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「給与を減らして欲しい」と社員から求められたら、応じる?







2017年6月28日号 (no. 993)
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http://www.soumunomori.com/profile/uid-20903/





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---3分労働ぷちコラム---
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本日のテーマ【「給与を減らして欲しい」と社員から求められたら、応じる?】
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給与を減らすという決定は、普通ならば会社側が決めることです。商売の状況が思わしくないとか、受注量が少ないのでそれに連動して給与が減るとか、このように会社側から動きが出るものです。そのため、社員側から「私の給与を減らしてくれませんか?」と言われたら、「えっ!? どういうこと?」と不思議に感じてしまうはずです。


本来ならば、社員としては、もっと給与が増えて欲しいと思うものですから、自分から給与を減らしてほしいなんて言うはずがないですよね。けれども、場合によっては、給与を減らしたほうが本人にとって有利な場合があるのです。



年金を受け取りながら働いて収入を得ると、受け取る年金が減らされてしまう。こういう制度について聞いたことはあるでしょうか。収入に応じて、年金を減額する仕組みが公的年金にはあります。


それは、「在職老齢年金制度」というもので、働きながら年金を受けると、収入に応じて年金額が調整される制度です。


https://www.nenkin.go.jp/pamphlet/kyufu.files/0000000011_0000027898.pdf
在職老齢年金の支給停止の仕組み(日本年金機構
〜働きながら年金を受けるときの注意事項〜


在職老齢年金というと、そういう年金があるのだと誤解しがちですが、在職老齢年金という年金があるのではなくて、 在職老齢年金制度という、「年金の給付額を調整する制度」があるということです。


この在職老齢年金制度があるために、年金を受け取る年齢になると、「私の給与を減らして下さい」と要望する社員が出てくるわけです。



ザックリと数字を当てはめて説明してみましょう。なお、下記の数字はあくまでイメージを示すためのものですので、実際の数字とは異なります。


まず、在職老齢年金制度による影響を受けて、働きながら年金を受け取った場合。


月収は20万円。
年金収入は25万円(本来の支給額は30万円だが、5万円減額されている)。

この場合、収入の合計は45万円です。



他方、在職老齢年金制度への対策を講じて、収入を調整しつつ働いた場合。


月収は15万円(対策のために収入を減らした)。
年金収入は30万円(満額が支給される)。

この場合も、収入の合計額は45万円です。



上の2つを比べると、働いて収入を増やせば年金が減りますし、どちらも合計収入は月45万円ですから、だったら働く時間なり収入を減らして、年金を満額受け取る方がいいじゃないかと思うわけです。

働いて収入を増やしても、年金がそれに応じて減額されるのですから、年金を満額受け取れるところまで収入を減らすのが合理的な判断です。


収入を減らすということは、会社にとっては人件費が減りますし、本人は年金の受取額が増えますから、お互いに利害は一致しています。

しかし、給与を減らすとなると、労働条件を不利益に変更したことになりますから、この点で物議を醸します。


労働契約法8条では、労働者使用者の合意でもって、労働条件を変更できると書かれています。


第八条  
労働者及び使用者は、その合意により、労働契約の内容である労働条件を変更することができる。


今回の場合は、労働者使用者で合意可能な内容ですから、労働契約法8条に基づいて労働条件を変更できます。



60歳になると、そのままの労働条件ではなく、再雇用制度でもって契約内容を変更する会社もありますが、それは在職老齢年金制度への対策も含まれています。フルタイム勤務からパートタイム勤務に切り替えて、収入を減らす。週5日勤務を週3日勤務にして、年金が減らされない水準まで収入を調整する。こういう対策がなされるわけです。



ちなみに、国民年金だけ加入してきた人には在職老齢年金制度による影響はありません。国民年金は、別名「基礎年金」とも呼ばれるもので、生活の基礎となる年金ですので、収入に応じて減額されることはありません。


厚生年金に加入してきた人に在職老齢年金制度は関係してきます。今まで厚生年金保険料を支払ってきて、60歳以降に厚生年金を受け取る人は、働きながら年金を受け取ると、年金額を調整する対象になります。


とはいえ、一定水準の収入に達しないと年金は減額されませんから、ちょっとでも収入があれば年金が減る、というわけでもありません。


https://www.nenkin.go.jp/pamphlet/kyufu.files/0000000011_0000027898.pdf
在職老齢年金の支給停止の仕組み(日本年金機構


上記のPDFに記載されている計算例を参考にすると、


60歳以上、65歳未満の人で、
受け取る年金は、月額18万円。
毎月の収入は30万円。


この場合は合計で48万円ですが、在職老齢年金制度によって、年金が10万円減って、月額8万円になります。そのため、合計で月収は38万円に変わります。


計算方法は上記のPDFに記載されていますが、ちょっと複雑です。


もし、上記の場合に、年金を満額の18万円受け取るにはどうするか。


その場合は、毎月の収入を10万円まで下げます(先ほどに比べて1/3)。月収を10万円まで下げると、年金は減額されずに18万円、満額が支給されます。



月収30万円だと年金が10万円減らされて、総月収は38万円。一方、在職老齢年金制度への対策のために収入を10万円まで減らすと、年金は18万円で、総月収は28万円です。

トータルでの収入は、たくさん働いた方が多くなりますが、月あたり10万円の年金を失います。

在職老齢年金制度への対策を講じた場合は、収入が1/3まで減りますから、単純に考えると、働く時間も1/3まで減るはずですので、一概に不利な判断だとは言えません。



60歳以降に厚生年金を受け取る人は、収入と年金の数字を使い、あらかじめシミュレーションして、どれだけ働けばいいのかを判断するといいでしょう。




収入を減らす以外の対策としては、雇用契約を変更して、厚生年金に加入しないような働き方に変更するのもアリです。


2017年の時点では、パートタイマーが社会保険に加入するハードルが下がりましたが、週20時間未満の契約で働けば、厚生年金の対象外にできます。

厚生年金に加入して被保険者になっていなければ、在職老齢年金制度の対象にはなりませんから、60歳以降は厚生年金に加入しないような契約に変えるのも1つの方法です。会社によっては、再雇用制度厚生年金の加入対象から外すところもあるでしょう。



1.国民年金のみ加入してきた人は在職老齢年金制度による影響を受けない。
2.60歳以降に、厚生年金に加入しながら働く人は在職老齢年金制度の影響を受ける。
3.給与を減らすことで年金の減額を回避できる。
4.契約形態を変更して厚生年金に加入しなければ、在職老齢年金制度に影響を受けない。


これが今回のポイントです。





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半日有給休暇半日欠勤の組み合わせはダメ?』
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合格率0.07%を通り抜けた大学生。


今、私はこうやって社労士という職業で仕事をしているわけですが、子供の頃からなりたかった職業というわけではなくて、大学生の頃に遭遇したきっかけが始まりです。

子供の頃になりたい職業というと、男の子ならば、警察官やスポーツ選手、パイロットというのが良くあるもの。女の子だと、スチュワーデス(今はキャビンアテンダント)、花屋さん、ケーキ屋さん、保育園の先生とか。そういう社会的に広く認知されたものが選ばれるので、小学生や中学生が社労士になりたいなんてことはゼロではないのでしょうが、極めて稀でしょう。

私が社労士試験に合格したのは大学4年のときで、いわゆる「現役合格」です。けれども、3年の時に一度不合格になって、ヘコんだんです。「たかが社労士試験ごときにオチたのか」って。だって、簡単そうなイメージがするでしょ、社労士なんて。チョチョッと勉強すれば、スルッと合格できるだろう。そう思っている人も少なくないはず。

「よく知られている資格 = 難しい」、「あまり知られていない資格 = 難しくない」。こういう判断基準があって、社労士は後者に該当するため、難しくないだろうと思われてしまうわけです。

私もそうやってナメていたクチですから、不合格になったんです。

実際は、想像しているよりも難易度は高くて、大学生の頃に約1年ほど時間を投じて、やっとこさ合格したのが本当のところ。


どうすると不合格になるか。どんなテキストや問題集を使えばいいか。問題集の使い方。スマホをどうやって社労士試験対策に活用するか、などなど。学生の頃の視点で書いています。

社労士試験というと、社会人の受験者が多いですから、学生の人の経験談が少ないんですよね。だから、私の経験が学生の人に役立つんじゃないかと思います。

とはいえ、学生の人が社労士に興味を持つというのはやはりレアで、何らかのきっかけが無ければ出会えないでしょうね。ただ、珍しいといっても、毎年、1割弱ほどは学生の受験者がいるので、受験者の総数を5万人と仮定すると、その1割弱なら3,000人から4,000人ぐらいは学生がいます。

そういう方の役に立つならば、私の経験も使っていただきたいですね。


http://www.growthwk.com/entry/2017/02/28/121910?utm_source=soumu&utm_medium=cm&utm_campaign=soumu_cm_common_20170628_2
大学生が独学で社労士試験に合格する方法: 合格率0.07%の軌跡




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残業で悩んでいませんか?

「長時間の残業が続いている」
残業代の支払いが多い」
「残業が減らない」

こういう悩み、よくありますよね。

ニュースでも未払い残業代の話題がチラホラと出てくるぐらい、残業に対する関心は高くなっています。

法律では、1日に8時間まで、1週間では40時間までしか仕事ができません。その水準を超えてしまうと、残業となり、割増賃金が必要になります。

とはいえ、1日で8時間と固定されていると不便だと感じませんか? 1週間で40時間と固定されていると不便だと感じませんか?


毎日8時間の時間制限があると、柔軟に勤務時間を配分できませんよね。

例えば、月曜日は6時間の勤務にする代わりに、土曜日を10時間勤務にして、平均して8時間勤務というわけにはいかない。

仕事に合わせて、ある日は勤務時間を短く、ある日は勤務時間を長くできれば、便利ですよね。

でも、実は、「月曜日は6時間の勤務にする代わりに、土曜日を10時間勤務にして、平均して8時間勤務なので、残業は無し」こんなことができる仕組みがあるんです。

「えっ!? そんな仕組みがあるの?」と思った方は、ぜひ『残業管理のアメと罠』を読んでみてください。


『残業管理のアメと罠』
http://www.growthwk.com/entry/2012/05/22/162343?utm_source=soumu&utm_medium=cm&utm_campaign=soumu_cm_common_20170628_3





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決まったことを決まった手順で処理するのは難しいものではありません。例えば、給与計算。毎月1回は給与が支給されるので、その計算作業も毎月ありますけれども、頭を悩ませるほどのものではありません。

他には、雇用保険社会保険への加入手続きもちょくちょくと発生しますけれども、これも必要な書類を揃えて出すだけですから難しくない。

労務管理ではルーティンな業務があり、それらを処理するには特別な能力や知識は必要ありません。

しかし、時として、普段は遭遇しないような問題が起こります。例えば、休憩時間を1回ではなく何回かに分けて取るのはいいのかどうか。有給休暇を半日や時間単位で細かく分けて取ると便利なのかどうか。仕事着に着替える時間には給与は支払われるのかどうかなど。答えが1つに定まりにくい問題が労務管理では起こります。


一例として、

Q:会社を休んだら、社会保険料は安くなる?
Q:伊達マスクを付けて仕事をするの?
Q:休む人が多くて勤務シフトに穴が開く。対処策は?
Q:休憩時間を分けて取ってもいいの?
Q:残業を許可制にすれば残業は減る?
Q:残業しないほど、残業代が増える?
Q:喫煙時間は休憩なの?
Q:代休振替休日はいつまでに取ればいいの?


このような問題に対して、どのように対処するか。それについて書いたのが『仕事のハテナ 17のギモン』です。

▽    ▽   『仕事のハテナ 17のギモン』    ▽    ▽
http://www.growthwk.com/entry/2017/05/23/132023?utm_source=soumu&utm_medium=cm&utm_campaign=soumu_cm_clockperiod_common_20170628_4



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