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転勤をめぐる最近の動き

うだるように暑いある日の土曜日、いつもように誰もいないオフィスに出て来て、資料整理やら
原稿書き、情報収集などに精を出し、気がついたらもう3時過ぎ。“家に帰っても話し相手もいないし、
やることもないしなぁ”と思いながらも家路につくことにしました。
 いつもの地下鉄の、いつもの優先席に乗ろうと、いつものホームで待っていると時間通りに電車が到
着したのでやれやれと乗り込むと、私が座った席の向い側に3人ずれの賑やかな年寄り軍団が座っていました。
私と同年配位の元サラリーマン風の男の人たちで、久しぶりに会って昼の宴会を終えたあとのようでした。
プーンと酒の匂いを振り巻きながら楽しそうに大きい声で盛り上がっていました。

定年退職したらしく仕事の話はもう出ません。話題はもっぱら、「未だ俺はもてるんだ」という
妄想(?)話でした。
ちょっと怖そうな目つきの人は、日頃よく行くコンビニの若いオネーさんの「にこやかな笑顔と優しい
言葉づかい!」をして貰っているとの自慢話です。
“あのコンビニは、普段は男女を問わず素っ気ない店員ばかりなのに、あの女性定員だけは、俺に優しく
話しかけてくるんだ。最近は天気の話や身体の具合まで聞かれる。きっとオレに気があるんじゃねえか……”
という誰が聞いても“そうじゃない”と突っ込みたくなるような話(冗談?)を嬉しそうにしていました。
私は前に座っていたため、嫌でもその話を聞かされてしまいましたが、頭の中では、“それは、その女性店員が
単に接客マニュアル通りに応答しているか、または、たまたま、その女性のサービス精神が旺盛だっただけに
違いない。
あぁそうだ!コンビニの戦略かもしれないなぁ。一人で店に来た寂しそうなじいさんに愛想よくしたら、
その人は必ずまたそこに行くだろうからね……。
それに日頃から奥さんに邪険にされていると、一寸優しくしてくれる女性が現れると勘違いしやすいことも
あるかなぁ”とあれこれ思いを巡らせていました。

  元サラリーマン風の3人連れのじいさんたちは、土曜日で乗客が少ないこともあってか周りの目をあまり
気にしていませんでした。リュックの中から缶ビールを取り出してまた飲みだし、完全に居酒屋と勘違いして
いるようでした。
やおら隣の頭の光ったじいさんが話し出しました。“俺も近所によく行く店があるんだけどね。その店の
綺麗なママがよく話をしてくれるんだ。俺が行くと「今日は早いわね」と迎えてくれて、「俺が帰るよ」と
言うと「エーもう帰るの?また来てね!」と見送ってくれるんだ………”との自慢話です。
流石に他の連れも、この話には「商売上の挨拶だよ」というような顔をしていましたが、勘違いもここに
極まったというところでしょうか。

 会社を定年退職して世間でも一目置かれていた会社の名前と肩書が無くなり、行くところもやることも
無くなって、毎日家で過ごすため、カミさんからも「粗大ごみ」みたいに邪魔者扱いをされ出したら、
人間誰しもが昔の栄光時代が懐かしくなるものです。そんなときに、ちょっと好みのタイプの女性から優しく
されたり、言葉をかけられたりしたら、誰しもが簡単に妄想の罠に嵌ってしまうでしょう。
なんせ、心が「勘違い」しやすくなっているのですから。

  定年退職しても「心の定年」はありません。心のどこかには「俺の能力は未だ現役並みだ、捨てたもん
じゃないのだ」との思いは強く残り、現役時代のプライドも決してなくなりはしません。
心とプライドはいつまで経っても現役です。
そんな「心の中」の思いと現実との差が、妄想へと駆り立てるのでしょうか。

思えば、人の人生も「勘違い」の連続かもしれません。
学校の選択から始まって会社の選択、配偶者の選択などなど、勘違いのしっぱなしで今があるのかもしれません。
そして誰しもが「あのとき勘違いしないで、別の選択をしていたら………」と
一度や二度、思ったことがあるかもしれません………。

前回の「賃金等請求権の消滅時効」についての話は、如何でしたでしょうか。
今回は、「転勤をめぐる最近の動き」についての話をします。

──────────◆ 目 次 ◆──────────────
○「転勤をめぐる最近の動き
───────────────────────────────
AIG損害保険が、転勤の多い金融業界では珍しく、転勤を原則廃止したと報じられました。
一般に「転勤のある社員」と「地域限定社員」に分け、給与に1~2割の差をつける企業が
多いところ、同社は「限定社員が格下の印象となり、優秀な人の出世の障壁になる」として、
廃止に踏み切ったとのことです(日本経済新聞2019年7月17日付)。
一方、今年6月にはカネカが育休対応問題で炎上しましたが、そのきっかけは、男性社員が
育休復帰後2日で転勤の辞令が下され、これを拒否したことでした。同社は「当社対応は
適切であった」というコメントを公表していますが、世間からは適法性如何ではなく、
一連の企業姿勢が疑問視されることとなりました。
  転勤拒否の法律問題を考える上で非常によく言及されるのが、東亜ペイント事件
(最高裁昭和61年7月判決)という有名な裁判例です。企業の転勤命令権を広く認めた判例として、
以後の多くの人事労務実務や、労働紛争に影響を与えています。
然し、その事案発生は1973年、判決が1986年の事なので、最近では、ワークライフバランス等の
観点から、転勤の必要性は厳しく吟味されるべきという声も高まってきています。
自社の転勤のあり方を吟味する際の手引きとして、厚生労働省が下記資料を公表しています。
AIG社のように全面廃止するだけでなく、雇用管理の類型ごとの運用メニューとするなど、
いくつかの例が示されています。転勤問題についての社会の動きも変化しています。
転居を伴う転勤を命じる際は、従来以上にその必要性や代替可能性等を慎重に検討する必要が
出て来ているようです。
【厚生労働省雇用均等・児童家庭局「転勤に関する雇用管理のヒントと手法」(平成29年3月30日)】

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