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労働基準法等の特殊性

 こんにちは、産業医・労働衛生コンサルタントの朝長健太です。
 産業医として化学工場、営業事務所、IT企業、電力会社、小売企業等で勤務し、厚生労働省において労働行政に携わり、臨床医として治療を行った複数の健康管理の視点で情報発信をしております。
 さらに、文末のように令和元日(5月1日)に、「令和の働き方 部下がいる全ての人のための 働き方改革を資産形成につなげる方法」を出版し、今まで高価であった産業医が持つ情報を、お手頃な価格にすることができました。
http://hatarakikatakaikaku.com/
 今回は、「労働基準法等の特殊性」についてコラムを作成しました。
 労働衛生の取組を行うことで、従業員に培われる「技術」「経験」「人間関係」等の財産を、企業が安定して享受するためにご活用ください。
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労働基準法等の特殊性
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 労働基準法(以下「労基法」という。)は、憲法第27条第2項の「賃金就業時間、休息その他の勤労条件に関する基準は、法律でこれを定める。」と規定されていることを受け、憲法25条第1項の「すべての国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。」という生存権保障の趣旨を踏まえて、昭和22年に制定されたものです。憲法が示す基準を1つの法律で定めたためか、『民事上の効力』、『行政上の効力』、『司法上の効力』が混在する特殊な法律になっています。従って、法違反だけの表現であれば、どの水準での法違反であるかが不明となり、様々な誤解を生む原因になっています。
 弊社の専門であります労働安全衛生法は、労基法第42条に「労働者の安全及び衛生に関しては、労働安全衛生法の定めるところによる。」と定められており、法令のベースは共有しています。今回は、労基法の特殊性である3つの効力について整理します。

◎民事上の効力
 民法第91条に「法律行為の当事者が法令中の公の秩序に関しない規定と異なる意思を表示したときは、その意思に従う。」とあり、個人は、自己の意思により自由にその法律関係を形成できるという私的自治の原則が示され、当事者には契約自由の原則があります。
 従って、労働契約も当事者間で自由に定めれば良いことになりますが、労働者は事業に使用される者であることから、交渉の立場が事業者より低いと考えられています(労働組合法第1条等参照)。そこで、労働者が文化的で健康的な生活を送るために、労基法第13条により、最低基準に満たない契約を最低基準に置き換えること(強行法規性)が定められ、契約自由の原則を修正することができます。
 この民事上の効力により、民事裁判等で、契約の修正と修正された契約に基づく対応を行う必要が出てきます。人によっては遡及された様に感じることもありますが、労働契約を結んだ時に、最低基準を満たしていない契約は、既に無効となっています。 

◎行政上の効力
 憲法第25条第1項で、国民の生存権保障が示されていますが、憲法第25条第2項では、「国は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない。」とされ、質の向上に努めること(行政監督による履行確保)が示されています。
 従って、労基法は、労働基準関係法令の権限に基づき、事業場に立ち入り、遵法状況を調査し、使用者に行政指導を行うという監督機関について労基法第97条等で定めています。
 この行政上の効力を元に、様々な指導がされ、例えば、働き方改革関連法が通過する以前において、時間外労働の限度を1年間360時間とする法令以上の基準(働き方改革関連法通過により、原則の法令上の上限となった。)は、行政指導として示されていました。
 なお、労働安全衛生法にも行政上の効力があります。

◎司法上の効力
 労基法の実行性をさらに確保するために、民事上と行政上の効力に加えて、事業者及び労働者が労基法の規制に違反した場合、原則として罰則が適用されることとなっています。
 また、労基法第102条に、「労働基準監督官(以下「監督官」という。)は、この法律違反の罪について、刑事訴訟法に規定する司法警察官の職務を行う。」と定められており、監督官に捜査や逮捕を行う権限を与えています。
 なお、監督官が逮捕し、送検した後は、通常の刑事事件のように検察により起訴又は不起訴が判断されることになります。平成28年労働基準監督年報によると、労働基準監督官が送検件数は890件(内訳:労基法違反380件、労働安全衛生法違反497件、最低賃金法違反13件)、検察が起訴した件数は364件(起訴率42.6%)、裁判結果が出た件数364件(懲役2件、罰金(正式)9件、罰金(略式)353件)となっています。起訴率は平成24年から上昇を続けています。
 労働安全衛生法にも司法上の効果があります。

◎労基法違反時
 労基法を違反した場合は、時系列上は以下の様な労基法の効力があります。
① 違法な契約時、自動的に契約の内容が法令の最低基準に修正される。
② 行政に違法を認められると、行政指導を受ける。
③ 行政に違法を認められ、送検が必要と判断された場合は、検察に送検される。
④ 送検後、起訴が必要と判断された場合は、起訴及び裁判等を受ける。
 平成28年には、2人の事業者が懲役の判決を受け、さらに、裁判結果で無罪は0件であったことから、事業継続のためにも送検されることは必ず避ける必要があります。専門家の指導の元、適切な法令遵守をしてください。

◎企業の方針
 労基法や労働安全衛生法を確認・遵守する際は、3つの効力に沿って整理することで、取り組みについての優先順位が見えてきます。行政等は、法令遵守の徹底を原則として、指導することから、取り組みについての優先順位は、経営主体である企業内で整理しないと、実効性が下がってしまいます。
 さらに、労働安全衛生法は、労基法の考えに加えて、「努力義務」の取扱いという課題もあります。
 企業価値の向上のために、専門家を利用し、適切な取り組みを行ってください。

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令和の働き方 部下がいる全ての人のための 働き方改革を資産形成につなげる方法
http://miraipub.jp/books/%E3%80%8C%E4%BB%A4%E5%92%8C%E3%80%8D%E3%81%AE%E5%83%8D%E3%81%8D%E6%96%B9-%E9%83%A8%E4%B8%8B%E3%81%8C%E3%81%84%E3%82%8B%E5%85%A8%E3%81%A6%E3%81%AE%E4%BA%BA%E3%81%AE%E3%81%9F%E3%82%81%E3%81%AE-%E5%83%8D/

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