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株式の相続と議決権行使

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ビジネスに直結する実践的判例・法律・知的財産情報
弁護士法人クラフトマン 第172号 2016-05-17

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前書き
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 本稿を執筆しております弁護士の石下(いしおろし)です。いつ
もご愛読ありがとうございます。

 多くの会社は3月決算であり、株主総会の季節が近づいてきまし
た。今回は小規模閉鎖会社の事案ですが、株主総会株主権に関連
したテーマとなっています。

 なお、本稿末尾にある顧問弁護士資料請求に関するご案内も、関
心のある方はぜひご覧ください。

 では、本文にまいります。




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1 今回の判例  株式の相続議決権行使
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最高裁平成27年2月19日判決

 青果物の販売を業とするA社は3000株の株式を発行していま
す。そして、そのうち2000株を保有していた代表取締役が死亡
し、相続人であるB氏とC氏が相続しましたが、遺産分割は未了で
あり、準共有(共有)の状態となっていました。

 そしてA社は、取締役選任や本店所在地を変更する定款変更など
を議題とする株主総会招集しました。

 この点、B氏はC氏と協議することなく、2000株についての
議決権行使の委任状を作成して提出し、A社はこの委任状を有効と
して決議を成立させました。

 これに対し、C氏は、この決議方法等につき法令違反があると主
張して、A社に対し、会社法831条1項1号に基づき、本件各決
議の取消を求めました。




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2 裁判所の判断
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 裁判所は以下のように判断し、株主総会決議の取消を認めました。

● 会社法106条本文の「権利行使者の指定」の定めは、共有株
式の権利行使の方法について、民法の共有に関する規定(持分の過
半数で決定する)に対する「特別の定め」を設けたものである。

● その上で、会社法106条ただし書は、会社が同意した場合に
は、同条本文の規定の適用が排除されることを定めたものである。

● それで、共有の株式について会社法106条本文の規定に基づ
く指定及び通知を欠いたまま当該株式についての権利が行使された
場合において、当該権利の行使が民法の共有に関する規定(持分の
過半数で決定する)に従ったものでないときは、会社が同意をして
も、当該権利行使は適法とはならない。

● そして、議決権行使をしたB氏は株式について2分の1の持分
を有するにすぎず、当該議決権行使は、共有持分の過半数でなさら
れたとはいえないから、A社が同意しても、適法とはならない。




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3 解説
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(1)株式の相続と準共有

 会社の株式も当然に相続の対象となりますが、その扱いは若干特
殊です。

 相続人が2人以上いる場合で、遺言もないという場合には、遺産
分割が調うまで、その株式は「準共有」という共有状態になります。

 この場合、相続人各自が会社に対して株主権を個別に行使できる
わけではありません。例えば、2000株の株式が、2人で相続
れ、各自の法定相続分が2分の1だとしても、当然に各自が100
0株ずつ権利行使ができるわけではないのです。


(2)共有株式についての株主権行使の方法

 むしろ、準共有の株式については、会社に対して、権利を行使す
る者1人を定め、その氏名を通知しなければならないと定められて
います(会社法106条)。

 そして、この権利行使者の指定は、共有持分の過半数をもって行
うものとされています(民法252条)。

 ただし、会社法106条には、「株式会社が当該権利を行使する
ことに同意した場合は、この限りでない。」というただし書きがあ
り、本件ではこの意味が問題となりました。

 このただし書きだけを見ると、会社が同意しさえすれば、共有持
分の過半数をもって決めなくとも株主権が行使できるように読める
可能性もあったわけですが、最高裁はそうは判断しなかったことに
なります。


(3)実務上の留意点

 相続において相続人間に争いが生じ、遺産分割の争いが長期化す
るということは珍しくありません。

 とりわけ、株式の大部分を持っているオーナー経営者の相続の場
合には、権利行使者の指定は会社支配に直結しますので、相続人間
の利害が真っ向から対立することになります。

 しかし、株式のマジョリティをなす株式について、株主権の行使
が長期間できない状態が続くならば、株主総会の決議で重要な決定
がでできず、会社の運営に大きな支障が生じるかもしれません。

 それで、特にオーナー経営者であれば、かつ相続人が複数いる場
合には、事業承継対策として、株主権の行使に支障が出ないように
しておくことが必要と思われます。

 例えば自社株式に関しては遺言書を書く、生前から計画的に株式
を徐々に後継者に移転させるといった対応ができるかもしれません。




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