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マイナス金利と退引割引率

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇vol.325-2016.02.15
      
   ☆☆☆ Weekly Accounting Journal ☆☆☆

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
こんにちは、エキスパーツリンクの紺野です。日本の会計基準は、今、IFRS
で揺れ動いています。一方で税制も改正されており、上場会社及び上場準備会
社の決算・経理実務は今後も引き続き、目まぐるしく変化していきます。これ
らのエッセンスを、上場会社及び上場準備会社の経理担当者の皆さん向けに、
出来る限り分かりやすくお伝えします。何らかの「気づき」をご提供すること
が出来れば幸いです。仕事の合間に軽くどうぞ!

文中意見にわたる部分は私どもの私見にもとづきます。このメールマガジン
の情報をもとに実務に適用される場合には、監査法人さんや顧問税理士さん等
にご確認ください。もちろん、エキスパーツリンクでもまずは無料で検討させ
ていただきます。
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エキスパーツリンク、公認会計士紺野良一にご意見、ご要望、ご相談など
ありましたら、こちらにどうぞ。紺野に直接届きます。
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◆◇今週のCONTENTS◆◇
1.[最新J-GAAP]マイナス金利が退職給付債務割引率に与える影響
2.[最新J-GAAP]新収益認識基準についての建設業界の反応
3.[NEWS]新日本監査法人関係記事
4.[IFRS]「開示に関する取組(IAS第7号の修正)」を公表
5.[編集後記]

===================================
1.[最新J-GAAP]マイナス金利が退職給付債務割引率に与える影響
===================================
日銀当座預金のマイナス金利がとうとう2月16日から適用されます。さまざ
まな面への影響が予想されます。個人的には住宅ローンの金利が下がるのか、
興味深々です。

経理実務的には、借入金利引き下げのチャンスかと思いますが、会計的には、
金利が影響する局面はそれだけではありません。退職給付債務資産除去債務
割引率です。

ここでは、退職給付債務割引率がマイナスになったらどうなるか、考えてみ
ます。

「割引」率ですから、数値が小さいほど債務は大きくなってしまうわけですが、
これがマイナスになったらどうなるのか。

段階を踏んで考えてみましょう。

「割り引く」のは、1プラス割引率だったわけですから、債務を割る分母が1
より大きくなっていたわけですね。つまり、将来の債務を現在に割り引くとそ
の将来の債務の額より小さくなっていたわけです。これが、割引率がマイナス
になってしまったら(そもそも「割引」率ではなく「割増」率かもしれません
が)、1プラス割引率が、1より小さくなるということですね。

1より小さい数値で割れば当然、結果は将来の債務の額より大きくなるという
わけです。

つまり、今、将来の債務額面額よりも大きい負債を計上しておいて、それを
時間の経過にともない、将来の額面額まで取り崩して費用のマイナスを計上し
ていく、ということになりますね。

退職給付費用は、
勤務費用
利息費用
数理計算上の差異の償却
過去勤務債務の償却
会計基準変更時差異の償却
の合計です。

うち、利息費用がマイナス(費用のマイナスですから収益側)ということになる
わけです。退職給付費用全体としては、利息費用がマイナスになったとしても、
プラスを維持するのかもしれませんが。

ということになるわけですが、これはあくまで本当にマイナスの割引率を適用
したらどうなるかという話です。

そもそも本当にマイナスの割引率を適用することになるのか。

こちらのような解説があります。

http://www.pmas-iicp.jp/consultant/tabid/103/pdid/229/Default.aspx

ここでは、「マイナスの利回りをそのまま割引率として使用する」「利回りが
マイナスの場合は割引率をゼロとする」という方法が考えられるとしています。

こちらの解説では、「会計基準はマイナス金利を想定したものではないと考え
られます。」
「例え国債がマイナス金利で取引されていても、将来の退職金・年金の給付と
同額の現金を現時点で保有していれば不足が生じることはないので、その給付
額以上の債務を認識する必要はないという考え方にも、一定の合理性はあると
考えられます。」
としています。

私もそう思います。仮にマイナスになったとしても、今割引前の金額を計上し
ておけば十分。会計にそこまで求めなくても、、、と思います。しかしながら、
ここの考え方は、何等かの回答をASBJなりが出してくれないと混乱が生じるよ
うに思います。

ところで、一部の国債の利回りがマイナスだとして、本当に退職給付の割引率
として適用すべき率がマイナスになるのでしょうか。

割引率については、企業会計基準第26号「退職給付に係る会計基準」は以下の
ように記しています。

第20項
退職給付債務の計算における割引率は、安全性の高い債券の利回りを基礎と
して決定する」

第24項
退職給付債務等の計算(第 14 項から第 16 項参照)における割引率は、安
全性の高い債券の利回りを基礎として決定する(会計基準第 20 項)が、
この安全性の高い債券の利回りには、期末における国債、政府機関債及び優
社債の利回りが含まれる(会計基準(注 6))。優良社債には、例えば、複
数の格付機関による直近の格付けがダブル A 格相当以上を得ている社債
が含まれる。
割引率は、退職給付支払ごとの支払見込期間を反映するものでなければなら
ない。当該割引率としては、例えば、退職給付の支払見込期間及び支払見込
期間ごとの金額を反映した単一の加重平均割引率を使用する方法や、退職
付の支払見込期間ごとに設定された複数の割引率を使用する方法が含まれる。」

ですから、国債の利回りがマイナスになっている場合、退職給付の割引率がマ
イナスになる、という事態が考えられるわけです。

単一の割引率を適用している場合、比較的短期の国債利回りはマイナスだとし
ても、支払見込期間の国債利回りがプラスならプラスのままでしょうし、仮に
これがマイナスならマイナス割引率を適用するのか、ゼロとするのかという問
題になるでしょう。

複数の割引率を適用している場合は、マイナスの部分とプラスの部分がでてく
るということになる可能性があるわけです。

いずれにしても、マイナス割引率については、「意見」は出ているかもしれま
せんが、会計基準設定主体等が考え方を整理しないといけないように思います。

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2.[最新J-GAAP]新収益認識基準についての建設業界の反応
===================================
先日とりあげましたが、企業会計基準委員会は、「収益認識に関する包括的な
会計基準の開発」についての意見募集を開始しています。

この論点9で工事進行基準の問題を提起していますが、これについて建設通信
新聞が報じています。

http://www.kensetsunews.com/?p=60763

「具体的には、IFRSの収益認識基準(第15号)での工事契約は、原則と
して「進行基準」しか認めていない。ただ、進行基準で収益を計上する場合
に厳格な要件が定められており、要件に合わない場合に、収益費用(工事
コスト)が回収可能と認められる部分についてだけ認識する「原価回収基準」
の適用を求めている。これまで進行基準を適用してきた案件が進行基準適用
を認められない可能性もある。」

「結果的にこれまで日本の会計基準で採用されてきた「工事完成基準」が廃止
され、これまで日本の工事契約会計基準で認めていなかった「工事原価回収
基準」が導入されることになる。」

ここでは、その影響として、対応のコストと事務負担増が挙げられるとしてお
り、財務会計システム改修負担や財務報告プロセス見直しが提示されていると
しています。
また、工事債権回収までに1年超かかる場合や支払条件が悪い場合に、金利相
当分を区分する処理が求められるか、簡便法が適用できるかという問題が提起
されているとされています。

ここでは、懸念にとどまっているようですが、反対意見がでてくるのでしょう
ね。

会計基準について簡潔に整理されているので、記載しておきます。

〈工事契約の違い〉

◆日本基準
・工事の進捗部分について、成果の確実性が認められる場合に進行基準を適用
・認められない場合は、完成基準を適用
◆IFRS
・原則、進行基準
・ただし、サービス提供に関する取引の成果を信頼性を持って見積もることが
出来ない場合、収益費用が回収可能と認められる部分についてのみ認識す
る、原価回収基準を適用
・進行基準適用のための要件も別途定めている


===================================
3.[NEWS]新日本監査法人関係記事
===================================
社員だけのようですが、「社外では友人との飲み会でも控えるように」

ということらしいですね。

http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/report/15/110879/020500238/?P=1&rt=nocnt

新規業務停止と、21億円の課徴金を課された新日本監査法人としては、しば
らくおとなしくしていなければということですかね。

有料記事なのであまり書きませんが、改善計画の仕組みの整備について整理さ
れています。

監査法人の改善計画は当然ですが、経営者側にも、監査対応改善計画を求めた
いですね。

===================================
4.[IFRS]「開示に関する取組(IAS第7号の修正)」を公表
===================================
IASBは、2016年1月29日、「開示に関する取組み(IAS第7号の修正)」を公表し
ました。

2017年1月1日以後開始事業年度から適用され、早期適用が認められます。本
修正の最初の適用時には、前期の比較情報を提供することは求められません。

http://ivory.ap.teacup.com/kaikeinews/8864.html

ご紹介まで。

===================================
5.[編集後記]
===================================
前回のメルマガ、一部の配送に失敗していたようで、本日早朝に再送しました。
大変失礼いたしました。一人でやっていると何かと失敗してしまいます。なに
とぞ、ご容赦願います。
週末は異様に暖かかったわりに今日は寒いので、皆さんも体調にはくれぐれも
お気を付けください。
近年の研究では、21世紀後半には、クウェート市やUAEのアルアイン、カター
ルのドーハでは気温が過去最高の60度(セ氏)を超える可能性があると予測され
ているそうです。世界の最高気温は、リビアで観測された58度(セ氏)、または
カリフォルニア州デスバレーの57度(セ氏)が観測史上最高とされているそうで
す。このデスバレーは私も行ったことがあるのですが、40度(セ氏)超えてまし
たね。あの暑さより全然超えるのかあ、と思うと恐ろしいです。ちなみに、60
度を超えるともはや人間の生存の閾値を超えているそうです。これらの地域で
はいずれ人間が住めなくなるかもしれませんね。


公認会計士紺野良一事務所のHPを作りましたので、是非ご覧ください。

トップページ
http://kaishaho-kansa.com/
個人会計士による会社法監査
http://kaishaho-kansa.com/audit/personal/


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*発行人: エキスパーツリンク
 公認会計士税理士・公認内部監査人(CIA)inactive 紺野良一
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