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副業・兼業の労働時間を通算して残業代を払える?


2019年7月25日号 (no. 1175)
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http://www.soumunomori.com/profile/uid-20903/





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---3分労働ぷちコラム---
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本日のテーマ【副業・兼業の労働時間を通算して残業代を払える?】
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■掛け持ちで働く人の残業代はどうなるか。
 

副業・兼業 労働者の自己申告が前提 厳密な通算は困難 厚労省検討会
https://www.rodo.co.jp/news/76155/

( - 引用開始 - )
厚生労働省は、副業・兼業を行う労働者に対する労働時間管理のあり方について検討会報告書(案)をまとめた。複数の事業場労働時間を厳密に管理することは困難とし、基本的には労働者の自己申告を前提とせざるを得ないとしている。割増賃金は、自己申告に基づき労働時間を通算して法定労働時間を超えた際に支払うか、または現行の解釈を変更して各事業主の下での法定外労働時間に対してのみに支払い義務を限定するか、2つの選択肢があるとした。自己申告に「証明書」を求めるなど、どの程度の客観性を担保するかも今後の課題である。
( - 引用終了 - )
 

上記の検討会での内容は、複数の会社で働いている人の労働時間を通算して割増賃金を支払うことは可能かどうかというものです。

1つの事業所で働くだけならば、そこで労働時間を集計し、給与も計算できます。しかし、2つ以上の事業所で同時に働いている人の場合、労働時間が分散し、割増賃金をどうするかが問題となります。

例えば、2つの会社に在籍して働いている人がいるとしましょう。一方を会社A、もう一方を会社Bとします。

会社Aでは、週23時間働いている。他方、会社Bでは、週25時間働いている。この場合、労働時間を通算すると、週48時間になります。

法定労働時間週40時間ですから、超過した8時間に対しては割増賃金が必要になります。ここまではそう難しい内容ではありません。

問題は、異なる会社での労働時間を通算できるのかどうかという点です。

数字では足し算するだけですから、通算するのはさも簡単そうですが、他社の勤怠情報は個人情報ですから簡単には集められないのです。

さらに、仮に労働時間を通算できたとしても、8時間分の割増賃金をどちらの会社がいくら払うのかが問題になります。

 

 


■他社の勤怠情報をどうやって取得するのか。
 

労働時間を通算するには、自社の勤怠情報だけでなく他社のものも取得しなければいけません。となると、それをどうやって集めるのかが問題です。

上記の検討会では、労働者の自己申告で勤怠情報を集めていくとのことですが、他にやりようがないのが実際のところです。

相手先の会社に連絡を取って、「誰々の勤怠データを送ってください」などと言えるものではありませんし、「そんな個人情報を他社には提供できません」と断られます。

世の中には、なりすましで個人情報を取得しようとする人もいるでしょうし、相手先の事業所を確認してまで勤怠データを渡すのも手間がかかります。

他の方法としては、マイナンバーを利用して勤怠情報を名寄せするのも一案ですが、正確なデータが集まるかどうか分かりません。実際の勤怠データと行政に提供されたデータにはズレがあり、労働時間が実際よりも長くなったり短くなったりする可能性もあります。

となると、労働者に他社での労働時間を申告してもらうということになるわけですが、社外で働いていることをバレたくない人が正直に申告するのかどうか。

副業や兼業に対して、世間の評価は寛容になってきたようですが、自社以外で働くことを許さない事業所もあるでしょう。

何らかのペナルティを負う可能性があるならば、他で仕事をしていることは黙っておこうと考えるのが自然な判断です。

このような状況で、他社での労働時間を自己申告してもらえるかというと、なかなか難しいでしょう。

 

 

労働基準法38条1項はどういう場面で適用されるか。
 

労働基準法38条1項には、労働時間の通算について書かれています。

労働基準法38条1項
労働時間は、事業場を異にする場合においても、労働時間に関する規定の適用については通算する。

これを素直に読むと、他の会社での労働時間も通算しなきゃいけないんじゃないか、と思うはず。

ここで、「事業場を異にする場合」という部分の解釈が問題となります。

お互いに全く関連性がない事業所同士を想定して、「事業場を異にする場合」と書かれているのか、それとも、同一の企業内で異なる事業所という意味で「事業場を異にする場合」と書かれているのか。解釈が2通りあります。

前者の解釈だと、先程書いたように、どうやって勤怠データを集めるのかという点を解決できなくなります。

しかし、後者の解釈だと、同じ会社内で事業所が異なっている場合ですから、例えばチェーン展開する小売店や飲食店が当てはまります。

一例として、スーパーマーケットを営業する会社があって、新宿店、渋谷店、六本木店、原宿店、というように店舗を構えているとします。

渋谷店で週23時間働き、六本木店で週25時間働くと、この労働時間は通算されて週48時間になり、会社は8時間分の割増賃金を支払います。

どちらの店舗も同じ会社が運営していますから、勤怠データは1つの会社の中にあります。そのため労働時間を通算することも可能です。

しかし、それぞれのお店を運営する会社が別の会社だとすれば、勤怠情報も別々になり、それらを通算することはできなくなります。

ゆえに、労働基準法38条1項は、「同一企業内で事業場を異にする場合」を想定した規定だと解釈するのが妥当です。

 
 

労働時間を通算できたとしても、割増賃金を拒否される。
 

もし、何らかの方法でもって、異なる企業の間でも労働時間を通算できたとしましょう。

では、通算したあと、割増賃金を支払うのはどこの会社なのか。

会社Aでは、週23時間勤務。
会社Bでは、週25時間勤務。
法定労働時間を超過した時間は8時間。

8時間に相当する割増賃金を払うのはAなのかBなのか。

どちらの会社も、「うちの会社では法定労働時間を超えて働いてもらっていないのだから割増賃金は不要だ」と言うでしょう。

1日8時間、1週40時間。この水準を超えていないならば割増賃金は発生しないのが法律です。となれば、会社側の言っていることが法律に合っており正しい。

しかし、労働者側としては、通算すれば割増賃金を得られるのだから、何とかして通算する方向に持っていこうとするでしょう。

ですが、この場合に割増賃金を支払わせるとなれば、法律の内容に合わなくなりますし、どちらの会社がどれだけの割増賃金を支払うのか、その割合も決められません。

ゆえに、ここでも「同一企業内で事業場を異にする場合」でなければ、割増賃金を支払うことはできないと判断することになります。

 

 

■会社員の身分を2つ以上持たない働き方
 

会社員としての身分が2つ以上あると労働時間の通算で壁に突き当たります。

もし2つ以上の仕事に取り組むならば、会社員の身分は1つまでにして、他の仕事は自営業で取り組むなり、自ら法人を設立し、そこを経由して働くという形にして、労働時間の通算で発生する不具合を回避するのが賢明です。 

パートタイマーとして掛け持ちで働くような働き方だと労働時間の通算ができず、割増賃金の点で不利です。

他の会社から勤怠データをどうやって取得するか。割増賃金をどういう形で負担するか。この問題を解決するのはおそらく不可能でしょうから、働く側で自衛策を講じるのが現実的な対応ではないかと思います。




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メールマガジン【本では読めない労務管理のミソ】のご紹介


内容の一例・・・
『定額残業代残業代は減らせるのか』
『15分未満の勤務時間は切り捨て?』
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『長時間残業を減らす方法は2つある』
『管理職は週休3日が理想』
『日曜日=法定休日と思い込んではいけない』
半日有給休暇半日欠勤の組み合わせはダメ?』
『寸志は賃金or贈り物?』
『ケータイは仕事道具か遊び道具か』

など、その他盛りだくさんのテーマでお送りしています。

本に書いていそうなんだけど、書いていない。
そんな内容が満載。



【本では読めない労務管理のミソ】
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https://www.growthwk.com/entry/2008/05/26/125405?utm_campaign=soumu_cm_common_20190725_1



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合格率0.07%を通り抜けた大学生。


今、私はこうやって社労士という職業で仕事をしているわけですが、子供の頃からなりたかった職業というわけではなくて、大学生の頃に遭遇したきっかけが始まりです。

子供の頃になりたい職業というと、男の子ならば、警察官やスポーツ選手、パイロットというのが良くあるもの。女の子だと、スチュワーデス(今はキャビンアテンダント)、花屋さん、ケーキ屋さん、保育園の先生とか。そういう社会的に広く認知されたものが選ばれるので、小学生や中学生が社労士になりたいなんてことはゼロではないのでしょうが、極めて稀でしょう。

私が社労士試験に合格したのは大学4年のときで、いわゆる「現役合格」です。けれども、3年の時に一度不合格になって、ヘコんだんです。「たかが社労士試験ごときにオチたのか」って。だって、簡単そうなイメージがするでしょ、社労士なんて。チョチョッと勉強すれば、スルッと合格できるだろう。そう思っている人も少なくないはず。

「よく知られている資格 = 難しい」、「あまり知られていない資格 = 難しくない」。こういう判断基準があって、社労士は後者に該当するため、難しくないだろうと思われてしまうわけです。

私もそうやってナメていたクチですから、不合格になったんです。

実際は、想像しているよりも難易度は高くて、大学生の頃に約1年ほど時間を投じて、やっとこさ合格したのが本当のところ。


どうすると不合格になるか。どんなテキストや問題集を使えばいいか。問題集の使い方。スマホをどうやって社労士試験対策に活用するか、などなど。学生の頃の視点で書いています。

社労士試験というと、社会人の受験者が多いですから、学生の人の経験談が少ないんですよね。だから、私の経験が学生の人に役立つんじゃないかと思います。

とはいえ、学生の人が社労士に興味を持つというのはやはりレアで、何らかのきっかけが無ければ出会えないでしょうね。ただ、珍しいといっても、毎年、1割弱ほどは学生の受験者がいるので、受験者の総数を5万人と仮定すると、その1割弱なら3,000人から4,000人ぐらいは学生がいます。

そういう方の役に立つならば、私の経験も使っていただきたいですね。


https://www.growthwk.com/entry/2017/02/28/121910?utm_campaign=soumu_cm_common_20190725_2
大学生が独学で社労士試験に合格する方法: 合格率0.07%の軌跡



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【学生から好かれる職場と学生から嫌われる職場】

高校生になれば、アルバイトをする機会があり、
過去、実際に経験した方、
もしくは、今まさに働いている学生の方もいるのでは。

中には、
「学生時代はアルバイトなんてしたことないよ」
という方もいらっしゃるかもしれません。

そういう稀な方は経験が無いでしょうけれども、
学生のアルバイトというのは、
何故か、不思議と、どういう理屈なのか分かりませんが、
雑というか、荒っぽいというか、
そういう手荒い扱いを受けるんです。

若いし、体力もあるし、
少々、手荒に扱っても大丈夫だろうという感覚なのでしょうか。

それ、気持ちとしては分かりますけれども、
法令上は、学生も他の従業員と(ほぼ)同じであって、
一定のルールの下で労務管理しないといけないのです。

もちろん、
18歳未満は夜22時以降は働けないとか、
8時間を超えて働けないとか、
そういう学生ならではの制約は一部ありますけれども、
それ以外のところは他の従業員と同じ。

週3日出勤で契約したはずなのに、
実際は週5日出勤になっている。

休憩時間無しで働いている。

採用時に、1日5時間働くと決めたのに、
実際は1日3時間程度しか勤務させてもらえない。

「学生には有給休暇が無い」と言われた。

テスト休みを取って時給を減らされた。

など、
やってはいけない労務管理がなされてしまっている
という実情もあるようです。

何をやってはいけないかを知らないまま、
間違った対応をしてしまうこともあるでしょう。

(知らないからといって許されるものではありませんけれども)

このような労務管理をすると、学生から好感を持たれ、
辞めていく人が減るのではないか。

一方で、
「これをやってしまってはオシマイよ」
な感じの労務管理だと、
ザルで水をすくうように人が辞めていく。

学生から好まれる職場と嫌われる職場。

その境目はどこにあるのかについて書いたのが
『学校では教えてもらえない学生の働き方と雇い方 - 35の仕事のルール』
です。

「学生が好む職場」と「学生が嫌う職場」 その違いは何なのか。
https://www.growthwk.com/entry/2019/11/08/214715?utm_campaign=soumu_cm_common_20190725_3


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残業で悩んでいませんか?

「長時間の残業が続いている」
残業代の支払いが多い」
「残業が減らない」

こういう悩み、よくありますよね。

ニュースでも未払い残業代の話題がチラホラと出てくるぐらい、残業に対する関心は高くなっています。

法律では、1日に8時間まで、1週間では40時間までしか仕事ができません。その水準を超えてしまうと、残業となり、割増賃金が必要になります。

とはいえ、1日で8時間と固定されていると不便だと感じませんか? 1週間で40時間と固定されていると不便だと感じませんか?


毎日8時間の時間制限があると、柔軟に勤務時間を配分できませんよね。

例えば、月曜日は6時間の勤務にする代わりに、土曜日を10時間勤務にして、平均して8時間勤務というわけにはいかない。

仕事に合わせて、ある日は勤務時間を短く、ある日は勤務時間を長くできれば、便利ですよね。

でも、実は、「月曜日は6時間の勤務にする代わりに、土曜日を10時間勤務にして、平均して8時間勤務なので、残業は無し」こんなことができる仕組みがあるんです。

「えっ!? そんな仕組みがあるの?」と思った方は、ぜひ『残業管理のアメと罠』を読んでみてください。


『残業管理のアメと罠』
https://www.growthwk.com/entry/2012/05/22/162343?utm_campaign=soumu_cm_common_20190725_4



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決まったことを決まった手順で処理するのは難しいものではありません。例えば、給与計算。毎月1回は給与が支給されるので、その計算作業も毎月ありますけれども、頭を悩ませるほどのものではありません。

他には、雇用保険社会保険への加入手続きもちょくちょくと発生しますけれども、これも必要な書類を揃えて出すだけですから難しくない。

労務管理ではルーティンな業務があり、それらを処理するには特別な能力や知識は必要ありません。

しかし、時として、普段は遭遇しないような問題が起こります。例えば、休憩時間を1回ではなく何回かに分けて取るのはいいのかどうか。有給休暇を半日や時間単位で細かく分けて取ると便利なのかどうか。仕事着に着替える時間には給与は支払われるのかどうかなど。答えが1つに定まりにくい問題が労務管理では起こります。


一例として、

Q:会社を休んだら、社会保険料は安くなる?
Q:伊達マスクを付けて仕事をするの?
Q:休む人が多くて勤務シフトに穴が開く。対処策は?
Q:休憩時間を分けて取ってもいいの?
Q:残業を許可制にすれば残業は減る?
Q:残業しないほど、残業代が増える?
Q:喫煙時間は休憩なの?
Q:代休振替休日はいつまでに取ればいいの?


このような問題に対して、どのように対処するか。それについて書いたのが『仕事のハテナ 17のギモン』です。

▽    ▽   『仕事のハテナ 17のギモン』    ▽    ▽
https://www.growthwk.com/entry/2017/05/23/132023?utm_campaign=soumu_cm_common_20190725_5



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