• HOME
  • コラムの泉

コラムの泉

このエントリーをはてなブックマークに追加

専門家が発信する最新トピックスをご紹介(投稿ガイドはこちら

下請取引と代金の減額

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
ビジネスに直結する実践的判例・法律・知的財産情報
弁護士法人クラフトマン 第198号 2017-06-06

-------------------------------------------------------
法律相談ご案内
http://www.ishioroshi.com/btob/soudan_firstb.html

顧問弁護士契約顧問料)についての詳細
http://www.ishioroshi.com/btob/komon_feeb.html
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
1 今回の事例 下請取引と代金の減額
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 今回は、公正取引委員会が平成29年5月10日に下請法第7条
第2項の規定に基づき行った勧告について取り上げます。

 具体的には、コンビニエンスストアを運営するある会社において
下請法違反(下請代金の減額の禁止)にあたる行為があったとして
同社に対し、再発防止策を勧告しました。




~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
2 公正取引委員会の判断
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


 公正取引委員会が認定した違反行為としては、下請事業者の責に
帰すべき理由がないのに、10名の下請事業者から、平成26年2
月から平成27年1月までの間、総額4622万4401円の下請
代金の額を減じていた、というものです。具体的には以下のような
行為が含まれています。


●「ベンダー協賛金」(商品の販売促進のための費用)を下請代金
 の額から差し引いていた。

●「箸・フォーク代」(弁当等の購入者に配布する箸等の費用)を
 下請代金の額から差し引いていた。

●「販売奨励金」等(自社の利益確保のために徴収した金銭)を支
 払わせていた。

●「登録写真代」(店舗に配信する新商品案内を作成する費用とし
 て徴収した金銭)を下請代金の額から差し引いていた。

●「販促協力金」(値引きセールを実施する際の原資として徴収し
 た金銭)を下請代金の額から差し引いていた。

●「オープン販促費」(新規開店時の廃棄ロス費用の補填のために
 徴収した金銭) を下請代金の額から差し引いていた。




~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
3 解説
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


(1)下請法に定める代金減額禁止の規定

 いわゆる下請法においては、親事業者が下請事業者に対して優越
した立場にあるという特殊な関係であることを踏まえ、親事業者
対して11の禁止事項(支払遅延、減額、買いたたき等)を定めて
います。

 そして本件でテーマとなった下請法4条1項3号は、「下請事業
者の責に帰すべき理由がないのに、下請代金の額を減ずること。」
を禁じています。これは、決定された契約内容を契約どおり実行す
ることは取引の基本であるところ、下請取引の場合、上の特殊な力
関係から、契約した後に減額が行われる例があるため、規定された
ものです。

 そして、減額については、名目、方法、金額の多少を問わず、ま
た発注後いつの時点で減額しても同号に違反することになる点、留
意が必要です。


(2)実務上の留意点

 実務上のケースとして、以下若干の例を取り上げたいと思います。

 ■ 手形払の現金払への変更
  今まで親事業者が120 日をサイトとする手形払としていたもの
 を現金払に変更するにあたって、金利や割引料等相当額を減額す
 るという場合があるかもしれません。

  このケースでは、下請法上の 「減額」に当たるおそれがありま
 す。他方、契約上は手形払であるものの、下請事業者からの要請
 により一時的に現金払を行ういう場合に、自社(親事業者)の短
 期調達金利相当額であれば差し引いてもよいとされています。

 ■ 検査の省略と減額
  契約書において、検査を省略する代わりに、瑕疵の有無にかか
 わらず下請代金から数%を損害賠償として差し引くとする条項が
 あり、親事業者がこれに基づき毎月下請代金から減額をしている
 というケースがあるかもしれません。

  このようなケースでは、契約条項があったとしても、瑕疵の有
 無にかかわらず減額するという扱いは、下請法に違反するおそれ
 があるというのが公正取引委員会の見解です 。

 ■ ボリュームディスカウント
  ボリュームディスカウントについては、単に取引量が多いから
 という理由でのディスカウントは下請法に違反するおそれがあり
 ます。
 
  むしろ発注数量の増加による単位コストの低減により下請事業
 者が得る利益が、そうでない場合の利益を上回ることとなる必要
 があるとされています。

 
 以上のとおり数例を取り上げてみました。親事業者としては、故
意に下請法に違反している意識がないものの、取引慣行として行わ
れてきたもので、実は下請法に違反しているという例があるかもし
れません。それで、従来の慣習にとらわれず、一度法律専門家の視
点から自社の取引慣習を見直してみるとよいかもしれません。




~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
4 弊所ウェブサイト紹介~代表弁護士100問100答
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

以下のURLに、拙稿の執筆者である弁護士法人クラフトマン代表の
石下雅樹弁護士・弁理士についての「100問100答」が掲載されて
います。

 http://www.ishioroshi.com/biz/lawyer_ishioroshi/qa/

 執筆者のキャラクターが手に取るように分かる??(かもしれま
せん??)。ご関心のある方、お手すきの際ご笑覧くだされば幸い
です。




━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
本稿の無断複製、転載はご遠慮ください。

ただし、本稿の内容を社内研修用資料等に使用したいといったお申
出については、弊所を出典として明示するなどの条件で、原則とし
て無償でお受けしています。この場合、遠慮なく下記のアドレス宛、
メールでお申出ください。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


【執筆・編集・発行】
弁護士・弁理士 石下雅樹(いしおろし まさき)

東京事務所
〒160-0022 東京都千代田区丸の内1-5-1 
新丸の内ビルディング11階
弁護士法人クラフトマン東京国際特許法律事務所
TEL 03-6267-3370 FAX 03-6267-3371

横浜事務所
〒221-0835 横浜市神奈川区鶴屋町3-32-14 新港ビル4階
クラフトマン法律事務所
TEL 045-276-1394(代表) FAX 045-276-1470

mailto:info@ishioroshi.com

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
弊所取扱分野紹介(契約書作成・契約書チェック・英文契約
http://www.ishioroshi.com/btob/jisseki_keiyakub.html
(弁護士費用オンライン自動見積もあります)

弊所取扱分野紹介(英文契約書翻訳・英語法律文書和訳)
http://www.ishioroshi.com/btob/jisseki_honyakub.htm

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
本稿に対するご意見、ご感想は mailto:info@ishioroshi.comまで
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

■バックナンバー
  http://www.ishioroshi.com/biz/topic/

絞り込み検索!

現在22,386コラム

カテゴリ

労務管理

税務経理

企業法務

その他

≪表示順≫

※ハイライトされているキーワードをクリックすると、絞込みが解除されます。
※リセットを押すと、すべての絞り込みが解除されます。

スポンサーリンク

経営ノウハウの泉より最新記事

スポンサーリンク

労働実務事例集

労働新聞社 監修提供

法解釈から実務処理までのQ&Aを分類収録

注目のコラム

注目の相談スレッド

スポンサーリンク

PAGE TOP