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再販価格の拘束と独禁法

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ビジネスに直結する実践的判例・法律・知的財産情報
弁護士法人クラフトマン 第177号 2016-08-02

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前書き
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 本稿を執筆しております弁護士の石下(いしおろし)です。いつ
もご愛読ありがとうございます。

 弁護士や裁判官のように訴訟実務を扱う人以外の方の多くは、訴
訟で重要なのは「勝つ」か「負ける」かであると思われるかもしれ
ませんが、実はそうではありません。

 最も重要なのは、起きてしまった紛争について、落ち着くべきと
ころに落ち着かせる解決を図ることにあります。その手段として「
勝訴」が重要な場合もありますが、勝訴はすべてではありませんし
「勝ち」ばかりにこだわることが逆にマイナスとなることもありま
す。

 前書きが長くなるとよくないので、この点は次の機会にまた述べ
ようと思います。

 なお、本稿の末尾には、弊所取扱案件として英文契約実務(知的
財産契約編)についてご紹介しています。ご関心があればこちらも
ご覧ください。

 では、本文にまいります。





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1 今回の事例 再販価格の拘束と独禁法
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 今回は裁判例ではなく、公正取引委員会の排除措置命令を取り上
げます。

 公正取引委員会平成28年6月15日排除措置命令

 A社は、著名な米国のキャンプ用品メーカーの製品を日本で販売
する会社であり、少なくない一般消費者が、同メーカーの商品を指
名して購入していました。

 A社は、キャンプ用品について、毎年8月ころに、翌シーズンに
小売業者が実店舗又はインターネットでの販売を行うに当たっての
販売ルールを次のとおり定めていました。

 ア 販売価格は、製品ごとに、参考価格からおおむね10パーセ
  ント引き以内でA社が定める下限の価格以上の価格とすること。

 イ 割引販売は、他社の商品を含めた全ての商品を対象として実
  施する場合又は実店舗における在庫処分を目的として、A社が
  指定する日以降、チラシ広告を行わずに、一部の商品を除いて
  実施する場合に限り行うこと。

 A社は、小売業者にこうした販売ルールに従って販売させるとい
う方針のもと、同ルールに従って販売するよう要請したり、取引先
小売業者から販売ルールに従って販売する旨の同意を得るなどする
とともに、販売ルールを逸脱した販売を行う小売業者に対し、販売
ルールに従った販売の要請を続けるなどして販売ルールに従って販
売させていました。

 A社は、平成27年に立入検査を受けるまでの間少なくとも約5
年、上のような行為を行っていました。




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2 公正取引委員会の判断
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 公正取引委員会は以下のように判断し、排除措置命令を発しまし
た。

 なお排除措置命令の内容は、取締役会での一定内容の決議、取引
先や一般消費者、従業員への周知、行動指針の策定、研修と監査の
実施、公取委への報告というものです。

● A社は、そのキャンプ用品の販売に関し、取引先小売業者にキ
ャンプ用品を販売ルールに従って販売するようにさせ、取引先卸売
業者をして小売業者にコールマンのキャンプ用品を販売ルールに従
って販売するようにさせていた。

● これは、正当な理由がないのに、取引先小売業者に対し、当該
小売業者の販売価格の自由な決定を拘束する条件を付けてキャンプ
用品を供給していたものであって、独占禁止法2条9項4号イ及び
ロに該当し、独占禁止法19条の規定に違反する。

● 前記の違反行為は既になくなっているが、違反行為が長期間に
わたって行われていたこと、違反行為の取りやめが公取委の立入検
査を契機としたものであること等の諸事情を勘案すれば、特に排除
措置を命ずる必要がある(独禁法20条2項、7条2項1号)。





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3 解説
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(1)再販価格の拘束と独占禁止法

 メーカーなどが小売業者等に自社商品の販売価格を指示し、これ
を守らせることを再販売価格維持行為(再販価格の拘束)といいま
す。

 事業者には比較的よく知られていることかと思いますが、再販売
価格維持行為は、競争手段の重要な要素である価格を拘束するため
独禁法2条9項4号で「不公正な取引方法」として定められ、原則
として禁止されています。

 メーカーとしては、小売店の間で過度な安売り競争をされると、
ブランドイメージが傷つけられるおそれもあることから、価格を維
持したいと考える気持ちは理解できますが、本件のように、再販価
格について取引先を拘束することは基本的には許されないものと考
える必要があります。


(2)実務上問題となりうるケース~代理店を通じた取引

 実務上再販売価格維持行為が問題となりうるケースとして、代理
店を通じた取引のケースを若干考えてみたいと思います。

 代理店を通じた取引であっても、通常の商取引、つまりメーカー
代理店に対して売買契約によって商品を販売し、代理店が自社で
在庫リスクを負って小売店やエンドユーザーに商品を販売するとい
うケースでは、メーカーが代理店に対して販売価格を拘束すること
は原則としてできません。

 他方、メーカーの直接の取引先である代理店が単なる「取次ぎ」
として機能しており、実質的に見て、メーカーが代理店の取引先に
直接に販売していると認められる場合、メーカーが代理店に対して
価格を指示しても、通常、違法とはならないとされています(公正
取引委員会 流通・取引慣行ガイドライン 第2部第1-2)。

 例えば、「委託販売」の場合があります。つまり、メーカーが代
理店に販売を委託しており、代理店(受託者)は、受託商品につい
て在庫リスクや代金回収リスクを負わない、というケースです。こ
のような場合であれば、メーカーが代理店の取引先に直接に販売し
ていると認められ、代理店への価格の指示は通常は違法とならない
と考えられています。

 また、別の例としては、メーカーと、代理店の取引先(小売業者
やエンドユーザー)との間で、直接の価格交渉がなされ納入価格が
決定されるような取引の場合です。そして、当該代理店が在庫リス
クを負わず、物流や代金回収などの履行に対する手数料分を受けと
ることとなっているといった状況で、実質的にみてメーカーが小売
業者やエンドユーザーに直接販売をしていると認められる場合にも
代理店への価格の指示は通常は違法とならないとされています。

 もっとも、上のような取引形態が取れるケースは多くはないのか
もしれませんが、商品の種類やエンドユーザが事業者である場合な
ど、検討できるケースはあるかもしれません。




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4 弊所取扱案件紹介~英文契約実務(知的財産ライセンス編)
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 近年では多くの企業が海外取引に積極的に取り組んでいます。海
外取引・国際取引では英文契約はまさに自社を守る必須のツールと
いえますが、弊所では、英文契約業務に積極的に取り扱い、多くの
企業の国際化を支援しています。

 これまで弊所が作成・レビューとして取り扱ってきた英文契約
多種多様ですが、今回は特に知的財ライセンス関係のものをピック
アップすると、以下のようなものがあります。

 弊所では、海外取引・国際契約をご検討の方のご相談を歓迎しま
す。詳細は以下のURLをご覧ください。

 www.ishioroshi.com/biz/kaisetu/keiyaku/eibun_keiyaku/

 ・特許実施許諾契約書(Patent License Agreement)
  
 ・著作権利用許諾契約書(Copyright License Agreement)

 ・商標使用許諾契約書(Trademark License Agreement)

 ・ノウハウ実施許諾契約書(Know-How License Agreement)

 ・原盤権使用契約書(Master Recording License agreement)

 ・必須特許共同ライセンス契約書(Joint License for
              Essential Patents Agreement)

 ・特許プール契約書(Patent Pool Agreement)

 ・特許プールメンバー間フレームワーク契約書
           (Patent Pool Framework Agreement)

 ・特許プール用標準ライセンス契約書
              (Standard License Agreement)

 ・キャラクター使用許諾契約書
       (Character and Artwork License Agreement)

 ・出版契約書(Publishing Agreement)

 ・共同開発契約書(Joint Development Agreement)

 ・技術支援契約書(Technical Assistance Agreement)




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本稿の無断複製、転載はご遠慮ください。

ただし、本稿の内容を社内研修用資料等に使用したいといったお申
出については、弊所を出典として明示するなどの条件で、原則とし
て無償でお受けしています。この場合、遠慮なく下記のアドレス宛、
メールでお申出ください。
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【執筆・編集・発行】
弁護士・弁理士 石下雅樹(いしおろし まさき)

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