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【Q&A】新型コロナウイルスから考えるリスクアセスメントと予

 こんにちは、産業医・労働衛生コンサルタントの朝長健太です。
 産業医として化学工場、営業事務所、IT企業、電力会社、小売企業等で勤務又は請負い、厚生労働省において労働行政に携わり、臨床医として治療を行った複数の健康管理の視点で情報発信をしております。
 さらに、文末のように令和元日(5月1日)に、「令和の働き方 部下がいる全ての人のための 働き方改革を資産形成につなげる方法」を出版し、今まで高価であった産業医が持つ情報を、お手頃な価格にすることができました。
http://hatarakikatakaikaku.com/
 今回は、「新型コロナウイルスから考えるリスクアセスメントと予防」に基づいたQ&Aを共有させていただきます。
 今回は、不本意ながら健康リスクは企業だけでなく、市場経済の低下を引き起こすことが、見える化されてしまいました。多くの企業がリスク発生後の対応に追われています。こういったことが貴社で起きないように、この資料が一助になることを祈念します。
 労働衛生の取組を行うことで、従業員に培われる「技術」「経験」「人間関係」等の財産を、企業が安定して享受するためにご活用ください。
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【Q&A】新型コロナウイルスから考えるリスクアセスメントと予防
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 「新型コロナウイルスから考えるリスクアセスメントと予防」を投稿いたしましたが、大変なご反響とご意見をいただきました。
https://www.soumunomori.com/column/article/atc-174501/
 頂いたご意見を元に、以下の様にQ&Aを作成しました。ご参考いただければと思います。
 健康リスク顕在化後の溝さらいに追われることなく、前向きな対応に努めてください。

Q:新型コロナウイルスに関して企業の健康リスク対応は分かるが、全ての企業に適用できる普遍的かつ具体的な対策が欲しい。
A:多くの企業に適応できる参考資料としては、以下URLの「事業者・職場における新型インフルエンザ対策ガイドライン」があります。事業継続計画策定の留意点等が示されており、大変有用なものとなっています。
 ただし、具体的な対策が、全企業に普遍的に適応できるということはありません。企業は、商材、営業方法、人材調達方法等、違うからこそ他企業との差別化の中で存続できるわけです。例えば、営業がごくわずかで開発を中心に行っている企業であれば、営業先からウイルスのばく露を受けるリスクはそもそも少なく、もし、営業を一時的に停止し顧客との接触を断ったとしても、事業の持続的な存続に影響はありません。しかし、接客業等の営業活動が中心の企業であれば、顧客との接触が絶たれるということは、事業活動の停止を意味し、その事態が続く場合は倒産してしまいます。
 従って、労働安全衛生法では第三章に安全衛生管理体制を構築することを定め、労使及び専門家間で協議して、事業所ごとの事情に合わせて、健康管理対策をとるべきことが定められています。

事業者・職場における新型インフルエンザ対策ガイドライン
https://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou04/pdf/09-11.pdf
 
Q:リスクアセスメントをもう少し簡単に説明して欲しい。
A:リスクアセスメントの教科書的説明では、事業場にある危険性や有害性の特定、リスクの見積り、優先度の設定、リスク低減措置の決定の一連の手順をいいますが、この表現の場合、経営者や現場担当者から「必要なのは分かるが、実務での必要性が分かりにくい」といわれることがあります。
 そこで、健康リスクで困ったという方に対して、リスクアセスメントの実務上の必要性については、以下の3点で説明するようにしています。
①「健康リスクの何を困っているのですか?従業員が病気になって人手不足になることですか?それとも、売り上げが落ちることですか?その、「困っていること」がハザード。つまり、危険の重大性になります。」
②「その困っていることについては、対策が行われていますか?行われていても現場担当者の不注意で発生するおそれがありますか?その、「発生するおそれ」が可能性になります。」
③「リスクアセスメントは、「危険の重大性」と「発生するおそれを」2軸で整理し、両方とも高いリスクから優先して改善する必要があります。具体的には、予防対策や法令順守で発生するおそれを減らし、危険の重大性については発生しても重大性が上がらないように対策をとることになります。」
 新型コロナウイルスについて、あらゆるハザードに対して、発生するか否かの二元論で議論をした場合、議論が整理されずに、対策するべきことばかりが増えてきてしまいます。厳重な対策はリスクを減らしますが、その対策コストが売上を圧迫していることも、現時点の報道ベースで、見える化されていることはご理解いただけると思います。
 貴社では、安全かつ売り上げを伸ばすために、リスクアセスメントを実施し、必要十分な対策を行ってください。

Q:労働安全衛生法第13条に「事業者は、(中略)医師のうちから産業医を選任し、その者に労働者の健康管理その他の厚生労働省令で定める事項を行わせなければならない。」とあるのは承知したが、産業医が仕事をしてくれない場合どうしたらよいか。
A:産業医は、働き方改革関連法に伴う改正で、「産業医は、労働者の健康管理等を行うのに必要な医学に関する知識に基づいて、誠実にその職務を行わなければならない。」と誠実義務が定められています。
 まずは、企業から産業医に行ってもらいたい業務が契約書に基づくものであることを確認し、具体的内容を提示及び協議する必要があります。実務上は、産業医は医師ですので、医師の基礎的な素養として、主訴・客観的データ・診断・治療及び対応(いわゆるSOAP)の整理に慣れています。企業としてはしっかりと主訴を示し、産業医の求めに応じて客観的データを示すようにしましょう。
 企業として主訴を訴え、客観的データ等を示し、協議の場を繰り返し用意したにも関わらず産業医が仕事をしない場合は、法令違反に基づく対応(例:違反に基づく契約解除)を行うことになります。
 なお、法令違反に基づく対応は、大変重要です。なぜなら、労働安全衛生法第109条に第20条から第25条(特に、第24条「事業者は、労働者の作業行動から生ずる労働災害を防止するため必要な措置を講じなければならない。」は、実務上範囲が広く注意が必要です。)までの規定に違反した者は罰則が定められており、産業医の法令違反状態を経営者が放置した場合は、両罰規定等により民事裁判等で責められるリスクがあるからです。
 さらに、厚生労働省の医道審議会が、「医師及び歯科医師に対する行政処分の考え方について」において、「医師、歯科医師が、その業務を行うに当たって当然に負うべき義務を果たしていないことに起因する行為については、国民の医療に対する信用を失墜するものであり、厳正な対処が求められる。」と示しており、医師である産業医の誠実義務不履行は、非常に重大であるとご理解いただけると思います。
企業としては、産業医費用を負担した上に、健康リスクも追うことにならないよう、産業医に誠実に業務を行わせるように、適切な対応を取る必要があります。

 今回の健康リスクの顕在化は、弊社の活動が社会に十分に理解されていなかったためと反省しております。この情報発信により、経営者が少しでも健康リスクの負担から軽減されることを祈念します。

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