2005/08/31
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会 社 VS 社 員 訴えたら勝つのはどっちだ!? 第41号
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◆◆今回の訴え◆◆
「更衣時間、朝礼時間、
休憩時間及び
仮眠時間中も指揮命令下にお
かれていて、
労働時間に当たるので、その分も
賃金を支払え」
VS
「指揮命令下にはなく、自由に過ごしているはずだ」
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労働者側も、会社側も、いついかなるときに非常識な相手に遭遇す
るかもしれません。
そんなとき、自分の身は自分で守るため、裁判で争うところまでは
いかないにしても、自分の正当性を訴えていく必要があります。
そのためには、法律上はどう解釈されるのか、その“
境界線”を知
っておくことが大事!
小難しい条文をお勉強しなくても、これを読めば労働法の勘所がわ
かる、そんなメルマガです。
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◆◆事件の経緯◆◆
Y社は警備業務を行う会社です。
Aさんは、Y社の社員で警備業務に従事しており、月13回の
宿直勤
務を行っていました。
宿直勤務は24時間の
連続勤務で、勤務表によって各人の勤務予定が
割り当てられていました。
勤務条件は次のようなものです。
・始業時刻 午前9時
・終業時刻 翌日午前9時
・
仮眠時間 1
宿直勤務につき4時間
・
休憩時間 日勤中1時間、
深夜時間帯30分
Aさんらは、未払い
賃金の請求を、会社に訴えました。
両者の主張は、次の通りです。
------------------------------------------------------------
【Aさんらの主張1:更衣時間や朝礼時間について】
私たちは、制服に着替えることを義務づけられていしたし、午前8
時40分から前夜の
宿直者との引継ぎのため、朝礼に出席することも
義務づけられていました。
更衣時間と朝礼時間は、その日の業務を遂行するために必要な時間
ですから、
労働基準法上の
労働時間に当たります。
始業時間は9時となっていますが、私たちは8時から8時15分までの
間にはタイムカードを押して、遅くとも8時30分から着替えを始め、
8時40分から朝礼をしていました。
【Y社の主張1:更衣時間や朝礼時間について】
朝礼は引継ぎを主な目的とするもので、緊急事態でもない限り引継
事項はほとんどなく、実際の朝礼は短時間で済んでいたことがほと
んどで、それこそ5分か10分で終わっていました。
着替えについてもせいぜい5分程度で済むはずです。
------------------------------------------------------------
【Aさんらの主張2:
休憩時間について】
私たちは、規程上では1時間30分の
休憩時間が与えられていました
が、実際には
休憩時間であっても突発の事態に備えて制服のままで
いることを義務づけられていました。
つまり、
休憩時間とは名ばかりで、実際は
使用者の指揮命令から開
放されない実
労働時間でした。
具体的には、巡回日誌を見る、日報を確認する、本部に早めに入る
等の実作業を行い、外部から施錠したかどうかの確認依頼の電話が
かかってきた場合は、
休憩シフトの警備員が対応し、依頼のあった
部屋まで行って戸締りを確認し、灰皿や照明の確認等をしていまし
た。
自由に外出することは認められておらず、警備室での待機を命じら
れており、食事も警備室で取ることとされていました。
また、警備長が打ち合わせのために呼ばれて不在の場合に穴埋めに
入るのも
休憩シフトの警備員の役割でした。
それに、巡回業務を担当する場合は、40分程度の巡回後に巡回日誌
を15分から20分程度かけて詳細に記載しなければならず、巡回シフ
ト中に
休憩する余裕はありませんでした。
【Y社の主張2:
休憩時間について】
休憩時間の1時間30分は、指揮命令から完全に解放された状態にな
っていました。
巡回は
共用部分を見回ることが中心であって、大体20分から30分
で完了しますし、記帳も5分程度で済むので、巡回時間としての割
り当て1時間のうち30分は自由時間として利用することができます。
------------------------------------------------------------
【Aさんらの主張3:
仮眠時間について】
規程では4時間の
仮眠時間が与えられることになっていますが、ト
ラブル発生、救急車対応、不審者対応に備えて待機していなければ
ならず、仮眠室からは離れることができません。
つまり、
仮眠時間とは言っても労働から解放されているとは言えず、
実
労働時間に当たります。
【Y社の主張3:
仮眠時間について】
2~3名が同時に仮眠室において制服を脱いで仮眠し、その間1名が
警備室で執務し、もう1名が駐車場窓口における業務あるいは巡回
業務などに従事していました。
発報があった場合には、警備室で執務をしている者が対応しており、
仮眠中の者を起こしてまで対応することはありませし、会社として
仮眠室での待機を指示したことはありません。
------------------------------------------------------------
さて、この訴えの結末は…
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労働者側の勝ち:一部を除いて主張どおり
労働時間に当たる
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◆◆趣 旨◆◆
■ この場合、Aさんの主張どおりの時間ではないが、更衣時間と
朝礼時間は
労働時間に当たる
「
労働時間」に該当するかどうかは、客観的に
労働者が
使用者の指
揮命令下に置かれていたかどうかで判断される。
証人の証言や本人尋問の結果によれば、朝礼に関しては出席が義務
づけられており、始業時刻前に10分間行われていた。また、始業時
刻前には制服に着替えることを義務づけられていて、着替えには少
なくとも5分は必要だったことが認められる。
Aさんらは朝礼時間が20分間行われていたと主張するが、これを裏
付ける証拠は存在せず、他の証言からすると10分間とするのが相当
である。
また、Aさんらは、更衣時間として10分間は必要であるとの旨主張
するが、これを裏付ける証拠はなく、社会通念上必要と認められる
更衣時間は5分間とするのが妥当である。
従って、朝礼時間の10分間及び更衣時間の5分間は、
労働時間であ
ると言える。
■ この場合、
休憩時間は
労働時間に当たらない
「
休憩時間」と言えるには、単に実作業に従事しないということで
は足りず、
使用者の指揮命令下から離脱していると言える必要があ
る。
証言や尋問の結果、
休憩時間には飲食店で外食したり、食事を購入
するために外出したり、あるいは仮眠をとる者もいるなど自由であ
ったことなどを照らし合わせると、
労働契約上の
役務提供が義務付
けられていなかったものと評価することができる。
Aさんらは
休憩時間にも業務をしていると主張するが、提出された
証拠からは、
休憩時間における
役務の提供を一般的に義務づけてい
たと評価することはできない。
■ この場合、
仮眠時間も
労働時間に当たる
仮眠時間についても、
労働者が実作業に従事していないというだけ
では、
使用者の指揮命令下から離脱しているということはできず、
当該時間に
労働者が労働から離れることが保障されている必要があ
る。
したがって、不活動
仮眠時間であっても、労働からの解放が保障さ
れていない場合には、労基法上の
労働時間にあたるというべきであ
る。
証拠によると、
・責任者のほとんどが、非常時には仮眠者にも対応をさせる必要が
あると考えている。
・不審者や泥酔者に対応する場合などは、複数の警備員で対応する
のが基本であるとされているが、現状仮眠中以外の者が常に複数待
機している体制ではない。
・仮眠室には本部から連絡がとれるよう、内線電話が設置されてい
る。
・現実に施錠の依頼や、不審者、泥酔者、救急車への対応を、仮眠
者が行っていた。
などといった事実が認められる。
これらを考え合わせれば、
労働契約に基づく義務として、
仮眠時間
中は、仮眠室における待機と警報や電話などに対し直ちに相当の対
応をすることを義務づけられていると評価することができる。
したがって、Aさんらは仮眠中について不活動
仮眠時間も含めて会
社の指揮命令下に置かれており、
仮眠時間中は労基法上の
労働時間
に当たる。
■ 会社は未払い
賃金を支払わなければならない
このため、更衣時間5分、朝礼時間10分、
仮眠時間4時間について
は、
労働時間と認められるから、会社はこれに対応する未払い
賃金
を支払わなければならない。
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◆◆参考判例◆◆
ビル代行(
宿直勤務)事件
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【編集後記】
ランチに何を食べたのか、ブログに書こうと思い、ここのところ
毎日違うお店に食事に行っています。
そう思って回りを見回してみると、意外と今まで入ったことがない
お店が結構あって、知らず知らずのうちに決まりきったところばか
りに行っていたみたいですね。
次号は9月14日(水)配信予定です。
ご意見、ご感想、その他取り上げて欲しい事例などございましたら、
info@hmpartners.jpまでお寄せください。
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なお、このメールマガジンは、判例等をもとに著者が脚色して作成
しています。できる限り法知識が正確に伝わるよう努力しています
が、実際の事件には様々な要素が複雑に絡んできますので、類似の
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2005/08/31
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会 社 VS 社 員 訴えたら勝つのはどっちだ!? 第41号
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◆◆今回の訴え◆◆
「更衣時間、朝礼時間、休憩時間及び仮眠時間中も指揮命令下にお
かれていて、労働時間に当たるので、その分も賃金を支払え」
VS
「指揮命令下にはなく、自由に過ごしているはずだ」
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労働者側も、会社側も、いついかなるときに非常識な相手に遭遇す
るかもしれません。
そんなとき、自分の身は自分で守るため、裁判で争うところまでは
いかないにしても、自分の正当性を訴えていく必要があります。
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◆◆事件の経緯◆◆
Y社は警備業務を行う会社です。
Aさんは、Y社の社員で警備業務に従事しており、月13回の宿直勤
務を行っていました。
宿直勤務は24時間の連続勤務で、勤務表によって各人の勤務予定が
割り当てられていました。
勤務条件は次のようなものです。
・始業時刻 午前9時
・終業時刻 翌日午前9時
・仮眠時間 1宿直勤務につき4時間
・休憩時間 日勤中1時間、深夜時間帯30分
Aさんらは、未払い賃金の請求を、会社に訴えました。
両者の主張は、次の通りです。
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【Aさんらの主張1:更衣時間や朝礼時間について】
私たちは、制服に着替えることを義務づけられていしたし、午前8
時40分から前夜の宿直者との引継ぎのため、朝礼に出席することも
義務づけられていました。
更衣時間と朝礼時間は、その日の業務を遂行するために必要な時間
ですから、労働基準法上の労働時間に当たります。
始業時間は9時となっていますが、私たちは8時から8時15分までの
間にはタイムカードを押して、遅くとも8時30分から着替えを始め、
8時40分から朝礼をしていました。
【Y社の主張1:更衣時間や朝礼時間について】
朝礼は引継ぎを主な目的とするもので、緊急事態でもない限り引継
事項はほとんどなく、実際の朝礼は短時間で済んでいたことがほと
んどで、それこそ5分か10分で終わっていました。
着替えについてもせいぜい5分程度で済むはずです。
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【Aさんらの主張2:休憩時間について】
私たちは、規程上では1時間30分の休憩時間が与えられていました
が、実際には休憩時間であっても突発の事態に備えて制服のままで
いることを義務づけられていました。
つまり、休憩時間とは名ばかりで、実際は使用者の指揮命令から開
放されない実労働時間でした。
具体的には、巡回日誌を見る、日報を確認する、本部に早めに入る
等の実作業を行い、外部から施錠したかどうかの確認依頼の電話が
かかってきた場合は、休憩シフトの警備員が対応し、依頼のあった
部屋まで行って戸締りを確認し、灰皿や照明の確認等をしていまし
た。
自由に外出することは認められておらず、警備室での待機を命じら
れており、食事も警備室で取ることとされていました。
また、警備長が打ち合わせのために呼ばれて不在の場合に穴埋めに
入るのも休憩シフトの警備員の役割でした。
それに、巡回業務を担当する場合は、40分程度の巡回後に巡回日誌
を15分から20分程度かけて詳細に記載しなければならず、巡回シフ
ト中に休憩する余裕はありませんでした。
【Y社の主張2:休憩時間について】
休憩時間の1時間30分は、指揮命令から完全に解放された状態にな
っていました。
巡回は共用部分を見回ることが中心であって、大体20分から30分
で完了しますし、記帳も5分程度で済むので、巡回時間としての割
り当て1時間のうち30分は自由時間として利用することができます。
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【Aさんらの主張3:仮眠時間について】
規程では4時間の仮眠時間が与えられることになっていますが、ト
ラブル発生、救急車対応、不審者対応に備えて待機していなければ
ならず、仮眠室からは離れることができません。
つまり、仮眠時間とは言っても労働から解放されているとは言えず、
実労働時間に当たります。
【Y社の主張3:仮眠時間について】
2~3名が同時に仮眠室において制服を脱いで仮眠し、その間1名が
警備室で執務し、もう1名が駐車場窓口における業務あるいは巡回
業務などに従事していました。
発報があった場合には、警備室で執務をしている者が対応しており、
仮眠中の者を起こしてまで対応することはありませし、会社として
仮眠室での待機を指示したことはありません。
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さて、この訴えの結末は…
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労働者側の勝ち:一部を除いて主張どおり労働時間に当たる
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◆◆趣 旨◆◆
■ この場合、Aさんの主張どおりの時間ではないが、更衣時間と
朝礼時間は労働時間に当たる
「労働時間」に該当するかどうかは、客観的に労働者が使用者の指
揮命令下に置かれていたかどうかで判断される。
証人の証言や本人尋問の結果によれば、朝礼に関しては出席が義務
づけられており、始業時刻前に10分間行われていた。また、始業時
刻前には制服に着替えることを義務づけられていて、着替えには少
なくとも5分は必要だったことが認められる。
Aさんらは朝礼時間が20分間行われていたと主張するが、これを裏
付ける証拠は存在せず、他の証言からすると10分間とするのが相当
である。
また、Aさんらは、更衣時間として10分間は必要であるとの旨主張
するが、これを裏付ける証拠はなく、社会通念上必要と認められる
更衣時間は5分間とするのが妥当である。
従って、朝礼時間の10分間及び更衣時間の5分間は、労働時間であ
ると言える。
■ この場合、休憩時間は労働時間に当たらない
「休憩時間」と言えるには、単に実作業に従事しないということで
は足りず、使用者の指揮命令下から離脱していると言える必要があ
る。
証言や尋問の結果、休憩時間には飲食店で外食したり、食事を購入
するために外出したり、あるいは仮眠をとる者もいるなど自由であ
ったことなどを照らし合わせると、労働契約上の役務提供が義務付
けられていなかったものと評価することができる。
Aさんらは休憩時間にも業務をしていると主張するが、提出された
証拠からは、休憩時間における役務の提供を一般的に義務づけてい
たと評価することはできない。
■ この場合、仮眠時間も労働時間に当たる
仮眠時間についても、労働者が実作業に従事していないというだけ
では、使用者の指揮命令下から離脱しているということはできず、
当該時間に労働者が労働から離れることが保障されている必要があ
る。
したがって、不活動仮眠時間であっても、労働からの解放が保障さ
れていない場合には、労基法上の労働時間にあたるというべきであ
る。
証拠によると、
・責任者のほとんどが、非常時には仮眠者にも対応をさせる必要が
あると考えている。
・不審者や泥酔者に対応する場合などは、複数の警備員で対応する
のが基本であるとされているが、現状仮眠中以外の者が常に複数待
機している体制ではない。
・仮眠室には本部から連絡がとれるよう、内線電話が設置されてい
る。
・現実に施錠の依頼や、不審者、泥酔者、救急車への対応を、仮眠
者が行っていた。
などといった事実が認められる。
これらを考え合わせれば、労働契約に基づく義務として、仮眠時間
中は、仮眠室における待機と警報や電話などに対し直ちに相当の対
応をすることを義務づけられていると評価することができる。
したがって、Aさんらは仮眠中について不活動仮眠時間も含めて会
社の指揮命令下に置かれており、仮眠時間中は労基法上の労働時間
に当たる。
■ 会社は未払い賃金を支払わなければならない
このため、更衣時間5分、朝礼時間10分、仮眠時間4時間について
は、労働時間と認められるから、会社はこれに対応する未払い賃金
を支払わなければならない。
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ビル代行(宿直勤務)事件
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毎日違うお店に食事に行っています。
そう思って回りを見回してみると、意外と今まで入ったことがない
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なお、このメールマガジンは、判例等をもとに著者が脚色して作成
しています。できる限り法知識が正確に伝わるよう努力しています
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