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新型コロナウィルスに関連した助成金の基本的な考え方

令和2年3月15日 第198号
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人事のブレーン社会保険労務士レポート
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新型コロナウィルスに関連した助成金申請の基本的な考え方

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新型コロナウィルスに関連した助成金申請の基本的な考え方
1.はじめに
 新型コロナウィルスの拡大により様々な影響が出ております。飲食店等では
宴会のキャンセルが続き休業等を実施しているところもあります。

 また小中学校の一斉休業により子供の面倒をみるために会社に出社できない
方もいらっしゃいます。
 この場合国からの支援が得られる場合がありますが、どの様な考え方をすれ
ば会社が一番助かるのかを今回はお話ししたいと思います。

2.雇用調整助成金を請求する際の考え方
 労働基準法第26条で「使用者責めに帰すべき事由により休業する場合に
平均賃金の60%の休業手当を払わなければならない」とされております。

 新型コロナウィルスの感染拡大により外国人の顧客が減った。イベント等の
自粛により売り上げが減少した。この様なケースは「使用者の責めに帰すべき」
原因であり、労働者に対して休業手当を支払う必要があります。

 しかし売り上げが減少している局面で60%の賃金を支払うことは非常に厳
しいことであり倒産に繋がることとなります。
 ですから国は雇用保険料を原資として「雇用調整助成金」を用意し、休業手
当の額の3分の2(大企業は2分の1)を補助する制度を設けています。
(上限8,330円)

 しかしこの制度の問題点は労働者休業手当を支払ってから政府より振り込
まれるという事です。
 ですから資金繰りがその間悪化します。この点については経済産業省や都道
府県の資金繰りに関する支援と併せて行う必要があります。
 また上限額が日額8,330円ですから日額13,883円を超える労働者
については3分の2(大企業は2分の1)未満となってしまいます。概ね賃金
額が30万円を超える労働者については助成金額が3分の1を満たさないとい
う事になります。
 労働基準法では休業手当を支払う必要があります。しかし雇用を維持して倒
産を防ぐ為にはどの様に考えるべきなのでしょうか。
 資金繰りが厳しい局面ですから、労働者賃金を一時的に引き下げる交渉も
必要になってきます。
 よく賃下げの上限を10%という言葉を耳にしますがこれは正確ではありま
せん。
ペナルティーとして賃金を引き下げる場合には一つの制裁につき平均賃金の一
日分の半額、複数回あったとしても一賃金支払い期の賃金総額の10%という
ルールです。
 資金繰りが厳しい局面で賃下げをする場合はペナルティーではありませんの
で、このルールは適用されません。
 この点を混同されている方が多いので整理が必要です。
私は賃下げを推奨しているわけではありませんが、雇用を守る為にはその決断
も必要になってくる場合があります。
 
3.新型コロナウィルス感染症による小学校休業等対応助成金についての考え方
 小中学校の臨時休業により子供が預けられず仕事が出来ないケースが発生し、
その労働者に対する所得補償としてこの助成金が新設されました。
 子供を面倒見る人がいないから仕事を休むということは「使用者の責めに帰
すべき事由」ではありません。
 仕事ができるプライベートの環境をつくることは労働者の責務になります。
ですからこの理由では労働基準法第26条による休業手当の対象となりません。
 「子供が預けられないから仕事が出来ません」ということは労働基準法によ
る救済を受けることが出来ない訳です。
 ですから総理が所得を補償するという方針を出したのです。
しかしこの助成金は2つの欠点があります。
 まず第一は「労働基準法第39条による年次有給休暇以外の賃金が支払われ
る休暇を与えなさい。その場合に限り助成金を出しますよ」という内容です。
 第二は会社に支給されることです。これでは資金繰りに困っている企業は使
えません。
労働者に100%の賃金を支払ってから助成金が支払われるわけですから資金
的に余裕のある企業しか使えないのです。なぜなら雇用調整助成金とは違いそ
もそも子供が預けられない労働者に対して企業は賃金を支払う必要がないわけです。

 この助成金を使わない方が資金繰りは助かるわけです。
賃金が支払われないことを企業が証明をして、それを労働者が個別に申請をす
る方法であればより広く労働者を救済できたのかもしれませんが、政府は制度
設計を誤ってしまいました。
 人手不足で人材を確保したいという事であればこの様な助成金も有効になっ
てくるかもしれません。
 しかし資金繰りに困っている企業ではこれを使うことが出来ないのです。

4.まとめ
 新型コロナウィルスの終息が読めない中、どこまで自粛が続くのか。非常に
不安な毎日が続いておりますが、助成金のメリットデメリットをしっかり理解
していただき、企業の継続、雇用の確保という観点から判断していただきたい
と思います。

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