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ビジネスに直結する実践的判例・法律・知的財産情報
弁護士
法人クラフトマン 第168号 2016-02-17
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法律相談ご案内
http://www.ishioroshi.com/btob/soudan_firstb.html
顧問弁護士
契約(
顧問料)についての詳細
http://www.ishioroshi.com/btob/komon_feeb.html
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前書き 弊所新宿事務所の移転のお知らせ
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
本稿を執筆しております弁護士の石下(いしおろし)です。いつ
もご愛読ありがとうございます。
さて、弊所新宿事務所は、来る2016年3月7日(月)から、
東京丸の内に移転することとなりました。具体的な場所は以下のと
おりです。
新事務所名 弁護士
法人クラフトマン東京国際
特許法律事務所
東京都千代田区丸の内1-5-1 新丸の内ビルディング11階
[電 話] 03-6267-3370 [FAX] 03-6267-3371
地図
https://goo.gl/maps/ZMAXEvk2ons
新事務所は東京駅から至近のところにあり、東京以外の地方の方
々も含め、弊所へのアクセスは容易になると思います。今後ともよ
ろしくお願いいたします。
また、メルマガ読者限定無料相談は引き続き継続中です。末尾の
ご案内もご覧ください。
では、本論にまいります。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
1 今回の判例
特許侵害と先使用による実施権
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
知財高裁 平成27年6月30日判決
A氏は、発明の名称を「繰り出し容器」とする
特許権(
特許第4
356901号)を保有していました。なお、A氏
特許は、平成1
9年3月1日に出願されたものでした。
そしてA氏は、B社に対し、その製造販売する口紅の容器が同特
許権の侵害に当たると主張しました。なお、B社は、フランスの世
界的な化粧品メーカーであるLグループのグループ会社でした。
原判決(大阪地裁)は、B社が当該
特許権について
特許法79条
所定の先使用による通常実施権を有すると判断し、A氏の請求を棄
却したため、A氏が
控訴しました。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
2 裁判所の判断
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
知財高裁も一審と同様A氏の請求を棄却しましたが、その理由の
一部は以下のとおりです。
● Lグループの日本
法人を含めたLグループの商品の口紅容器の
製造を行っていたC社は、Dの指示に基づき、遅くとも平成18年
2月14日(A氏
特許の出願前)までに、口紅容器に係る図面を作
成した。
● 当該図面には、A氏
特許発明の実施品の製造に必要な情報が記
載されていることが認められるから、Dは、A氏
特許発明について
「
特許出願に係る発明の内容を知らないでその発明をした者」に当
たる。
● そして、当該図面が作成されたころには、同図面は、フランス
のL社に送付されたものと推認され、同社の子会社でLグループの
一員である日本L及びその
完全子会社であるB社も、B社商品の各
部品の輸入時には、A氏
特許発明の内容を「知得」していたと評価
するのが相当である。
● よってB社は、A氏
特許発明について、「
特許出願に係る発明
の内容を知らないでその発明をした者から知得」した者に当たる。
これらによれば、B社においては、A氏
特許権についての
先使用権
は成立する。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
3 解説
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
(1)
先使用権とは
日本では、ある発明について最初に
特許を出願した者が
特許を取
得するという、いわゆる「先願主義」を
採用しています。
それで、甲社がある発明を行い、その後たまたま乙社が同じ発明
をした場合に、甲社が
特許出願をせず、乙社が
特許出願をし
特許権
を取得した場合、その後甲社がその発明を実施することは、先願主
義を貫けば甲社の
特許権侵害に当たることになります。
しかし、このような結果は、
事業者にとって不当なリスクを与え
てしまうことになるため、
特許法79条は、「
先使用権」という制
度を定めています。
先使用権とは、ある者が、
特許権者による当該出願の際に、すで
にその発明を実施して事業を行っていたケース、又はその準備を行
っていたようなケースでは、当該
特許権の登録後であっても、当該
発明を実施することができるという権利です。そこには、具体的に
次の2つの類型があります。
(i)
特許権者の発明の内容を知らないで独自に同じ内容の発明を
した者
(ii)
特許権者の発明の内容を知らないでその発明をした者から
知得した者
本件では(i)も争点となりましたが、(ii)についても争点となり、
判断が示されました。特に本件では、親会社であるフランスのL社
の知得が、その子会社や
孫会社(B社)の知得に関連付けられてい
ますが、この点は、実務上も興味深いものがあります。
(2)
先使用権の主張における「事業の準備」の意義
さて本稿では、本件の事例を離れ、実務上問題となりやすい「事
業の準備」について考えてみたいと思います。つまり、研究開発~
発明の完成~事業化実験~事業の準備~事業の実施という事業の流
れの中で、どこからが「事業の準備」に該当するのでしょうか。
この点最高裁は以下のように判示しています。
いまだ事業の実施の段階には至らないものの、即時実施の意図
を有しており、かつ、その即時実施の意図が客観的に認識され
る態様、程度において表明されていることを意味する
そして「意図が客観的に認識できる程度に表明」されている場合
とは、ケース・バイ・ケースですが、例えば、製造設備の製造や金
型の製作に着手している、製造のために原材料をすでに購入したり
しているといったことが含まれます。
他方、単に事業計画のアウトラインを公表しただけという段階で
あれば足りないということになります。また、当該発明にかかる製
品について、試作中であり即時に実施の意図が認識されない状況で
も同様です。
(3)
先使用権の主張に役立つ立証方法
会社の事業や製品開発などにおいては、製造方法に関する発明な
ど、
特許の出願よりもノウハウ秘匿にメリットがあるという判断か
ら、また発明の重要性とコストから、
特許の出願をしないというケ
ースがあります。
このような場合、後日万一第三者が
特許を出願・登録してしまっ
た場合に生じる紛争時の立証を考えておく必要があります。
この場合、いざ紛争となってから証拠を集めようとしてももはや
証拠は残っていない(あるいは収集が困難)ということがあるかも
しれません。それで、研究開発~発明の完成~事業化実験~事業の
準備~事業の実施という一連のプロセスの中で、行ったこととその
結果事実を随時記録して、客観的資料として保存管理することが重
要といえます。
先使用権の立証のための証拠資料には、具体的に以下のものが含
まれます。こうした日々の管理がいざというときにものをいうかも
しれません。
【発明関係の立証】
◆研究ノート
◆議事録
◆実験報告書、技術成果報告書
◆発明提案書書
◆
設計図、デザイン図、その他の図面
◆製品仕様書
【事業の実施・準備の立証】
◆事業計画書
◆見積書、発注書、
契約書
◆
請求書、納品書
◆原材料仕入記録簿、発注簿、受注簿、製品受払簿などの帳簿類
◆業務日誌、作業日誌、製造記録
◆運転マニュアル、作業標準書、検査マニュアル、保守点検基準書、製造工程図等
◆製品サンプル
◆カタログ、パンフレット
◆商品取扱説明書
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4 メルマガ読者限定・初回30分無料相談サービスの開始
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弊所では、弊誌のご愛読の感謝として、メルマガ読者限定で、初
回30分無料相談を実施しています。弊所に相談したいと思っている
ものの、相談実績がなく、社内決裁をいので社内で予算が取りにく
いといった方、是非ご活用くだされば幸いです。
<相談要領>
a 相談日時 申込者のご都合にあわせ、日程調整の上
決定
b 相談場所 弊所新宿事務所又は横浜事務所
c 相談回数 1回まで。時間は30分まで
d 相談後の義務 何もありません。ご安心ください。
<申込要領>
「申込可能な方」 初めて弊所に相談される方に限ります
法人の相談に限ります
「申込期間」 いつでも可能です
「相談可能分野」 以下をご覧ください
http://www.ishioroshi.com/biz/soudan_first/
「申込方法」 メールの場合
info@ishioroshi.com まで、以下のa~gの
事項を明記し送信ください。
お電話の場合
03-6388-9679 又は 045-276-1394まで
その際に、「メルマガ読者初回無料相談」で
ある旨 お申し付けください。
a
商号
b 電話番号
c ご担当者名
d メールアドレス(メルマガ登録されているアドレス)
e 弊所からの連絡方法
「メール・電話・両方」から選択
ただし、メールアドレス又は電話番号の誤記がある場合
等、やむを得ずご希望の連絡手段以外の手段でご連絡す
る場合もあります。
f 簡単な相談内容
1~2行で十分です。
g ご相談希望日時
●月●日の「午前」「午後」という形でお願いいた
します。
3以上の候補をいただけると幸いです。
h ご相談希望場所
新宿事務所、横浜事務所のいずれかからご選択く
ださい。
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本稿の無断複製、転載はご遠慮ください。
ただし、本稿の内容を社内研修用資料等に使用したいといったお申
出については、弊所を出典として明示するなどの条件で、原則とし
て無償でお受けしています。この場合、遠慮なく下記のアドレス宛、
メールでお申出ください。
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【編集発行】
弁護士・弁理士 石下雅樹
新宿事務所[2016年3月3日(木)まで]
〒160-0022 東京都新宿区新宿4-2-16
パシフィックマークス新宿サウスゲート 9階
弁護士
法人クラフトマン新宿
特許法律事務所
TEL 03-6388-9679 FAX 03-6388-9766
丸の内事務所[2016年3月7日(月)から]
〒160-0022 東京都千代田区丸の内1-5-1
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弁護士
法人クラフトマン東京国際
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横浜事務所[変更なし]
〒221-0835 横浜市神奈川区鶴屋町3-32-14 新港ビル4階
クラフトマン法律事務所
TEL 045-276-1394(代表) FAX 045-276-1470
mailto:
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弊所取扱分野紹介(
契約書作成・
契約書チェック・英文
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http://www.ishioroshi.com/btob/jisseki_keiyakub.html
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費用オンライン自動見積もあります)
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では、本論にまいります。
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1 今回の判例 特許侵害と先使用による実施権
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知財高裁 平成27年6月30日判決
A氏は、発明の名称を「繰り出し容器」とする特許権(特許第4
356901号)を保有していました。なお、A氏特許は、平成1
9年3月1日に出願されたものでした。
そしてA氏は、B社に対し、その製造販売する口紅の容器が同特
許権の侵害に当たると主張しました。なお、B社は、フランスの世
界的な化粧品メーカーであるLグループのグループ会社でした。
原判決(大阪地裁)は、B社が当該特許権について特許法79条
所定の先使用による通常実施権を有すると判断し、A氏の請求を棄
却したため、A氏が控訴しました。
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2 裁判所の判断
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知財高裁も一審と同様A氏の請求を棄却しましたが、その理由の
一部は以下のとおりです。
● Lグループの日本法人を含めたLグループの商品の口紅容器の
製造を行っていたC社は、Dの指示に基づき、遅くとも平成18年
2月14日(A氏特許の出願前)までに、口紅容器に係る図面を作
成した。
● 当該図面には、A氏特許発明の実施品の製造に必要な情報が記
載されていることが認められるから、Dは、A氏特許発明について
「特許出願に係る発明の内容を知らないでその発明をした者」に当
たる。
● そして、当該図面が作成されたころには、同図面は、フランス
のL社に送付されたものと推認され、同社の子会社でLグループの
一員である日本L及びその完全子会社であるB社も、B社商品の各
部品の輸入時には、A氏特許発明の内容を「知得」していたと評価
するのが相当である。
● よってB社は、A氏特許発明について、「特許出願に係る発明
の内容を知らないでその発明をした者から知得」した者に当たる。
これらによれば、B社においては、A氏特許権についての先使用権
は成立する。
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3 解説
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(1)先使用権とは
日本では、ある発明について最初に特許を出願した者が特許を取
得するという、いわゆる「先願主義」を採用しています。
それで、甲社がある発明を行い、その後たまたま乙社が同じ発明
をした場合に、甲社が特許出願をせず、乙社が特許出願をし特許権
を取得した場合、その後甲社がその発明を実施することは、先願主
義を貫けば甲社の特許権侵害に当たることになります。
しかし、このような結果は、事業者にとって不当なリスクを与え
てしまうことになるため、特許法79条は、「先使用権」という制
度を定めています。
先使用権とは、ある者が、特許権者による当該出願の際に、すで
にその発明を実施して事業を行っていたケース、又はその準備を行
っていたようなケースでは、当該特許権の登録後であっても、当該
発明を実施することができるという権利です。そこには、具体的に
次の2つの類型があります。
(i) 特許権者の発明の内容を知らないで独自に同じ内容の発明を
した者
(ii) 特許権者の発明の内容を知らないでその発明をした者から
知得した者
本件では(i)も争点となりましたが、(ii)についても争点となり、
判断が示されました。特に本件では、親会社であるフランスのL社
の知得が、その子会社や孫会社(B社)の知得に関連付けられてい
ますが、この点は、実務上も興味深いものがあります。
(2)先使用権の主張における「事業の準備」の意義
さて本稿では、本件の事例を離れ、実務上問題となりやすい「事
業の準備」について考えてみたいと思います。つまり、研究開発~
発明の完成~事業化実験~事業の準備~事業の実施という事業の流
れの中で、どこからが「事業の準備」に該当するのでしょうか。
この点最高裁は以下のように判示しています。
いまだ事業の実施の段階には至らないものの、即時実施の意図
を有しており、かつ、その即時実施の意図が客観的に認識され
る態様、程度において表明されていることを意味する
そして「意図が客観的に認識できる程度に表明」されている場合
とは、ケース・バイ・ケースですが、例えば、製造設備の製造や金
型の製作に着手している、製造のために原材料をすでに購入したり
しているといったことが含まれます。
他方、単に事業計画のアウトラインを公表しただけという段階で
あれば足りないということになります。また、当該発明にかかる製
品について、試作中であり即時に実施の意図が認識されない状況で
も同様です。
(3)先使用権の主張に役立つ立証方法
会社の事業や製品開発などにおいては、製造方法に関する発明な
ど、特許の出願よりもノウハウ秘匿にメリットがあるという判断か
ら、また発明の重要性とコストから、特許の出願をしないというケ
ースがあります。
このような場合、後日万一第三者が特許を出願・登録してしまっ
た場合に生じる紛争時の立証を考えておく必要があります。
この場合、いざ紛争となってから証拠を集めようとしてももはや
証拠は残っていない(あるいは収集が困難)ということがあるかも
しれません。それで、研究開発~発明の完成~事業化実験~事業の
準備~事業の実施という一連のプロセスの中で、行ったこととその
結果事実を随時記録して、客観的資料として保存管理することが重
要といえます。
先使用権の立証のための証拠資料には、具体的に以下のものが含
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◆研究ノート
◆議事録
◆実験報告書、技術成果報告書
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◆設計図、デザイン図、その他の図面
◆製品仕様書
【事業の実施・準備の立証】
◆事業計画書
◆見積書、発注書、契約書
◆請求書、納品書
◆原材料仕入記録簿、発注簿、受注簿、製品受払簿などの帳簿類
◆業務日誌、作業日誌、製造記録
◆運転マニュアル、作業標準書、検査マニュアル、保守点検基準書、製造工程図等
◆製品サンプル
◆カタログ、パンフレット
◆商品取扱説明書
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e 弊所からの連絡方法
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1~2行で十分です。
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弁護士・弁理士 石下雅樹
新宿事務所[2016年3月3日(木)まで]
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