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定年後再雇用と処遇

サトウサンペイさんの4コマ漫画「フジ三太郎」が電子書籍になり、販売されています。
先日、知人から教えてもらい、購読してみました。
「フジ三太郎」は、朝日新聞で昭和40(1965)年から平成3(1992)年まで連載され、
庶民に大人気でした。今から20年~50年近く前に描かれたものですが、今も根強い
人気を誇っているようです。私も20代の頃、朝日新聞は苦手でしたが、「フジ三太郎」は
大好きで、図書館に行っては新聞コーナーで楽しんだことを思い出します。
「フジ三太郎」は今でもファンが多く、デジタル・リマスター版が人気とのことですが、
なぜ、今も共感を呼ぶのでしょうか? あるいは郷愁を誘うのでしょうか?

主人公は平凡な安サラリーマン。上司をからかっても憎まれず、ちょっとエッチな
ダメ男です。でも、いつも庶民の気持ちを代弁する小さな正義漢でもあります。
その三太郎が、職場や通勤途中、あるいは家庭などで体験する様々な出来事、さらには
社会問題への思いなどを、ユーモアや皮肉、ときには怒りもまじえながら4コマ漫画で
綴ったのが「フジ三太郎」というわけです。
時代は、高度成長から安定成長に移行した昭和黄金期でした。人口が1億人を突破し、
3億円事件や大阪万博、あさま山荘事件などがあり、相撲は大鵬や千代の富士、
野球は巨人・阪神戦に日本中が沸きました。東京ディズニーランドも開園しました。
政治・経済でも沖縄返還が実現し、中国との国交回復などを経て、日本は米国に次ぐ
世界第2位の経済大国へとのし上がった絶頂期でした。この時代を象徴するCMに
丸善石油の「オー・モーレツ!」があり、「モーレツ社員」という言葉も生まれました。
三太郎は「モーレツ」から脱落した「落ちこぼれ社員」でしたが、それでも毎日満員電車
にぎゅうぎゅう詰めとなって職場に通い、通勤途上のミニスカートのOLに胸を躍らせ
ながらもせっせと働いて、当時の「モーレツ日本」を支えた一人でした。
この時代は、経済の高度成長(後期)を謳歌しているときで、サラリーマンは「企業戦士」
とも言われ、家族のことは後回しで仕事優先、「24時間働けますか?」という栄養ドリンク
のコマーシャルを聞きながら、世界を股に働いた時代でもありました。
「サービス残業」や「パワハラ」、「セクハラ」などが横行し、今なら「ブラック企業」
として批判を受けるような職場でもありました。

「フジ三太郎」に登場する人物の顔ぶれは、バラエティに富んでいます。
三太郎の家族はおばあちゃんがいる三世代同居、家は一戸建てですが借家です。
会社の上司には女性管理職が居て、彼女は英語が達者です。
「フジ三太郎」という漫画は、こんな登場人物だけ見ても、戦後、日本の庶民像が
猛烈に「さま変わり」していった時代を描いているということがわかります。
古い慣習を引きずる老人もいれば、新しい考え方をし、新入類と言われた若手社員も
登場します。男尊女卑は否定され、職場での女性進出は止まらない。クルマ社会になり、
マンションに住む人も増えて、生活の隅々まで利便性が高まる一方で、格差も微妙に広がり、
公害などのマイナス面も指摘されるようになりました。
社会の構造が変わり、階層分化が進む中で、人々の意識や生活様式などが揺らぎ始め、
表面的には繁栄しているものの、内部に不安定さを抱えた昭和後期の社会と人々の様子を
「フジ三太郎」はユーモアタップリに綴っています。
「フジ三太郎」と同じような時期に、同じように「落ちこぼれサラリーマン」だった私には
懐かしく、またほろ苦く思い出される時代でもあります。

前回の「勤務間インターバル制度」についての話、如何でしたでしょうか。
今回は、「定年再雇用と処遇」についての話をします。
──────────◆ 目 次 ◆──────────────
○「定年再雇用と処遇」
────────────────────────────────
新聞報道等ですでにご存じの方も多いと思いますが、5月13日に東京地裁から
定年再雇用と処遇(賃金)」について、これまでの“常識”を覆す判決が出ました。
判決の趣旨は「定年後に嘱託社員として再雇用された3人の労働者(トラックドライバー)
の職務内容が定年前と変わらないにもかかわらず、会社(運送会社)が賃金を約3割
引き下げたことは違法(労働契約法20条違反)である」というもので、会社には賃金
の差額の支払いなどが命じられました。

上記のような賃金格差について労働契約法20条(期間の定めがあることによる不合理
労働条件の禁止)の違反を認めた判決は過去に例がなく、労働者側の弁護士は
「通常の労働者定年再雇用された労働者との不合理な格差是正に大きな影響を
与える画期的な判決である」と評価しています。
また、原告の1人は「同じような立場の人にこの判決が力となれば」と話しているそうです。
判決後、会社側はすぐに控訴したため、裁判における最終的な結論がどのようになるかは
現時点ではわかりませんが、仮にこの判決(=労働者側の勝訴)が高裁・最高裁で維持
された場合、定年再雇用者の賃金引下げは認められなくなるケースが出てくる可能性
があり、企業実務への影響は非常に大きなものとなります。
今後の裁判で裁判官がどのような判断を下すのかについて、注視しておく必要が
あるでしょう。

【参考条文】労働契約法第20条
「有期労働契約を締結している労働者労働契約の内容である労働条件が、期間の定め
があることにより同一の使用者と期間の定めのない労働契約を締結している労働者
労働契約の内容である労働条件と相違する場合においては、当該労働条件の相違は、
労働者の業務の内容及び当該業務に伴う責任の程度(以下この条において「職務の内容」
という。)、当該職務の内容及び配置の変更の範囲その他の事情を考慮して、不合理と
認められるものであってはならない。」

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