私が現役サラリーマン時代、「毎日出社はして来るけれど、会社では特に熱心に仕事をするわけでもなく、
机の上に白紙のメモ用紙を置いているだけで、文章を書くでもなくダラダラと時間を過ごし、終業時間になる
とサッと帰ってしまう」という先輩社員がいました。
所謂「窓際族」です。
窓際族という言葉が生まれたのは、高度経済成長期が終わりを告げた1970年代後半だと言われています。
年平均10%の経済成長を続けていた高度経済成長期に日本企業を支えていたのは所謂「猛烈社員」でした。
当時は「24時間戦えますか?」という栄養ドリンクや「OH~モーレツ!!」で有名な高性能ガソリンなど
のテレビコマーシャルが流れ、第一線で働くサラリーマンは「企業戦士」と言われ社会的にも一目置かれて
いました。これらのエリートサラリーマンは大きな取引を成功させたり、企業先兵として市場開放を始めた
ばかりの大国に乗り込んで取引開拓をしたりなどなど、その活躍は、企業の成長に大いに貢献したと称賛
されました。
当時、単身赴任もものともせずに意欲的に働くこのようなサラリーマンが多数存在したからこそ、日本の
高度経済成長があったと言えるのかもしれません。しかし、やる気に満ち、前進し続けるこれらの人達がいる
一方で、このような流れに取り残されて出世コースから外れてしまった中高年も少なからず存在していました。
中には会社には来るけれど仕事への意欲は失っていて、何をするでもなく、ただひたすら時間を潰している
ような人もいました。そんな人々が「窓際族」と呼ばれるようになったのです。
窓際族の「窓際」は、「出世コースから外れて、窓際に追いやられた」という意味から来ているそうです。
当時はこのような窓際族の定義を知って、“もしかして俺も窓際族?”とゾッとしたり、“いやいや自分は違う”
と慌ててその気持ちを否定した人もいたようです。
然し、中には「窓際族でなにが悪い」と開き直った人も現れたのです。
当時は年功序列の終身
雇用が守られていた時代でしたから、仕事をしない年長者に対しては年下の同僚や上司は
(気づいていても)敢えて注意はせず、会社もその人を
解雇することはありませんでした。
そういう生産性の低い人を抱え込んでも高度成長期の企業には余力があったからでしょう。
然し、その後の企業環境は、バブル崩壊やリーマンショックなどを経て激変してしまいました。企業経営者も
自社を守るため
経費削減優先の縮小均衡に走ったのです。
国際競争の激烈化に伴って成長力を失ってきた現在の日本企業には「窓際族」を置いておくような余裕は
もうありません。生き残るためには生産性を一層高めて行かなければならなくなったからです。
今では、生産性が低く今後も改善の見込みがないと判断されてしまった人は、単純作業を担当している部署や
リストラを促す施設へ異動されることもあるようです。「
キャリア開発室」や「能力開発センター」など漠然と
した名称の部屋に集められて、
自主退職を促されるのです。
そこでは、同じ部署の同僚と会話をすることも外部と電話することも許されず、ただ黙々と今後の自分のキャリアに
ついて考え直すことが求められるそうです。こんな酷い時間を過ごす日々が続けば、少なからずストレスを抱えて、
自ら会社を去る決断をする人も出てくるでしょう。
その後このような「本人の意図に反した
退職勧奨行為」は、社会的にも問題となって、今では大っぴらには
行われなくなっているようです。でも今も業績不振企業のリストラは続いています。そこではもっと目立たない
ような形で密かに同じようなことは、行われているのかもしれません。
随分と辛い話です……。
前回の「受動喫煙防止策」明示義務についての話は、如何でしたでしょうか。
今回は、「交通事故発生時の企業責任」についての話をします。
──────────◆ 目 次 ◆──────────────
○「交通事故発生時の企業責任」
───────────────────────────────
交通事故の発生が最も多いのは12月、次いで7月です。いずれも長期休暇の
タイミングで交通量が増加することが一因と考えられていますが、特に
7月は、「天候」も事故の大きな要因となっているようです。この季節は、
梅雨や台風など、夏特有の天候の急変に特に注意が必要です。
たとえば、梅雨時は、視界が悪化したり、雨音で外部音が遮断されたりする
ことなどによって注意力が散漫になりがちですし、スリップ等の危険もあります。
さらに、台風等で急に激しい雨風に見舞われる場合には、乾燥していた道路に
溜まっていた泥や埃が水分に混ざり、通常の雨の場合よりもさらに滑りやすくなる
ことが指摘されています。
このような悪天候下では交通事故も起こりやすいのですが、
従業員が起こした
自動車事故については、
事業者が責任を問われることもあり得ますので、注意が
必要です。
主なケースには、下記があります。
(1)社有車で業務中に起こした事故では企業や管理者の側が
運行供用者となり同時に
使用者責任も負うことは広く知られていますが、無断で社有車を私用に使っていた
場合の事故であっても、
従業員が社有車を私用するまでの経緯やそれが業務と
どう関連するのか、日常の使用状況等を総合的にみて判断されます。
(2)マイカーでの事故も、企業が業務で
マイカーを使うことを認めていた場合、原則的には社有車を使用していたのと
変わらないため、会社の
運行供用者責任・
使用者責任が問われます。
マイカー通勤時
の事故についても、企業が積極的に
マイカー通勤を推奨しているような場合には、
企業の責任が発生する可能性が高くなります。
従業員の交通事故において、企業側が責任を免れることはとても難しいのが実態です。
これを踏まえれば、交通事故の危険性が高くなるシーズンを前に、改めて安全運転に
ついて徹底することが求められでしょう。
業務や
通勤で自動車を使用する
従業員に対しは、再度の教育を行うことも有効かもしれません。
事務所のホームページを更新しております。
ご興味のある方は、
http://www.node-office.com/index/index.html
または、
http://www.humansource.co.jp/ へどうぞ
当事務所所長 野手 茂 著の「サラリーマン講座
退職金・年金編」が 文芸社
より、全国書店、ネット書店で販売中です。
私が現役サラリーマン時代、「毎日出社はして来るけれど、会社では特に熱心に仕事をするわけでもなく、
机の上に白紙のメモ用紙を置いているだけで、文章を書くでもなくダラダラと時間を過ごし、終業時間になる
とサッと帰ってしまう」という先輩社員がいました。
所謂「窓際族」です。
窓際族という言葉が生まれたのは、高度経済成長期が終わりを告げた1970年代後半だと言われています。
年平均10%の経済成長を続けていた高度経済成長期に日本企業を支えていたのは所謂「猛烈社員」でした。
当時は「24時間戦えますか?」という栄養ドリンクや「OH~モーレツ!!」で有名な高性能ガソリンなど
のテレビコマーシャルが流れ、第一線で働くサラリーマンは「企業戦士」と言われ社会的にも一目置かれて
いました。これらのエリートサラリーマンは大きな取引を成功させたり、企業先兵として市場開放を始めた
ばかりの大国に乗り込んで取引開拓をしたりなどなど、その活躍は、企業の成長に大いに貢献したと称賛
されました。
当時、単身赴任もものともせずに意欲的に働くこのようなサラリーマンが多数存在したからこそ、日本の
高度経済成長があったと言えるのかもしれません。しかし、やる気に満ち、前進し続けるこれらの人達がいる
一方で、このような流れに取り残されて出世コースから外れてしまった中高年も少なからず存在していました。
中には会社には来るけれど仕事への意欲は失っていて、何をするでもなく、ただひたすら時間を潰している
ような人もいました。そんな人々が「窓際族」と呼ばれるようになったのです。
窓際族の「窓際」は、「出世コースから外れて、窓際に追いやられた」という意味から来ているそうです。
当時はこのような窓際族の定義を知って、“もしかして俺も窓際族?”とゾッとしたり、“いやいや自分は違う”
と慌ててその気持ちを否定した人もいたようです。
然し、中には「窓際族でなにが悪い」と開き直った人も現れたのです。
当時は年功序列の終身雇用が守られていた時代でしたから、仕事をしない年長者に対しては年下の同僚や上司は
(気づいていても)敢えて注意はせず、会社もその人を解雇することはありませんでした。
そういう生産性の低い人を抱え込んでも高度成長期の企業には余力があったからでしょう。
然し、その後の企業環境は、バブル崩壊やリーマンショックなどを経て激変してしまいました。企業経営者も
自社を守るため経費削減優先の縮小均衡に走ったのです。
国際競争の激烈化に伴って成長力を失ってきた現在の日本企業には「窓際族」を置いておくような余裕は
もうありません。生き残るためには生産性を一層高めて行かなければならなくなったからです。
今では、生産性が低く今後も改善の見込みがないと判断されてしまった人は、単純作業を担当している部署や
リストラを促す施設へ異動されることもあるようです。「キャリア開発室」や「能力開発センター」など漠然と
した名称の部屋に集められて、自主退職を促されるのです。
そこでは、同じ部署の同僚と会話をすることも外部と電話することも許されず、ただ黙々と今後の自分のキャリアに
ついて考え直すことが求められるそうです。こんな酷い時間を過ごす日々が続けば、少なからずストレスを抱えて、
自ら会社を去る決断をする人も出てくるでしょう。
その後このような「本人の意図に反した退職勧奨行為」は、社会的にも問題となって、今では大っぴらには
行われなくなっているようです。でも今も業績不振企業のリストラは続いています。そこではもっと目立たない
ような形で密かに同じようなことは、行われているのかもしれません。
随分と辛い話です……。
前回の「受動喫煙防止策」明示義務についての話は、如何でしたでしょうか。
今回は、「交通事故発生時の企業責任」についての話をします。
──────────◆ 目 次 ◆──────────────
○「交通事故発生時の企業責任」
───────────────────────────────
交通事故の発生が最も多いのは12月、次いで7月です。いずれも長期休暇の
タイミングで交通量が増加することが一因と考えられていますが、特に
7月は、「天候」も事故の大きな要因となっているようです。この季節は、
梅雨や台風など、夏特有の天候の急変に特に注意が必要です。
たとえば、梅雨時は、視界が悪化したり、雨音で外部音が遮断されたりする
ことなどによって注意力が散漫になりがちですし、スリップ等の危険もあります。
さらに、台風等で急に激しい雨風に見舞われる場合には、乾燥していた道路に
溜まっていた泥や埃が水分に混ざり、通常の雨の場合よりもさらに滑りやすくなる
ことが指摘されています。
このような悪天候下では交通事故も起こりやすいのですが、従業員が起こした
自動車事故については、事業者が責任を問われることもあり得ますので、注意が
必要です。
主なケースには、下記があります。
(1)社有車で業務中に起こした事故では企業や管理者の側が運行供用者となり同時に
使用者責任も負うことは広く知られていますが、無断で社有車を私用に使っていた
場合の事故であっても、従業員が社有車を私用するまでの経緯やそれが業務と
どう関連するのか、日常の使用状況等を総合的にみて判断されます。
(2)マイカーでの事故も、企業が業務で
マイカーを使うことを認めていた場合、原則的には社有車を使用していたのと
変わらないため、会社の運行供用者責任・使用者責任が問われます。マイカー通勤時
の事故についても、企業が積極的にマイカー通勤を推奨しているような場合には、
企業の責任が発生する可能性が高くなります。
従業員の交通事故において、企業側が責任を免れることはとても難しいのが実態です。
これを踏まえれば、交通事故の危険性が高くなるシーズンを前に、改めて安全運転に
ついて徹底することが求められでしょう。
業務や通勤で自動車を使用する従業員に対しは、再度の教育を行うことも有効かもしれません。
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