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スタートアップの人事・労務 7 フリーな勤務と裁量労働制

こんにちは。社会保険労務士の田中です。
渋谷を中心にスタートアップ企業の支援をしています。


☆☆ スタートアップのための人事労務 ☆☆

このコラムは、成長ステージにあるスタートアップ企業に
人事労務面のアドバイスをご提供しています。

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☆☆ 第7回 裁量労働制について ☆☆

今回は、裁量労働制を取り上げます。

スタートアップでも特に技術系やクリエイティブ系の会社では、
就業時間はフリー、就業場所は会社の他に自宅・カフェでも可、
という柔軟な勤務スタイルを採用する会社が多く見られます。

一方、労働基準法の前提は、言ってみれば
「決められた始業時刻から終業時刻まで会社で勤務する。」
という考え方のため、スタートアップのスタイルと合わないことがあります。

労働基準法と異なる自社オリジナルの勤務ルールにするには、
就業規則に定めることや、労使協定を締結することが必要です。

例えば、就業時間をフリーにするには「専門業務型の裁量労働制」を、
就業場所をフリーにするには「事業場外のみなし労働時間制」を
まずは、就業規則に定める必要があります。
その上で、必要に応じて労使協定を結ぶことになります。

今回のコラムでは、就業時間をフリーにするための
「専門業務型の裁量労働制(以下、裁量労働制)」についてお伝えします。

(他に「企画業務型裁量労働制」がありますが、導入するハードルが高く、
あまり一般的ではないため、ここでは触れません。)


〇〇〇〇 裁量労働制によくある誤解 〇〇〇〇

はじめに裁量労働制によくある誤解からお伝えします。

1 裁量労働制だから残業手当は支払わなくてよい。
2 裁量労働制は全ての従業員に適用できる。
3 裁量労働制は会社が導入を決めるだけで始められる。

これらは全て誤解です。念のために、正しい取り扱いは…

1 裁量労働制でも残業手当は発生します。
2 裁量労働制は専門性の高い19職種だけに適用できます。
3 裁量労働制就業規則への明記と労使協定の締結、  
  そして労使協定労働基準監督署への届け出が必要です。


〇〇〇〇 そもそも「専門業務型裁量労働制」とは何か? 〇〇〇〇

それでは、基本的なところから説明します。

専門業務型裁量労働制とは、専門性が高い19の職種において
(システムエンジニア・デザイナー・新商品の研究開発 等々)
仕事の進め方や時間配分を本人の裁量に任せる場合は、
労働時間について通常とは異なる取り扱いができる制度です。

労働基準法 第38条の3では、次のように定めています。
『業務の性質上その遂行の方法を大幅に当該業務に従事する労働者の裁量に
ゆだねる必要があるため、当該業務の遂行の手段及び時間配分の決定等に
関し使用者が具体的な指示をすることが困難なものとして厚生労働省令で
定める業務のうち、労働者に就かせることとする業務』

したがって、誰もが裁量労働制で働ける訳ではありません。
対象になる19業種はこちらをご確認ください。(厚生労働省)

https://www.mhlw.go.jp/general/seido/roudou/senmon/

裁量労働では、本人が何時間を仕事に充てたかではなく、
労使協定で定めた労働時間(例えば、8時間や9時間など)を
働いた時間とみなす、というものです。

例えば、労使協定で定めた労働時間を8時間とするならば、
実際には5時間働いた場合でも、10時間働いた場合でも、
どちらも「8時間働いた」とするものです。

従って、労使協定労働時間数を何時間と定めるかは重要です。
仕事に必要な時間と乖離が少ないように設定する必要があります。

また、例えば「10時間」と定めた場合は、法定労働時間の8時間を
2時間上回っていますので、その分は時間外労働となり割増手当が必要です。
その他、原則として月曜日から金曜日を労働日とした場合、
土曜日と日曜日に出勤した分も時間外労働としてカウントします。

なお、裁量労働制が長時間労働につながる懸念もあるので、
会社としては裁量労働の対象者でも、どの程度の時間を働いているかを
タイムカードなどにより把握した上で、健康管理等を行う必要があります。


〇〇〇〇 誰を裁量労働制の対象とするか 〇〇〇〇

まず、大前提は前述した通り、19職種に該当することです。
その上で、担当業務について一定以上の経験・能力がある他、
時間管理、健康管理などの自己管理ができる従業員を対象とすべきです。
一概には言えませんが、経験3年以上が一つの目安になるでしょうか。
したがって、新卒社員は対象外です。

そして、裁量労働制労使協定は一般的に有効期間を
1年とするので、どの従業員を裁量労働の対象とするか否かを
そのタイミングで毎回、再検討するとよいでしょう。


〇〇〇〇 裁量労働制はどうすれば導入できるか? 〇〇〇〇

裁量労働制を導入するには次の手順が必要です。

STEP1 就業規則裁量労働制の規定を定める。
STEP2 裁量労働制労使協定を締結する。
STEP3 その労使協定を管轄の労働基準監督署に届け出る。
STEP4 届け出た労使協定を社内の見やすい場所に掲示する。
      (従業員がいつでも確認できるようにする。)
STEP5 労使協定は1年ごとに見直して、労基署に届け出る。


〇〇〇 裁量労働の適用を止めたい従業員がいたら 〇〇〇

1年に1回の見直しタイミング、あるいはその時期以外でも、
従業員の健康状態が思わしくなかったり、自己管理ができていないなど
裁量労働の適用から除外した従業員がいる場合はどうすれば良いのでしょう?

あらかじめ就業規則に次の様なことを明記することが必要です。
『会社は、裁量労働制適用除外とすることが望ましいと判断した従業員
 対して、随時に通常の勤務形態に復することを命じる。』

裁量労働制についてお分かりいただけたでしょうか?
スタートアップには親和性が高い制度だと思います。

今回も最後までお読み頂き、ありがとうございます。


☆☆ スタートアップの人事労務 ☆☆
他にも、次のような解説があります。ぜひ、お読みください。

1 スタートアップの人事労務 1 なぜ、労災保険は必要か?
  http://www.soumunomori.com/column/article/atc-173536/

2 スタートアップの人事労務 2 雇用保険はどのように役立つか
  http://www.soumunomori.com/column/article/atc-173554/

3 スタートアップの人事労務 3 人を採用する前後のアクション
  http://www.soumunomori.com/column/article/atc-173565/

4 スタートアップの人事労務 4 法人社会保険の加入が法的に必須
  http://www.soumunomori.com/column/article/atc-173577/

5 スタートアップの人事労務 5 就業規則を作った方が良い?
 http://www.soumunomori.com/column/article/atc-173605/

6 スタートアップの人事労務 6 就業規則 作成時のポイント
 http://www.soumunomori.com/column/article/atc-173676/


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田中事務所  特定社会保険労務士 田中理文
(立川・渋谷・新宿 で主に仕事をしています。)

http://www.tanakajimusho.biz/

未来を拓く次世代の経営者に、当所の経験とノウハウをお伝えします。
1人からスタートして、社会に影響を与える会社になるまで、
貴社に寄り添ってサポートします。

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