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産業医の視点による「夢の国の」安全配慮義務

 こんにちは、産業医・労働衛生コンサルタントの朝長健太です。
 産業医として化学工場、営業事務所、IT企業で勤務し、厚生労働省において労働行政に携わり、臨床医として治療を行った複数の健康管理の視点で情報発信をしております。
http://hatarakikatakaikaku.com/
 今回は、「産業医の視点による「夢の国の」安全配慮義務」についてコラムを作成しました。
 労働衛生の取組を行うことで、従業員に培われる「技術」「経験」「人間関係」等の財産を、企業が安定して享受するためにご活用ください。
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産業医の視点による「夢の国の」安全配慮義務
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 とあるテーマパークの運営会社が、安全配慮義務違反で提訴され、平成30年11月に、第1回の口頭弁論が行われたということが同社のホームページに掲載されました。
 訴状によると、訴えた従業員は平成27年2月に雇用され、重さ10~30kgの着ぐるみ姿でパレードやショーに出演し、平成29年1月、腕に激痛が生じ「胸郭出口症候群」と診断され休職したそうです。さらに、同年8月に、業務との因果関係が認められ、労災認定されたそうです。
 胸部出口症候群は、肩周辺の骨や筋肉により神経が圧迫され、腕の痺れや痛みが発生する疾患で、重いものを持ち運ぶ労働者に発生することがあります。上記事例においては、重さ10~30kgの着ぐるみという重量物運搬作業が、有害作業ということになります。

◎ 産業医の視点による安全配慮義務
 本事例は重量物運搬作業ということになりますが、安全配慮を行う原則は、他の有害作業と対策は変わりません。具体的には以下の対策が必要になります。
 なお、従業員が50人未満の事業所でも、衛生推進者等を中心に同様の体制を整備することが望ましいです。
①衛生管理体制の整備
 労働安全衛生法に基づく、衛生管理者等を定め、実効性が伴う業務を行わせる必要があります。
衛生委員会での予防策に関する調査審議後、事業者による決定
 予防策は、売上の向上・作業負担の低減・健康管理という3つの視点で調査審議する必要があります。従って、事業者側・従業員側・産業医が一堂に会する衛生委員会で、安全配慮の内容を調査審議し、その内容を元に事業者が対策を決定する必要があります。
③作業環境改善、作業改善
 衛生委員会の意見を元に事業者が決定した対策を、作業環境改善及び作業改善として具体的に実行します。
 なお、実行する中で新たに改善するべき課題が判明した場合は、衛生委員会で調査審議をする必要があります。
④健康教育
 安全配慮のうち従業員が行うべき事項(自己保健義務)の徹底や従業員の健康に関する意識向上のために、充分な教育を行う必要があります。
産業医面接及び事後措置
 予防対策は発生確率を下げることはできても、ゼロにすることはできません。そこで、症状が発生した場合は、速やかに産業医の面接を受けさせ、精密検査結果や作業環境等を総合的に判断した産業医意見に基づいて、適切な事後措置を行う必要があります。

事業者から従業員への一方的なサポート体制では不十分
 労働安全衛生法第3条において、事業者は、最低基準を守るだけでなく、快適な職場環境の実現と労働条件の改善を通じて職場における従業員の安全と健康を確保しなければならないと定められています。さらに、同第4条において、従業員は、労働災害を防止するために必要な事項を守るほか、事業者等が実施する労働災害の防止に関する措置に協力するように努めなければならないと、労使の相互に責務が課されています。
 事業者から従業員への一方的な安全配慮を行っていたとしても、健康障害が発生した場合は、結果的に、安全配慮の内容に不備があったことになります。そこで、労使相互の責務を活用するために、衛生委員会を活用した衛生管理体制の構築をすることが重要になります。

【補足】
 胸郭出口症候群の訴訟と同時に、パワハラを受けたとの理由で訴訟している従業員もいらっしゃいます。パワハラについては、以下の3つの定義と6つの種類で、客観的事実があるかの確認になります。予防対策としては、労働衛生管理体制等の取組に加えて、管理職教育を充分に行う1次予防、相談窓口を設けて早期対応する2次予防を行うと良いでしょう。
 ◇3つの定義
・職場の地位・優位性を利用している
・業務の適正な範囲を超えた指示・命令である
・相手に著しい精神的苦痛を与えたり、その職場環境を害する行為である
 ◇6つの種類
・身体的侵害(殴る蹴る等)
・精神的侵害(暴言や脅迫等)
・人間関係からの切り離し(無視や仲間はずれにする行為等)
・個の侵害(プライベートな内容に過剰に踏み入る行為等)
・過大な要求(業務上明らかに達成不可能なノルマを課すこと等)
・過小な要求(個人の能力に比べて著しく程度の低い単調な作業を与え続けること等)

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