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【労働衛生教育利用可】生命の基礎と活性物質

 こんにちは、産業医・労働衛生コンサルタントの朝長健太です。
 産業医として化学工場、営業事務所、IT企業、電力会社、小売企業等で勤務し、厚生労働省において労働行政に携わり、臨床医として治療を行った複数の健康管理の視点で情報発信をしております。
 さらに、文末のように令和元日(5月1日)に、「令和の働き方 部下がいる全ての人のための 働き方改革を資産形成につなげる方法」を出版し、今まで高価であった産業医が持つ情報を、お手頃な価格にすることができました。
http://hatarakikatakaikaku.com/
 今回は、「【労働衛生教育利用可】生命の基礎と活性物質」についてコラムを作成しました。
 労働衛生の取組を行うことで、従業員に培われる「技術」「経験」「人間関係」等の財産を、企業が安定して享受するためにご活用ください。
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【労働衛生教育利用可】生命の基礎と活性物質
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○生命の基礎と健康障害因子
 労働衛生では健康について考える機会が多いですが、健康に関しても基礎があります。それが、生命の基礎である遺伝子と遺伝子から生命を形作るセントラルドグマです。
 哺乳類は、母胎の中で遺伝子をもとに成長します。その後、特定の小児科的合併症が無い場合、生命として誕生することになります。
 その時点から、生命は徐々に衰えていくことになりますが、それを増強する健康障害因子として、生活の不摂生(食事のバランス不足、睡眠不足、運動不足等)、様々な細胞障害物質(飲酒、喫煙、石綿、特定化学物質等)、過度なストレス、細菌・ウイルス、物理的細胞障害因子(熱、振動、放射線等)、特定の遺伝子(APC遺伝子胚細胞変異、BRCA1/BRCA2 遺伝子変異等)等があります。

○生命のメカニズムと活性物質
 様々な健康障害因子の影響を身体は受けているにも関わらず、なぜ、生命は維持されるのでしょうか。その生命を維持する機能が、ホメオスタシスと呼ばれるものになります。
 ホメオスタシスとは、生物のもつ重要な性質のひとつで生体の内部や外部の環境因子の変化にかかわらず生体の状態が一定に保たれるという性質、あるいはその状態を指します。さて、ホメオスタシスは、比較的汎用されているため、人によっては訝しく感じると思います。そこで、より科学的に議論を進めたいと思います。
 ホメオスタシスのメカニズムは、緩衝とフィードバックです。
 緩衝の例としては、人が青酸カリを内服し、細胞内呼吸が停止すると即死してしまいます。しかし、人は10秒呼吸を止めても、まず死ぬことはありません。これは、人が肺に酸素を捉えてから、細胞内で利用するまでに、様々な解剖学的、生理学的、生化学的機能の中で「ゆとり」があるからです。このゆとりを、緩衝と呼びます。
 フィードバックの例としては、食事後に血管内の糖(以下「血糖」という。)が必要以上に増加するとインスリンの分泌が高まり、糖を細胞に送り込むことで血糖を減少させます。血糖が際限無く高くなってしまうと、高浸透圧性高血糖状態となり、意識障害をはじめ様々な健康障害を引き起こします。フィードバックとは、正常に戻そうとする調節機構です。細菌を排除し、正常状態に戻すという意味では、免疫もその1つになります。
 さらに、こういったメカニズムの素材となる化学物質は何でしょうか。それが、タンパク質(糖タンパク質、金属タンパク質等含む)になります。タンパク質は、存在するだけでpHの調整を行いますが、以下の多様な機能があります。
・酵素タンパク質:代謝等の化学反応を起こさせる触媒である酵素。細胞内で情報を伝達する多くの役目も担う。
・構造タンパク質:生体構造を形成するタンパク質(コラーゲン、ケラチン等)。
・輸送タンパク質:何かを運ぶ機能を持つ種類で、酸素を運ぶ赤血球中のヘモグロビンや血液中に存在し脂質を運ぶアルブミン、コレステロールを運ぶアポリポタンパク質等が当たる。
・貯蔵タンパク質:栄養の貯蔵に関与するタンパク質であり、卵白中のオボアルブミンや細胞中で鉄イオンを貯蔵するフェリチンやヘモシデリン等である。
・収縮タンパク質:運動に関与するタンパク質。筋肉を構成する筋原繊維のアクチン、ミオシン等。細長いフィラメントを構成し、互いが滑りあう事で筋肉の収縮や弛緩を起こす。
・防御タンパク質:免疫機能に関与する種類であり、抗体とも言われる。B細胞によって作られるグロブリンがこれに当たる。
・調節タンパク質:DNAのエンハンサーと結合して遺伝発現を調整するタンパク質や、細胞内でカルシウムを使って他のたんぱく質の働きを調整するカルモジュリン等が当たる。
 なお、特に重要なものは酵素タンパク質で、化学反応の触媒になるため、化学反応速度が増加することで、目的の機能を増強したり、複数の反応が起こりうる状態において、目的の機能を選択的に得ることができます。
 そのタンパク質を合成する機能が、遺伝子から生命を形作るセントラルドグマであり、セントラルドグマは、DNA、RNAやアミノ酸によって機能しています。さらに、DNAやRNAは、ノイズを最小限にするために、正常では自身の細胞中で合成します(ウイルスは、自身のRNAを寄生主の細胞に送り込む機能があります。)。その材料となる物は、ブドウ糖、リン酸、アミノ酸等であり、合成を助ける補酵素として、チアミン、グルタチオン(トリペプチド)、葉酸、金属等があります。
 労働衛生を行う上で、健康障害因子とホメオスタシスのメカニズムを考えることは、健康障害の発生を最小限にすることにつながり、実際に約600人の工場で休職者・疾病による離職者を半年間ゼロにした際は、この基礎をフル活用しました。

○生命を維持するためには
 生命を維持するためには、健康障害因子を減らし、生命のメカニズムを理解しさらなる生活習慣の改善に努める必要があります。しかし、健康は身体的に限らず、精神的、社会的にも良い状態であることをいいます。
 是非、学び、習い、哲学して、自身の健康の在り方を定めて下さい。また、労働衛生上は、衛生委員会でそれぞれの健康の在り方を協議し、合意が得られた組織の健康管理を行って下さい。

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令和の働き方 部下がいる全ての人のための 働き方改革を資産形成につなげる方法
http://miraipub.jp/books/%E3%80%8C%E4%BB%A4%E5%92%8C%E3%80%8D%E3%81%AE%E5%83%8D%E3%81%8D%E6%96%B9-%E9%83%A8%E4%B8%8B%E3%81%8C%E3%81%84%E3%82%8B%E5%85%A8%E3%81%A6%E3%81%AE%E4%BA%BA%E3%81%AE%E3%81%9F%E3%82%81%E3%81%AE-%E5%83%8D/

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