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株式交付信託による利益連動給与

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇vol.366-2017.02.13
      
   ☆☆☆ Weekly Accounting Journal ☆☆☆

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
こんにちは、エキスパーツリンクの紺野です。日本の会計基準は、今、IFRS
で揺れ動いています。一方で税制も改正されており、上場会社及び上場準備会
社の決算・経理実務は今後も引き続き、目まぐるしく変化していきます。これ
らのエッセンスを、上場会社及び上場準備会社の経理担当者の皆さん向けに、
出来る限り分かりやすくお伝えします。何らかの「気づき」をご提供すること
が出来れば幸いです。仕事の合間に軽くどうぞ!

文中意見にわたる部分は私どもの私見にもとづきます。このメールマガジン
の情報をもとに実務に適用される場合には、監査法人さんや顧問税理士さん等
にご確認ください。もちろん、エキスパーツリンクでもまずは無料で検討させ
ていただきます。


◆◇今週のCONTENTS◆◇
1.[税務]株式交付信託による利益連動給与
2.[開示]決算短信のサマリー情報使用義務撤廃
3.[税務]営業権償却方法
4.[税務]非適格株式交換等及び連結納税制度時価評価制度の見直し
5.[編集後記]


===================================
1.[税務]株式交付信託による利益連動給与
===================================

株式交付信託による利益連動給与が最近相当数の上場会社の間で導入されつつ
あります。以下、週刊税務通信No.3442をベースに記載します。

株式交付信託は、以下のような仕組みです。

(1) 会社が信託銀行に対して株式取得資金を拠出(金銭の信託)した上で、
(2) 信託銀行が株式取得資金を元手に株式市場からその会社の株式を取得し、
(3) 会社が役員に対して業績目標の達成度合い等に応じて付与したポイントに
基づき、
(4) 信託銀行経由で役員に対して株式が交付される。

この仕組みは、以下の二つに分けられます。

a.「在任時交付型」
b.「退任時交付型」

a.は通常の役員給与、b.は役員退職金というイメージです。

税務を考える前に会計処理を考えてみたいと思います。

企業会計基準委員会実務対応報告第30号に
従業員等に信託を通じて自社の株式を交付する取引
に関する実務上の取扱い」

というものがあります。

こちらはあくまで従業員等に対するもので役員に対するものを扱っているわけ
ではありませんが、参考になります。

「受給権を付与された従業員に信託を通じて自社の株式を交付する取引に関す
会計処理」は以下のように定められています。

12.企業は、従業員に割り当てられたポイントに応じた株式数に、信託が自社
の株式を取得したときの株価を乗じた金額を基礎として、費用及びこれに
対応する引当金を計上する。信託による自社の株式の取得が複数回にわた
って行われる場合には、従業員に割り当てられたポイントに関する費用
びこれに対応する引当金は、平均法又は先入先出法により算定する。

13.信託から従業員に株式が交付される場合、企業はポイントの割当時に計上
した引当金を取り崩す。引当金の取崩額は、信託が自社の株式を取得した
ときの株価に交付された株式数を乗じて算定する。信託による自社の株式
の取得が複数回にわたって行われる場合には、引当金の取崩額は、平均法
又は先入先出法により算定する。

期末における総額法の会計処理
14.企業は、期末における総額法の適用に際して、以下に留意する。
(1)信託に残存する自社の株式(信託から従業員に交付していない株式)を、
信託における帳簿価額(付随費用の金額を除く。)により株主資本におい
自己株式として計上する。信託における帳簿価額に含められていた付随
費用は(2)の信託に関する諸費用に含めることとする。

(2)信託が保有する株式に対する企業からの配当金及び信託に関する諸費用
純額が、正の値となる場合には負債に、負の値となる場合には資産に、そ
れぞれ適当な科目を用いて計上する。

(3)企業が保有する自己株式と信託が保有する自社の株式の帳簿価額の算定
関する取扱いについては、第8項(4)と同様に処理する。

(4)企業が信託に支払った配当金等の企業と信託との間の取引については、相
殺消去を行わないものとする。

この実務対応報告の設例から具体的な会計処理を簡単に端折ってご紹介します
と、以下のようになります(詳細は原本にあたってください。)。

(1) 他益信託の設定時
(X1年4月)A社は金銭260の他益信託の設定を行う。
信託口 260 / 現金預金 260

(2) 信託によるA社株式の市場からの購入時(X1年4月)
  仕訳なし
 
(3) A社による従業員へのポイント割当時(X1年9月)
  福利厚生費 150 / 引当金 150
※信託による株式取得時の株価2.5×60株

(4) 信託による従業員への自社の株式の交付時(X1年9月からX2年3月)
 仕訳なし

(5) A社の決算
 信託の財産をA社の個別財務諸表に計上する。
 現金預金 4 / 信託元本 260
 A社株式 150
 諸費用 6
 A社株式交付費用 100

 信託元本と信託口を相殺
 信託元本 260 / 信託口 260

ここから先は長くなるので端折りますが、基本的に信託で発生している損益は
資産負債に振り替えられ、信託で株式が従業員に交付された場合は、引当金
取り崩されることになります。

さて、この実務対応報告は、従業員向けのものが想定されているのですが、役
員向けの設計がなされた場合の法人税法上の扱いが、今回改正されるというこ
とになります。

29年度改正は、以下のようなものです。
・「在任時交付型の株式交付信託」による役員給与が、損金算入できる利益連
動給与の対象になります。

また、
・「退任時交付型の株式交付信託」につき、利益連動給与の損金算入要件を満
  たさなければ、全額損金不算入となります。

上記の会計処理からイメージしてみましょう。

「在任時交付型」は、ポイント割当により引当金が計上され、毎期株式が役員
に交付され、引当金が取り崩される。

「退任時交付型」は、ポイント割当により引当金が計上され、退任時に株式が
役員に交付され、引当金が取り崩される。

ということになるはずです。

税金的にみれば(もちろん、利益連動給与の要件を満たしていることを前提と
します。)、

「在任時交付型」については、株式が役員に交付される都度、法人税損金
算入され、給与所得として所得税が課税される。

「退任時交付型」については、退任時に株式が役員に交付されると、退職所得
として所得税が課税される。

ということになると思われます。このときはいずれも、株式としての交付であ
り、金銭が交付されるわけではありませんが、源泉所得税の徴収は必要になり
ます。このため、株式交付するが信託に売却するなどして金銭を付与する形を
とるようです。

引当金の名称は「株式報酬引当金」というのが多いようですね。

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2.[開示]決算短信のサマリー情報使用義務撤廃
===================================
株式会社東京証券取引所は、有価証券上場規程の一部改正を行い、2017年3
月31日から施行します。

http://www.jpx.co.jp/rules-participants/rules/revise/index.html

(改正概要)

東京証券取引所が定める短信の様式のうち、本体である短信のサマリー情報に
ついて、上場会社に対して課している使用義務が撤廃されます(有価証券上場
規程第404条及び第806条第4項)。

(施行日)

・2017年3月31日から施行します。
・同日以後、最初に終了する事業年度若しくは四半期累計期間又は連結会計
度若しくは四半期連結累計期間に係る決算の内容が定まった場合の開示から
適用します。

決算短信作成要領・四半期決算短信作成要領も変更されています。
http://www.jpx.co.jp/equities/listed-co/format/summary/index.html

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3.[税務]営業権償却方法
===================================
今まで営業権は、事業年度の中途で取得した場合でも、他の減価償却資産と異
なり、月数按分の計算をしないで1事業年度として償却をしていました。

事業年度の中途で事業の用に供した減価償却資産の償却限度額の特例を定めた
法人税法施行令第59条は(営業権は除く)と括弧書きがついています。

これにつき、平成29年度税制改正大綱において、

営業権償却方法について、取得年度の償却限度額の計算上、月割計算を行
うこととする(所得税についても同様とする。)。資産調整勘定及び負債調整
勘定についても同様とする。」

という文言が入っています。

===================================
4.[税務]非適格株式交換等及び連結納税制度時価評価制度の見直し
===================================
平成29年税制改正大綱のなかに、

「非適格株式交換等に係る完全子法人等の有する資産時価評価制度及び連結
納税の開始又は連結グループへの加入に伴う資産時価評価制度について、時
価評価の対象となる資産から、帳簿価額が1,000万円未満の資産を除外する。」

というのがあります。

非適格株式交換等及び連結納税の開始等のときに適用される資産時価評価
度について、時価評価対象資産外となる金額の基準がございまして、

今までは、
(1) 資産の含み損益が下記いずれか少ない金額に満たない場合
資本金等の額の2分の1
・1,000万円

だけでしたが、

(2) 帳簿価額が1,000万円未満の資産の場合

が追加されることになります。平成29年10月1日以後に行われる組織再編成
について適用されます。

これにより、取扱いがあいまいであった自己創設のれんについては、帳簿価額
がゼロのため、時価評価の対象外となるといわれています。

これ、なにげに大きいですね。これらの再編や連結納税開始の際には、自己創
設のれんについて検討しなくてすむということになりますね。


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5.[編集後記]
===================================
ふとゴルフの、ボギー、パー、バーディ、イーグル、アルバトロスの由来って
なんなのかなと思いまして調べてみました。
パーはもともと等価とか同じ値打ちという意味ですのでわかります。
なぜこれよりいい成績のものはすべて鳥なんでしょう。バーディは小鳥のよう
ですし、イーグルは鷲、アルバトロスはアホウドリですよね。調べてみると、
昔、あるプレーヤーが1打少なくホールアウトしたときに,
「flew like a bird(鳥のごとく飛んだショット)」と叫んだのが始まりで,
第一次世界大戦と第二次世界大戦の間にアメリカで一般化したということのよ
うですね。バーディより上が鷲、それより上がアホウドリというのはわかりま
すね。
では、ボギーって?
諸説あるようですが、「悪魔、お化け、こわいもの等」ということらしく、ま
あ、このような言葉が一打多かった場合に使われるようになるのもわかります
ね。
知ってました?

公認会計士紺野良一事務所のHPも是非ご覧ください。

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個人会計士による会社法監査
http://kaishaho-kansa.com/audit/personal/

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*発行人: エキスパーツリンク
 公認会計士税理士・公認内部監査人(CIA)inactive 紺野良一
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