• HOME
  • コラムの泉

コラムの泉

このエントリーをはてなブックマークに追加

専門家が発信する最新トピックスをご紹介(投稿ガイドはこちら

一定の過労死ライン基準(時間外労働100時間)について

 こんにちは、産業医・労働衛生コンサルタントの朝長健太です。
 産業医として化学工場、営業事務所、IT企業、電力会社、小売企業等で勤務し、厚生労働省において労働行政に携わり、臨床医として治療を行った複数の健康管理の視点で情報発信をしております。
 さらに、文末のように令和元日(5月1日)に、「令和の働き方 部下がいる全ての人のための 働き方改革を資産形成につなげる方法」を出版し、今まで高価であった産業医が持つ情報を、お手頃な価格にすることができました。
http://hatarakikatakaikaku.com/
 今回は、「過労死ラインとして、時間外労働100時間が一定の基準となっていることについて」コラムを再アップさせていただきます。
 労働衛生の取組を行うことで、従業員に培われる「技術」「経験」「人間関係」等の財産を、企業が安定して享受するためにご活用ください。
========================
過労死ラインとして、時間外労働100時間が一定の基準となっていることについて
========================
 過労死ラインとして、時間外労働100時間が一定の基準となり、労働安全衛生法第66条の8等により、疲労の蓄積がある場合に医師の面談を受けさせる義務が発生します。
 過労死ラインにつきましては、平成13年11月15日付けで厚生労働省より発出された「脳・心臓疾患の認定基準に関する専門検討会報告書」が根拠となっております。
 以下のように、内容について整理し、多くの方が「健康を維持しつつ時間外労働100時間を行っている実態がある。」と感じていらっしゃる部分についても整理します。

(1)脳・心臓疾患の認定基準に関する専門検討会報告書
①平均的な生活時間の整理
 日本人の1日の平均的な生活時間については、総務庁の「平成8年社会生活基本調査報告」とNHKの「2008年国民生活時間調査報告書」を元に、睡眠時間7.4時間、食事等5.3時間、仕事9時間、余暇2.3時間(脳・心臓疾患の認定基準に関する専門検討会報告書 図5-5労働者の1日の生活時間より)と整理されています。
 なお、食事等の時間には通勤の時間が含まれており、仕事には休憩1時間が含まれています。
②睡眠時間と脳・心臓疾患の発生率との関係
 睡眠時間と脳・心臓疾患の罹患率等の関係では、複数の調査研究をまとめ、長期間にわたる1日4~6時間以下の睡眠では、睡眠不足が脳・ 心臓疾患の有病率や死亡率を高める旨が整理されています。
過労死ラインの考え方
 ①と②より、1日5時間程度の睡眠が確保できない状態は、1日5時間程度の時間外労働を行った場合に相当し、これが1か月継続した状態は、おおむね100時間を超える時間外労働が想定されると整理され、100時間が過労死ラインとして一定の基準となりました。

(2)健康のまま時間外労働100時間以上を行っている実態があることについて
 月に20日勤務し、1日5時間の睡眠になるとしたら、(1)の①の整理によると、余暇(2.3時間)、睡眠時間(2.4時間)及びその他(0.3時間)を時間外労働に充てた計算になります。しかし、通勤時間が短い場合は、食事等の時間を時間外労働に充てることができるため、睡眠時間を7時間確保したまま、時間外労働100時間以上を行うことができる従業員もいます。
 また、労働日数は、脳・心臓疾患の認定基準に関する専門検討会報告書では1ヶ月20日を想定していますが、労働基準法に基づいて最大27日労働日数(暦日31日の月に、週休1日を取得させた場合、27日の労働日数となる。)が確保することができます。時間外労働を適切に振り分けた場合は、睡眠時間を7時間確保したまま、時間外労働100時間以上を行うことができます。
 このように、睡眠時間を7時間確保しつつ、時間外労働が100時間以上となることはありえます。

(3)対策
 時間外労働100時間は、過労死原因の一要素であり、従業員の生活リズムや他のリスク因子(基礎疾患、家庭環境等)によっても大きく変わってきます。
 時間外労働に限らず、健康障害のハザードについては、労働安全衛生法に基づいて適切な除去を行うことが定められており、従業員過労死原因の低減は複数のアプローチによって行うべきです。
 具体的対策としては、安全衛生員会等で生産性の向上を議論し、労働時間の低減や業務起因性のストレスを低下する根本的対策(1次予防)、時間外労働が一定時間(安全衛生委員会等で定めることが適切)を超えた場合に、該当従業員産業医面談を受けさせ、産業医から事業者が配慮するべき対策について情報を得る早期発見・早期対応(2次予防)等があげられます。

========================
令和の働き方 部下がいる全ての人のための 働き方改革を資産形成につなげる方法
http://miraipub.jp/books/%E3%80%8C%E4%BB%A4%E5%92%8C%E3%80%8D%E3%81%AE%E5%83%8D%E3%81%8D%E6%96%B9-%E9%83%A8%E4%B8%8B%E3%81%8C%E3%81%84%E3%82%8B%E5%85%A8%E3%81%A6%E3%81%AE%E4%BA%BA%E3%81%AE%E3%81%9F%E3%82%81%E3%81%AE-%E5%83%8D/

絞り込み検索!

現在22,361コラム

カテゴリ

労務管理

税務経理

企業法務

その他

≪表示順≫

※ハイライトされているキーワードをクリックすると、絞込みが解除されます。
※リセットを押すと、すべての絞り込みが解除されます。

スポンサーリンク

経営ノウハウの泉より最新記事

スポンサーリンク

労働実務事例集

労働新聞社 監修提供

法解釈から実務処理までのQ&Aを分類収録

注目のコラム

注目の相談スレッド

スポンサーリンク

PAGE TOP