者限定・初回30分無料相談サービスの開始
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 弊所では、弊誌のご愛読の感謝として、この度メルマガ読者限定
で、初回30分無料相談を開始しました。はじめて弊所に相談したい
と思っているものの、相談実績がないので社内で予算が取りにくい
といった方、是非ご活用くだされば幸いです。


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