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データベースと著作権

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ビジネスに直結する実践的判例・法律・知的財産情報
弁護士法人クラフトマン 第216号 2018-07-03

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1 今回の事例 データベースと著作権
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 東京地裁平成30年3月28日判決

 本件での争点は多岐にわたりますが、本稿のテーマに関係した争
点に絞ってご紹介します。

 A社は、データベースを構築するパッケージソフトウェアを自社
で開発しました。
 
 そして、A社は、当該ソフトウェアががデータベースの著作物に
当たると主張した上で、B社が提供していたサービスにデータが登
録・蓄積されて形成されたデータベースが、当該著作権を侵害する
と主張し、B社に対し、差止請求損害賠償請求をしました。




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2 裁判所の判断
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 裁判所は以下のように判断し、データベースシステム自体は、著
作権法で保護されるデータベースではないとして、A社の主張を認
めませんでした。

・ A社が開発したソフトウェアは、食品の商品情報のデータベー
スを構築するためのソフトウェアであって、食品の商品情報が蓄積
されてデータベースが生成されることを予定している。

・ そうすると、食品の商品情報が蓄積される前のソフトウェア
、著作権法2条1項10号の3に定める「論文、数値、図形その他
の情報の集合物」とは認められない。

・ A社は、当該ソフトウェアに搭載されている辞書情報を「情報
」と捉え、この集合物をもって「データベース」と主張するが、こ
れらの辞書ファイルは、商品情報の登録に際して、特定のデータ項
目を入力する際に参照されるものにすぎないから、辞書ファイルが
備える個々の項目が、「体系的に構成」されていると認めることは
困難である。

・ したがって、A社のソフトウェアは、著作権法上の「データベ
ース」とは認められない。




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3 解説
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(1)データベースと著作権

 著作権の対象となる著作物といえば、画像や文章が典型的な例で
す。他方、データの集合体であるデータベースについては、1個1
個のデータには通常著作物性はありません。

 しかし、データベース全体として、一定の条件が整えば、著作権
法の保護を受けることができます。

 この点、著作権法12条の2は「データベースでその情報の選択
又は体系的な構成によって創作性を有するものは、著作物として保
護する」と定めています。

 つまり、上の規定のとおり、「情報の選択」又は「体系的な構成」
のいずれかに、制作者の個性や思想、創造性が認められるようなも
のは、著作物として保護を受けられるというわけです。

 以上が一般的な説明ですが、これだけではイメージが持てないと
思いますので、以下、裁判例に現れた事例を見ていきたいと思いま
す。


(2)データベースの著作権が争われた例

 (a)職業別電話帳のデータ
   職業別電話帳のデータについて、検索利便性の観点から個々
  の職業を分類し、これらを階層的に積み重ねることにより、全
  職業を網羅して構成している点に独自の工夫が認められるとさ
  れ、著作物性が認められました。

 (b)新築分譲マンションの販売情報データベースの例
   当該データベースは、種々のテーブルを持ち、400に迫る
  多数のフィールド項目や多種多様な関連付けを持つ情報分類体
  系となっているとして、情報の選択と体系的な構成の両方で創
  作性を認めました。

(c)自動車整備業用システムの例
   古い自動車から順に並べたものであって、それ以上に何らの
  分類もされていないこと、他の業者の車両データベースにおい
  ても同様の構成を採用していることが認められるから、体系的
  な構成に創作性があるとは認められないとして、著作物性を否
  定しました。


(3)ビジネス上の留意点

 以上のとおり、一定の条件はあるものの、データベースにも著作
権が認められます。それで、他者が作成したデータベースについて、
創作性のないデータの集合体だろうと考えて安易に複製するなどし
て使用することは避ける必要があると思われます。

 また、仮に厳密な意味で著作物性が認められないようなデータベ
ースでも、情報の収集や整理に多大な労力・時間・資金が投じられ
たものをそのまま複製するような行為は、違法と判断されることが
ありますから、十分注意が必要です。

 実際、上の自動車整備業用システムの例では、著作権の保護は否
定されたものの、システムを複製した事業者には、民法上の「不法
行為」という責任が認められました。

 他方、データを集め、データベースを作成して販売するといった
ビジネスを展開する場合には、容易に複製ができるというデータの
性質上、著作権の保護を受けられるようにデータベースを構築する
という意識も重要かと思います。この点で、著作権に詳しい専門家
の意見を聞くことは有益かもしれません。




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4 弊所ウェブサイト紹介~M&A業務
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弊所のウェブサイトの法律情報の解説のページには、ビジネス・企
業に関係した法律情報に関する豊富な情報があります。

本稿のテーマと直接の関係はありませんが、M&A関連案件につい
ては、以下のページに解説があります。

www.ishioroshi.com/biz/kaisetu/kaishahou/index/mana_houhou/

是非一度ご覧ください。

なお、同サイトは今後も随時加筆していく予定ですので、同サイト
において解説に加えることを希望される項目がありましたら、メー
ルでご一報くだされば幸いです。




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出については、弊所を出典として明示するなどの条件で、原則とし
て無償でお受けしています。この場合、遠慮なく下記のアドレス宛、
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【執筆・編集・発行】
弁護士・弁理士 石下雅樹(いしおろし まさき)

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