こんにちは、
産業医・労働衛生コンサルタントの朝長健太です。
産業医として化学工場、営業事務所、IT企業、電力会社、小売企業等で勤務し、厚生労働省において労働行政に携わり、臨床医として治療を行った複数の健康管理の視点で情報発信をしております。
さらに、文末のように令和元日(5月1日)に、「令和の働き方 部下がいる全ての人のための 働き方改革を
資産形成につなげる方法」を出版し、今まで高価であった
産業医が持つ情報を、お手頃な価格にすることができました。
http://hatarakikatakaikaku.com/
今回は、「【事例】メンタル疾患の
再発防止策」についてコラムを作成しました。
労働衛生の取組を行うことで、
従業員に培われる「技術」「経験」「人間関係」等の財産を、企業が安定して享受するためにご活用ください。
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【事例】メンタル疾患の
再発防止策
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今回は、事業所で経験した事例を提示させていただきます。
◎
再発防止策について
再発防止策とは、メンタル疾患を理由に休業している
従業員が
復職する際に、
復職後に再度休業に至る可能性を最小限とするために、休業中に産業保健スタッフ等の支援の元、
従業員が整理する対策になります。
メンタル疾患とその原因について整理し、産業保健スタッフ等と共有を行うことで、
従業員自身のセルフケア、上司や産業保健スタッフによるケアの内容を具体的に定めることができます。さらに、
再発した場合に、対策として何が不足していたかの確認を行うためのツールにもなります。
具体的には、以下の点を整理することになります。
①疾病の症状や予兆であったと考えられることについて
②疾病発生の原因について
③疾病発症前の対応について
④今後の対応について
⑤その他、主治医から注意するように言われていることなど
◎事例
「うつ病・不眠症」の診断で6ヶ月程度休業していた
従業員がおりました。その休業中に3ヶ月程度の
復職準備をする中で、
再発防止策のブラッシュアップの事例が認められたので提示させていただきます。
当初、この
従業員は休業に入る数年前から「不眠症」に対して治療を行っており、不調の訴えと
勤怠不良が続いていました。悪いときには、13時出社するような状況でしたが、管理職が疾病に遠慮して、適切な
労務管理がされていませんでした。そこで、
産業医が主治医に
勤怠不良の旨を情報提供し、その結果、療養目的で長期の休業を取得することになりました。
休業開始後3ヶ月は治療に専念し、その後、主治医の意見を元に
復職準備を怪死しました。
◎
再発防止策
最初の
再発防止策は、簡潔に書き方を説明して自由に書くように指導しました。その結果、箇条書きで記載されていましたが、内容は確認されることを意識した玉虫色の表現であり、
勤怠不良の観点や体調の改善に繋がる対策の記載はありませんでした。そこで、産業保健スタッフ以外は確認しないので自分の正直な気持ちを書くこと、勤怠が不良であった点を改めて共有し、4つのケア(※)の視点で対策を考えるように指導を行いました。
次の
再発防止策では、不調になった原因としての人間関係の悪さ、支援を得られていなかったこと、
配置転換を希望していることを記載し、正直な気持ちが記載されていました。しかし、対策は不調の原因から距離をとる視点のみで記載されていました。そこで、距離をとる視点は重要であるが、いつまでも距離をとっていては仕事にならない旨と、休業中で考える時間がある時期に、不調の原因を解決するための案を用意しておく必要がある旨を説明しました。
最後の
再発防止策では、不調の原因のうち、自らの裁量で解決できたと考えられることと、上司の支援がないと解決できないことが整理されており、自身で対応することとして距離をとる視点と解決するための視点で記載がされていました。さらに、上司に相談する際にも距離をとることを依頼するだけでなく、妥協点も示して自らの負担を調整する案が具体的に示されていました。
本事例では、
復職後に勤怠が大幅に改善し、
再発のおそれなく通常の勤務に戻ることができました。
◎考察
復職時の条件として
再発防止策を記載してもらうと、試験のレポートのように、一定の基準をクリアした内容のものを提出するという考えになりがちです。そのため、玉虫色の当たり障りのない表現で不調の原因や対策案が記載されてしまい、このままでは
再発防止のツールとなりません。
そこで、対策としては初回は自由に記載してもらい、その内容を元に、特に不調の原因に対して、5W1Hを駆使し具体的に見える化することが必要になります。
対策案については、記載の方向性を示していない場合は、努力することを宣誓しただけのものになることがあります。対応としては、4つのケア(※)について説明を行い、その視点で自分ができること、上司に相談するべきこと、産業保健スタッフや外部資源の活用するタイミングについて整理させると良いでしょう。
また、対策案については、不調の原因から距離をとるだけだと一時的に体調は改善しても、永い就業生活の中で
再発し続けないでいられることは考えにくいです。そこで、不調の原因から距離をとる視点と解決する視点で整理させることが重要です。
再発防止策は、医学的な判断を要することはないため、
衛生管理者等の医療職以外でも作成の支援は行えます。休業中の
従業員が
復職に向けて主観的かつ客観的に整理ができているかを確認する指標になるだけでなく、
再発防止の振り返りのツールとしても活用できるものですので、有効にご活用下さい。
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令和の働き方 部下がいる全ての人のための 働き方改革を
資産形成につなげる方法
http://miraipub.jp/books/%E3%80%8C%E4%BB%A4%E5%92%8C%E3%80%8D%E3%81%AE%E5%83%8D%E3%81%8D%E6%96%B9-%E9%83%A8%E4%B8%8B%E3%81%8C%E3%81%84%E3%82%8B%E5%85%A8%E3%81%A6%E3%81%AE%E4%BA%BA%E3%81%AE%E3%81%9F%E3%82%81%E3%81%AE-%E5%83%8D/
こんにちは、産業医・労働衛生コンサルタントの朝長健太です。
産業医として化学工場、営業事務所、IT企業、電力会社、小売企業等で勤務し、厚生労働省において労働行政に携わり、臨床医として治療を行った複数の健康管理の視点で情報発信をしております。
さらに、文末のように令和元日(5月1日)に、「令和の働き方 部下がいる全ての人のための 働き方改革を資産形成につなげる方法」を出版し、今まで高価であった産業医が持つ情報を、お手頃な価格にすることができました。
http://hatarakikatakaikaku.com/
今回は、「【事例】メンタル疾患の再発防止策」についてコラムを作成しました。
労働衛生の取組を行うことで、従業員に培われる「技術」「経験」「人間関係」等の財産を、企業が安定して享受するためにご活用ください。
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【事例】メンタル疾患の再発防止策
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今回は、事業所で経験した事例を提示させていただきます。
◎再発防止策について
再発防止策とは、メンタル疾患を理由に休業している従業員が復職する際に、復職後に再度休業に至る可能性を最小限とするために、休業中に産業保健スタッフ等の支援の元、従業員が整理する対策になります。
メンタル疾患とその原因について整理し、産業保健スタッフ等と共有を行うことで、従業員自身のセルフケア、上司や産業保健スタッフによるケアの内容を具体的に定めることができます。さらに、再発した場合に、対策として何が不足していたかの確認を行うためのツールにもなります。
具体的には、以下の点を整理することになります。
①疾病の症状や予兆であったと考えられることについて
②疾病発生の原因について
③疾病発症前の対応について
④今後の対応について
⑤その他、主治医から注意するように言われていることなど
◎事例
「うつ病・不眠症」の診断で6ヶ月程度休業していた従業員がおりました。その休業中に3ヶ月程度の復職準備をする中で、再発防止策のブラッシュアップの事例が認められたので提示させていただきます。
当初、この従業員は休業に入る数年前から「不眠症」に対して治療を行っており、不調の訴えと勤怠不良が続いていました。悪いときには、13時出社するような状況でしたが、管理職が疾病に遠慮して、適切な労務管理がされていませんでした。そこで、産業医が主治医に勤怠不良の旨を情報提供し、その結果、療養目的で長期の休業を取得することになりました。
休業開始後3ヶ月は治療に専念し、その後、主治医の意見を元に復職準備を怪死しました。
◎再発防止策
最初の再発防止策は、簡潔に書き方を説明して自由に書くように指導しました。その結果、箇条書きで記載されていましたが、内容は確認されることを意識した玉虫色の表現であり、勤怠不良の観点や体調の改善に繋がる対策の記載はありませんでした。そこで、産業保健スタッフ以外は確認しないので自分の正直な気持ちを書くこと、勤怠が不良であった点を改めて共有し、4つのケア(※)の視点で対策を考えるように指導を行いました。
次の再発防止策では、不調になった原因としての人間関係の悪さ、支援を得られていなかったこと、配置転換を希望していることを記載し、正直な気持ちが記載されていました。しかし、対策は不調の原因から距離をとる視点のみで記載されていました。そこで、距離をとる視点は重要であるが、いつまでも距離をとっていては仕事にならない旨と、休業中で考える時間がある時期に、不調の原因を解決するための案を用意しておく必要がある旨を説明しました。
最後の再発防止策では、不調の原因のうち、自らの裁量で解決できたと考えられることと、上司の支援がないと解決できないことが整理されており、自身で対応することとして距離をとる視点と解決するための視点で記載がされていました。さらに、上司に相談する際にも距離をとることを依頼するだけでなく、妥協点も示して自らの負担を調整する案が具体的に示されていました。
本事例では、復職後に勤怠が大幅に改善し、再発のおそれなく通常の勤務に戻ることができました。
◎考察
復職時の条件として再発防止策を記載してもらうと、試験のレポートのように、一定の基準をクリアした内容のものを提出するという考えになりがちです。そのため、玉虫色の当たり障りのない表現で不調の原因や対策案が記載されてしまい、このままでは再発防止のツールとなりません。
そこで、対策としては初回は自由に記載してもらい、その内容を元に、特に不調の原因に対して、5W1Hを駆使し具体的に見える化することが必要になります。
対策案については、記載の方向性を示していない場合は、努力することを宣誓しただけのものになることがあります。対応としては、4つのケア(※)について説明を行い、その視点で自分ができること、上司に相談するべきこと、産業保健スタッフや外部資源の活用するタイミングについて整理させると良いでしょう。
また、対策案については、不調の原因から距離をとるだけだと一時的に体調は改善しても、永い就業生活の中で再発し続けないでいられることは考えにくいです。そこで、不調の原因から距離をとる視点と解決する視点で整理させることが重要です。
再発防止策は、医学的な判断を要することはないため、衛生管理者等の医療職以外でも作成の支援は行えます。休業中の従業員が復職に向けて主観的かつ客観的に整理ができているかを確認する指標になるだけでなく、再発防止の振り返りのツールとしても活用できるものですので、有効にご活用下さい。
========================
令和の働き方 部下がいる全ての人のための 働き方改革を資産形成につなげる方法
http://miraipub.jp/books/%E3%80%8C%E4%BB%A4%E5%92%8C%E3%80%8D%E3%81%AE%E5%83%8D%E3%81%8D%E6%96%B9-%E9%83%A8%E4%B8%8B%E3%81%8C%E3%81%84%E3%82%8B%E5%85%A8%E3%81%A6%E3%81%AE%E4%BA%BA%E3%81%AE%E3%81%9F%E3%82%81%E3%81%AE-%E5%83%8D/