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【事例】メンタル疾患者における職場復帰(課題攻略の発想)

 こんにちは、産業医・労働衛生コンサルタントの朝長健太です。
 産業医として化学工場、営業事務所、IT企業で勤務し、厚生労働省において労働行政に携わり、臨床医として治療を行った複数の健康管理の視点で情報発信をしております。
 さらに、健康経営に関する公的資格者のために、安価で好立地のインキュベーションオフィスも展開しています。
http://hatarakikatakaikaku.com/
 今回は、「【事例】メンタル疾患者における職場復帰(課題攻略の発想)」についてコラムを作成しました。
 労働衛生の取組を行うことで、従業員に培われる「技術」「経験」「人間関係」等の財産を、企業が安定して享受するためにご活用ください。
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【事例】メンタル疾患者における職場復帰(課題攻略の発想)
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 今回は、事業所で経験した事例を提示させていただきます。

◎過去の経緯
 2010年台前半に入社し、概ね一人で行える業務についていた。ただし、新入社員でもある程度行える業務を任され続けていたことから、一般的な水準のOJTは受けられていなかった。2010年台後半より、越県の異動で、一人暮らしを開始することになった。生活の変化に加えて、異動前と後の業務掛け持ちすることになり、負担が増加した。また、異動後は年齢と役職程度の業務を求められることから、顧客対応を始め、質的な業務の負荷も向上した。
 異動の約1年後に「抑うつ神経症」と「適応障害」の診断で休業に入り、休職後2ヶ月目より主治医の元、復職準備のための外部リワーク支援施設利用を開始した。

◎弊社担当へ引き継ぎ後の対応
 弊社担当は、引き継ぎ直後に、引き継ぎ後の挨拶を兼ねた産業医面談案内を送付したが、本人からの回答はなかった。
 それから数ヶ月後に、主治医の指示があったとのことで、産業医と初回面談を行った。
 初回面談では、現状の確認と生活記録表や再発防止策を書面で整理するように指導し、その後の面談で定期的な経過観察を行った。その後、生活リズムは整い、再発防止策の案を示してきて比較的良好な経過であったが、再発防止策の案が、業務における課題に対する他罰的な考えと課題から距離をとることに終始していた。また、主治医の元にいるカウンセラーからもその観点が支持されていた。
 弊社担当は、治療の観点から、課題から距離をとることは重要であるが、職場復帰のためには、自発的に行える改善策と課題を攻略する視点についても再発防止策を用意する必要があることを指導した。
 しかし、他罰的な観点に終始することは強く、課題から距離をとる以外の案を示すことはなかった。弊社担当としては、部署に意見聴取を行ったところ、顧客に納品前に認めた不具合を独断で応急的に回避し、かつ上司に報告を行っていなかった旨を確認した。当然、納品時に重大なトラブルが発生し、顧客及び上司から強く指導等を受けることとなった。上司としては、過去の一般的な水準のOJTは受けられていなかった背景を踏まえ、半年間繰り返し育成を行っていたが、改善が認められなかった。 
 得られた事実確認内容を元に、本人及び人事担当と面談を行ったが、他罰的な視点と課題から距離をとるのみの解決策に改善は認められなかった。そこで、弊社担当は、主治医宛に、職場復帰しさらに再発防止をするためには、課題を攻略する視点が必須であり、その点が解決できるまで職場復帰可能の意見を産業医は出せない旨を示しつつ、今後の医学的連携の依頼を行った。
 その後、繰り返しの産業医面談と主治医からの説明を受けて、徐々に理解が深まり、最終的には、課題攻略の視点での再発防止策を示すことができるようになった。その結果を元に、本人、上司、人事産業医の4者面談を実施し、細かい点の調整を行った後、職場復帰に至った。

◎考察
 労働衛生の観点で、休業中の従業員に係る担当者の立ち位置を示すと、以下のようになります。
① 医学の専門家で、健康管理に専念する主治医
② 医学の専門家で、健康管理と労働提供の享受を目的とする産業医
③ 業務と労働衛生の見識があり、健康管理と労働提供の享受を目的とする衛生担当者
④ 業務に専念し、労働提供の享受を目的とする企業側の担当者
 ここで、①の主治医と④の担当者が直接やり取りをした場合、立場及び考え方の背景が大きく異なることから、調整が難航します。過去には、企業側の担当者が一方的に折れ、主治医の意見のみが通り、従業員や企業が不利益を被る事例がありました。
 そこで、医学の専門家である②の産業医と、業務と労働衛生の見識がある③の衛生担当者が、調整をスムーズにするために役割を発揮することになります。
 本事例では、治療の観点で、課題から距離をとる視点が強化されており、本人と主治医との信頼関係が強いこともあり、当初、産業医が示す再発防止の視点が理解されていませんでした。そこで、産業医の考え方を主治医に伝え、身体的、精神的のみならず社会的に健康である必要性を示し、主治医からも本人へ課題攻略の視点の重要性を説明してもらったことで、大幅な改善が認められました。
 疾病を理由とした休業から職場復帰する際に、担当者の立場や役割と、担当者と本人間の信頼関係は、担当者毎に異なります。従業員が、安定して継続勤務を行うためには、各担当者が、その他の担当者の考えを理解し、段階的に調整を行いながら、取り組む必要があります。従業員が、健康を維持増進しながら快適に働けるように、労働衛生の基本に基づいた対応を行うことが重要です。

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