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業務委託先のデザイン成果物の改変と著作権侵害

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ビジネスに直結する実践的判例・法律・知的財産情報
弁護士法人クラフトマン 第211号 2018-03-06

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1 今回の事例 
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 東京地裁平成29年11月30日判決

 デザイナーであるA氏は、平成24年7月頃から平成27年9月
頃までの間に、紙やビニールの印刷、加工、販売をする会社である
B社から注文を受け、食品の包装デザインを製作しました。

 B社は、A氏から納入を受けたデザインを改変した商品包装デザ
インを食品メーカーに納入しましたが、A氏は、こうした行為が、
自己の著作権(翻案権など)を侵害すると主張しました。




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2 裁判所の判断
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 裁判所は以下のように判断し、A氏の主張を認めませんでした。

● B社がA氏に依頼したのは食品メーカーの商品の包装のデザイ
ンであり、B社が顧客(食品メーカー)に提案したデザインについ
て、顧客がB社に修正等の指示を出すことがあり、多くの場合複数
回デザインの修正がなされる。

● A氏は、デザイン会社が顧客に包装デザインを提出した後に顧
客の指示によりデザインの修正が必要となることがあること、こう
した場合にA氏に連絡がなければ、A氏以外の者が修正を行うこと
になることを認識していた。

● A氏とB社間で、A氏がデザインを提出した後の顧客の指示に
よる修正について、何らかの話や合意がされたりしたことを認める
証拠はない。

● よって、A氏は、B社からの依頼に基づいて作成したデザイン
につき、B社による改変を当初から包括的に承諾していたと認める。




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3 解説
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(1)翻案権・改変権とは

 著作権に含まれる権利として、著作物を改変できる権利である「
翻案権」があります。具体的には、「著作物を翻訳し、編曲し、若
しくは変形し、又は脚色し、映画化し、その他翻案する権利」です
(著作権法27条)。

 それで、著作権者は、自身が創作した著作物を自由に翻案する権
利を持っていますし、第三者に対し、翻案を許すことも、禁止する
こともできます。さらには、翻案を許した結果生じる二次的著作物
に関しても権利を行使することができます(著作権法28条)。

 そのため、今回の事例では、A氏は、B社に対し、「デザインを
無断で改変した」と主張したわけです。


(3)実務上の留意点

 本件においては、A氏とB社との間には、包装デザイン制作委託
に関する契約書は作成されていなかったとのことです。確かに、業
界によっては、何かの制作物の制作の委託をする際に、契約書が作
成されないまま取引がなされる慣行が根強いところがあるようです。
そうすると、制作物の著作権といった権利の帰属や、納入された制
作物の扱いについては曖昧なまま取引が進むことが少なくありませ
ん。

 しかしながら、取引の当事者間の関係が良好な間はよいのですが、
いざ紛争となると、特に受託者側が、「著作権が自己にある」「改
変を承諾した覚えはない」といった主張をする、ということがあり
ます。

 それで、契約書や他の書面が作成されないことを当然として事業
を進めるよりも、後々の成果物の利用に支障や紛争が生じないよう
合意条件をドキュメント化しておくことは、リスク管理上、メリッ
トが大きいと思います。

 この点例えば、取引の金額やこれまでの慣行から、両者が押印す
契約書の作成に違和感があるのであれば、発注書において、重要
な発注条件として著作権などの権利の取扱を明示しておき、注文請
書で承諾をもらっておく、という方法も悪い方法ではありません。
また、こうした注文書注文請書は、FAXやメールのやり取りで
も大いに意味を持ちます。

 それで、自社の重要な権利に関する事柄は、従来の慣行にとらわ
れず、かつ現実的に実行可能な方法でエビデンス化する方法を考え
ていくのは有益なことと思います。




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4 弊所取扱案件紹介~英文契約実務(商取引編)
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 近年では多くの企業が海外取引に積極的に取り組んでいます。海
外取引・国際取引では英文契約はまさに自社を守る必須のツールと
いえます。

 また国内ビジネスであっても、海外企業の代理店になるとか、海
外企業と取引する場合には英文契約の締結が必要となる場合が少な
くありません。

 そして弊所では、英文契約業務に積極的に取り扱い、多くの企業
の国際化を支援しています。

 これまで弊所が作成・レビューとして取り扱ってきた英文契約
多種多様ですが、今回は特に商取引関係のものをピックアップする
と、以下のようなものがあります。

 弊所では海外取引・国際契約をご検討の方のご相談を歓迎してお
ります。詳細は以下のURLをご覧ください。

 www.ishioroshi.com/biz/kaisetu/keiyaku/eibun_keiyaku/

  ・販売店契約書
    (Distributorship Agreement、Reseller Agreement)

  ・代理店契約書(Representing Agreement)

  ・売買契約書(Purchase and Sales Agreement)

  ・フランチャイズ契約書(Franchise Agreement)

  ・業務提携契約書
      (Alliance Agreement、Affiliation Agreement)

  ・購買契約書(Purchasing Agreement)

  ・取引条件に関する合意書
       (Agreement of Trading Terms)

  ・業務委託契約書・役務提供契約書(Services Agreement)

  ・エージェンシー契約書(Agency Agreement)





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ただし、本稿の内容を社内研修用資料等に使用したいといったお申
出については、弊所を出典として明示するなどの条件で、原則とし
て無償でお受けしています。この場合、遠慮なく下記のアドレス宛、
メールでお申出ください。
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【執筆・編集・発行】
弁護士・弁理士 石下雅樹(いしおろし まさき)

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〒160-0022 東京都千代田区丸の内1-5-1 
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TEL 045-276-1394(代表) FAX 045-276-1470

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